~???~
バージル(・・・・ここはどこだ)
???「・・・・初めまして、かな。先生」
セイア「私の名前は百合園セイア」
セイア「そしてここは――君の夢の中・・・・あるいは、私の夢の中かもしれないがね」
バージル「・・・・」
セイア「・・・・? もしかして、“初めまして”ではないのかな?」
セイア「これは失敬。今の私にとって、時間の流れは少しばかり捻じれていてね」
セイア「だが先生――大事なのはそこではない」
セイア「少し、話をしようか」
バージル「・・・・聞きたいことは山積みだが、ひとまず置いておく」
バージル「手短に話せ」
セイア「そうだな、まず先生。契約、取引・・・・そういった『約束事』の持つ重要性については知っているだろうか」
バージル「あぁ、知っている」
セイア「なら、話は早い。『エデン条約』、これも学園間で行われる約束事である」
セイア「しかし、この場所で行われる『特別な場所』・・・・」
セイア「そして条約締結のために集まった、代表者たちの資格」
セイア「こういった要素により、これは大きな意味を持つ『約束』となった。歪曲されつつも、これは明らかに『公会議』の再現」
セイア「そしてその約束である『戒律』を守護するユスティナ聖徒会を、特殊な方法で『複製』として顕現させた」
セイア「つまるところ、契約を曲解し、歪曲し、自分たちの望む結果を捏造した」
セイア「形式的な話から離れると、つまるところ・・・・アリウスの背後には『ゲマトリア』がいる。そしてアリウスは、死ぬことも尽きることもなく、強大な軍勢を手に入れた」
セイア「その軍勢によって、今、先生は何かしらの影響を受けた・・・・」
セイア「と、これまでが私が夢を通じて観測し、知ったことだ」
セイア「・・・・そして今も、視えている」
セイア「あぁ。だがその後、アリウスが条約を歪め、自分たちに都合のいい形で維持している」
セイア「その均衡の中心にいるのが、同じアリウス分校の──秤アツコだ」
バージル「・・・・要するに──」
バージル「秤アツコを失えば、その均衡も崩れる、ということか」
セイア「・・・・あぁ。少なくとも、今の形では保てなくなるだろうな」
セイア「たとえヘイローが破壊されずとも、ユスティナ聖徒会の影響力は確実に揺らぐ」
セイア「現に、つい先ほど、アズサがアツコに向けてヘイロー破壊爆弾を使った」
バージル「・・・・は?」
セイア「おっと、すまなかった。私は今、現に起きていることを視ている」
セイア「断片的ではあるがね」
バージル「・・・・その秤アツコはどうなった?」
セイア「無事らしい。何者かに守られたようだ」
セイア「白洲アズサの覚悟により、アツコは負傷した。ユスティナ聖徒会の力は弱まったが、依然として存在している」
セイア「しかし、今が最悪な状況であることに変わりはない」
セイア「ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナはどこかへ消え、ハナコは逮捕されようとしている。そしてミカは釈放されつつある」
バージル「・・・・待て。事が一度に起こり過ぎている」
セイア「そのまま、手っ取り早く伝えただけだよ」
セイア「それに、先生が手短に話せと言ったではないか」
バージル「・・・・」
セイア「それと――今、私が観測している範囲の出来事を話そう」
・・・・
セイア「――といった状況だ」
バージル「・・・・なるほどな」
セイア「これが物語の結末だ」
セイア「何もかもが虚しく、すべてが破局へと至るエンディング」
セイア「この先にあるのは、ただ苦痛な道が連なっていくだけだ」
セイア「これは、つまるところ各位が追い詰められ、結局誰かが誰かを殺める物語」
