悪魔と青春の記録   作:黒凪カズキ

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mission14 ~ミレニアムプライス~

一週間後――ミレニアムプライスの締め切りが、数分前に終わった頃

 

バージル「邪魔するぞ」

 

部室に入ると、アリスを除いたメンバー全員が床に突っ伏していた。

 

モモイ「あ、先生。いらっしゃい」

 

バージル「……間に合ったか?」

 

モモイ「うん。ついさっきね。結構ギリギリだったけど、なんとか間に合ったよ」

 

ユズ「心臓止まるかと思いました」

 

ミドリ「あとは三日後の発表をまつだけ」

 

アリス「……ドキドキします」

 

モモイ「うぅっ!期待と不安で、心臓が爆発しそう。この数日間絶対にまともに寝れないよ」

 

モモイの発言の直後、壁を突き破って弾丸が貫き通る

 

ユズ「ひゃっ!?」

 

ミドリ「これは!この砲撃は46mm砲……カリン先輩の!」

 

アリス「遠距離攻撃を確認、部室正面に対して11時の方角!距離、約1km…!」

 

モモイ「まさか、前回の仕返し!?」

 

ユズ「もしかして『鏡』の件の報復……!?」

 

モモイ「と、とりあえず一旦出よう」

 

~ミレニアム・廊下~

 

モモイ「はぁ、はぁ……逃げきれた?」

 

バージル「いや、どうやら誘い出されたようだな」

 

モモイ「え?それってどういう?」

 

???「勘がいいな」

 

前から140cm後半程度のスカジャンを着た生徒が歩いてきた

 

モモイ「ね、ネル先輩!!」

 

バージル(·····空崎ヒナと言い、各学園で名を成すほどの実力者は、皆"ちび"なのか?)

 

ネル「で、あんたが先生か、アカネとカリンで手に負えない程の実力――噂は大げさじゃなかったみてぇだな」

 

バージル「なんだ? 雪辱を果たしに来たのか?」

 

ネル「はっ!そんなくだらない理由で来るわけねぇだろうが」

「まず最初に用があるのは、そっちのバカみたいにデケぇ武器持ってるあんた」

 

それが自分に向けられたものだと分からず、アリスはきょろきょろと周囲を見渡す

 

ネル「あんだだよ、あんた!」

 

アリス「アリスのことですか?」

 

ネル「そうだ、てめぇに用がある」

C&C(アスナ)に、一発食らわせてくれたらしいじゃねえか?」

 

アリス「!、アリス、このパターンは知っています」

「『私にあんなことをしたのは、あなたが始めてよ……っ』」

「告白イベントですね。ちびメイド様はアリスに惚れていると。スチル獲得です」

 

ネル「なっ……、だ、誰がちびメイド様だ!?ふざけんな、ぶっ殺されてぇのか!?」

 

アリス「ひっ……!」

 

モモイ「こ、怖っ!!」

 

バージル(………事実だろう)

 

ネルは深く息を吐く

 

ネル「はぁ……なかなかイラつかせてくれるじゃねぇか、まあ良い」

「誤解してるかもしれねぇから一応言っとくが、別に復習ってわけじゃねぇ」

「しいて言うなら、興味か」

 

モモイ「興味……?」

 

ネル「確認、って言った方がいいかもしれねぇが……まぁいい、ちょっくら相手してもらおうか」

 

アリス「分かりました」

 

ネル「お、やる気満々と来たか」

 

アリス「一騎打ちのイベント戦闘……みたいなものですね、理解しました」

 

ネル「イベ……なんつった?」

 

アリス「行きます、魔力充電100%……!」

 

ネル「ちっ、これは!」

 

アリス「光よ!!」

 

光の剣から、とてつもない威力のエネルギー弾が放たれた。

ネルの背後で様子を見ていた他のC&Cのメンバーはその威力を改めて目にし、息を呑んでいた。

煙が舞いネルの状況が判断できない。

 

アリス「……やったか?」

 

ミドリ「アリスちゃん!そのセリフは無闇に言っちゃダメ!」

 

アリス「あ、ネル先輩は3年生でした。言い直します」

「や、やっつけられましたか……?」

 

ミドリ「いや、敬語の問題じゃなくて……!」

 

バージル「油断するな。まだだ」

 

