mission19~深夜の密会~
~合宿所・教室~
ヒフミ「あ、先生!一体どちらにいらしていたのですか?」
バージル「・・・・散歩だ」
ヒフミ「そ、そうですか、ところで見てください!こちら、ちょうど先ほど受けた模試の結果です!」
第2次補習授業部模試、結果──
ハナコ─8点
アズサ─58点
コハル─49点
ヒフミ─64点
バージル「・・・・前回よりは上がっているな」
アズサ「紙一重の差だった」
ヒフミ「はい!今回は本当に紙一重でした!アズサちゃん、すっごく惜しかったです・・・・!」
コハル「み、見た!?ヒフミ、私も結構上がったよ!?」
ヒフミ「はい、しかと見ました!コハルちゃん、前回は15点だったのに急に49点まで・・・・伸びしろでは一番です、すごいです」
コハル「ふっ、ふふーん!言ったじゃない、本当の実力は隠してたんだって」
ヒフミ「素晴らしいです・・・・!」
ヒフミ「そして、えっと・・・・は、ハナコちゃんは・・・・」
ハナコ「あら?ヒフミちゃん、どうしてそんなに声量が下がってしまうのですか?」
ハナコ「最初の試験が2点、次の模試が4点、今回は8点ですよ?」
ハナコ「これは数列として考えたら、あと3回受ければきっと合格圏内に届くはずです♪」
ヒフミ「そ、そう考えたらそうかもしれませんが・・・・」
バージル「結果として伸びている。それで十分だろ」
ヒフミ「そうですね、この調子でしたら、思ったより早く目標に届くかもしれません・・・・!」
アズサ「必ずや任務を成功させて、あの可愛いやつを受け取って見せる。それが、私がここにいる理由であり戦う目的だ」
ヒフミ「あ、アズサちゃん!?私たちがここにいる理由は試験と勉強であって、目的は落第を免れることですよ!?いつの間にか変わって・・・・!?」
アズサ「そんなこともあったな、ついでにそれもやっておこう」
ヒフミ「「ついで」!?ついでなんですか!?あうぅ・・・・も、モモフレンズファンとしては嬉しくもあるのですが・・・・」
そのとき玄関から呼び鈴が鳴る
ヒフミ「・・・・?」
ハナコ「あら、どなたかいらっしゃったみたいですね?」
ヒフミ「そうですね・・・・この合宿所に、どんな用事で──」
アズサ「侵入者か。大丈夫、準備できてる」
ヒフミ「アズサちゃん、準備って・・・・?」
そのとき、大きな爆発音と振動が合宿所中に響いた
アズサ「ブービートラップ。誰かの侵入を感知したら起動するようにしてある」
ヒフミ「アズサちゃん!?」
そのあと、連続して振動と音が響く
アズサ「逃げても無駄だ。逃走経路を予測して、その先にもちゃんと仕掛けてある」
ヒフミ「アズサちゃんっっ!!?!?」
バージル「・・・・過剰だな」
バージルは小さくつぶやいた
その後、ヒフミは慌てた様子で、爆発が発生した合宿所の入口へと駆けていった。
ほどなくして、ヒフミは一人の生徒を連れて教室へと戻ってきた
マリー「・・・・ふぅ。びっくりしました、入った途端に何かが作動して」
彼女は伊落マリーと名乗った。シスターフッドに所属している生徒らしい
ヒフミ「アズサちゃん・・・・」
ヒフミは、アズサにマリーへ謝罪するよう促した。
アズサ「ごめん、てっきり敵襲かと」
マリー「え、えぇっと・・・・?」
ヒフミ「と、ところでどうして、シスターフッドの方がこんなところに・・・・?」
マリー「あ、それは、こちらに補習授業部の方々がいらっしゃると聞きまして、補習授業部の白洲アズサさんを訪ねてこちらに参りました。」
アズサ「私?」
マリー「はい。実は、先日アズサさんが助けてくださった生徒の方から、感謝をお伝えしたいとのことでして。諸事情がありまして、こうして代わりに」
アズサ「感謝・・・・?」
マリー「クラスメイトの方々から、いじめを受けてしまっていた方がいらっしゃいまして・・・・その日もどうやら突然、呼び出されてしまったのだと聞きました」
