【VRMMO】天才少女は裏ゲームモードを征く~『Pit Coffin』-Game Mode:Underground Struggle-~ 作:環状線EX
「何で唐突に?」
ウルシマッカの口から手合わせの依頼が出た時、つい漏れたのはそんな言葉だった。
「実はですよ。僕、NAさんの名前を聞いてピンと来たんです」
ウルシマッカがそう言うが特に心当たりがない。
リアあたりの名前を出してその反応なら分からなくもないが。
「ずばり、です!アルテミスでリアさんと唯一まともにやりあっていたのが貴方でしょう!」
唯一と言われると断言できるものではないが、必死に耐え忍んだのは確かだ。
スペック不足のセフワンでバレットの相手をしたのはまだ記憶に新しい。
しかし、「NA」と言う名前が一般に広がっていた記憶がない。
シーミンが「NAちゃん凄かったのに~!」と私の噂が全くないことに嘆いていた記憶があるのでそれは確かだ。
ただ、実際大会風景の配信画面ではプレイヤーネームが表示されていたのだから確かめようと思えばできなくもないとは思うが。
「そして、推定本人を目の前にした今とあっては手合わせを申し込まないわけには行きません!」
ウルシマッカの声が更に大きくなった。
シーミンほどではないが、彼女が異常なだけで彼も十分うるさい。
「何ですか、その顔は?まさか疑っておいでで?では、良いでしょう。事細かに語って見せましょう!あれはアングラにログインして師匠と初期リスが大分離れてしまって一人で行動をし始めた──」
「いや、いいよ。分かったやろう」
こちらが口を開かなければ無限に話し続けるウルシマッカに私はそう言った。
これは承諾しなければ止まらない手合いだろう。
まだ、一度も断っていないのにそこまで察せられる。
「本当ですか?では、真剣勝負!負けたら死の一騎打ちを!」
「いや、『
「そんな~」
不満そうな声を洩らすウルシマッカ。
それでも「良いでしょう!」と表情を変えれば彼は準備をすべく格納庫へと走っていった。
◆
黒髪に青い瞳の少年ウルシマッカ。
彼の誘いに仕方なく乗り、彼の機体と相対した時不意に声を洩らした。
「まさか。未改造の機体とは」
私だって人のことを言えた義理じゃないが、他人がやっていればその異常性が分かる。
いや、そもそも私は西エリアで比較的難易度の低いところでのその選択であったが、奴はすでにウエストゲートを越えたセントラルでの所業だ。
私と彼ではわけが違う。
それに、セントラルまでの険しい道のりをあの機体で突っ切ったと言えば彼の実力が伺える。
「面白くなってきた」
思わぬサプライズに胸が躍る。
リア以来手ごたえのない戦闘には飽き飽きしていた。
彼の腕を見せてもらおう。
加速する。
スペックは圧倒的にこちらが上だ。
加えて相手の機体は鈍足とは言わないが、特にスピードにスペックを振っているわけではない。
機体名『
すべてにおいて平均的。
故に扱いやすく。故に、アングラにおいては突出した能力が存在しないためにすべてにおいて後手に回る性能と言わざるを得ない。
しかし、それだけに使い手の技量に大きく左右される。
奴はこちらに足を進めながらも手に持つ銃剣銃を向けて来た。
放たれる弾丸は正確にこちらに向かう。
しかし、それを大剣を盾にして無効化する。
それだけで突きの攻撃ほどのスピードはないが、すぐに止められるほどの勢いでもない。
慣性は十二分にトゥエルブを押し出した。
「───ッ!」
そしてそのまま両断せんとしてソルジャーは大剣を避ける。
身体を捻り躱したわけではない。
目の前で起こったのは棒高跳びのようにして、銃剣を地面に突き刺してこちらの頭上を飛んでいった光景だった。
大剣はそのまま銃剣銃をなぎ倒すもすでにソルジャーはその場にいない。
そして、後方からの狙撃を避ける。
空中に居ながらも逆さになった体で取り出したもう一本の銃剣銃でこちらを正確に狙っていた。
「二本持ってんのかよ!?」
ただ、黙ってこちらも当たってはやらない。
身体を逸らして、最小限の動きでそれを避ける。
そして、大剣は放り出して、抜いた短剣で奴を狙う。
奴の体勢は不安定。
狙わないと言う選択肢はない。
短剣はすでに奴の身体へと滑っている。
そして確実に腕を切り付け、奴の活動停止は近い。
しかし、まだあきらめていないと言うかのように、衝撃を最低限に抑えてこちらに銃剣を充てに来る。
眼前に迫るそれを避けきれない。
腕を切らせたのは恐らくわざと。
この攻撃をするためにこちらに隙を作らせた。
しかし、無情にも『
奴の銃剣は眼前で止まり、機体も停止した。
◆
「いやはや。流石NAさん強いですね」
街に戻り対面したウルシマッカは屈託のない笑みでそう言った。
「でも、次は『
「頷くわけないだろ」
続けるウルシマッカに私は先ほどの戦闘を思い出す。
