悪魔と青春の記録   作:黒凪カズキ

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mission22~こくはく~◎

~先生の部屋~

 

ヒフミ「こ、こんばんは、先生」

 

バージル「阿慈谷か、まだ起きていたのか」

 

ヒフミ「はい、少し眠れなくて」

 

ヒフミが部屋に入って、少しすると

 

ハナコ「私も来ちゃいました♡」

 

ヒフミ「ハナコちゃん……」

 

すると、扉がもう一度開いた

 

コハル「みんな何してるの……」

 

ヒフミ「コハルちゃんまで……」

 

コハル「明日は試験なのに、何してるのよ。休むことも大事だって言ったのはそっちでしょ?」

「なんかアズサも、どっか行っちゃったみたいだし……まあ、緊張する気持ちはすごく分かるけど」

 

ハナコ「……実は先ほど、シスターフッドの方々に少しあってきたんです。色々と調べたいことがあって…」

「明日、私たちが試験を受ける予定の第19分館についてなのですが……」

 

ヒフミ「ま、まさかまた場所が変わって……!?」

 

ハナコ「いえ、そうではありません。ただそこはこの後、かなりの数の正義実現委員が派遣されて、建物全体を隔離するとのことです」

 

コハル「!!?」

 

ヒフミ「建物全体を……?」

 

ハナコ「「「エデン条約に必要な重要書類を保護する」という名目でティーパーティーからの要請があり、建物全体を正義実現委員会として守る厳戒態勢に入ったとか」

「それから、どうやら本館の方にも戒厳令がでているようです」

 

ヒフミ「戒厳令…そんなの聞いたの初めてです……」

 

コハル「ちょっ、ちょっと待って!そしたら私たちの試験はどうなるの!?」

 

ハナコ「……つまり、こういうことです。試験を受けたいのであれば、正義実現委員会を敵に回せ、と…」

 

コハル「そ、そんな…わ、私がハスミ先輩に事情を説明して……!」

 

ハナコ「…難しいと思います。ハスミさんには裏側の理由は知らされていないでしょうし。ハスミさんが私たちを助けたら、それはティーパーティーに対する明確な離反と同義。ハスミさんも正義実現委員会から追放されてしまうのではないでしょうか」

「全く…どうやらナギサさんは本気で、私たちを退学にさせようとしているようです」

 

ヒフミ「どうして、そこまで……」

 

その時、扉が開く

 

アズサ「……私のせいだ」

 

ヒフミ「アズサちゃん!?ど、どこに行ってたんですか……?」

 

アズサ「みんな、聞いて。話したいことがある」

 

コハル「アズサ…?ど、どうしたの?具合でも悪いの?」

 

アズサ「……みんなにずっと、隠していたことがあった」

「でも、ここまで来たらもうこれ以上隠しておけない……」

「……ティーパーティーのナギサが探してる「トリニティの裏切り者」は、私だ」

 

ヒフミ「……はい?」

 

コハル「え?きゅ。急に何の話……?」

 

アズサ「私はもともとアリウス分校の出身。今は書類上の自分を装って、トリニティに潜入している」

 

ヒフミ「……あ、アリウス?潜入…?」

 

コハル「えっと…何それ?アリウス…?どういうこと?」

 

ハナコ「アリウス分校…かつてトリニティの連合に反対した、分派の学園です」

「その反発のせいでトラブルとなり、そのあとはキヴォトスのどこかに身を潜めてひっそりと過ごしていると聞きましたが……」

 

アズサ「そう、私はここにくるまで、ずっとアリウスの自治区にいた」

「アリウスとしてその任務を受けて、今はこうしてこの学園に潜入している……」

「その任務というのは…ティーパーティーの桐藤ナギサ、彼女のヘイローを破壊すること」

 

ヒフミ「……っ!?」

 

コハル「嘘でしょ!?そ、それってつまり……」

 

アズサ「……アリウスはティーパーティーを消すためなら、何でもしようという覚悟でいる」

「明日の朝、アリウス分校の生徒たちがナギサを狙ってトリニティに潜入する」

「……私は、ナギサを守らなきゃいけない」

 

ヒフミ「あ、明日……!?」

 

コハル「ま、待って!よ、よくわかんないけどアズサはティーパーティーのやっつけに来たんでしょ?なのに守るってどういうこと?話が合わないじゃん!」

 

アズサ「それは……」

 