煙の中から、アリスに向けて銃弾が放たれる

 

アリス「うぁっ!?」

 

ネル「確かに、並大抵の火力じゃねぇが…ただ、それだけだ」

 

煙から無傷でネルが姿を現す。

 

アリス「も、もう一度、魔力を充電……!」

 

ネル「遅ぇよ」

 

一気にアリスとの距離を詰め、ネルは両手のサブマシンガンを乱射する。

 

ネル「てめぇの武器は確かに強い。だが引き金を引いた後、発射まで最低でもコンマ数秒はかかる」

「その上、その強すぎる火力のせいで、相手にある程度の距離まで入られたら撃てねぇ」

「爆圧に、てめぇまで巻き込まれるからな」

「そしてこの間合いであたしに勝てる奴なんざ、キヴォトス全体でそう多くは、いや一人もいねぇ」

 

ネルの慌ただしい攻撃を前に、アリスはスーパーノヴァを盾代わりに構え、防戦一方に追い込まれていた

 

ネル「思った以上にがっかりだな。この程度で、あいつがやられたとは……」

 

ネルがリロードを始めたのを見て、アリスはすぐさまスーパーノヴァを持ち替え、勢いよく振り回した。

近距離にいたネルに直撃するが、ネルはうまく受け流して防いだ。

 

ネル「はっ、近接戦としては悪くねぇ判断……けどな」

 

ネル「いまだにあたしの方が圧倒的に有利だ。てめぇは撃とうにも、照準を合わせられねぇ」

 

アリス「……照準は、必要ありません。行きます!」

 

ネル「……ん? おい、まさか、てめぇ──!?」

 

アリスの意図を察したネルは、咄嗟に距離を取る

だが、遅かった

 

アリス「光よ!!」

 

スーパーノヴァの銃口が床を向き、轟音とともにエネルギー弾が放たれた。

立ち上る煙とともに地面が崩れ落ちる。

 

ミドリ「アリスちゃん!うっ、煙で視界が……!」

 

モモイ「床崩れて…見つけた、アリス!」

 

アリス「に、肉体損傷48%…後退を望みます!」

 

バージル「………」

 

崩れた床から降りると、バージルはスーパーノヴァを背負い、アリスを抱え上げると、すぐさま、モモイたちのもとへ戻る。

 

バージル「かなりの負傷だな。まずは手当てが先だな」

 

モモイ「そ、そうだね、保健室はこっち、ついてきて!」

 

モモイの後を追いながら、近くの保健室へと向かう。

幸い、C&Cが追ってくることはなかった。

 

その後、アリスを保健室に預け、治療を受けさせる。数日後には、彼女の傷もすっかり完治したという。

 

~ミレニアム・ゲーム開発部~

 

モモイ「ねえねえアリス、見て見て~、メイド服ー!」

 

アリス「ひぃっ!」

 

モモイ「あはは、良い反応!」

 

ミドリ「何してるの、アリスちゃんが完全に怯え切ってるじゃん!」

 

アリス「あ、アリス、しばらくメイド服は見たくありません!」

 

ミドリ「身体の方は直ったみたいだけど、心の方はもうちょっとかかりそうだね」

 

ユズ「あの、建物を壊しちゃった件について、生徒会のところに言ってきたんだけど……幸いなことに、部活動中の『事故』として処理してもらえたよ」

 

モモイ「嘘っ、どうやったの?」

 

ユズ「……C&Cが処理してくれたみたい」

「それと…ネル先輩から伝言『また会おう』……って」

 

アリス「ひぃっ!?」

 

ミドリ「ああっ、アリスちゃん!ロッカーの中に入っちゃダメ!」

 

バージル「はぁ。そんなことより、もっと重要な話があるだろう?」

 

ユズ「……はい、ミレニアムプライス、始まりました」

 

モモイ「もし受賞したらクラッカー鳴らそっか。でも、もしそうじゃなかったら…」

 

ミドリ「…すぐに、荷造りしないとね」

「私たちはさておき、ユズちゃんとアリスちゃんは……」

 

それから、ゲーム開発部の間に沈黙が流れる。

やがて、ミレニアムプライス授賞式の開催時刻となり真剣にテレビで見守っていた。

 

コトリ『これより、ミレニアムプライスを始めます!司会及び担当するのは私、コトリです!』

 