多分この男はコックピットの中が外から見えようとも機体が動けば攻撃の手をやめない。
先ほどの戦闘だって、『
肉を切らせて骨を断つ。
そんな言葉では少々表現が不足するような手段を彼は取っていた。
そもそも、この手の方法を使った理由は機体のスペックの差を埋めるためであると考えれば怖いところだが。
奴が機体を新調し、戦場であった時のことを考えれば少し怖くなる。
ただ、そんな私の考えなど知らぬとばかりに、ウルシマッカは手を振って去っていった。
「今日は落ちて、次は移動だな」
セントラルと言ってもここはまだウエストゲート。
未だ玄関口にいるようなものである。
ここでやることの大抵は済ませたわけだし次は更に進もうと方針を明確にした。
◆
ランキングを上げるためにセントラルに入ったわけだが、その具体的な方法もシーミンとの会話の中で話していた。
「そう。そうだな~!やっぱりおすすめは大会かな」
「やっぱり?」
「うん。うん!セントラルは特に大会主義って面も強いからね!」
シーミンが言うには、セントラルでの移動は他と比べると過酷だ。
それはムニンの強さもあるし、プレイヤーの事もある。
そして、何より大会が開かれるとなれば、出場プレイヤーはそこを目指して遭遇率は大幅に上昇する。
無論戦闘がおこるわけであるが、その際に『
管理されているトリプルワンのような場所では無論『
故に、リミッターの外れた機体が入り乱れる。
最悪ゲームオーバーになる危険性すらも秘めているのだ。
故に、大会の会場に集まった者たちは、その過酷な道のりを超えて来たものと言える。
そのため、大会へと出場する者たちは軒並み強者ぞろい。
そんな背景があって、セントラルでの大会は重要視されると言う。
と言う事で、私も大会に参加すべく移動を開始した。
ウエストゲートタウンで聞いた話では、少し言ったところにある街で大会登録手続きが出来るようだ。
トレーラーに機体を乗せて、移動を開始した。
移動移動で少し面白みに欠けが一面荒野と言うわけではないようで、意外と見ごたえがあったりする。
ランドマーク的な意味合いもあるのだろうか。
世界遺産なんていたって信じてしまいそうな光景を見ることも出来た。
そして、道中にはムニン。機体に乗って戦っていれば案外すぐに次の街へと到着した。
「機械化してるくせに不便なんだよな」
大会登録が出来ると言う施設に足を進める。
中に入ればギテツ院とは比べるのが失礼なほど機械化された空間があった。
しかし、実情としてこの場に来なければ手続きの類が出来ないとあって不便に思ったのだ。
ここまで機械化しているのなら遠隔手段があっても良いだろうに。
「まあ、いいか」
文句を言ってどうにかなるわけではない。
思考は早々に打ち切って、登録端末を操作した。
そして、開催されている大会情報を確認していく。
見ると結構盛んに行われているようだ。
個人が開催していると言っても、アルテミス規模の物が頻繁に行われている。
プレイヤーの数に対して多すぎないかと思ってしまうほどだ。
とは言え、ここはアングラ、皆が本気で打ち込む環境でなら成立するのだろうか。
まあ、なんにせよ出来るだけランキングの伸びが良い大会に出たいが……。
そうしてスクロールしていくと一つの大会が目に留まった。
「公式、か」
シーミンを少し言っていた公式イベントと同時に開催される公式大会だろう。
参加要件を見れば、一つの項目で弾かれた。
ランキング1000位以上のプレイヤーの参加を認める。
つまるところ、私は出場できない。
私の今の順位は1432位。惜しくもない。
アルテミスから少しは上がったが、所詮この程度。高順位になるほどに上がりにくくなるだろう。
不意にリアの順位を思い出す。
確か、大会前で999位だったはずだ。
となれば、条件を満たしている。
それに、私がセントラルに来ている現状で彼女が来ていないこともないだろう。
そう考えれば、確実に出るだろう。
となれば、今度は強化したトゥエルブを使ってもう一度手合わせをしたいところではあるが……。
「なら、この辺か」
いくつか並ぶ大会の中からいくつか見繕う。
公式大会までそこそこあると言っても、余裕があるわけではない。
大会の開催箇所は様々な場所にあるために移動の事も考えなければならない。
それを考えれば、大会に出場できるのはその期間までで一回。
相当無理をして二回だろう。
ただ、本気を出すと言う意味でも一回が限度だ。
その条件で、大会の要項を満たせるのは二つだけだろう。
「現状参加者の多い「機械大祭」か、定期的に実力者が出ると言う「EG」か」
どちらを取るべきか。
両者ともに、上手く事が運べばランキングを狙い通り上げることは可能だろう。
しかし、どちらが私に適しているか。
移動時間、大会形式、参加人数。
これらの要素が絡んでくる。
そしてグルグルと頭の中で考えた私は決断を下す。
「機械大祭だ」