ハナコ「……アズサちゃん自身は、最初からその目的でトリニティに来た。そういうことですね?」

「最初からナギサさんを守るために、ナギサさんを襲撃する任務に参加した・・・・いわば、二重スパイ」

「アリウス側には連絡係として、常に問題ないとずっと嘘の報告をしながら・・・・本当は裏切るための準備をしていた」

「……どうして、ナギサさんを守ろうとするんですか?それは、誰の命令で?」

 

アズサ「……これは誰かに命令されたわけじゃない。私自身の判断だ」

「桐藤ナギサがいなければ、エデン条約は取り消しになってしまう。あの平和条約が無くなればこの先、キヴォトスの混乱はさらに深まるだろう」

「その時また、アリウスのような学園が生まれないとは思えない……」

 

ハナコ「だから平和のために、ということですか?」

「…とっても甘くて、夢のような話ですね。今回の条約の名前と同じくらい、虚しい響きです」

 

ハナコ「アズサちゃんは嘘つきで、裏切り者だった……」

「トリニティでも本当の姿を殺し、アリウスでも本音を隠していた。アズサちゃんの周辺には、アズサちゃんに騙された人たちしかいなかった、ずっと周りの全てをだましていた……そういうことで合ってますか?」

 

ヒフミ「ハナコちゃん……」

 

アズサ「……いつか言ったとおりだ。私はみんなのことも、みんなの信頼も・・・・みんなの心も、裏切ってしまうことになる、と」

「だから、彼女が探している「トリニティの裏切り者」は私。私のせいで補習授業部は、こんな危機に陥っている」

「本当にごめん。私のことを恨んでほしい。今のこの状況は全て、私がもたらしたことだから……」

 

ハナコ「ですがアズサちゃんは、私たちにこうして本心を語ってくれました。黙り続けることもできたはずなのに、謝ってくれました」

「……ごめんなさい、先ほどのは何といいますか、どうしても意地悪したくなってしまったんです。アズサちゃんの真っすぐな顔を見ていると、何だか心が落ち着かなくなってしまって」

「……しかしアズサちゃんは、そうしませんでした」

 

ハナコ「その理由を、私は知っています」

「……補習授業部での時間があまりにも楽しかったから。そうではありませんか?」

「みんなで一緒に勉強したり、ご飯を食べたり、お洗濯をしたり、お掃除をしたり…何をしても楽しいことばかりだったから」

 

「だから、この楽しい時間を壊したくなかった」

「目標に向かってみんなで努力すること…みんなで知らなかったことを学んでいくことが、楽しかったから…」

「違いますか、アズサちゃん?」

 

アズサ「…それは…私は…いや、うん」

「そうかもしれないな」

「何かを学ぶということ、みんなで何かをするということ……その楽しい時間を、私は手放せなかった……」

「……まだまだ知りたいことが、たくさんある」

 

ヒフミ「アズサちゃん……」

 

ハナコ「何だか知ったような口を聞いてしまいましたが……分かるんです、その気持ち。何せ…はい。同じように思った人が、いたんです」

「なぜか要領が良くて、何をしても周りからおだてられてしまうようなタイプで……」

「その人にとってトリニティ総合学園は、嘘と偽りで飾り立てられた、欺瞞に満ちた空間でした」

「誰にも本心を話すことができず、誰にも本当の姿を見せることができないまま……」

 

ハナコ「その人にとって、全てのことは無意味で…学校を、辞めようとしていたんです」

「何せそのままの生活を続けることは、監獄にいるのと同じでしたから」

「ですが…その人はアズサちゃんを追いました」

「話は一瞬変わりますが…アズサちゃんは実際に今回の事が終わったら、この学園での生活は終わってしまうんですよね?」

「そもそも書類を偽装して入っていたわけですし、アリウスのことも最後には裏切るのだとしたら、最終的には帰る場所も戻る場所も無いということですよね?」

「それを知っていたはずなのにアズサちゃんは……補習授業部で、いつも一生懸命でした」

 

ハナコ「その人は試験をわざと台無しにして、学園から逃げようとしていたのに…一方のアズサちゃんは、短い学園生活に全力でした」

「どうしてそこまでするのでしょう、そこに何の意味があるのでしょう・・・・」

「アズサちゃんがいつも口癖のように言っていた通り、全ては虚しいもののはずなのに」

「ですが同時に……アズサちゃんはその後ろに、いつも言葉を付け加えていました「最善を尽くす」「抵抗する」」

「そうして……ようやく、その人も気づいたんです」

 

