~合宿所・教室~
いつも通り夜まで学力試験に向けて勉強をした補習授業部
第二次特別学力試験開始まで残り半日と少し
ヒフミ「みなさん、本日もお疲れさまでした!」
ヒフミ「明日はついに、第2次特別学力試験です!」
ヒフミ「この一週間の合宿で、私たちはしっかり合格できるだけの実力を身につけられたはずです」
ヒフミをのぞく三人が自信ありげに頷く
ヒフミ「あとはしっかり試験に合格し・・・・堂々と補習授業部を卒業するだけです」
ヒフミ「今までの勉強が無駄ではなかったことを、きっちり証明しに行きましょう」
ヒフミ「そして最後は、みんなで笑ってお別れできるように・・・・!」
アズサ「・・・・・そうか。合格したら、もうお別れか・・・・」
コハル「ちょっ、ちょっと!?どうしてそんな急にしんみりするわけ!?」
ハナコ「なるほど♡合格含めて、何だかんだですごく楽しかったですもんね?」
アズサ「・・・・ああ。いや、それでもやっぱり、出会いがあれば別れもある。全ては、虚しいものだ」
ハナコ「・・・・そこまで思う必要は無いと思いますよ。アズサちゃんも含めてみんな、試験が終わったらどこかに行ってしまうわけじゃないでしょう?」
ハナコ「補習授業部が解散しても、みんな同じ学園にいるんですから、会おうと思えばいつでもすぐ会えますよ」
コハル「ほ、ほら!私はいつも正義実現委員会の教室にいるから!ひ、暇な時があったら来れば・・・・?」
アズサ「・・・・うん」
ヒフミ「えっと、気持ちとしては同じなのですが、取り合えず試験に合格することが先決と言いますか、何だか急に青春ドラマのエンディングになっているような・・・・」
ヒフミ「と、とにかく。今日は早めに休んで、明日の試験に備えるとしましょう」
コハル「そういえば、明日の試験会場って前と同じところ?」
ヒフミ「あ、そういえば告知をまだ見ていませんでした」
ヒフミ「えっと、トリニティの掲示板っと・・・・」
ヒフミはスマホの画面を見たまま、目を見開いた。
ヒフミ「・・・・?え。ええっ!?う、嘘っ!?嘘ですよね!?」
ハナコ「ヒフミちゃん?どうかしましたか?」
掲示板を見て驚愕するヒフミが気になり、ハナコもヒフミのスマホを横から覗く
ハナコ「えぇっと・・・・「補習授業部の「第2次特別学力試験」に関する変更事項のお知らせ」・・・・?」
ハナコ「「試験範囲を、既存の範囲から約三倍に拡大」・・・・?」
コハル「はぁっ!?何それ!?」
ハナコ「また、合格ラインを60点から90点に引き上げとする」
ヒフミ「わ、私でもまだ、90点なんて超えたことないのに・・・・」
コハル「ど、どういうことよこれ──」
ヒフミ「昨日、急にアップされたみたいです・・・・試験直前になって、こんな・・・・」
バージル「・・・・桐藤の仕業だろうな」
ハナコ「・・・・なるほど。どうしても私たちを退学にしたい、と」
アズサ「・・・・退学?」
コハル「えっ、た、退学!?ちょっとどういうこと!?」
ハナコ「・・・・そのお話もそろそろお伝えしようと思っていましたが・・・・その前に、他にも変更された部分がありますね」
ヒフミ「あ、試験会場と時間も変更されてます・・・・試験会場は「ゲヘナ自治区第15エリア77番街、廃墟の1階」・・・・」
ヒフミ「・・・・ゲヘナ?」
ヒフミ「げ、ゲヘナで試験を受けるんですか!?」
コハル「な、何でよ!?どうしてトリニティの試験をゲヘナで受けるわけ!?」
ハナコ「もし行かなければ未受験扱いで不合格、ですよね・・・・」
コハル「そ、それもそうだけど、さっきの退学ってどういうこと!?初耳なんだけど!」
アズサ「・・・・」
補習授業部の真実をコハルとアズサに話す
コハル「試験に三回落ちたら、退学・・・・!?」
アズサ「・・・・なるほど」
ヒフミ「か、隠しててごめんなさい・・・・まさか、こんなことになるなんて・・・・」
コハル「ど、どうすれば良いの・・・・!?退学になんてなったら、正義実現委員会に復帰できない・・・・!」
バージル「それより、話している時間はあるのか?」
アズサ「そうだな、大まかだが、状況は理解した。出発しよう」
アズサ「試験時間が「深夜の3時」って書いてある。今から出発しないと間に合わない」
