~ゲヘナ学園~
今、バージルはホシノ奪還の際に協力してくれた
トリニティのティーパーティーと、ゲヘナの風紀委員会へ礼ぐらいは伝えようと考え、
ゲヘナ学園に訪れていた。
ゲヘナを訪れるのは今回で二度目だが、前に来た時とは比べ物にならないほど荒れ果てていた。
道はボロボロに崩れ、穴ぼこが点在し、建物の壁には銃痕がびっしりと刻まれている。
そして今まさに、バージルの目の前で不良生徒たちが銃撃戦を繰り広げていた。
バージル「······」
そんなこととは関係なく、飛んでくる銃弾を避けながら、風紀委員会本部を目指して歩く。
道すがら、風紀委員会のメンバーが不良生徒たちを制圧している光景が目に入る。
その中にはツインテールに褐色の肌、見覚えのある生徒の姿があった。
バージル「あいつは」
イオリ「ん?」
こちらに気づいたイオリは、不良生徒を鎮圧すると、銃を肩に担いだままバージルの方へと歩み寄ってきた。
イオリ「よぉ、シャーレの先生。で、今回は何の用でゲヘナに来たんだ?」
バージル「カイザーの件でな。少し礼を言いに来ただけだ」
イオリ「ふぅん、そうか」
バージル「それにしても、前に来た時より騒がしいな」
イオリ「あぁ、風紀委員が留守にしてたのをいいことに、不良どもが暴れ出してな。
今日中に片付くかどうかは怪しいな」
バージル「なるほどな」
イオリ「委員長なら部室にいる。さっさと行ってこい」
バージル「そうさせてもらおう」
~ゲヘナ風紀委員会・本部内~
委員長室の前に立ち、扉を開ける
ヒナ「 ((チラッ)) 。え!? 先生!?」
バージル「······そんなに驚くことか?」
ヒナ「え、ええ、そうね。ところで先生がどうしてここに?」
バージル「カイザーの件で礼を言おう」
ヒナ「·····そう」
ヒナ「別に大したことじゃないわ。ただ先生が困っていたから手を貸しただけ」
バージル「とはいえ、このまま何もせずに帰るわけにはいかないから、何か手伝えることはないか」
ヒナ「そうね、ならこの仕事を手伝ってもらってもいいかしら」
と、山積みになった書類を指差した
バージル「いいだろう」
·········
······
···
数時間後
ヒナ「ここまでで大丈夫よ、先生」
バージル「······まだ書類が半分以上残っているが」
ヒナ「平気。残りは私たちで片づけられるわ」
バージル「そうか。ならば、ここでゲヘナを退くとしよう」
席を立って委員長室を出ようとするバージルだが、扉の前で足を止め──
バージル「·····何かあれば、連絡でもして来いほかの風紀委員にもそう伝えておいてくれ」
背を向けながら告げた
ヒナ「······ふふっ、そうさせてもらうわ」
~トリニティ総合学園~
ヒフミ「お久しぶりです、先生」
バージル「あぁ、そうだな」
バージル「まずは小鳥遊の救出に力を貸してくれたこと、助かった」
ヒフミ「い、いえっ、そんな、大したことはしていません。実際に動いてくださったのは、ティーパーティーの方々ですので」
ヒフミ「礼を言われるほどのことはしていませんよ」
バージル「······だが、阿慈谷が居なければ、生徒会は動かなかっただろう」
ヒフミ「そ、そう···でしょうか?」
バージル「······何はともあれ、困り事があれば頼りに来てくれ」
ヒフミ「じゃ、じゃあ何かあれば先生に相談しますね」
バージル「あぁ、さて、トリニティに来た理由はそれだけだ」
バージル「それじゃあな」
ヒフミ「はい、またどこかで」
~シャーレ間近~
今日のやるべきことを終え、シャーレへと戻る。
ホシノ奪還から今日までを振り返れば――
アビドス対策委員は無事、正式な委員会として認められたそうだ。
柴咲ラーメンも屋台として営業を再開している。
もっとも、アビドスの借金は九億残っているが
返済のため、対策委員はこれからも活動を続けるだろう。
便利屋から直接聞いた話では、依頼金を使い、まともな事務所を構えたらしい。
一方で解明すべきことがある。
あの人形兵器(ゴリアテ)から放たれていた魔力··········
バージル「·····はぁ。先生というのは、思っていた以上に骨の折れる役目だな。ん?」
再び視線がバージルの背に突き刺さる
バージル(この視線。黒服のものではないな)
バージル(いつまでも隠れて俺の動向を探るとは、気分のいいものではないな。誘い出すか)
そう考えたバージルは、暗い路地裏へと足を踏み入れた。
策が的中し、
視線の主が、彼の後を追うように裏路地へと姿を現すも、
そこにいるはずのバージルを見失った。
???「あら、一体どこへ?」
バージル「視線の主は貴様か」
???「!!」
いつの間にか視線の主の背後に立つバージル振り返った人物の容姿は、
狐の耳と尻尾を持ち、顔は狐の面で覆われている
???「あ、あわわわ、し、失礼いたしま──!」
逃げ出そうとした狐の仮面をかぶった少女の腕を掴み、その逃走を拒んだ。
バージル「貴様は、たしか“七囚人”と呼ばれていたな。こうして顔を合わせるのは二度目だな」
???「!?」
バージル「·····俺のことを探って、何が目的だ?」
???「あ、あの。ま、まずは、腕を、はなして、いただけますか?」
バージル「離せば、貴様は逃げるだろう」
???「あ、貴方様に誓って逃げたりはいたしません!」
バージル(·····貴方様?)
