補習授業部のメンバー同士で簡単な自己紹介を済ませ、ヒフミが部の目的についての説明を終える
ヒフミ「えっと、そういうことですので・・・何かわからない点とか気になる点がありましたら」
アズサ「大丈夫。これからは普通の授業に加えて、毎日放課後に特殊訓練があるってだけでしょ」
ヒフミ「えっと、訓練と言っていいのか分かりませんが、そうです。私たちが目指すのは、これから行われる特別学力試験で、『全員同時に合格する』こと」
ヒフミ「先生も協力してくれますし、みんなで頑張って落第を免れましょう」
ヒフミ「それで、先生には主にスケジュール調整や勉強の補佐などを行っていただければと」
バージルは軽くうなずく
ヒフミ「今回、特別学力試験は第三次まで、つまり三回あるようですが・・・・そのうち一度でも全員同時に合格すれば、そこで補習授業も終わりとのことです」
アズサ「うん、理解した。3回のミッションのうち、一度でも良いから全員で成功を収める。そのために、ここに毎日集まって訓練を重ねる・・・・それほど難しい任務じゃない」
アズサ「各自、リタイアを防ぐための措置・・・・私としてはサボタージュする気も理由もない」
ヒフミ「そ、そうですね、頑張りましょう!えっと、アズサちゃんは、転校してからあまり時間も経ってないんですよね?」
ヒフミ「まだこの学園に慣れてなかったせいもあるでしょうし、みんなで頑張ればすぐに何とかなると思います!」
ハナコ「あら?白洲さんはこちらに転校されて来たのですか?」
ハナコ「珍しいですね・・・?」
アズサ「・・・・・」
ヒフミ「あ、書類上はそう書いてあって・・・も、もしかして私、余計なことを・・・?」
アズサ「いや、別に隠すことじゃないから気にしないで良い。れっきとした事実だ」
アズサ「こういわれるのは慣れるべきことだし、そのための努力もする」
ハナコ「なるほど・・・・それでは私も、アズサちゃんって呼んでもいいですか?」
アズサ「・・・・?別に良いけど?」
ハナコ「では、アズサちゃん。ヒフミちゃん。それからコハルちゃん。うふふふ、何だか良い響きですね。私たちはこれから補習授業部の仲間ということで」
ハナコ「・・・あら、そんな憎悪に満ちた目で、どうしたんですかコハルちゃん?」
コハル「言っておくけど、私は認めないから・・・・!」
コハル「わ、私は、正義実行委員会のエリートだし!」
コハル「私の方が年下だからって、あんたたちを先輩だなんてよぶつもりは無いから!あんまり馴れ馴れしくしないでもらえる!?」
ハナコ「なるほど・・・・確かに補習授業部の中でまで、先輩後輩なんて扱いする必要は無いと思います。私としては何も問題ありません」
アズサ「私も別に。そもそもそういう文化は不慣れだし」
アズサ「そもそも仲良くするために集まってる会じゃない。あくまでお互いの利益のためなんだから、親しいふりをする必要もないはず。違う?」
ヒフミ「あ、あうぅ・・・・」
コハル「じゃあ決まり!それに、そもそもの話なんだけど・・・」
コハル「私が試験に落ちたのはあくまで・・・・飛び級のために、一つ上の2年生用のテストを受けたせいだから!」
ハナコ「あら、飛び級?どうしてそんなことを・・・?」
コハル「ど、どうしても何も・・・!私はこれから、正義実行委員会を背負う立場になるわけだし・・・・!」
ハナコ「でも、それで落第してしまったんですよね?一度試しにチャレンジするということであれば理解できますが、なぜそれを何度も・・・・?」
コハル「う、うるさいうるさい!私が言いたいのはそういうことじゃなくて!」
