【VRMMO】天才少女は裏ゲームモードを征く~『Pit Coffin』-Game Mode:Underground Struggle-~   作:環状線EX

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少女との邂逅

 

「設計図?」

「そう。設計図!」

 

 私が声を洩らせば、青髪の少女は更に復唱する。

「機体を強化するんだったら、絶対に必要だよ!」なんてシーミンの言葉の後に出たのがその言葉だった。

 

「ムニンを倒せば、色々な素材を手に入れられるけど、設計図が無きゃ何もできないからね!」

 

 シーミンがそんなことを言って教えたくれたのは、『アングラ』における『AHRM(アールム)』の諸々だった。

 確かに、私もムジムラの情報で知っていた部分もあるが、それでも『アングラ』をプレイし、実力者となった彼女の言葉には実感が伴った。

 

 『AHRM(アールム)』の強化の最もな要素を占めるのは『リアクター』──いわゆる動力炉である。

 高性能なものであればあるほどに、その出力は跳ね上がると言う。

 そしてそれは当然彼女の機体であるグレートピアスにも乗っており、あの過剰なまでの機動力はリアクターに由来していると言う。

 

 だから当然、第一目標を定めるのであればリアクターの入手であり、そしてそのリアクターの入手のためには設計図が必要と言う話であった。

 

「そう、それでね!設計図は、回数制限があるから今私の手元にもないの!だから、頑張って手に入れなきゃならないんだけど……」

「なにか問題が?」

 

 難易度が高いと言う事だろうかと思いながら首を傾げる。

 確かに、シーミンとの先頭では機体の大切さが嫌なほど実感できたために、今のセフワンでは対応しきれない場面も存在することは承知だが。

 ただ、彼女の懸念はそこにはないようで……

 

「実は。実はね!設計図って、結構レアアイテムで三か月に一回行われる公式イベントでしか手に入れることが出来ないの!でも……」

「公式イベント……って、三か月に一回ってことは」

「うん。あとまだ二か月と十日くらい先」

「マジか……」

 

 何故か私よりもシュンとした様子を見せる彼女を他所にではどうするべき考える。

 別に強化と言ってもリアクターだけではない。

 機体の骨格だって大抵はもっといいモノに取り換えると言うし。

 

 だが、そんなことを考えているとふと「でも!」とシーミンが声を上げた。

 

「そう。そうだ!思い出したよ!確か、優勝賞品に設計図を出している大会があったはず!」

「大会?」

「うん!公式のイベントとかじゃなくて個人で開いてる大会!凄い前に誘われたことがあって思い出したんだけど!なんか客引きのために、レアアイテムを優勝賞品にしてたはず!」

 

 そんな彼女の言葉を聞いたのが少し前。

 

 

 

 

 ◆

 

 そして今はムジムラを前にしていた。

 

「あ、いや……すまん」

 

 口をついて出たのは謝罪だった。

 

「俺の話を無視して『Battle zon(バトルゾー)e()』に挑戦したことについてか?それなら気にするな」

「へ?」

 

 ムジムラが言葉にした未改造の機体でのトリプルワンへの突撃。

 そしてそれがそれが万が一のことを考えればゲームオーバーにつながる可能性を少しでも秘めていることをシーミンとの会話で実感した私は責められるものだと思っていた。

 しかし、予想に反してあっさりとムジムラはそんな言葉を返した。

 ムジムラの言葉によれば、外部からの『アングラ』内の様子は限定的な時間しか観測できないようであったが、かといって彼が今口に出したように事態の把握をしていなかったわけでもないだろう。

 故に疑問が生まれた。

 

「いいのか?」

「良くはないが、お前みたいなやつは締め付けた方が逆効果になるってのは分かっている。それに過ぎたことだ」

 

 この男は案外心が広いのかもしれないとか思いながら、息を吐いた。

 しかし、私を巻き込んでまで『Rewriting (リライト・オ)Object(ブジェクト)』を求める彼の態度にしては少々疑問の残るところであった。

 まあ、とは言え。

 

「おいしい」

「よかった~」

 

 ソヨカが淹れてくれたお茶を口に含んでいったん余計なことは忘れることにした。

 