バージルは少女の腕を離すと、彼女は息を整え始める
???「ふぅ」
バージル「さて、放したわけだが、色々と聞かせてもらおうか」
???「はい、まずは自己紹介から」
と言った後、狐の少女は顔につけている仮面をはずす
ワカモ「私、狐坂ワカモと申します」
ワカモ「そして――貴方様のことを、ずっと見守らせていただいておりました」
バージル「·····俺がブラックマーケットで拉致されかけた時、余計な手助けをしたのも貴様だな?」
ワカモ「はい。貴方様が危険な目に遭われたゆえ、このワカモが手を下しました」
ワカモ「あのカイザーなる者どもが先生に敵意を向け、『殺す』などとほざいたときは。
この手で一片残らず鉄くずに変えてしまおうと、本気で思いましたが」
ワカモ「貴方様が前に出て、あの連中を二度も圧倒なさった時。
とても凛々しくて、思わず見惚れてしまいました/////」
バージル「·····ずいぶんと俺を慕っているような口ぶりだな」
ワカモ「はい! 私、貴方様を言葉では到底言い尽くせぬほどにお慕いしております!」
バージル「会ったばかりの相手、俺に情を抱く理由は何だ?」
ワカモ「·····一目惚れです」
バージル「??」
ワカモ「一目惚れなんです」
ワカモ「貴方様を一目見たその瞬間から·····この胸は貴方様のことでいっぱいになったのです」
バージル「·····そ、そうか」
これまで群れることなく孤独に生きてきた彼にとって、ワカモのように真っ直ぐ想いをぶつけてくる存在は初めてだった。
普段は冷静な彼の顔に、珍しく狼狽の色が差す
バージル「·····とりあえず、俺をどう思おうが勝手だが、物陰に隠れ付け回す真似はやめろ」
バージル「遠くからじろじろと視線を向けられるのは、好まん」
ワカモ「で、でしたら!
逆に、これからはこのワカモを、常日頃貴方様のおそばに置いていただけませんでしょうか!」
バージル「··········ダメだ」
ワカモ「·····」((シュン))
バージルから拒否されワカモの耳と尻尾が垂れる
バージル「··········((はぁ)) 。まぁ、常日頃は駄目だが、少しくらいなら構わん」
ワカモ「!·····本当ですか!」
バージル「ただし、条件がある」
ワカモ「条件。とは何でしょうか?」
バージル「騒動を起こさんこと、それが条件──」
ワカモ「はい! 貴方様に誓って、決してしません」
バージル「·····ならいい」
ワカモ「それでは、今日一日、貴方様のお傍にいてもよろしいでしょうか?」
バージル「·····自由にしろ」
バージル「もっとも、今日中に急ぎの用もない。シャーレで静かに過ごすだけだが──」
バージル「貴様には退屈な時間になるだろうな」
ワカモ「貴方様と二人きりで共にできれば、それだけで、何よりも幸せです」
バージル「·····」
[対策委員会編 第2章 後日談 end]
以上、作者が今回描きたかったことでした。(要するにワカモを登場させたかっただけです)
次回からはいよいよ新たな章に突入します。
あわせて、設定資料的なものを投稿しようと思います。