コハル「つまり私は今まで、本当の力を隠してたってこと!!」
コハル「今度のテストはちゃんと、1年生用のテストを受けるから!そうすればちゃんと優秀な成績を収めてはい終わりってわけ。分かる?」
コハル「それで、すぐにこんな補習授業部なんて辞めてやるんだから!」
ヒフミ「えっと、個人で優秀な成績を出したとしても、それでこの部を卒業できるわけではなくって・・・・」
アズサ「なるほど、経歴を隠してたわけか。ちなみに私も今は、前のところとの学習進度の違いが大きかったから、1年生の試験を受けてる」
コハル「あ、じゃあ同じ・・・・い、いや!どうせすぐに関係無くなるけど!」
コハル「それに、短い付き合いで残念だったけど、あんたたちはそういう感じじゃないみたいだし?あははっ」
コハル「じゃあね、精々頑張って!」
コハルはほとんどヒフミの話を耳に入れず、そのまま出て行った
ヒフミ「あ、あの・・・・!い、行ってしまいました・・・・・」
バージル「・・・・自分の力を過信していなければいいがな」
その後、第一次特別学力試験に向けて、それぞれが協力し合い勉強を進めていった
アズサ「ハナコ、この問題はどう解けば良い?」
ハナコ「どれですか? なるほど、こういう時はですね、倍数判定法を用いて・・・」
アズサ「うん・・・・なるほど、理解した」
コハル「・・・・?」
ハナコ「えっと、コハルちゃん?何か分からない問題でもありましたか?」
コハル「いっ、いやっ!別に!?」
ハナコ「ちなみに今見てるそのページは、今回のテスト範囲ではありませんよ」
コハル「えっ、うそっ!?」
コハル「やっ、ちが・・・・っ!し、知ってるし!今回の範囲は余裕だから、先のところを予習してただけ!」
アズサ「ハナコ、これは・・・」
ハナコ「これは古代語を重訳したものですね。原文を理解するには辞書がないと・・・・ちょっと待っていてくださいね」
アズサ「ああ、なるほど。なら、これはおそらく「Gaudium et spes」・・・・・喜びと希望か」
ハナコ「えっと・・・・・はい、そうみたいですね。これは第二回における・・・・いえそれよりも、アズサちゃんは古代が読めるんですね?」
アズサ「ああ、昔習った」
補習授業部の3人が積極的に勉強に取り組む様子を、バージルとヒフミは静かに見守っていた
バージル「順調そのものだな。」
バージル「・・・・ただ一人は不安だが」
バージルは小さく呟いた
ヒフミ「? あ、はい!ハナコちゃんがなんだかとってもすごくて。それにアズサちゃんも学習意欲たっぷりです」
ヒフミ「コハルちゃんは実力を隠していたそうですし・・・・」
バージル「・・・・・」
ヒフミ「これならもしかして、余裕で合格できてしまうかもしれません!」
ヒフミ「・・・・・実はすっごく心配してたんです」
ヒフミ「実は、「もし一次試験で不合格者が出てしまったら、合宿をしてください」とティーパーティーから言われてまして・・・・」
バージル「合宿?」
ヒフミ「はい、それに、もし三次試験まで全て落ちてしまったら・・・・・」
バージル「何かあるのか?」
ヒフミ「い、いえ、気にする必要は無いと思います!きっと心配しすぎで済みますし、暗い話はこの辺にして・・・・」
ヒフミ「とにかく、試験は問題無さそうです!」
ヒフミ「ハナコちゃんはどうやらすごく勉強ができる感じなのですが、どうして落第してしまったのでしょう?何か事情があったんでしょうか?」
バージル「さぁな。それより、周りの心配ばかりしていないで、自分のことに集中したらどうだ?