セイア「誰かが、人殺しにならざるを得ない話だ」
セイア「不快で、不愉快で、忌まわしく、悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような――」
セイア「それでいて、ただただ後味だけが苦いお話。これが、この物語の正体だ」
大まかな状況を聞き終えたバージルは、静かに席から立ち上がる
セイア「おや・・・・行くのかい、先生?」
セイア「このバットエンディングへと至る物語へ――」
バージル「あぁ」
セイア「・・・・行く前に一つ、いいかな? 先生」
バージル「なんだ?」
セイア「君は一体何者かな?」
セイア「いや、言いたくないのなら、無理に聞くつもりはない。
だが先生、隠し事というのはいつまでも通るものじゃない」
セイア「いずれ、その力の“根源”を明かさなければならない時が来るだろう・・・・とはいえ、心配はいらないと思うよ。特に、君に助けられた生徒たちはね」
バージル「・・・・」
セイア「ふむ、長話が過ぎたね」
セイア「より良い結末になることを願って、見届けさせてもらおう」
────────────
意識が浮上する
バージル「・・・・ここは?」
セリナ「せ、先生!?目が覚めたんですね・・・・!!」
バージル(救護騎士団部室か)
ゆっくりと身体を起こす
ハナエ「ダメです!先生、まだ動いちゃ、傷が悪化してしまいます」
サオリに撃たれた箇所に貼られていたパッド付きのテープを剥がす。
その下にあったはずの銃創は――
既に塞がっていた。
――まるで、最初から傷などなかったかのように。
ハナエ「え?傷が・・・・さっきまで、確かにあったのに・・・・」
セリナ「・・・・塞がっている」
バージルは何も言わず、ベッドから立ち上がる。
一瞬だけ、状態を確かめるように、軽く体を動かした。
衰えは、既に感じられない。
確認を終えたバージルは、そのまま部屋を後にする。
ハナエ「セ、先生?一体どこへ行くつもりなんですか・・・・!?」
バージル「・・・・この状況に、片をつける」
~正義実現委員会・教室~
扉を開けると、三人の主戦派の生徒、その前に立ちはだかる下江コハル、そしてその背後で床に座り込む聖園ミカの姿が視界に飛び込んできた。
そのうちの一人が、拳を振り上げていた
バージル「おい・・・・」
その一言が、場の空気を凍らせた。
突然の声に反応し、全員の視線がバージルへ向いた
コハル「せ、先生っ!?」
ティーパーティー傘下の主戦派A「シャーレの・・・・?」
ティーパーティー傘下の主戦派B「そんな・・・・意識不明の重体だったはず・・・・!」
ティーパーティー傘下の主戦派C「どうしてここに・・・・」
バージル「・・・・お前たちこそ、何をしている」
ティーパーティー傘下の主戦派A「そ、それは・・・・」
ティーパーティー傘下の主戦派B「・・・・」
バージル「・・・・答えられないなら――」
バージル「失せろ」
ティーパーティー傘下の主戦派C「・・・・っか、帰ろう。あの先生を怒らせたら、マズいって」
その一言で、三人は言葉もなく踵を返した
コハル「せ、先生・・・・」
安堵が滲む声で、コハルは涙目のまま、バージルへ歩み寄る
バージル「・・・・それが、エリートの顔か、下江」
コハル「・・・・っ、からかわないで!」
コハルは、腕で涙を拭った。
コハル「これが──エリートの顔よ」
目にはまだ涙が残っている。だが、その表情はいつものコハルだった
バージル「・・・・そうだな」
バージルは視線をミカへ向ける
ミカ「・・・・先生」
ミカ「何ていうか、久しぶり・・・だね?」
バージル「・・・・あぁ」
バージル「・・・・なぜ無抵抗で受けていた。お前なら、反撃くらい容易いはずだ」