「ナー、それ私にも頂戴」

「ん」

 

 クッキーを所望するクモイに袋を口を向けて一つとらせると暫くティータイムを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 翌日、ヒヨリと共に学校へ行き、放課後ギテツ院へ向かった私は再度『アングラ』にログインしていた。

 昨日話した「個人で開いている大会」とやらに参加すべくシーミンと待ち合わせをしようと約束していた。

 何でも、その大会と言うのはトリプルワンとは少し離れた場所でやっているらしく彼女が案内してくれると言うのだ。

 ただ、移動の関係で近くに存在するというエリアにて現地集合すると言う形に話が収まったため、私は絶賛移動中だった。

 そして目的地に到着した私は息を洩らしたのだった。

 

「割と近かったな」

 

 移動してみての感想はそんなものだった。

 ただ。

 

「街か」

 

 簡素ではあるが街と呼べるような代物がそこにはあった。

 高層ビルなどは存在しないが、古びたコンクリートでできた家が並んでいた。

 日本の、と言うよりは海外のアパートを想像した方が近いだろう。

 真ん中に一本の大きな道路が敷かれており、その脇に建物が並んでいた。

 

 とはいえ……

 

「これじゃ廃墟だな」

 

 ガラスはそのことごとくが破られていて、もはや人が住んでいたのは遠い昔かのように苔が至る所から生えていて壁は黒くくすんでいた。

 とは言え、ここには『基地』が存在しているようなので、まずはそこに向かって腰を落ち着けようと考えた。

 ただ、思ったよりも早く着いてしまったこともあってか暇を持て余してしまった。

 

「ちょっと、あたりを見てみるか」

 

 ここでじっとしているのも何なので取りあえず町の周りを見てみることにした。

 機体を発進させて、周囲を散策する。

 そんな時、不意にいくつかの影を見つけた。

 

「ムニンか」

 

 丁度いい、なんて思って機体を加速させる。

 一気に接近し首をはねる。

 ムニンには動物ような四足歩行型のものと人のような二足歩行型のものが存在している。

 どちらも鉄の化け物のような見た目であるが、今回後者のようだった。

 故に、首をはねやすい。

 だが、こちらの威力不足で一撃とはいかず二撃目を叩き込んだ。

 加速しての慣性の利用によって短剣が叩き込まれただけあって、二の太刀はすんなりと首を飛ばした。

 

 そして、流れるように他の個体へも攻撃を開始する。

 ただ、三体目へと刃を向けた時ムニンではない何かに短剣が弾かれる。

 

「───ッ!」

 

 それは私の攻撃を邪魔したのではなく、私と同様にムニンの急所をつこうとした結果によるものに見えた。

 つまるところ、この場には私以外のプレイヤーが存在して同時に同じ個体のムニンを狙っていたと言うこと。

 そして、それに気づいたのはお互いの武器が衝突してからであった。

 

 なぜ気付かなかったのか?

 その疑問に考えを巡らせれば、恐らく私と同じようにムニンに対して急接近して攻撃を入れたのであろうと言う推測を立てる。

 だが、そんな理由はともかくとして。

 

「邪魔!」

 

 端的に表したのはその言葉だった。

 そして次の瞬間、こちらの短剣が、そして対面する機体の直剣が同時にムニンを両断した。

 

「私と同時……?」

 

 ことがなされた瞬間、口をつくのはそんな言葉であったがその時シーミンからの連絡が入りそちらに意識を向ければ先ほどまで直剣を抜いていた機体はこの場を離れまいとしていた。

 そして私はセフワンが取得した『BULLET(バレット)』の文字と機体の胸に刻まれた特殊な印が酷く印象に残っていた。

 

 

 

 

 

「NAちゃん!昨日ぶり!元気してた?」

「うん。シーミンも元気そう」

「うん。うん!私はすごく元気!」

 

 昨日ぶりに再会したシーミンのテンションは今日も変わらない。

 なんとなく先ほどの出来事を思い出していたのにそれが吹っ飛んだほどだ。

 そんな彼女の案内に従って来たのは先ほどの街。

 その一つの建物の中だった。

 

「ここが受付ね!」

 