「……学園生活の、楽しさに」

 

「下着姿でプール掃除をしたり、みんな水着で夜の散歩をしたり、裸で色々なことを打ち明けあったり……自分をさらけ出せる人たちと、そういったよくあることを全力でするということが、こんなにも楽しかったんだ」

 

アズサ「うん……いや、裸ではなかったけど……」

 

ハナコ「ふふ……アズサちゃんの言っていた通りです。虚しいことだとしても、最後まで抵抗をやめてはいけませんね」

 

アズサ「ハナコ……」

 

ハナコ「アズサちゃん、もっと学びたいでしょう?もっと知りたいんでしょう?」

「みんなで色んなことをやってみたいって、あの時話したじゃないですか。海に遊びに行くとか、ドリンクバーで浸って夜更かしとか」

「それを、諦めてしまうんですか?」

 

「……何も諦める必要はありません」

 

「桐藤ナギサさん……彼女を、アリウスの襲撃から守りましょう」

「そして私たちは私たちで無事に試験を受け、合格するのです。後からどんな文句も言えないように、かけておいた罠はそのままに……」

「それでも試験会場に辿り着き、みんなで90点以上を取って、堂々と合格するんです」

 

「それが今の私たちにとって救いとなる、唯一の答えではありませんか?」

 

アズサ「でも、どうやって、試験は9時から。アリウスの作戦開始時刻もまた、同じ時間に予定されている」

 

ヒフミ「ほ、他の方たちに助けを求めるとか……?」

 

ハナコ「…それもそうですが…私たちがしっかりと試験に合格するためには、それだけでは足りません」

「…まずは、私たちの方から動きましょう」

「これまで様々な嘘や策略の中で弄ばれてきましたが…今度は私たちの方から仕掛ける番です」

 

「なんせ今ここには正義実現委員会のメンバーと、ゲリラ戦の達人と、ティーパーティーの偏愛を受ける自称平凡な人と、トリニティのほぼ全てに精通した人がいます」

 

ヒフミ「へ、偏愛……!?」

 

ハナコ「そのうえ、「シャーレ」のバージル先生までいます。ですよね?」

 

腕を組んだまま、バージルは静かに頷いた

 

ハナコ「この組み合わせであれば、きっと」

「……トリニティくらい、半日で転覆させられますよ♡」

 

ヒフミ「……はい!?」

 

コハル「えっ、どういうこと!?何をする気!?」

 

アズサ「……」

 

ハナコ「何をするも何も、試験を受けて合格するだけです♡」

 

バージル「……手立てはあるか?」

 

ハナコ「はい、作戦内容は、私にはお任せください」

「さあ、今こそ力を合わせる時です。行きましょう!」

 

・・・・・

 

作戦は簡単

 

アリウスが動き出すよりも早く、ハナコとアズサは行動を開始した。

トリニティの内部事情。ナギサのセーフハウス。そして、その行動パターン。

 

それらを知り尽くした少女たちは、先手を打つ。

 

二人は、アリウスの襲撃よりも先にナギサを確保する。

 

深夜の静寂の中。

迅速、かつ正確に標的を制圧。

 

ナギサは抵抗する間もなく拘束された。続いて精神を揺さぶる言葉が浴びせられ、心は大きく崩れた。

その直後、近距離での銃撃が数発放たれ、現場は沈黙した

 

その後に、ナギサを安全な場所へと隠した上でアズサが迫り来るアリウス部隊を迎え撃つ。

 

学園各所には、アズサが仕掛けた無数のブービートラップ。

通路、校舎の陰、塹壕、狙撃位置に張り巡らせた罠を侵入してきたアリウス部隊に、一つ一つにひっかけていく。

 

典型的なゲリラ戦だった。

 

それでも、アリウスの部隊は前進を止めず、数を削られながらも索敵を続ける。

 

そして補習授業部は、体育館周辺へと追い詰められた。

 

アリウスの指揮官「……なるほど、逃げたのではなく待ち伏せだったと」

「だが、それだけか?」

「たった四人で私たち相手に、何分耐えられると思っているのだ。こんな退路も無い場所で!」

 

アズサ「その通り、もう退路はない。お前たちは逃げられない」

 