ミカ「・・・・なんでだろうね。償いなのかも。セイアちゃんやナギちゃんにしてきたことの・・・・」
ミカ「私はゲヘナが嫌いで──条約なんて無かったことにして、そのまま全部、終わらせようとして──」
ミカ「なのに、私は・・・・バカだから、酷いことをしちゃった・・・・」
ミカ「先生。私、セイアちゃんに・・・・ナギちゃんに会いたい」
ミカ「こんな私じゃ、ダメかもしれないけど」
バージル「・・・・良いだろう。シャーレとして引き受ける」
そう言うと、バージルはその場を後にした
バージル(・・・・どう終結させる。あの亡霊共・・・・まずはあれをどうにかするか)
ハナコ「考え事でしょうか、先生?」
バージル「・・・・浦和か。無事だったか」
ハナコ「えぇ、お陰様で。それで先生、何を悩んでいるんですか? 私でよければ、お力になりますよ」
バージル「・・・・そうだな、実は──」
・・・・・
ハナコに、セイアから聞いたユスティナ聖徒会の概要を伝えた
ハナコ「なるほど・・・・」
ハナコは少し考え込み、やがて何かを思いついたように微笑む
バージル「・・・・何か策があるのか?」
ハナコ「えぇ、これなら確実に――」
バージル「・・・・どういった内容だ」
ハナコ「ふふっ、それはですね──」
──────────────
──────────────
──────────────
バージル「・・・・なるほど。その案、借りる」
ハナコ「先生の期待に応えられて何よりです」
そのとき、シッテムの箱から通知音が鳴る
バージルはシッテムの箱を開くと
アロナ『先生!!ご無事でしたか!?』
バージル『騒がしいぞ、アロナ』
アロナ『あ、すみません・・・・』
バージル『まぁいい。それより、何か通達は来ていないか?』
アロナ『はい!それなら、先ほど一件、ゲヘナの行政官、天雨アコさんから』
バージルはシッテムの箱を操作し、モモトークを開く。
アコ『先生、こんな状況で申し訳ありませんが・・・・よろしいでしょうか』
バージル『どうした?』
アコ『委員長との連絡がつかなくなってしまって・・・・』
アコ『ですので・・・・先生に、委員長の捜索をお願いできればと』
バージル『・・・・俺を迷子センターか何かと勘違いしているのか?』
アコ『なっ。それは失礼ですよ!確かにヒナ委員長は可愛らしい見た目をしていますが、その見た目とは裏腹に、ゲヘナのトップに立つその姿はまさしく天使そのもの!他にもですね――』
バージル『・・・・空崎の長所を長文で送りつけるな』
アコ『なんですかそれは!まだこれでもまとめた方なんですよ!ヒナ委員長の良さはこれだけではなくて、他にも──』
バージルは無言で電源を落とす
ハナコ「あらあら♡ 大変そうですね、先生」
バージルは一人、その場を離れようとした――その時
バージル「・・・・阿慈谷か」
ヒフミ「先生・・・・私も、行きます」
ヒフミ「・・・・今もアズサちゃんは一人で戦っています・・・・だから・・・・」
バージル「危険な場所にも関わらずか」
ヒフミ「はい!」
コハル「私も行く!放っておくわけにはいかないでしょ!?」
ヒフミ「コハルちゃん・・・・」
コハル「わ、私は知ってる・・・!ひとりでいることとか、置いていかれることとか、それがすごく悲しいって!だから、アズサをひとりにさせられない・・・・!」
ハナコ「・・・・はい。そういうのは、寂しいですからね」
ヒフミ「なので、私は、私にできることを・・・・!」
ヒフミ「・・・・アズサちゃんを助けに行きます」
ハナコ「では、みんなで行きましょうか」
コハル「う、うん!友達を、助けないと・・・・!」
ヒフミ「アズサちゃんに会って、今度こそ・・・・」
