【VRMMO】天才少女は裏ゲームモードを征く~『Pit Coffin』-Game Mode:Underground Struggle-~   作:環状線EX

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再開と邂逅

 

 「機械大祭」。

 大祭と言うからにはそれなりの規模が予想されるこのイベントはセントラルに位置する「チキテクモ」と言う場所で行われると言う。

 

 一番の特徴はその立地。

 セントラル内で言えば、主要な基地や拠点からの距離的なアクセスの容易さがある。

 しかし、その一方で道中には強力なムニンが多数存在する。

 それにより、大会参加者は粒ぞろいでありながら大勢と言う特色を持つ。

 

 ちなみに、選ばなかった「EG」は実力者御用達と言った印象だ。

 より実力の高い者たちが集まっている。

 ただ、その代わり人数が少なく撃破数が稼げずに大会を終える可能性も高い。

 最悪リカバリーが効きそうなのは「機械大祭」の方と言う判断だった。

 公式イベントの基準を満たさなくとも、あと一押しであればどうにかできる可能性もあった。

 

 と、まあそんなこんなで「機械大祭」に出場登録をした私はイベント開催地であるチキテクモへ向かっていた。

 道中に湧くのはムニン。

 人型よりも動物に近い形が多い印象を抱きながらトゥエルブでなぎ倒す。

 

 調子は重畳、しかし、私に迫る魔の手はムニンだけではない。

 

「プレイヤーか」

 

 後方から飛んでくる弾丸を躱す。

 地面を引きずるように勢いを殺すと同時に、吹かしたスラスターは急激に進行方向を変える。

 身体にかかる負荷を押し殺し、最短距離で獲物をしとめる。

 大剣を振り回し、相手へとぶつける。

 対する敵機は二刀使い。

 人の身体では難しいだろう、長剣二本を巧みに振り回す。

 『AHRM(アールム)』だからこその、システムの補助により再現されたその剣はこちらの大剣をいなした。

 

 だが、此処で苦戦してはいられない。

 またも背後を取るように敵機が銃で狙っていることに気付いた。

 瞬時に過重移動を成して、二刀の敵機との位置を入れ替える。

 二刀の敵機は銃弾を受けてひるむ中それを縦にするように立ち回る。

 二刀の敵機に蹴りを入れて、機体をもう一体にぶつける。

 両者が怯んだところに、スラスターを吹かして滑り込み、大剣を振るった。

 この間僅か数秒で、二体の撃破に至る。

 

 こういった光景がチキテクモに向かうまでの道中では珍しくない。

 実力者が凌ぎあい、目的地へを足を延ばす。

 ここを切り抜けたモノだけが、「機械大祭」への出場を可能とする。

 

 そんな中、右前方で派手に散る機体を見た。

 宙を舞い、四肢が離れ離れになった機体が、ひしゃげて飛んでいく。

 何かいるのか。

 そう予想させる光景が今の一瞬にあった。

 

 そして、答えを探そうとする前に、答えが自らやってくる。

 

「バレット……!」

 

 随分と見慣れた機体。

 リアという少女が乗り、アルテミスで私が破れた機体。

 バレットは幾分が分厚さを増した直剣を振り回す。

 リアというプレイヤーは知名度が高いのか、多くの敵機に囲まれながらもその全てを薙ぎ払う。

 

 そして、バレットのフェイスと目が合った気がした。

 

「わかってるよ」

 

 当然私もアクセルペダルを踏んで加速する。

 大分原型をとどめていないが、セフワンの面影を見たのだろう。

 リアが私に気付いたと何処か確信めいたものを感じる。

 

 大剣と、直剣が交わる。

 前回とは違う。

 スペック差の縮まった現在における勝敗は、技量だけで決まる。

 

 どちらが先に相手の首を刈り取るかだ。

 

 お互いの剣は完璧な軌道を描く。

 どちらも遅れることなく繰り出されたそれはどこで優劣が付くのか。

 回避をするか踏み込むか。

 機体をぶつけてでも、取りに行く。

 

『ストーップぅ!』

 

 ただ、そこに差し込まれたのはお互いの二の手ではなく聞きなれない第三者の声だった。

 剣が重なる一点に、正確に打ち込まれた弾丸が私たちの剣をはじく。

 拳銃や小銃ではなくもっと大きな一撃を持つそれを担いだ機体がトゥエルブとバレットの動きを停止させた。

 

「スピーカか」

 

 オープンチャンネルでも何でもなく、スピーカでの静止の声に訝しむ。

 しかし、そんなことは当の本人には分からないのだろうスラスラと言葉が続いた。

 

