悪魔と青春の記録   作:黒凪カズキ

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mission20~夜間の喧騒~

~トリニティ・商店街~

 

夜。人通りの少ない通りを、ハナコたちに連れられて歩いていた。

散歩と言いつつ、結局は食べ歩きやショッピングに付き合わされている

 

ハナコ「うふふ・・・♡」

 

ヒフミ「あはは・・・・き、来ちゃいましたね」

 

バージル「なぜ、俺まで」

 

ハナコ「どうですか?もうすでに楽しくないですか?禁じられた行為をしているというこの背景感、そして同時にみんなで一緒にしているからこその安心感」

 

アズサ「なるほど、深夜の街はこんな感じなのか・・・・思ったより活気がある」

 

ハナコ「そうなんですよ、24時間営業の店も多いですし」

 

アズサ「あれはスイーツショップ?24時間開いてるところがあるのか・・・・あ、喫茶店も開いてる」

 

ヒフミ「ここからもう少し行くと、モモフレンズのグッズショップもあるんですよ。その向かいには限定グッズだけを取り扱う隠れたお店もありまして・・・・・」

 

ハナコ「ふふっ、さすがはヒフミちゃん、詳しいですね」

 

ヒフミ「あ、あはははは・・・・・」

 

コハル「うぅ・・・・結局乗っちゃたけど、こんなところ万が一ハスミ先輩に見られたりしたら、すっごい怒られそう・・・・」

 

ハナコ「あら、そうなのですか?ハスミさんは後輩たちに優しい方だと聞いてましたが・・・・?」

 

コハル「も、もちろん優しいわよ!それに文武両道、さいしょくんび・・・・?で、品もあってすっごい先輩なんだから!」

 

コハル「で、でも怒る時はほんとに怖くて・・・・前にも一回あったんだけど」

 

コハル「ゲヘナに強い怒りと感情をもっていたの」

 

ハナコ「あら、一体どういった理由でしょう?」

 

コハル「エデン条約の件で、ゲヘナの首脳部と会議をした時で」

 

コハル「そのときにでかいとか言われてから、ハスミ先輩、ダイエットするようになったの」

 

コハル「会議自体はハスミ先輩が癇癪おこしてダメになって」

 

バージル(そんなことでか、些細なことだろ──)

 

ハナコ「そんなことがあったのですね・・・・ゲヘナの方々に怒るのも分かります、無理もありません」

 

バージル「・・・・・」

 

コハル「でも、ハスミ先輩は色んな意味で強いから大丈夫!」

 

コハル「あれからずっと、自分との約束を守って頑張ってるし・・・・!」

 

アズサ「あ、ここにもスイーツ屋が」

 

ハナコ「なんだか食べ物の話をしていたらお腹が減ってきましたし、ここで何か食べましょうか?」

 

ヒフミ「あ、ここの限定のパフェすっごい美味しいんですよ!24時間やってるとは知りませんでした」

 

アズサ「パフェか・・・・うん、悪くない。」

 

ヒフミ「先生は甘い物、大丈夫ですか?」

 

バージル「嫌いではないな」

 

ヒフミ「よかったです、では入りましょう」

 

~店内~

 

店員「いらっしゃいませ、5名様でしょうか?ご注文をどうぞ」

 

ヒフミ「えっと・・・・あ、限定パフェってまだありますか?」

 

店員「ああ、申し訳ございません・・・・限定パフェはちょうど先ほど、別のお客様が三つ購入されたのが最後でして・・・・」

 

ヒフミ「あ、そうでしたか・・・・」

 

アズサ「一歩遅かったか・・・・こんな時間まで狙われいるなんて、侮れないな」

 

そうして渋い顔をしている二人のもとへ、テーブル席から声を掛けられる

 

???「・・・・あら?」

 

聞き覚えのある声の方向へと向くとパフェを3つ目の前にして、美味しそうに食べているハスミがいた

 

ハスミ「先生、それに補習授業部のみなさん・・・・」

 

コハル「あ、あぁあぁぁぁ・・・・!」

 

コハルにとって今、一番会いたくない(悪い意味ではなく)人と出会い慌てている

 

ハナコ「ハスミさん、奇遇ですね♡あら、真夜中にパフェを三個も。たしか、ダイエット中だと伺いましたが?」

 

いつもどおりの笑みで僅かにからかいまじりに言う

 

ハスミ「こ、これはですね、その・・・・」

 