ヒフミ「・・・・」
ハナコ「・・・・言いたいことは、伝えないとですね?」
ヒフミ「・・・・はい」
ヒフミ「しっかり、伝えないといけません」
ハナコ「そうですね。私も、ちゃんとすぐそばにいます」
コハル「えっと・・・・と、とにかく行くんでしょ?ほら、先生も早く」
バージル「俺は別件を片付けてから向かう」
コハル「えぇ!先生なしでどうするのよ!」
ヒフミ「大丈夫です、ここは私に任せてください」
ハナコ「さすがです、ヒフミちゃん」
コハル「え、え、何かあるの?」
バージル「無策でないなら、良いだろう」
バージルは、補習授業部と一時的に別行動を取ることにした
・・・・・
・・・
場面は学生寮へと移る
バージルはドアベルを鳴らした
ヒナ「アコ?ごめん、少し休ませ──」
バージル「俺だ」
ヒナ「・・・・!?」
ドアが開く
ヒナ「っ、先生・・・・?」
ヒナ「・・・・無事だった、のね・・・・良かった」
バージル「・・・・身体に穴が開いた程度では、致命傷にはならん」
ヒナ「そんなわけないでしょ!?」
ヒナ「・・・・何しに来たの?」
バージル「・・・・少し話があって来た」
ヒナ「・・・・入って」
バージル「・・・・邪魔する」
バージルはヒナの室内へと足を踏み入れた
ヒナ「先生、わざわざここまで来て悪いのだけど」
ヒナ「私には、もう無理なの・・・・限界なの」
バージル「・・・・何か勘違いしているな」
ヒナ「?」
バージル「ここに来たのは、礼を言いに来た」
ヒナ「お礼?・・・・別に気にしなくていい」
ヒナ「それより──私が足手まといだったせいで、先生が被弾したのも、私が倒れたからで・・・・」
ヒナ「私があの場にいなければ──」
バージル「あの時は俺の慢心が招いたことだ。空崎はよくやった」
ヒナ「・・・・先生は強いのね」
バージル「まぁな」
ヒナ「それだけじゃない」
バージル「・・・・何がだ?」
ヒナ「・・・・先生は、メンタルも強い・・・・心も強いってこと」
ヒナ「先生だけじゃない。アコも、イオリも、チナツも・・・・それに・・・・“小鳥遊ホシノ”も」
ヒナ「みんな、私よりずっと強い・・・・けど、私は違う」
バージル「・・・・小鳥遊?」
ヒナ「アビドスの生徒会長──その遺体を発見したのは、小鳥遊ホシノだった。すごく大切な人だったはずなのに・・・・」
バージル「・・・・」
ヒナ「あれだけの苦しみを味わっているのに、彼女はまたアビドスで戦っている・・・・私にはそんなことできない・・・・」
ヒナ「私だって頑張った!!」
ヒナ「いつも我慢して、どうにかしようとして・・・・」
ヒナ「頑張っても誰も褒めてくれないし、誰も見てくれないし・・・・努力しても、風紀委員長だからできて当然だって思われて・・・・ずっと、そうだった・・・・」
ヒナ「・・・・ごめん、先生。こんなこと話すつもりじゃなかったのに」
バージル「・・・・それを周りには話したのか?」
ヒナ「話せるわけない、だって私が一番の先輩だし──ゲヘナの治安を守らなきゃいけないのに・・・・」
バージル「・・・・」
ヒナ「私の唯一の取柄は強いところだけで・・・・でも、先生は私よりも強くて・・・・」
ヒナ「ごめん、先生、なんか、変なこと言ってるよね」
バージル「・・・・なるほど、勘違いしていたようだ」
ヒナ「勘違い?」
バージル「空崎ヒナという生徒は──厳格で、隙のない人間だと思っていたがな・・・・違ったな」
ヒナ「え?」
バージル「・・・・裏を返せば、年相応ということだ」
ヒナ「・・・・・からかわないで」
バージル「・・・・?事実を言ったまでだ」
ヒナ「・・・・先生のそういうところ、直した方がいいと思う」
バージル「は?」