アズサ「障害物の多さに文句を言ったところで、状況が変わるわけじゃない。大切なのは、それでも最後まで足掻くこと」
ハナコ「・・・・そうですね。アズサちゃんの言う通りです。今はとにかく動くしかありません」
コハル「ああもう、何もかも意味わかんない!と、とにかく行くのね!?」
アズサ「すぐに出発しよう、行こう」
補習授業部は急ぎ合宿所を後にし、ゲヘナへ向かった
~ゲヘナ・スラム街~
ハナコ「ここからはもう、ゲヘナの自治区ですね」
アズサ「うん、このまま順調に行ければ、余裕で試験に間に合う」
しかしそうとは行かないようだ
チンピラ「んー?何だか見慣れない奴らだなぁ」
ごろつき「そんなに急いでどこに行くのさ」
ヒフミ「え、えっと、私たちは試験を受けに行く途中でして・・・・」
ごろつき「・・・・はぁ?試験?何言ってんだ?」
チンピラ「まっ、理由はどうあれ、ここら一帯を歩くにはうちらの許可が必要なんだよ」
バージル「構うな。行くぞ」
ガラの悪い生徒を無視し、素通りしようとするが
ごろつき「おいおい、無視とは冷たいねぇ」
チンピラとごろつきのヘイトがバージルに向かう
チンピラ「金を置いて行けば見逃すからさ」
不良生徒がバージルに銃を向けた時、どこからともなく乾いた発砲音と共に前にいた生徒が倒れる
コハル「あ、あれ?」
ヒフミ「急に倒れてしまいましたよ?」
バージルは今、起きた出来事に既視感を感じる
アズサ「発砲音が聞こえた、敵襲か」
アズサが音をした方向に向き銃を構え臨戦態勢を取る
バージル「・・・・行くぞ」
アズサ「え?だが」
バージル「時間が惜しい」
バージルのその言葉と共に走り出す
その場から去るバージルを背に一人の少女が物陰から現れる
???「うふふふ、あなた様に仇なす者はわたくしが」
・・・・・
・・・
~ゲヘナ自治区・住宅街~
ヒフミ「何でしょうか?これは検問・・・・?」
風紀委員A「止まれ!ここから先は立ち入り禁止になっている!」
風紀委員B「そもそも今日は、町全体に外出禁止令が出されているはずだ!早く戻って──
その制服、トリニティ?」
風紀委員A「どうしてここに・・・・!ゲヘナに何をしに来た!目的は何だ!」
ヒフミ「え、えっと、その、本当にここを通りたいだけでして・・・・!」
風紀委員A「何の目的もなしに、トリニティがゲヘナに来るわけがあるか!」
ハナコ「ですが私たちは本当に、ただ試験を受けに来ただけなんです。特に問題を起こしに来たわけではなく・・・・」
風紀委員A「トリニティの生徒が試験を受けるために、どうしてゲヘナの自治区に来るんだ!!せめてもっとまともな嘘をつけ!」
ヒフミ「せ、正論・・・・」
風紀委員B「・・・・っ!そこのお前、正義実現委員会じゃないか!?」
コハル「!?」
風紀委員A「なっ、ホ、本当だ!襲撃!正義実現委員会が襲撃しに来たぞ!」
風紀委員B「上層部に報告!正義実現委員会が遂に来た」
アズサ「仕方ない、倒そう」
ヒフミ「えぇっ!?誤解が深まりません」
バージル「確かに、時間が惜しいしな」
ヒフミ「セ、先生まで」
バージル「だが──」
バージルが手を顔の前へ持ち上げ、力を込めた後、その腕を横へ払う。
すると彼の隣に、鮮やかな半透明の水色をしたバージルらしき人物が現れた
バージル「政治絡みという面倒もある、波風立てずに突破しよう」
バージル以外「!?」
バージルと分身が補習授業部をそれぞれ両脇に抱え上げた。
ヒフミ「せ、せんせい!?い、一体、何をする気ですか!?」
コハル「ちょ、ちょっと!持ち方ってものがあるでしょ!?」
コハル「ていうか!この先生みたいな人は誰よ!?」
アズサ「おぉ、すごいこんな芸当始めてみた」
コハル「何、普通に関心してるのよ!バカ!」
バージルはハナコとヒフミを両脇に抱え、
分身にはコハルとアズサを抱えさせた。
ハナコ「・・・・先生はこんなこともできると、私たちでは理解できない力を持っているのですね」
ハナコ「それはさておき、もうちょっと良い持ち方があると思いますよ、例えば両腕で女の子を抱えたお姫様抱っことか♡」
バージル「馬鹿を言うな、それ以前に手数が足りない」
アズサ「で?此処からどうするんだ、先生?」