ヒフミ「そ、そんなことが・・・・!?」
コハル「いじめ・・・・っ!?」
ハナコ「・・・・まあ、聞かない話ではありませんね。みなさん狡猾に、それに陰湿な形で行うせいで、あまり表には出てきにくいですが」
バージル(・・・・この世界でも、人の性質は変わらないか)
マリー「私たちも、その方から相談を受けてようやく知ったのですが・・・・」
マリー「そうして呼び出されてしまった日・・・・そこを偶然通り過ぎたアズサさんが、彼女を助けてくださったとのことで」
アズサ「・・・・そういえば、そんなこともあったな。ただ、数に物を言わせて弱い相手を妨げる行為が目障りだっただけだ」
マリー「そしてその後アズサさんに怒られた方が、正義実現委員会と連絡を取られて・・・どこで情報が歪曲されたのか分かりませんが、何やら正義実現委員会とアズサさんの間でそれなりの規模の戦闘に発展してしまったとか・・・・」
アズサ「何がどうあれ、売られた喧嘩は買う。あの時も弾薬さえ切れてなければもっと長く戦えたし、あれ以上に道連れも増やせたのに」
ヒフミ「あ、あうぅ・・・・」
マリー「それで、その方が報告も兼ねて私たちの元を訪れてくださり、アズサさんに感謝をしたいと・・・・」
アズサ「・・・・そうか」
アズサ「別に特別感謝されるようなことじゃない。結局私も最終的に捕まったわけだし」
アズサ「それにあの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられてるだけじゃダメ。それがたとえ虚しいことであっても、抵抗し続けることを止めるべきじゃない」
マリー「・・・・そうかもしれませんね。はい、あの方にもそう伝えておきます」
マリー「アズサさんは、暴力を信奉する氷の魔女・・・・だなんて噂がありましたが、やはり噂は噂ですね」
アズサ「?」
ハナコ「ふふっ。それはそうですが、アズサちゃんには意外と「氷の魔女」らしいところもありますよ?ほら、他の方からするとちょっとだけ表情も読みにくいですし」
マリー「ハナコさん・・・・」
ハナコ「・・・・マリーちゃんが元気そうでよかったです」
マリー「はい、私は・・・・ですが・・・・」
ハナコ「玄関まで送りますね。さあ、一緒に行きましょう」
マリー「あ、はい・・・・で、ではみなさん、お邪魔いたしました。それでは、また」
そうして外はいつの間にか夕暮れに沈み、静かに暗くなっていった
~合宿所・先生の部屋・夜~
いつもどおり部屋で一人過ごしていたバージルのもとに、ドアをノックする音が響いた。
バージル「入れ」
てっきり阿慈谷ヒフミだと思ったが、違った
ハナコ「こんばんは、先生」
ヒフミではなく、浦和ハナコだった
しかも水着姿
バージル「・・・・」
ハナコ「ふふっ、こんなに簡単に入室を許可するなんて不用心ですねぇ」
バージル「・・・・その格好で来るな。れっきとした服装に着替えてから出直してこい」
ハナコ「いえいえ、私にとってこの服装はパジャマなので」
それに対してため息を吐くバージル
ハナコ「それより、アズサちゃんのことなのですが」
とハナコが真面目な話しを始めたところでドアからノックと共にヒフミが入ってきた
ヒフミ「ごめんなさい、先生昨日より遅い時間になってしまいました、実は・・・・」
ハナコ「・・・・あら」
ヒフミ「・・・・え」
バージル「・・・・」
ヒフミ「・・・・し、失礼しましたぁ!?ご、ごめんなさい!ぜ、全然知らなかったんです!?」
バージル「取りあえず落ち着――」
ハナコ「ヒフミちゃん、今「昨日より遅い時間」って言いましたね!?つまり昨晩も来たということですよね!?」
バージル「おい、話を――」
ヒフミ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!?空気壊してごめんなさいっ!?」