ヒナ「言い方は、同じ内容でも・・・・傷つく人もいるから。もう少し、オブラートに包んだ方がいいと思う」
バージル「・・・・気をつける」
ヒナ「・・・・ふふ、先生って意外と素直ね、私も・・・・少し、勘違いしてたかも」
バージル「・・・・どういう意味だ?」
ヒナ「冷たくて無愛想で、威圧感もあって・・・・正直、感情が読み取りづらくて、近寄りがたい人だと思ってたけど・・・・」
ヒナ「実際は、生徒の意思や行動をちゃんと尊重し・・・・頼めば手も貸してくれて──」
ヒナ「・・・・やっぱり、よく分からない人」
バージル「・・・・」
ヒナ「ありがとう、先生。少し元気が出た」
バージル「・・・・そうか」
ヒナ「先生・・・・もしよければだけど、今回の件を無事終えたら、たまにこうして私の本音を聞いてくれる?」
バージル「・・・・暇つぶし程度には聞いてやろう、時間があればだがな」
ヒナ「・・・・そうね、お互い忙しいからね」
ヒナは小さく笑い、それからわずかに視線を落とした
バージル「・・・・じゃあな。邪魔した」
そう言って踵を返しかけた、そのとき
ヒナ「待って!先生」
バージル「・・・・なんだ?」
ヒナ「私も手伝うわ」
・・・・・
・・・
その会話を終え、バージルは補習授業部との再合流に向かい、ヒナとは別れた
バージル「待たせた──お前ら、何故ここにいる?」
補習授業部と合流したバージルだが、そこには見知った顔達がいた
ホシノ「お!やぁ先生、お久ぁ~」
シロコ「ん、先生の顔、懐かしい」
ノノミ「そうですね、アビドスに顔を見せに来てくださらなくて、寂しかったんですよ」
セリカ「というか、心配したんだからね」
ホシノ「おやおや、セリカちゃんがまた先生にデレてる」
セリカ「はっ!?し、してないわよ」
ノノミ「セリカちゃん、可愛いですぅ」
アヤネ『まぁまぁ、皆さん落ち着いて』
アヤネ「先生、私たち対策委員会はヒフミさんに助けられました」
アヤネ「なので、今度は私たちがヒフミさんを助けに来たんです」
バージル「なるほど」
その場には、補習授業部、アビドス廃坑対策委員会、そしてアリウススクワッドが集まっていた
サオリ「・・・・まさか、先生が生きていたとは」
ミサキ「ちょっとこれは厳しいんじゃない、リーダー?」
サオリ「知ったことか。いくら集まろうが、無限に増殖する『ユスティナ聖徒会』の前では等しく無意味だ」
サオリ「先生にも通じる銃弾は、まだ残っている。この場の全員に思い知らせてやれ」
サオリ「この世界の真実を・・・・殺意と憎しみに満ちたこの世界では、あらゆる努力が無駄なのだと」
その言葉に、ヒフミは怒りを表した
ヒフミ「私は怒っています」
ヒフミ「アズサちゃんにじゃなくて・・・・あの方々に」
ヒフミ「殺意ですとか、憎しみですとか・・・・それが、この世界の真実ですとか・・・・」
ヒフミ「それを強要して・・・・全ては虚しいのだと、言い続けてきましたが・・・・」
ヒフミ「それでも、私は・・・・!」
ヒフミ「アズサちゃんが人殺しになるのは嫌です・・・・」
ヒフミ「そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです」
ヒフミ「それが真実だって、この世界の本質だって言われても、私は好きじゃないんです!」
ヒフミ「私には、好きなものがあります!」
ヒフミ「平凡で、大した個性もない私ですが・・・・自分が好きなものについては、絶対に譲れません!」
ヒフミ「友情で苦難を乗り越えて、努力がきちんと報われて・・・・辛いときは慰め合って・・・・!」
ヒフミ「苦しいことがあっても・・・・誰もが最後は、笑顔になれるような!」
ヒフミ「そんなハッピーエンドが私は好きなんです!!」