成績が悪くないからといって、他人ばかり気にして自分を疎かにするなよ」
ヒフミ「そ、そうですね・・・・! 私も皆さんの足を引っ張らないように頑張らないとですね!」
あれから、放課後になると毎日のように補習授業が行われ、
ついに第一次特別学力試験の当日を迎え――そして無事に終わった
後で試験の難易度についてヒフミに尋ねたところ、
『大した問題ではなく基礎レベルの問題』とのことだ。
それなら極端に悪い結果にはならないだろう。
多少の誤答で合格ラインを外す可能性はあるが・・・・
数日後――
第一次試験の結果が届けられた。
ヒフミ「み、みなさんお疲れさまでした・・・・!」
ヒフミ「えっと、100点満点で60点以上でしたら合格だそうです!高得点は取れなくても、取り合えずそのラインだけ超えられれば大丈夫です」
ヒフミ「それに内容も結構簡単でしたし・・・・では、結果発表と行きましょう!」
阿慈谷ヒフミ:72点。結果──合格
ヒフミ「何だか無難な点数ですが、良かったです!」
白洲アズサ:32点。結果──不合格
ヒフミ「・・・・はいぃっ!?」
アズサ「ちっ、紙一重だったか」
ヒフミ「ま、待ってください!『紙一重』っていう点数じゃないですよ!?結構足りてないですよ!?」
下江コハル:11点。結果──不合格
コハル「!?」
ヒフミ「コハルちゃんんんんっ!?ち、力を隠してたんじゃないんですか!?今回はちゃんと1年生用の試験を受けたんですよね!?ま、まさかまた2年生用の・・・・いえその点数、3年生用の試験を受けたんですか!?」
コハル「やっ、その・・・・!か、かなり難しかったし・・・・」
ヒフミ「すっごく簡単でしたよ!?小テストみたいなレベルでしたよ!?」
ハナコ「あらあら・・・」
ヒフミ「うぅ・・・合格したのは私とハナコちゃんだけ、ということでしょうか、となると次の、二次試験を受けないと・・・」
浦和ハナコ:2点。結果──不合格
ヒフミ「2点!!?!?!?!?2てんですぁ!?20点ではなく」
ヒフミ「いえ、20点でもダメなのですが・・・・!むしろ何が正解だったんですか!?と言いますか待ってください、ハナコちゃんものすごく勉強ができる感じでしたよね!?」
ハナコ「確かに私、そういう雰囲気あるみたいですね。まあ成績は別なのですが」
ヒフミ「雰囲気!?成績とは別ってどういうことですかっ!?」
バージル「今回、ほとんど勉学に関わっていない俺が言うのも何だが、本当に基礎レベルの問題だったのか?」
ヒフミ「え、えっと・・・・はい。私は、ですけど・・・・そう感じました」
問題用紙を受け取ったバージルは、国語と英語の設問に目を走らせる。
ざっと読み流した限りでは──少なくともこの二教科に関しては、特に苦労するような内容ではなかった。
とはいえ、合格点の半分すら満たない生徒が二名──そのうち一名は、どう考えてもわざとだと思われるが
バージル「・・・・これは、対策を練らねばならんな」
第1次特別学力試験、結果——
ハナコ——不合格
アズサ——不合格
コハル——不合格
ヒフミ——合格
補習授業部の合宿 決定
・・・・・・
その夜。バージルはナギサに呼び出され、テラスに足を運ぶ
ナギサ「あら、先生、お疲れ様です」
ナギサ「補習授業部の方はいかがですか?・・・と言いつつ、すでに話は聞いております。どうやら最初の試験は、上手くいかなかったようですね」
バージル「・・・・生徒に任せきりにした俺に、非があることだ」
ナギサ「まぁ、ですが、あと2回残っていますので」
バージルはナギサの手元に置かれたチェス盤へと視線を落とす
ナギサ「あら、どうかしました」
バージル「いや・・・・別に。ただ、ずいぶんと変わった配置のチェスだと思っただけだ」
ナギサ「ふふ、見慣れないタイプですよね」
ナギサ「黒はキングとクイーン、後は全てポーン」
ナギサ「白はキング、ルーク、ビショップ、ナイトがそれぞれ3~4こずつ」
バージルは、『ゲームとして成立するのか?』と内心で疑問を抱く
ナギサ「それよりも先生の方からお聞きしたいことがあって来られたように見受けられますね」
バージル「あぁ疑問なのだが。不合格を三度取った場合、補習授業部はどうなる?」
ナギサ「その話の出処は・・・・ヒフミさんですかね」
ナギサ「彼女は、そういうところがありますからね。まあそれが、ヒフミさんの良い所でもあるのですが・・・・」
ナギサ「さて、質問にお答えしますと、簡単なお話です。試験で不合格を繰り返す、落第を逃れられそうにない、助け合うこともできない・・・・だとすればみなさん一緒に、退学していただくしかありません」