ミドリ「……コトリちゃんたちの方も、無事だったみたいだね」

 

ユズ「エンジニア部は元々、ミレニアムの中でもかなり功績が認められてる部活なこともあったし…でも、本当に良かった」

 

コトリ『今回出品された三桁の応募作品のうち、栄光の座を手にするのは、たったの7作品』

 

7位から2位まで、ゲーム開発部の作品は呼ばれなかった。

そして、いよいよ一位の発表が迫る。

 

コトリ『最後に!今回のミレニアムプライスで、最高の栄誉を受賞した作品です!』

 

アリス「ドキドキ……」

 

コトリ『その1位は……!』

 

『CMの後で!』

 

アリス「……」

 

いきなり立ち上がったアリスが、スーパーノヴァをテレビに向けて突きつける。

 

アリス「充電完了、いつでも撃てます!」

 

ミドリ「気持ちは分かる!分かるけど、撃っちゃダメ…!」

 

モモイ「うぅ、もう焦らさないでほしい…」

 

・・・・・

 

コトリ『さあ!それでは発表します!』

 

『待望の1位は……新素材開発部──』

 

別の部活名が呼ばれた瞬間、モモイはテレビに向けて銃を乱射し始めた。

 

ミドリ「きゃぁっ!、本当に撃ってどうするの!?」

 

モモイ「どうせ全部持って行かれちゃうんだし、もう関係ない!」

「うえぇぇん!今度こそ終わりだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ユズ「うぅ……結局、こうなっちゃうなんて」

 

ミドリ「落ち着いて、お姉ちゃん。でも──」

 

モモイ「……分かってるよ!ネットの評判も悪くなかったし、クソゲーランキング1位から、確実に成長した」

「次こそはもっと良い結果を出して、今より立派な大きい部室だってもらえるはず!」

 

ミドリ「うん……だって、ここを追い出されたら、ユズちゃんとアリスちゃんは…」

 

ユズ「……心配しないで、ミドリ」

「わたし、寮に戻る」

 

ミドリ「えっ」

 

ユズ「もう私のことを、クソゲー開発者って呼ぶ人はいないと思う。もし仮にいたとしても、大丈夫」

「今のわたしには…この三人と、先生がいるから」

「ただ、アリスちゃんは……」

 

アリス「……」

 

バージル「…身を寄せる場所がないのなら、シャーレに来るか?」

 

アリス「良いのですか?」

 

バージル「好きにしろ。ただ、放っておくのも……後味が悪いからな」

 

ミドリ「……アリスちゃん、ごめんね」

 

アリス「…大丈夫です、先生のことは、信じられますから」 

「ですが、もう…みんなとは一緒に、いられないんですね」

 

ミドリ「うっ、ごめんね……ごめんね、アリスちゃん!」

「私、毎日シャーレに行くから!」

「どこに行っても!一緒にゲームを作ろう!」

 

モモイ「うぅ……やっぱり嫌!」

 

バージル「なら、居場所はどうするつもりだ?」

 

モモイ「私の部屋に連れていく!ベッドも一緒に使おう!ごはんも二人で分けて食べる!」

 

ミドリ「わ、私の分もあげるっ!」

 

ユズ「で、でも、もしそのことがばれたら、モモイも、ミドリも……」

 

その時、扉が開きユウカが部室に入ってきた

 

ユウカ「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!」

 

モモイ「ひいっ!もうユウカが!」

 

ミドリ「ちょ、ちょっと待って!そんなすぐになんて……!」

 

ユウカ「おめでとうっ!」

 

ユウカの言葉にその場の全員が困惑した

 

ユウカ「……え、名にこの反応?」

「結果、見てなかったの?」

 

モモイ「……結果?」

 

ミドリ「私たち、7位以内に入れなくて……」

 

ユウカ「はぁ?」

「何を言ってるの、今も放送中なんだからちゃんと見てなさいよ」

 

ミドリ「お姉ちゃんがテレビを吹っ飛ばしちゃって……」

 

ユウカ「ほんとに何をしてるのよ…ほら、見て。私もスマホで見てて、途中から走ってきたの」

 

そう言って、ユウカはスマホの画面を差し出した。

 