ヒフミ「誰が何と言おうとも、何度だって言い続けてみせます!」
ヒフミ「私たちの描くお話は、私たちが決めるんです!」
ヒフミ「終わりになんてさせません。まだまだ続けていくんです!」
ヒフミ「私たちの物語・・・・」
ヒフミ「私たちの、
ヒフミの言葉とともに、空に張り付いていた雨雲が消え、澄んだ青空が広がった
ヒヨリ「あ、雨雲が・・・・」
ミサキ「気象の操作・・・・?いや、これは」
ヒヨリ「き、奇跡、ですか・・・・?」
ミサキ「っ、奇跡なんて無い・・・・!」
ミサキ「まさか、戒律が・・・・?」
バージル「上手くいったか。助かったぞ、浦和」
ハナコ「ふふ」
ハナコ「連邦生徒会長が結ぶはずだった条約を・・・・その発起人の代わりに、連邦調査部『シャーレ』の先生が代行する」
ハナコ「古聖堂があったこの場所に、ゲヘナ、ティーパーティー、正義実現委員会、風紀委員会が集まっている・・・・」
ハナコ「必要な手札は、偶然にも揃っていたというわけです」
ミサキ「・・・・リーダー、ユスティナの統制がおかしくなってる」
サオリ「まさか我々と同じようにエデン条約の書き換えを・・・・?」
ヒヨリ「こ、混乱してます・・・・エデン条約機構を助けるのが戒律なのに、今はETOが二つあって・・・・」
サオリ「っ、知ったことか!!!!」
サオリ「ハッピーエンド!?ふざけるな!そんな言葉で、世界が変わるとでも思っているのか!?」
サオリ「それだけで、この憎しみが・・・・この不信に満ちた世界が、変わるというのか!?」
サオリ「何を・・・・夢みたいなことを言っている・・・・!」
アリウス分校、そしてユスティナ信徒たちは、ゲヘナの風紀委員会、トリニティの正義実現委員会、補習授業部、アビドス廃坑対策委員会によって鎮圧され、徐々にその数を減らしていく
ミサキ「リーダー。もうユスティナ聖徒会はまともに機能してない。手札もない・・・・私たちの負けだ」
サオリ「まだだ・・・・」
サオリ「まだだ・・・・古聖堂の地下に・・・・あれが・・・・」
アズサ「サオリ・・・!?」
ハナコ「何か手段が残っているような言い方でした、止めなくては!」
アズサ「・・・・私が行く」
ヒフミ「あ、アズサちゃん、私も・・・・!」
アズサ「心配しなくてもいい。だからヒフミたちは、ここで待っててくれ」
ヒフミ「で、ですが・・・・」
アズサ「先生もいる。だから大丈夫だ」
バージル「俺も来いと?」
アズサ「ダメなのか・・・・?」
バージル「・・・・分かった。最後まで付き合おう」
アズサ「ありがとう、先生」
アズサ「ヒフミ、ハナコ、コハル・・・・行ってくる」
ヒフミ「はいっ!」
ハナコ「待ってますよ」
コハル「き、気を付けてねっ!」
・・・・・
サオリ「アズサ・・・・」
アズサ「サオリ、もう終わりにしよう」
サオリ「・・・・いいだろう。全てをかけて、最後の戦いにしてやる」
サオリ「・・・・まだ私に、正面から一対一で勝てるとでも思っているのか?」
アズサ「いや、私はひとりじゃない」
サオリ「っ、先生・・・・!」
サオリ「そうか、ならば、全て片づけてやる。お前も、その大人も!」
サオリ「全てが虚しいこの世界で、真実を知れ!!」
バージル「危なくなったら、手くらいは貸してやる」
アズサ「うん、ありがとう先生」
・・・・
サオリとアズサの戦いは拮抗していた。
どちらも一歩も引かず、全力をぶつけ合う。
そして──決着。
長くも短くもない戦闘の末、
アズサはその場に倒れ込んだ。
だがサオリもまた、無数の被弾と疲労により、片膝をつく。
・・・・
倒れたアズサへと歩み寄ろうとした、その時。
サオリは懐から拳銃を取り出し、バージルへと銃口を向けた。