ハナコ「ですね、袋のネズミといったところでしょうか♡ふふっ」

 

アリウス部隊「???」

 

体育館の唯一の出入口にバージルが立ち、アリウス部隊の退路は完全に断たれた

 

バージル「……」

 

アリウスの指揮官「っ!」

 

ハナコ「ご存かはわかりませんが……補習授業部の担当であり、「シャーレ」の顧問の先生です」

 

アズサ「もう逃げも隠れもしない殲滅戦を始めよう」

 

アリウスの指揮官「舐めるな!」

 

・・・・・

 

アズサ「全員戦闘不能」

 

ヒフミ「あうぅ、なんとか勝てました」

 

コハル「ていうか先生も少しは手伝ってくれてもいいじゃん!」

 

バージル「お前達だけでも事足りるだろう?」

 

コハル「むぅぅぅ……」

 

ヒフミ「まぁまぁ、コハルちゃん」

 

ハナコ「では難所をひとつ乗り越えたところで、次のフェーズに移りましょうか」

「この後アリウスの増援部隊が到達するでしょう、ですが私たちは時間を稼ぐだけで大丈夫です」

「正義実現委員会の部隊がここに到達するまでの間、それまで時間を稼げれば……」

 

コハル「あ、ハスミ先輩には連絡しておいた!すぐ返事来るはず!」

 

ハナコ「はい、ありがとうございます♡……ティーパーティーの命令下にある正義実現委員会が動けるとしたら、それはティーパーティーの身辺に問題が生じた時だけ」

「定期連絡とかもあるでしょうし、きっと今頃ハスミさんたちはナギサさんになにかがあったことには気付いたはず」

 

「それに合せてコハルちゃんからの連絡…少なくとも状況を確認するために動き出すまで、そうそう時間はかからないはずです」

「あとは、早く来てくれることを願うばかりですが…」

 

そのとき、体育館の壁が爆破され、新たなアリウス軍勢が突入してきた。

 

アズサ「…数が多い、大隊単位だ。多分、アリウスの半数近くが…」

 

ヒフミ「あうぅ…!こ、これだけたくさんの方が、平然とトリニティの敷地内に……!?」

 

ハナコ「まだ、正義実現委員会が全く気配が無い……?」

 

???「それは仕方ないよ」

 

アリウスの列の奥で、一人の少女が静かに前へ歩み出た。

 

ミカ「私があらためて待機命令を出したから」

「今日は学園が静かだったよね。正義実現委員会以外にも、邪魔になりそうなものは次善の策で片づけておいたの」

「ティーパーティーの命令が限り全てのところに、色んな理由を付けて足止めしておいたから」

「ナギちゃんを襲うときに、邪魔なんてされたら困っちゃうもんね」

 

「まあ簡単に言うと、黒幕登場☆ってところかな」

 

「私が本当の「トリニティの裏切り者」というわけで、ナギちゃんをどこに隠したのか教えてくれる?私も時間が無くってさ」

 

バージル「その動機は何だ?」

 

ミカ「んー?理由?そうだなぁ、じゃあ特別に教えてあげるね、それはね……ゲヘナが嫌いだからだよ」

 

ハナコ「だから、エデン条約を取り消そうと?そのためにナギサさんを……?」

 

ミカ「えっと……誰だっけ?ごめんね、私あんまり顔を覚えるの得意じゃなくってさ」

「……あぁ、思い出した。浦和ハナコじゃん。礼拝堂の授業に水着で参加して追い出された、あの。夏かいいねぇ」

 

「まあ、一応答えてあげるとその通りかな。だってナギちゃんが、エデン条約だなんて変なことをしようとするからさぁ」

「ゲヘナのあんなやつら、絶対裏切るに決まってるじゃんね?背中を見せたらすぐに刺されるよ?」

 

「そんなこと、させるわけにはいかない」

「ナギちゃんもほんと、優しすぎるっていうか……創作の中の明るい学園物語じゃないんだし。そんな都合の良い話、現実には存在しないのに」

 

バージル「……あの時の話は全て虚言か」

 

ミカ「うーん、あの時話したことは、全部が全部嘘ってわけじゃないよ」

「私がアリウスと和解したかったっていうのは、本当のこと」

「この子たちは、同じゲヘナを憎む仲間」

 