ハナコ「はい、心中お察しいたします。真夜中に襲ってきた悪しき欲望に導かれて、ここまで来てしまったのでよね?」

 

ハスミ「え・・・・!?い、いえその」

 

ハナコ「そうして欲望のままめちゃくちゃにしてしまった後、理性を取り戻した頃にはもう取り返しがつかないほどに乱れて──」

 

ハスミ「こほん」

一度咳払いし話を変えるハスミ

 

ハスミ「その、自分のことを棚上げするようですが、補習授業部のみなさんはそもそも、合宿中の外出が禁じられていたはずでは・・・・?」

 

ハスミ「ですので、ここはお互い、見なかったことにするとしましょうか」

 

コハル「は、ハスミ先輩・・・・」

 

ハスミ「コハル、お勉強頑張っていますか?」

 

ハスミを目の前にして狼狽え言葉をだせないコハル

 

ヒフミ「え、えっと!・・・・コハルちゃんはここ最近、成績が上がっていて、このままいけば全然合格できるくらい、頑張っていて・・・・!」

 

とヒフミが横からフォローを入れる

 

ハスミ「なるほど、そうでしたか」

 

コハル「うぅ・・・・その、えっと・・・・」

 

恥ずかしながら自信なさげのコハル

 

ハスミ「言ったではありませんか、コハルはやればできると」

 

ハスミ「あの時も周りの皆さんの手助けを借りて勉強を頑張れば報われると。それが結果に出ているのです」

 

コハル「・・・・えへへっ。は、ハスミ先輩の期待を裏切りたくないですから」

 

ハスミ「はい。引き続き応援していますよ」

 

コハル「はい、頑張ります・・・・・!」

 

そのときハスミが持っている携帯から着信が鳴った

 

ハスミ「・・・・・?こんな時間に、連絡・・・・?」

 

ハスミ「はい・・・・イチカ?どうかしましたか?」

 

どうやら連絡相手は正義実現委員会らしくゲヘナでも問題になっている集団「美食研究会」がトリニティ自治区内で問題を起こしたらしいとの報告だった

 

爆発らしき振動と音が耳に入る

 

アズサ「近いな。爆発音からして、ここから1km以内のところか」

 

ヒフミ「え、えぇっ・・・!?」

 

連絡を辞め補習授業部と先生に話しを始めようとするハスミに対してバージルは嫌な予感を感じる

 

ハスミ「・・・・みなさん・・・・いえ、先生」

 

ハスミ「突然の事ですみませんが、先生の力をお借りしても宜しいでしょうか?」

 

ハスミ「今はエデン条約を目前に控えて、色々と過敏な時期です。この問題が傍から見て「トリニティの正義実現委員会とゲヘナ間の衝突」と捉えられてしまうと、状況が不利になることは想像に難くありません」

 

ハスミ「つまり、「シャーレ」の先生が一緒に解決してくださる・・・・そういう構図が望ましいのです。先生、お願いできますでしょうか・・・・?」

 

ハスミの言葉を受け、バージルはしばし沈黙したのち、承諾した

 

アズサ「ならば同行する。弾薬、銃の整備は問題ない」

 

すでに戦闘に備えている

 

ハスミ「えっとおそらく先生一人でことが足りると思います」

 

補習授業部「????」

 

入った情報から美食研究会はアクアリウムを襲撃し希少種の「ゴールドマグロ」を強奪して現在はトラックに乗って逃走中とのこと

 

店を出た瞬間、遠くの闇の中に二つのライトが揺れた。

荒い軌道で走る車両は、まるで何かから逃げているようだった。

 

バージル「羽川、あれか?例の集団は」

 

ハスミ「はい、あれらしいです、入った連絡から」

 

ボンネットには「給食」の文字。車内には五人の生徒の姿があった

 

車が目前まで迫る中、バージルは進路上に立ち、片足を踏み込んだ。

甲高い金属音が響き、車体は傾いて後輪が浮き上がり、その勢いは強制的に止められる。

バージルは踏み込んだ片足を地に残し、その衝撃を受け止めていた。

急停止の衝撃によって、乗っていた五人の生徒は前方へと放り出された。

 

バージル「これでいいか?」

 

ハスミ「はい、ありがとうございます」

 

投げ出された五名のうち四名は散り散りに逃走する。

その場に残ったのは、ロープで幾重にも縛られ、口元をテープで塞がれた角付きの生徒だけだった

 