審査員『ミレニアムプライスはこれまで、生徒たちの才能と能力で作られた作品に対し、「実用性」を特に捉えて受賞を行ってきました。これはより良い未来を求め、実現していくという趣旨に基づいています』

 

『しかし今回の作品の中には、新しい角度から「実用性」を感じさせてくれたものがありました。とある『ゲーム』が実際に、懐かしい過去をありありと思い出させ、未来への可能性を感じさせてくれたのです』

 

『よって私たちはこの度、異例の選択をすることにしました』

『今回は「特別賞」を設けます、その受賞作品は……ゲーム開発部の「テイルズ・サガ・クロニクル2」です』

 

モモイ「えぇ、嘘っ!?」

 

審査員『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識に縛られず次々と想像を超えていく展開、一見してそれらとマッチしそうにない不思議な世界観、と、最初は困惑の連続でしたが…』

『新しい世界を旅して、ひとつひとつ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く……』

『そういったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います』

 

審査員『プレイしながら、かつて始めてゲームに夢中になった頃の思い出を、鮮明に思い出しました。そういった点を評価して、この作品に…今回、ミレニアムプライス「特別賞」を授与します』

 

ミドリ「え…」

 

ユウカ「本当におめでとう!実は私もプレイしてみたの。決して手放しに面白かったとは言えないけれど……良いゲームを選んだ後の、あの独特な感覚が味わえた」

 

ミドリ「ほ、ほんとに……?」

 

アリス「確認しました」

「3時間前にアップした『テイルズ・サガ・クロニクル2』は、先ほどまでダウンロード7705回、合計1372個のコメントが付いていましたが……」

「ミレニアムプライスの発表以降、約26秒間でダウンロード回数が1万を超えました」

「コメントも約500個追加、言葉のニュアンスからして否定的・疑惑のコメントが242個、肯定的・期待のコメントが191個、残りは不明、もしくは評価を保留しているコメントです」

 

ミドリ「え、あれ?そしたら私たち、結局ダメってこ!?」

 

ユズ「ううん、そんなことは無い」

 

ミドリ「ユズちゃん……?」

 

ユズ「見て。今同率で、一番多く共感をもらってる、二つのベストコメント……」

 

『実際にプレイするかどうか、最初は散々迷いました…でも今はこう思ってます、このゲームに出会えて、よかったです』

 

『これまでミレニアムに対して、偏見を持ってしまっていました』

『冷静さと合理的しかないというミレニアムの生徒たちへの偏見は、今回のミレニアムプライスと、この「テイルズ・サガ・クロニクル2」を通じて、完全になくなったと断言できます』

 

モモイ「えっと…っていうことは、廃部にはならないんだよね?」

 

ユウカ「ええ、そうよ。あ、でもあくまで『臨時の猶予』だから。正式な受賞ではないし、生徒会としてはまた来学期まで……ゲーム開発部の部室の没収および廃部を、『保留』することにしたの」

「えっと、それから…ごめんなさい。ここにあるゲーム機のこと、ガラクタって言って……」

「あなたたちのおかげで思い出したわ。小さい頃に遊んでた、色んなゲームのことを、久しぶりにあの頃の…新しい世界で旅をする楽しさを感じられたわ」

「……ありがとう。それじゃあ、部室の延長申請とか部費の受け取り処理とかは必要だから落ち着いたら生徒会に来てね、じゃ、また後で」

 

ミドリ「じゃ、じゃあ……!」

 

バージル「……努力は、報われたようだな」

 

モモイ「や、やったああぁぁっ!」

 

ミドリ「良かった……!」

 

ユズ「う、嬉しい…!」

 

アリス「え、えっと…?」

 

ゲーム開発部が歓喜に包まれる中、アリスだけはまだ状況を理解しきれず、きょとんとした表情を浮かべていた。

 

ミドリ「アリスちゃん!私たち、特別賞を受賞したんだよ!この場所も、私たちの部室のまま!」

 

アリス「えっと、つ、つまり……」

「アリスはこれからも…みんなと一緒にいて、良いのですか……?」

 

モモイ「うんっ!」

 

ユズ「これからも、よろしくね…!」

 

アリス「……はい!これからも、よろしくお願いします!」




Q.今章のバージル、目立った活躍もなく、ほとんど空気なような?
A.そこは····できれば目をつぶってください
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