バージル「・・・・愛がどうのと言っていた割には、冷酷な判断だな」
ナギサ「先生、何か誤解をしているようですね」
バージル「というと?」
ナギサ「そもそも、補習授業部は・・・・」
ナギサ「生徒を退学させるために、作ったものですから」
バージル「・・・・それはなぜだ?」
ナギサ「・・・・あの中に、トリニティの裏切り者がいるからです」
バージル「裏切り者?」
ナギサ「その裏切り者の狙いは、エデン条約締結の阻止」
ナギサ「この言葉が持つ重さを理解していただくには・・・・「エデン条約」とは何か、という説明が必要ですね」
ナギサ「エデン条約・・・・簡単に言いますと、トリニティとゲヘナの間に結ばれる不可侵条約です」
ナギサ「『エデン条約機構』、『ETO』と呼ばれるであろうこの団体が、トリニティとゲヘナの間で紛争が起きた時に介入し、その紛争を解決することになります」
ナギサ「これにより、二つの学園の間で全面戦争が起きることはなくなります。誰かが踏み込めば、両陣営が仲良く共倒れしてしまうことになりますので」
ナギサ「トリニティとゲヘナの長きにわたる敵対関係は、お互いに大きな重荷になっています」
ナギサ「エデン条約はその無意味名消耗を防ぐための、恐らくは唯一の方法であり、キヴォトスにおける力のバランスを保つための方法であります」
ナギサ「これは、連邦生徒会長が提示した解決策でもありました。彼女が行方不明になってしまい、一度は空中分離しかけたものを、私の元でどうにかここまで立て直したのです」
ナギサ「そしてこの念願の条約が締結される直前まで来た、このタイミングで・・・・これを妨害しようとする者たちがいるという情報を耳にしてしまいました」
ナギサ「まだ、それが誰なのかは分かりません。特定には至りませんでした。そこで、次善の策として・・・・その可能性がある容疑者を一か所に集めたのです」
バージル「可能性・・・・。本当にその中に居るのか?」
ナギサ「確信は・・・・できませんが、裏切り者はそこにいます。ですが、誰なのか分かりません」
ナギサ「であれば、一つの箱にまとめてしまいましょう・・・・いざという時、まとめて捨ててしまいやすいように」
ナギサ「それが『補習授業部』です。先生には、その『箱』の制作ご協力いただきました」
ナギサ「申し訳ないとは思っているのです。こんな、血生臭いことに巻き込んでしまった事を、私のことは、罵っていただいても構いません」
バージル「実際のところ・・・・俺を本気で利用するつもりなら、今ここで自白などしなかっただろう?」
ナギサ「はい、仰る通りです。こうなったらお話は早いですね」
ナギサ「先生を、トリニティを騙そうとしているものがいます」
ナギサ「平和を破壊しようとするテロリストです。私たちだけではなく、キヴォトス全体の平和を、自分たちの利益と天秤にかけようとしているのです」
ナギサ「裏切り者を探し出すことが、キヴォトスの平和に直結します。いかがでしょう、連邦捜査部シャーレとしてご理解いただけますと幸いなのですが──」
バージル「・・・・悪いが──あくまで俺のやり方でやらせてもらう」
ナギサ「・・・・そうですか。分かりました」
ナギサ「ですが、先生。ごみを細かく選別して捨てるのが難しいときは、箱ごと捨てるというのも手段の一つ・・・・そうは思いませんか」
バージル「思わないな」
ナギサ「なるほど、先生は意外にも筋を通す方なのですね」
バージル「・・・・・」
ナギサ「それともう一つ、試験については基本的に私たちの手のひらの上にあります」
ナギサ「例えば『急に試験の範囲が変わる』、『試験会場が変わる』とか、『難易度が変わるとか』・・・・」
ナギサ「そういったことが起きないことを祈っていますが・・・・」
ナギサ「失礼しました、良くない物の言い方でしたね。私たちの方から、先生に対して不利益や損害を与えることはありません・・・・と、言いたいところなのですが」
バージル「そうとも限らないと?」
ナギサ「えぇ、そうですね、お約束しかねます」
ナギサ「ですが、どうかこの結末が、できるだけ、苦痛を伴わないものであることを願うだけです」
ナギサ「先生のやり方が、トリニティに利するものであることを願っていますね」
ナギサの言葉を背に、バージルはその場を後にする
バージルって国語と英語は教えられる知識を持ち合わせてそう、
社会(キヴォトス内の歴史や地理とか?)は置いとき
数学と科学は生まれた環境が故に知識がないだけで、本人の学習能力が高いから勉強すれば短期間で生徒に教えられる程には習得しそう
あくまで私の中のイメージですが・・・・・