バージル「・・・・」
ハナコ「待ってくださいヒフミちゃん、詳しく教えてください!昨晩はお二人で何をしていたんですか、今晩は何をする予定だったのですか!?ぜひ説明を」
バージル「・・・・静かにしろ」
・・・・
その後何とか落ち着いて話をし、互いの誤解が解けた
ハナコ「・・・・なるほど。先生と一緒に、これからについてのご相談を」
ヒフミ「ハナコちゃんも先生に相談したいことがあって──。で、ですがどうして水着で来るんですか!?パジャマが水着ってどういうことですか・・・・!?」
ハナコ「心が落ち着くんですよね。ですので私は、礼拝堂での授業にも水着で参加しましたよ?一度もっと、色々と柔らかく考えましょう♪」
ヒフミ「あうぅ・・・・」
バージル「でだ。何用で来た?」
ハナコ「そうですね、アズサちゃんの件ですが──、あ、ヒフミちゃんも一緒に聞いていただければと思います」
ハナコ「実はアズサちゃん・・・・毎晩のように、どこかへ出かけては夜明けまで戻ってこないことが続いていて」
ヒフミ「そう、だったんですか・・・・」
ハナコ「最初は慣れない場所で眠れないのかと思ったのですが、そうではないようです」
ハナコ「・・・・私はアズサちゃんが夜にちゃんと眠っているところを、ほとんど見たことがありません」
ヒフミ「たしかに私も・・・・アズサちゃんはいつも先に起きてますし、私より早く寝てることもなかったような・・・・」
ハナコ「・・・・アズサちゃんが一体何をしてるのかは分かりません。ですがそろそろ、多分無理やりにでも寝かせてあげないといけないのでは、と」
ハナコ「何だかアズサちゃん・・・・どこか、すごく不安そうで」
ハナコ「どんな事情なのかは分かりませんが、どうにか不安を少しでも軽減してあげたくって・・・・」
ハナコ「このままですと、いつかは倒れてしまいます」
ハナコ「・・・・先生とヒフミちゃんも、ですよ?しっかり寝ないとダメです」
ハナコ「確かに試験も大切ですが、ただ落第というだけです。身体の健康と比べられるようなものではないと思いませんか?」
ヒフミ「・・・・普通だったらそうかもしれません。でも──」
ハナコ「・・・・?」
ヒフミ「ハナコちゃん、この試験はただ「落第」で済む話ではないです・・・・あと2回、どちらの試験も不合格だったら」
ヒフミ「退学なんです!私たちは、トリニティを去らないといけないんです・・・・!!」
ハナコ「・・・・退学?そんなこと、校則的に成り立ちません。退学は色々な手続きと理由が必要で、そんな簡単には・・・・」
補習授業部の裏の事情について、ヒフミが話した
ハナコ「なるほど、そうだったのですね。全て不合格であれば、全員退学・・・・」
ハナコ「この仕組み自体そもそもおかしいですが・・・・なるほど、シャーレの超法規的権限が・・・・」
ヒフミ「そ、そういえばハナコちゃん、本当は成績良いんですよね1年生の時に、3年生の難しい試験まで全部満点でしたよね・・・・!?」
ハナコ「・・・・」
ヒフミ「あの、ごめんなさい・・・・模試のために昔のテスト用紙を探す途中に、見つけてしまって」
ヒフミ「ど、どうして今は、あんな点数を・・・・?わざと、ですよね・・・?」
ハナコ「・・・・ごめんなさい、知らなかったんです。失敗したら、まさか「全員が退学」だなんて」
ハナコ「いえ、知らなかったからといって、許されるものではありませんね・・・・」
ハナコ「先生にも、ヒフミちゃんにも・・・・アズサちゃんとコハルちゃんにも、申し訳ないことをしました。ヒフミちゃん、先生。ごめんなさい」
ハナコ「・・・・ヒフミちゃんの言った通り、私のあの点数はわざとです」
ヒフミ「や、やっぱり・・・・ハナコちゃん、どうしてそんなことを・・・・?」