ハスミ「くっ、小癪な・・・・!ここはトリニティ自治区!私たちが逃げるなんてことは、不可能です!」

 

相手がゲヘナの生徒であることが理由なのか、あるいは個人的な感情か。ハスミは明らかな怒気を帯びたまま、人質を回収し追いかけて行った

 

その時補習授業部、アズサが駆け寄ってきた

 

アズサ「すごいな先生、走行中の車両を止めるとは・・・・しかし、あれはあまり得策とは思えない」

 

アズサ「例えば ─」

 

そこでバージルはアズサの言葉を止め発する

 

バージル「これが一番楽で、最短で事を納める方法だ」

 

アズサ「なるほど、私もやってみようかな?」

 

コハル「ちょ、ちょっと待ってよ?あれを真似する気!?」

 

ヒフミ「あ、あはは・・・・」

 

・・・・・・

 

ハスミ「助かりました、先生。お陰様で、事態を無事に収拾することができました」

 

ハスミ「その後、この方々は本来、私たちの方で処遇を決めるのですが・・・・時期が時期ですので、ゲヘナの風紀委員に託そうかと、そこで、もう一つ先生にお願いがあるのですが」

 

バージル「まだ、何かあるのか」

 

呆れそうに言う

 

ハスミ「・・・色々と手間を取らせて申し訳ないですが、エデン条約のことを考えると、ここから先、私たちが能動的に動くのは少々避けたいところです」

 

ハスミ「ですので、風紀委員会への引き渡し・・・・この部分を先生にお願いできませんでしょうか?」

 

ハスミ「「シャーレ」が生徒を引き渡す・・・・この形でしたら、私たちにとってもゲヘナ側にとっても、政治的な憂慮がだいぶ減るのです」

 

バージル「・・・・引き渡せばいいのだな。分かった」

 

ハスミ「はい。何から何までありがとうございます」

 

~トリニティ自治区・外交の大橋~

 

風紀委員会の車両を待つこと十数分、向こうから一台の車両が走ってきた

 

近くまで来ると車両を止め、一人の角付き生徒が降りてきた

 

セナ「・・・・お待たせしました。死体はどこですか?」

 

バージル「・・・・勝手に殺すな。生きている」

 

セナ「・・・・そうでした。死体ではなく負傷者でしたね。たまに混同してしまって」

 

セナ「えー。納品リストには、新鮮な負傷者3名と人質1人と書かれていましたが」

 

バージル「・・・・」

 

セナ「・・・・ところであなたは?正義実現委員会ではなさそうですが・・・・?」

 

バージル「俺は──」

 

言いかけたその途中、車両からもう一人見覚えのある人物が降りてきた

 

ヒナ「その方は、「シャーレ」のバージル先生よ」

 

バージル(・・・・空崎か)

 

セナ「知り合いでしたか、風紀委員長」

 

ヒナ「うん・・・・まあ、そうね」

 

ヒナ「久しぶりね、先生・・・・ところで、ここで何をしてたの?」

 

バージル「単純な話。そこにいる生徒の引き渡しだが」

 

ヒナ「・・・・・そういうことね、理解したわ。今の時期、このタイミングで政治的問題にしないために、中立の立場のシャーレが」

 

ヒナ「問題にしたくないのはこちらも同じ。だからこそ、こうして風紀委員会ではなく、「緊急医学部」が来たことになっている」

 

セナ「・・・・・緊急医学部部長、氷室セナです。以後よろしくお願いいたします」

        

セナ「死体がいたらいつでもお呼びください。配送料は頂きませんので」

 

ヒナ「「負傷者」でしょう?それに、本物の死体を見たことないでしょうに」

 

セナ「はい、負傷者でした」

 

ヒナ「じゃあ・・・・美食研究会はこの車両の中?こっちに移してもらえる?」

 

車両の扉を開け生徒を出す

 

ハルナ「お世話になりました。先生。今度ゲヘナにいらした際は、何か美味しいものでもおもてなし致しますね」

 

ヒナ「良いから、早く乗ってもらえる」

 

ハルナに続き美食研究会二人も緊急車両に乗っていく、最後に一人、美食研究会ではない人質も出てくる

 

フウカ「た、助かった・・・・」

 

ヒナ「あら、給食部の・・・・今日一日見ていないと思ったら、こんなところに、今、学園で・・・・いや、やっぱり説明は帰りながらで」

 

フウカは給食部のトラックを回収するため、その場を離れていった

 