 そう言って指を指すのは廃墟に似つかわしくない随分と近代的な受付デバイスだった。

 そこは無人であるが手続きはその機械で出来るのだろう。

 見た目はスタンド型の非接触体温計のようだ。

 それを使い登録をした。

 

「大会は十日後!で、賞品はやっぱり設計図みたいだね!時々変わるから賭けだったんだよね」

「…………」

 

 情報の危うさについ黙ってしまう。

 結果的に良かったが、そこまで曖昧であったのか。

 

「ちょっと!そんな顔しないでよ!NAちゃんも私のおかげで設計図を手に居られるんだからさ!」

 

「随分と余裕だな。シーミン」

 

 シーミンの言葉に苦笑いを返していた時、不意に建物の入り口の方から声が掛けられた。

 高圧的で野太い声は紛れもなく男のもので、視界に収めたその姿もスキンヘッドの大男だった。

 そんな場面に硬直しているとシーミンは声を上げた。

 

「あれ。あれ!フレッドじゃん!こんなとこに何しに来たの!?」

 

 大男──フレッドと知り合いなのかシーミンはそんな声を上げる。

 

「何しにって、そりゃ出場登録だろうが」

 

 何を当たり前のこととばかりに彼は言う。

 もしかして彼が出るのだろうか。

 そんな疑問が頭の中に浮かぶ前にシーミンがまたも口を開く。

 

「え?え!?フレッドが出るの!?」

「ちげぇよ。俺がでたら即終了だろうが」

 

 シーミンと顔見知りと言うだけにその言葉に嘘は見られない。

 ではなぜかと思ったとき、彼は言葉を続けた。

 

「出るのはこいつだ」

 

 そう言った彼が自分の身体を抱ければ一人の少女が立っていた。

 背の高い少女だ。

 推定160後半。下手したら170あるのだろうか。

 男性と比べたら高身長とは言えないだろうが、女性のくくりで見れば高身長と言っていいだろう。

 少なくとも彼女を日本人の基準に当てはめるのなら、ではあるが。

 

 それに、私の身長が低いこともあってかすらりと伸びた体はとても高く見えた。

 黒い髪と端正な顔つき、そのどちらかがリアルの彼女に寄っているのか知らないが、少なくとも『アングラ』の特性上彼女の体格は限りなくリアルに近いモノだろう。

 

「リア」

 

 黒髪の少女はそれだけを口にした。

 名前だろう。

 

 ただ、その時の私の注意は他の物へと注がれていた。

 少女──リアと名乗った彼女が腕に着けた数珠とその一つに描かれた文様だった。

 金に掘られたそれは家紋のようで、そして先ほど『BULLET(バレット)』という期待がその身に刻んでいたものと酷似していた。

 

「リア。リアちゃんね!でも、フレッドが初心者さんを気に掛けてあげるなんて意外だね!」

 

 記憶と照らし合わせている俺と他所に、シーミンはペラペラと喋る。

 それに対してフレッドも口を開いた。

 

「そういうお前はどうしたんだよ。もしかして、そのガキの手続きのためにここまで来たのか?」

「うん。うん!そうだよ!この子はNAちゃん!よくわかったね!」

「なら、先に謝っておかなきゃな」

 

 一瞬こちらを見たフレッドは言葉を続けた。

 

「今度の大会にはリアが出る。優勝はこいつだ。今回の商品が目当てだと言ってたが、本当に欲しいなら次回まで待つんだな」

 

 挑発するように彼は言った。

 それに対して起こるでもなくシーミンは言った。

 

「それはどうかな?」

「なに?」

 

 純粋な疑問からの声色であるのは私にもわかった。

 それ故にフレッドは振り返る。

 

「リアちゃんの実力は分からないけど。NAちゃんも結構やるんだよ」

 

 少し落ち着いた声でシーミンが言い、フレッドは何も言わずに出口へ向かった。

 それにリアもついていくかに思われたとき、不意に私と目があった。

 

「さっきのが全力なら私には勝てない」

 

 彼女もどこかで気づいていたのだろう。

 先ほどの一瞬の邂逅。

 お互いに戦ったわけでもなく単なる衝突。

 ただ、それでも彼方は大した実力をこっちに感じていないようだった。

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