「アリウスだって元々トリニティの一員。この子たちもゲヘナに対する憎しみはすごいよ、私たちに勝るとも劣らないぐらいに。だから手を差し出したの。志を共にして、ゲヘナと平和条約を結ぼうとする悪党たちをやっつけない?って」

 

アズサ「アリウスは最初から、トリニティのクーデターの道具だった……?」

 

ミカ「うん?……うん、確かに。これはクーデターとも言えるかもね。最終的にナギちゃんを失踪させて、私がティーパーティ―のホストになるんだから」

「ありがとう、白洲アズサ。私はあなたのことをあまり知らないけれど、私にとって大事な存在であることは変わらない、だって今からあなたには、ナギちゃんを襲った犯人になってもらわないといけないからね」

 

バージル「……」

 

ミカ「……そういうわけだから、ナギちゃんを返してくれる?先生」

 

バージル「……断ると言えば?」

 

ミカ「そのときは力づくでも返してもらおうかな?」

 

バージル「……相手してやろう」

 

アズサ「……先生」

 

バージル「分かっている」

 

ミカ「あはっ。先生も強いって風の噂で聞くけど、さすがに誇張だと思うし。それに――私、結構強いんだよ?」

 

言葉が終わると同時に、ミカは一気に距離を詰めた。 間合いに入るや否や、バージルの胴体めがけて拳を振るう

 

しかしバージルはそれを目で追い、突き出された拳を片腕で受け止めた。 拳と腕が衝突した瞬間、鈍い音が鳴る

 

まるで鋼鉄の壁を殴ったかのように、ミカの腕はぴくりとも動かなかった

 

バージル「……見た目の割に重い拳だ」

 

ミカ「でしょ? でも先生もすごいね。大抵の人は今ので骨が粉砕されるのに、耐えきれるなんて」

 

ミカはすぐに距離を取る。 だがバージルに動きはない。

 

先手を取るように、ミカは腰のサブマシンガンを引き抜くと、間髪入れず引き金を引き、乾いた銃声を連続して響かせた

 

飛来する弾丸をバージルは躱しながら、ミカへ進み続ける。 目前まで迫ると脚を振り上げ、サブマシンガンを蹴り上げた。 鋭い蹴りによって、武器はミカの手元から弾き飛ばされる。

 

ミカの体勢がわずかに崩れる。 だがすぐに立て直し、間髪入れず拳を繰り出した

 

バージルはそれを手首で払い、受け流す。 そして半歩だけ後ろへ退き、距離を取った

 

ミカも無理には追わず、様子を見る。 バージルは動かない。ただ静かに、ミカを見つめていた。

 

ミカは、わずかな違和感を覚えながらも、 視線をバージルから外さぬまま、先ほど蹴り上げられたサブマシンガンへ歩み寄る。 ミカは不満げに銃を拾い直す。質問めいた声を投げる

 

ミカ「なんで受け身ばっかりで、全然攻めてこないの?」

「先生は多彩な剣?みたいなものを扱うって聞いてたけど、使わないの?」

「……使えない理由があるのかな?それとも手加減してる? …それとも、何か企んでる?」

 

バージル「……ふん、使う必要がないだけだ」

 

ミカ「ふーん……じゃあ、これならどうかな?」

 

またもミカは一歩距離を取る。 先ほどと同じように銃火器をばら撒いてくる――バージルはそう内心で考えた。

 

だが、その予想は外れる。

 

ミカは銃を構えないどころか、サブマシンガンを持たない手を軽く持ち上げた

 

手で銃の形に作ると―― バージルへ向けて、指先を突きつける。

 

すると、上空から風を裂く音が微かに聞こえた。 バージルは疑問を覚え、視線を上へ向ける

 

直後――天井が轟音と共に突き破られた。 崩れ落ちる瓦礫の中から、巨大な隕石が一直線に降り注ぐ

 

ミカの「バキューン☆」という声と共に、隕石がバージルの位置へ叩きつけられた。

体育館に凄まじい衝撃が走り、地面が揺れ、煙と土埃が激しく舞い上がった

 

アズサ「先生!」

 

ミカ「あちゃー、ちょっとやりすぎちゃったかな?」

 

隕石が衝突した周囲には、まだ煙が立ち込めていた。

 

やがて煙がゆっくりと上へ流れていく。

 

その奥に――人影がうっすらと浮かび上がり、やがて姿がはっきりと現れた。

 