バージル「今から全力で走る。少し口を閉じていろ舌を噛むかもしれんぞ」
風紀委員会A「行かせるか!」
風紀委員の銃口が、バージルへと向けられ、指が引き金にかかる。
しかし、それが引かれるよりも早く、彼は地面を強く踏み込み高く飛躍し、屋根へと跳び上がった。
屋根に滑るように着地すると、足を止めずに、すぐさま次の屋根へと身を躍らせる。
その後ろを、半拍遅れて分身もまた同じ軌道を描きながら追ってくる
ヒフミ「ひゃあぁ、せ、せめて地面で走ってくださぁぁい!」
バージル「早いに越したことはないだろ」
コハル「ちょっと待って!?何で平然と屋根の上を走ってるの!!」
バージル「騒ぐな、舌を噛むぞ」
屋根から屋根へ、低い軌道で飛び伝っていく
アズサ「・・・・無駄のない動き、これなら早く着きそうだ」
ハナコ「うふふ。でもこれじゃあ、また先生の噂に尾ひれがついてしまいますね」
コハル「う、噂? え、噂って何よ?」
アズサ「私も気になる」
バージル「雑談をするのは勝手だが舌を噛まない保証はしない」
ヒフミ「ひゃぁぁぁぁ」
・・・・・
~ゲヘナ自治区第15エリア77番街~
試験場所に到着
バージル「着いたな」
ヒフミ「あうぅぅ、怖かったですぅ」
ハナコ「ふふ、あんな体験、私初めてです♡」
アズサ「うん、正直楽しかった。ジェットコースターもこんな感じなんだろうか」
コハル「楽しくないわよ」
補習授業部全員を降ろすとバージルの分身は役割を終えて散り散りに消えていった
ヒフミ「き、消えました」
コハル「ていうか、あれ結局なんなのよ」
ハナコ「さぁ、なんでしょう?」
アズサ「ただ言えることは只者ではないと判断した」
バージル「で、此処で間違いないな?」
ハナコ「はい、ゲヘナ自治区第15エリア77番街、廃墟の1階・・・・はい、ここで合ってます」
ヒフミ「でも、どうしてこんなところで試験を・・・・。あ、試験用紙とかどうなるんでしょうか、誰が来てるんですかね・・・・?」
アズサ「いや、誰もいなさそうだ。でも何かしら、手段は用意してるはず」
周囲に何かないか探すとアズサは何かを見つける
アズサ「・・・・これだ」
ハナコ「これは・・・・不発弾、ですか?」
アズサ「L118、牽引式榴弾砲の弾頭だ。スローガンとかの散布用なのか、雷管と爆薬を取り除いて爆発しないようにしてある、この中に何かあるはず」
ヒフミ「あ、中に紙が・・・・これが試験用紙ということですね」
アズサ「特に破損も見られない。こっちは・・・・通信機か」
ナギサ『・・・・これを見ているということは、無事に到着されたようですね』
ヒフミ「な、ナギサ様!?」
コハル「え、じゃあこの方が、ティーパーティーの・・・・?」
ナギサ『ふふっ・・・・恨みの声が聞こえてきますね。まあこれは録画映像なので、リアルタイムには聞こえないですよ』
ナギサ『それでは約束の時間までに試験を終えて、戻ってきてくださいね』
ナギサ『では幸運を祈りますね。「補習授業部」のみなさん、どうかお気をつけて』
ハナコ「・・・・なんだか最後、含みのある言い方でしたね・・・・?」
アズサ「とにかく時間がない、早く始めよう」
ヒフミ「は、はい!みなさん入りましょう、いよいよ第2次特別学力試験です!」
ヒフミの言葉とともに、試験用紙とペンを手に持ち始めるとシッテムの箱からアロナが急に話しかけてきた
アロナ「先生!今すぐ補習授業部の皆さんを連れてそこから離れてください!」
バージル「あ?なぜ?」
アロナ「今近くで温泉開発部が──」
とアロナが言いかけた途端、どこからともなく起きた爆風に巻き込まれる
コハル「し、試験用紙がっ・・・・!?」
アズサ「跡形もなく吹っ飛ばされた・・・・」
ヒフミ「え?なんで此処一帯爆発したんですか?」
バージル「どうやら温泉開発部という部活の仕業というより巻き込まれた感じだろう」
ハナコ「なるほど、これがナギサさんの言っていた『お気をつけて』ですか、ここまでやるとは面白くなってきたではありませんか。ふふふっ・・・・」
第2次特別学力試験、結果──
ハナコ─試験用紙紛失(不合格)
アズサ─試験用紙紛失(不合格)
コハル─試験用紙紛失(不合格)
ヒフミ─試験用紙紛失(不合格)