『アンタ、リアだろ。フレットさんの弟子の。今の攻撃はわりかし本気だったろ。ならイベントでやった方が良い。そこの白い機体の君もだ』

 

 態々反抗する必要もないが、態々従う理由もなかった。

 だから私は無視して大剣での一撃を再開しようとまで思ったのだが……。

 対するリアが動こうとしなかった。

 

 その光景に更に首を傾げた私であったが、結局戦闘が開始しなかったので目的地へと足を延ばすことに専念することになったのだ。

 

 

 

 

 ◆

 

 暫く移動し目的の地、「チキテクモ」へ無事に到着することが出来た。

 ウエストゲートタウンと比べれば少々小規模で、少々SF味が薄い。

 しかしそれでも、立派な街だ。

 そう思うのはアルテミスの登録の際に見たアングラ初のまともな街が廃墟同然のそれだったからだろうか。

 

 そんな街で早速私は酒場へ向かった。

 そして、扉を前にして、回れ右をする。

 そこから、路地裏に入ると一つの人影があった。

 

「リア」

 

 バレットの持ち主である彼女がそこに立っていた。

 

「どうしてここが?」

「わかってて、誘導しといて何を」

 

 とぼけるように言うリアに私は苦笑する。

 こちらが街中で見つけて追っていたのを気付いてここに入ったのは分かっている。

 

「それより、意外だった。次に戦うのは公式大会だと思っていたから」

 

 リアが「機械大祭」に出るとは思わなかった。

 このイベントが有用だと感じたのは私の現状があってこそ、ランキングもすでに三桁の彼女にしてみればそこまでのうまみはないはずだ。

 故に彼女が何故このイベントに参加しているのかを疑問に思ったのだ。

 

「私もそのつもりだった。だが、少し事情が変わったんだ」

「事情?」

 

 リアの言葉に首を傾げる。

 「機械大祭」に参加しなければならない理由。

 大会報酬を望んでと言う事はないだろう。

 アルテミスでの賞品を私に渡せるほどの彼女が態々イベントに参加する理由にはしないだろう。

 

「ああ。今の私のランキングを考えれば、「EG」、最低でも「機械大祭」よりも実力者の多く集まるイベントに参加するだろう。ただ、公式イベントの事も踏まえると消耗を避けたいと思ってな。新調したバレットの調整も兼ねての出場だった」

「なるほどな」

 

 本命は公式大会。

 それを考えれば、体力の温存は重要だし、彼女の機体の新調と言う言葉を考えれば調整には「機械大祭」はぴったりだろう。

 

「ただ今回の「機械大祭」普段通りにはいかないだろうな」

「?」

 

 私が首を傾げるとリアは説明をしてくれた。

 

「先ほど、私たちの剣を止めた男がいただろう」

「ああ、そう言えば」

 

 スピーカーでこちらに声をかけて来たのはまだ記憶に新しい。

 そう言えばあの男は何者なのだろうか。

 リアが彼の話を素直に聞いた理由は気になっていた。

 

「奴は、前回の「EG」の優勝者だ」

「「EG」の?」

 

 「EG」は「機械大祭」よりも実力者の集まる大会だ。

 大会を吟味する際に私は二つを同列に扱ったが、二つの優勝者の実力を比較した時、圧倒的とも言えるほどに「EG」の方に軍配が上がる。

 ランキングを上げると言う視点で見ていた私の評価を除けば、大きなレベルの差が両者には存在する。

 そして「EG」の優勝者となればその実力は折り紙付き。

 当然知名度も高く、リアも知っていたと言うわけだ。

 それに常に上を目指す彼女であれば私なんかよりもそう言った情報に詳しいのだろう。

 

「あそこで奴の制止を振り切った場合、私たちは二人まとめて潰されていた」

「そこまでか」

 

 リアの評価に唖然とする。

 彼女本人はアルテミスに出場するだけでアングラ内でニュースになるほどだ。

 そんな彼女であっても、そんな評価を下す人物。相当な実力者であるのは見て取れた。

 

「ちなみに、名前は」

「……ハンター」

 

 そんなことも知らないのかと言いたそうに彼女は言った。

 ハンターか、物騒な名前だ。

 

「ただ、そのハンターってのがいるなら今回は優勝は決まったような物なんじゃないか?」

「お前は諦めているのか?」

 

 リアは私の言葉にそう呟いて見せた。

 しかし、私は笑う。

 

「冗談。むしろ、ハンターなんかさっさと倒して決着を付けようと思っていたところだよ」

「いいだろう。それでこそだ」

 

 リアは表情の分かりにくい顔を少し歪めて言った。

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