そこに立っていたのは、大剣──ミラージュエッジの刀身で隕石を受け止めていた男だった

 

その衝撃を受け止めた足元では、地面が耐えきれず砕けている

 

だが当のバージルは、微動だにしていなかった

 

ミカ「えー………それ受け止めちゃうの?」

 

ミカの目が一瞬大きく見開き、驚きと少し呆れたような声で言った

 

バージルはミラージュエッジの持ち方を変えると、防いでいた隕石を一刀両断する

 

隕石は真っ二つに割れ、左右へと崩れ落ちる

 

バージル「なるほど、これが奥の手か」

 

二つに割れ落ちた隕石の中央に、バージルが立つ

 

手にしていたミラージュエッジは、青い粒子となって散って消える

 

崩れ陥没した床の瓦礫の中から、コートについたホコリを軽く払いながらバージルが姿を現した

 

ヒフミたちが、バージルの安否を確かめるように駆け寄ってくる

 

ヒフミ「だ、大丈夫ですか、先生……?」

 

バージル「………平気だ」

 

アズサ「改めてすごいな」

 

コハル「ど、どんな体をしてるのよ」

 

ミカ「……なるほどねー。これが『シャーレの先生』か。確かに大げさな噂ってわけでもないみたいだね」

「気絶……まではいかなくても、せめて無力化できるとは思ってたんだけど」

「ここまで私の攻撃が何一つ通用しないなんて、自信なくしちゃうなー」

 

「…………先生に一つ疑問があるんだけど、聞いていい?」 

 

バージル「……なんだ?」

 

ミカ「先生は今、何の為にこうして戦ってるの?」

 

バージル「……どういう意味だ?」

 

ミカ「いやー、先生は確かに生徒絡みだと冷たいながらも手を差し伸べてくれたりするけど、薄情というか、突き放してるというか……」

「そんなに強いのに、なんで先生をやっているのかな?って」

 

バージル「……さあな。気づけば、そうしていただけだ」

 

ミカ「ふーん……自分でも分かってないんだ」

「でもさ、変に邪魔しないでほしいなあ、セイアちゃんも、ナギちゃんもいなくなれば、始められるのに──」

 

ハナコの顔が強張る。

ハナコ「……!ミカさん、一つ聞かせてください!セイアちゃんを襲撃したのも、あなたの指示だったんですか!?」

 

ミカ「うん、私の指示だよ。セイアちゃんってば、いつも変なことばっかり言って、楽園だのなんだの、難しいことばっかり」

「でもヘイローを破壊しろとは言ってないよ。ただ卒業するまで、檻の中に閉じ込めておいた方が良いなって思っただけ。でも、自然とああなっちゃったの」

 

ミカ「それ以上は、当事者に聞いた方が早いんじゃないかな?……ねえ、白洲アズサ」

「セイアちゃんがあんなことになっちゃったのが、ここまで事態が大きくなったきっかけなんだよ?そこからもう色んな事がどうしようもなくなっちゃたわけだし……ねえ、その辺りどう思う?」

 

アズサ「そ、それは……」

 

ヒフミ「アズサちゃん……?それはいったい、何のお話、ですか……?」

 

アズサ「……あ、あれは」

 

ミカ「まぁ、だから私は、ここまで来て、「おとなしく降参します」なんてわけにはいかないの」

「……もう、行くところまで行くしかないの」

 

その瞬間、どこか遠くで爆音が鳴る。建物が揺れ、体育館の壁に大きな破裂音が走った。

 

ミカ「んー?今度は何?」

 

アリウスの生徒「トリニティの生徒が一部、こちらへ向かってきています!」

 

ミカ「……?なんで?ティーパーティーの戒厳令に背くような人たちは、もう……」

 

ハナコ「……いますよ。ティーパーティーにも命令できない、独立的な集団が」

 

アリウスの生徒「確認できました、大聖堂からです!ということは……シスターフッド」

 

ミカ「シスターフッド……!?っ、浦和ハナコ……!」

 

ハナコ「……まぁ、ちょっとした約束をしましたので」

 

ミカ「約束……?」

 

ハナコ「あなたは知らなくても良いことですよ、ミカさん」

 

ハナコの言葉の後に体育館の壁が爆発した後に煙が晴れると、シスターフッドがゆっくりと姿を現した

 

マリー「げほっ、今日も平和と安寧が、みなさんと共にありますように……げほっ」

 