補習授業部、第2次特別学力試験─全員不合格
・・・・・
その日。
何事もなく合宿所に帰ると、コハルの口から不満が漏れた。
コハル「もう嫌っ!!」
コハル「こんなことやってらんない!分かんない!つまんない!めんどくさい!」
コハル「それもこれも、全部先生のせい!!」
バージル「・・・・俺のせいだと?」
ハナコ「コハルちゃん。あくまで先生は私たちを助けるために来てくださってるんですし・・・・そもそも勉強が分からないの試験に落ちたのも、先生ではなくコハルちゃん自身のせいで」
ハナコの言葉に、コハルは言葉を失う
コハル「うっ・・・・で、でも、私は正義実現委員会の一員だから!それで、授業に出られないことが多くて・・・・」
アズサ「それは他の正義実現委員会のメンバーも同じだ。でもここにきてるのはコハルだけ」
ハナコ「なるほど。つまりアズサちゃんが言おうとしているのは、ただただコハルちゃんがおバカさんだからですよ、ということで合ってますか?」
コハル「うるさいなぁっ!?そんなこといったらあんたたちもみんな一緒じゃん!私がバカならここいる全員バカでしょ!!!!」
コハルはヒフミを指差す
コハル「あんたも!」
次にハナコへ
コハル「あんたも!!」
そしてアズサ
コハル「あんたも!!!」
最後に、勢いよくバージルに指さす
コハル「あんたも!!!!」
バージル「俺を阿呆と一括りにするな」
コハル「はぁ!?」
ヒフミ「あう・・・・こ、コハルちゃん、ちょっと落ち着いて・・・・」
コハル「落ち着いてなんていられないわよ!みんな仲良く退学になりそうな状況で・・・・」
コハル「もし退学になったら・・・・せ、正義実現委員会のメンバーじゃ、なくなっちゃう・・・・うぅ・・・・」
アズサ「もちろん私も、退学になるつもりはない。何をしてでも、例え惨めな思いをしてでも乗り越えて見せる」
ハナコ「まあまあ、退学になったからといって何もかもが終わりというわけではありませんから、気楽にいきましょう」
ヒフミ「あ、あの、え、えっと、そのために、こうして集まって退学しないよう、みんなで知恵を寄せ合って、何か良い方法を探さないと・・・・」
ヒフミ「そうしないと、一週間後には本当に仲良く全員退学、なんてことに・・・・」
ハナコ「「知恵を寄せ合う」・・・・なるほど。悪くないのですが、あまりグッと来る感じではありませんね」
ハナコ「ここは例えば、そうですね・・・・「弱くて敏感な部分を寄せ合う」、という形で」
コハル「い、いきなり何言ってんの!?下ネタはダメ!禁止!死刑!!び、敏感な部分って、何をどう寄せ合おうっていうわけ!?」
ハナコ「ああ、ちょっと分かりにくかったですか?では、実際にやってみせましょうか。もう少しこう、脚を開いていただいて・・・・」
コハル「・・・・え?えっ!?」
コハル「や、やめて!近づかないで!知らないし分かりたくもないしまだ早いからっ!!」
ハナコ「えいっ♡」
コハル「や、やめっ・・・・やめてぇっ!」
コハル「わっ、私が悪かったです先輩相手にため口ですみませんでした!」
アズサ「なるほど、そういう制圧術もあるのか。白兵戦で使えそうだ・・・・勉強になった」
アズサ「ただ、無駄な動作が多い気がするな。私ならあと2テンポ前の段階で、関節をきめてる」
バージル「・・・・一体何を魅せられているんだ?」
ヒフミ「そ、それよりも、このままだと本当に・・・・私たちみんな、退学に」
その後、補習授業部は第3次特別学力試験に向け、日々努力を重ねていった。
目標の90点は、あまりにも高い
第4次補習授業部模試、結果──
ハナコ─100点(合格)
アズサ─82点(不合格)
コハル─74点(不合格)
ヒフミ─79点(不合格)
だが、確実に点は伸びている
第5次補習授業部模試、結果──
ハナコ─100点(合格)
アズサ─94点(合格)
コハル─90点(合格)
ヒフミ─93点(合格)
全員、合格ライン突破
第6次補習授業部模試、結果──
ハナコ─100点(合格)
アズサ─91点(合格)
コハル─83点(不合格)
ヒフミ─89点(不合格)
合格ラインは、満点に限りなく近い。
わずかな揺らぎが、明暗を分ける
そして
最後の特別学力試験まで、あと1日となった