ハスミからの頼みを終え補習授業部のいる校舎に戻ろうとしたときヒナが質問してきた

 

ヒナ「ところで先生は・・・・トリニティで何をしてるの?」

 

バージル「補習授業部のところで顧問を──」

 

ヒナ「それはもう知ってる。私が聞きたいのはシャーレ、中立な立ち位置にいる組織が、この時期にトリニティいるっていうこと」

 

バージル「別に何もない、しいて言えば恩義を返してる、政治的理由はない」

 

バージル「そもそも、俺はエデン条約の締結に賛否を問うつもりはない」

 

ヒナ「・・・・そう」

 

セナ「・・・・風紀委員長、積載完了しました。出発の準備もできてます」

 

ヒナ「分かったわ、じゃあお疲れ様、先生。また・・・・」

 

バージル「・・・・」

 

ヒナ「・・・・先生は今の部活、守っていくのね」((ボソッ))

 

バージル「・・・・何か言ったか?」

 

ヒナ「・・・・いえ、何も、じゃあ、また」

 

結局のところ、その日は面倒な小競り合いに巻き込まれたまま終わった

 

後日

 

~合宿所・教室~

 

第二次特別学力試験が目前に迫っていた。

 

補習授業部の四人は、三度目の模試に臨んだ。

 

その結果は――

 

第三回補習授業部模擬試験・結果。

 

ハナコ─69点(合格)

アズサ─73点(合格)

コハル─61点(合格)

ヒフミ─75点(合格)

 

全員が合格圏内基準を突破したのだった。

 

その日の翌日にナギサから呼び出された

 

~トリニティ・テラス~

 

ナギサ「・・・・お待ちしておりました。御無沙汰しております、先生」

 

ナギサ「あれからお変わりはありませんか?合宿の方はいかがでしょうか?」

 

バージル「あいつらは順調そのものだ。・・・・で、要件はなんだ?」

 

ナギサ「では、率直にお聞きします」

 

ナギサ「『トリニティの裏切り者』は、どなただと思われますか?」

 

バージル「・・・・」

 

ナギサ「そういえば。「ご自身のやり方で動く」と仰られていましたね。私としてはただ第2次特別学力試験を目の前にして、あらためて確認をしたく、こうして先生にお越しいただいたわけです」

 

バージル「確認?」

 

ナギサ「・・・・おそらく、ミカさんも接触してきましたよね?」

 

バージル「・・・・」

 

ナギサ「ミカさんと何をお話になったのか・・・・よろしければ、教えていただけません?」

 

バージル「・・・・補習授業の調子を聞かれた程度だ」

バージル(白洲については伏せておくとしよう)

 

ナギサ「本当にそれだけですか?もっと大事な、エデン条約に関わる話とかされていませんか?」

 

バージル「・・・・随分と疑い深いな」

 

ナギサ「えぇ、それはもうミカさん、正義実現委員会の人ら、そして補習授業部の方々、全員が私にとっては所詮「他人」です」

 

ナギサ「先生は今、挙げた人たちの言葉に隠れた心情、何を考え何を思っているかをどう読み取り理解できますか?」

 

バージル「・・・・」

 

ナギサ「全てを理解することはできません、だからこそ、疑いがある以上は退学していただきます。例えその人が私にとって、とても大切な人でも、本音が知れない上に、不審な動きがあれば切り捨てます」

 

バージル「・・・・他者を疑うのは構わん。だが、度が過ぎている」

 

ナギサ「でしたら、先生は、その方々の心をどう理解するのですか?話し合えば分かる?第三者が証明する?それらの発言自体が偽りの言葉かもしれません」

 

ナギサ「ついでにですが、私自身は先生のに対しても不信感は抱いています」

 

バージル「・・・・」

 

ナギサ「並外れた身体能力を持ち、不明な力を持つ上に、自身の素性は何一つ話そうとはしない、これのどこに不信感を持たない理由になるのでしょうか」

 

ナギサ「・・・・まぁ、ですが、そんな力を持っているにも関わらず、闇雲に振り回さない、強面の表情にしては協力的かつ義理を果たすという所は評価してますが」

 

ナギサ「話が脱線しましたね、要するに私は、エデン条約の成功のために、彼女たちを退学させます」

 

バージル「なら、俺はあいつらの合格を補佐するのみ」

 

ナギサ「そうですか。分かりました。ですが先生――私も、私のやり方で進めます」

 

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