ヒナタ「す、すみません、お邪魔します……」

 

サクラコ「シスターフッド、これまでの慣習に反することではありますが……ティーパーティーの内部に、介入させていただきます」

「ティーパーティーの御園ミカさん。他のティーパーティ―メンバーへの障害」

 

ミカ「シスターフッド、歌住サクラコ……」

 

ハナコ「……ようやく顔色が変わりましたね、ミカさん。いえ、もっと正確に言えば、先生との戦闘を終えたあたりからでしょうか?」

 

ミカ「……どうして?」

「セイアちゃんが襲撃された時だって、動かなかったのに……今このタイミングシスターフッドが介入するなんて、冗談にもほどがあるよ」

 

ミカ「……何を見誤ったのかな」

「……いや、シャーレの先生、あなたを連れてきた時点で私の負けだった、正直、舐めすぎちゃった」

 

ハナコ「ミカさん、セイアちゃんは……」

 

ミカ「……本当に、殺すつもりじゃなかったの。今の私が何を言っても言い訳になるけど……」「多分、事故だった。セイアちゃん、元々身体が弱かったし……それに……」

 

ハナコ「……セイアちゃんは無事です」

 

ミカ「……!?」

 

ハナコ「襲撃の犯人が見つからなかったので、安全のためというのもあって・・・・トリニティの外で身を隠して」

 

ミカ「セイアちゃんが…無事…?」

 

ハナコ「はい。傷が治らなくて、まだ目が覚めていないのですが……救護騎士団長が、今もすぐそばで守ってくれています」

 

ミカ「ミネ団長が……?」

 

ハナコ「はい。そしてあの時、セイアちゃんを助けてくれたのは……」

「……いえ、これは直接ご本人の口からが良いでしょう」

 

ミカ「……そっか。生きてたんだ」

「……良かったぁ」

 

「……降参。私の負けだよ」

「おめでとう、補習授業部……そして先生。あなたたちの勝ちってことにしておいてあげる」

 

「もう何でもいいや、私のことも好きにして」

「……アズサちゃん。自分が何をしてるのか、その結果この先どうなるのか。それは分かってるんだよね?」

 

アズサ「もちろん」

 

ミカ「……トリニティが、あなたのことを守ってくれると思う?」

「これからずっと追われ続けるよ。ずっと、どこに行っても」 

「……あなたが安心して眠れる日は、来るのかな?」

「……それに、サオリから逃げ切れると思う?アリウスの出身ならもちろん知ってるよね、et omnia vanitas…」

 

アズサ「うん、分かってる。それでも私は最後まで足掻いてみせる、最後のその時まで」

 

ミカ「……うん、そっか」

 

・・・・・

 

ミカは正義実現委員会の子達に引き渡され、連れていかれようとしている

 

バージル「……」

 

ミカ「……見送ってくれるの?先生」

「……やっぱりシャーレを巻き込んだのが、一番のミスだったかな」

「一つ聞いていい先生?」

 

バージル「……言ってみろ」

 

ミカ「もし私が酷い目に合った時、今まで先生が助けた子達みたいに手を差し伸べてくれるのかな?」

 

バージル「物事の発端にもよるが……してやらんこともない」

 

ミカ「……ふふ、先生って案外優しいんだね。私、少し勘違いしてたかも」

「……でも、ちょっと嬉しいかな。一度は先生と敵対したのに……こんな私でも、まだ先生の生徒なんだって思えるから」

「じゃあ、バイバイ、先生」

 

そうしてミカは、正義実現委員会の生徒たちに連れられていった

 

・・・・・

 

ヒフミ「あ、あうぅ……もう色々あり過ぎて、疲労困憊です……」

 

ハナコ「ようやく落ち着きましたね」

 

コハル「うん……」

 

ヒフミ「でもこれでようやく……」

 

アズサ「何を言ってるのヒフミ、ここからがスタートだ」

 

ヒフミ「……はい?」

 

ハナコ「あー……」

 

ヒフミ「そ、そうでした、試験が……」

 

コハル「……忘れてた」

 

バージル「もう時間がないだろう?早くいってこい」

 

補習授業部「「はい」」「「うん」」

 

第3次特別学力試験、結果──

 

ハナコ─100点(合格)

アズサ─97点(合格)

コハル─91点(合格)

ヒフミ─94点(合格)

 

補習授業部─全員合格

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