ハナコ「・・・・ごめんなさい、言えません。私の、すごく個人的な理由なので・・・・ですが、それで皆さんが被害を受けてしまうのは望むところではありません」
ハナコ「最低限皆さんが退学にならないよう、今後の試験は頑張りますので。」
バージル「これで浦和の問題は解決、と」
バージル(・・・・本人が意図して点数を操作したことはわかっている。だが、これからはそれに言及する必要はない)
ヒフミ「はい」
ハナコ「・・・・ところで、この事実を知っているのは、ヒフミちゃんと先生だけですか?」
ヒフミ「そうですね、私たち以外はまだ誰も」
ハナコ「なるほど・・・・となると、アズサちゃんの不安は試験に起因するものではなさそうですね。何か私がまだ知らないことがある、と」
ハナコ「・・・・いえ。それ以上に今は、この補習授業部の存在そのものが気になりますね」
ハナコ「ミカさん・・・・は無理でしょうし、まあこんなことをたくらむのはナギサさんでしょうか」
ハナコ「ですが、どうしてエデン条約を目の前にしてこんな・・・・いえ、むしろ目の前だからこそ?」
ハナコ「・・・・なるほど。この補習授業部は、エデン条約を邪魔しようとしている疑惑がある容疑者たちの集い、というところですか。」
ヒフミ「え、えっ!?」
ハナコ「どうせならまとめて処理してしまった方が効率的、といったロジックでしょうか。何だか私たちまるで、洗濯物みたいな扱いですね」
バージル(本来の発言に比べれば、まだマシだな――黙っておこう)
ヒフミ「ハナコちゃん、すごい・・・・探偵みたいです」
ヒフミ「「トリニティの裏切り者」・・・・ナギサ様は、それを私に探してほしいと仰っていて」
ハナコ「・・・・ふふ、なるほど。「トリニティの裏切り者」ですか・・・・ナギサさんらしい表現ですね。ティーパーティーのホストである彼女の計画を邪魔したら該当する、とも考えられるロジックですし」
ハナコ「・・・・アズサちゃんは書類の時点で怪しかったので、疑われるのも無理はありませんね」
ハナコ「コハルちゃんは、どうして・・・・強いて言えば、正義実現委員会の人質という観点なら無茶ではありつつも、納得はできますが・・・・」
ハナコ「・・・・あら、そう考えると、ヒフミちゃんはどうして容疑者になっているんです?ナギサさんと親しかったはずでは?」
ヒフミ「えっ!?わ、私もやっぱり容疑者なんですか・・・・!?」
ヒフミ「た、確かに、親しくさせていただいていたような感じですが・・・・ど、どうして私なのでしょう・・・・?」
・・・・
ハナコ「・・・・とにかくアズサちゃんとは、後でもう少しお話をしてみた方が良いかもしれません。その他についても幾つか、私の方でも確認してみます」
ヒフミ「はい。もし何か分かりましたら、教えてもらえると嬉しいです」
ハナコ「分かりました。ということは私もこの、深夜の密会に参加させていただけるということでよろしいですか?深夜の密室で、三人寄り添って秘密の遊びだなんて」
ヒフミ「そ、その言い方はちょっと・・・・」
バージル「はぁ」
ヒフミ「そ、それでは先生また明日ということで」
ハナコ「おやすみなさい。先生」
~先生の部屋・朝~
外では強く雨が降っている
バージル(・・・・だいぶ降り込んでいるな。昨晩のアロナの予報は的中か。洗濯物を早めに取り込んで正解だった)
その瞬間、大きな落雷とともに部屋が真っ暗になった。
一時的な停電だろう。
これでは補習授業を続けるのは難しそうだ。
それぞれが部屋でおとなしく過ごすことに変更し、そのまま一日が過ぎる。
停電は早めに回復したが、今日は無理をせず休息を取ることになった
雨はいつの間にか止み、外はもう暗く、日が沈んでいた。
生徒たちも、そろそろ就寝した頃合いだろう――と
そう考えた、そのとき。
扉がいきなり開けられた。
バージル「!?」
ハナコ「先生!今夜、お時間いただきますね」
バージル「・・・・は?」