それは、彼に致命打を与えた拳銃だった。
サオリ「次はお前だ・・・・シャーレの先生」
その場の空気が張り詰める中――
岩陰から、アツコが姿を現した。
顔を隠していたマスクは割れ、片目が露わになっている
アズサ「アツコ・・・・」
サオリ「っ・・・・姫、どうして逃げなかった・・・・!」
アツコ「私たちの負けだよ、アズサ」
サオリ「だ、だめだ、姫!喋ると、彼女が──」
アツコ「もうやめよう、サオリ」
サオリ「・・・・やめる?」
サオリ「アリウスに帰るということか・・・・?帰ったところで、私たちは殺されるだけ・・・・」
アツコ「だから逃げよう、一緒に」
サオリ「逃げる・・・・」
アツコ「うん」
アツコ「アズサが教えてくれた」
アツコ「いつからか待っていたこれは・・・・私たちの憎しみじゃない」
アツコ「この憎しみを、私たちは習った。それからずっと、私たちのものだと思い込んでいた」
アツコ「・・・・アズサはきっと、それに気づいたんでしょう?」
アズサ「・・・・」
アツコ「アズサは色々なことを学び、様々な経験を得た・・・・」
アツコ「そして、自分のいるべき場所を見つけた・・・・」
アツコ「だから、サオリ・・・・逃げよう」
アツコ「この場から、アリウスから」
アツコ「いつの間に植え付けられた、私たちのものじゃないはずの憎しみから」
サオリ「逃げるだなんて、そんな・・・・」
その時、地の底から低い振動が響いた。
地面に亀裂が走り――眩い光が、内側から突き上がる
やがて。それは姿を現した。司祭服を身にまとった、四本腕の巨体。
一本の左手には、赤いオーラを放つ杖。もう一方の右手には、黄金に輝く杖を握っている。
残る二本の腕は、祈るように胸元で組まれていた。
明らかに――人ではない。
アズサ「こ、これは・・・・」
アツコ「・・・・まさか」
アツコ「あの「教義」が、完成した・・・・?」
バージル「・・・・」
アズサ「せ、先生、これは・・・・」
アズサ「先生・・・・?」
バージルは目を離さず、様子を窺っていると――
その存在、ヒエロニムスが動いた。
左手の杖を浮かせ、地面に突き立てる。
するとバージルの足元に、赤黒い亀裂が走る
すると地面から赤い火柱が噴き上がる。だがバージルは冷静に見極め、躱した。
バージル「敵意ありか」
ミラーズエッジを背に出現させ
一直線にヒエロニムスへと向かうも――その前に、ユスティナ聖徒会が現れる
バージル「まだいるか」
ユスティナ聖徒会がバージルの前に立ち塞がるも──
バージル「邪魔だ」
横一閃。ミラーズエッジを横に振るうと斬撃が放たれる
放たれた斬撃は、群れを薙ぎ払い、ユスティナ聖徒会は、そのまま掻き消えた。
ヒエロニムスは、もう一方の杖を地面に突き立てると
バージルの進路を先読みしたかのように――
その足元に、魔法陣が浮かび上がる。
次の瞬間、光の柱が噴き上がった。
だが――
その場に、バージルの姿はない。
ヒエロニムスはバージルを見失い、左右を見渡す。だが、その姿はどこにもない。
五感を研ぎ澄ませると、微かな音を捉え、上を見上げる。
ヒエロニムスの上空――さらに高みから、ミラージュエッジを振り下ろす。
ヒエロニムスも黙ってはおらず、両手の杖を交差させ、受け止めようとする
ミラージュエッジと杖が触れる直前――
バージルは攻撃を止める。
そのまま、一瞬で地面へ降りた。
上空からの攻撃に意識を向け、防御体勢を取り続けたまま
その胴体は、完全に無防備になっていた。
バージルは、その隙を突き、横合いから踏み込み、剣を体に突き立てる。
さらに腹部に蹴りを叩き込み、強引に距離を取った。
ミラージュエッジが突き刺さったままのヒエロニムスを、横目で見下ろす。
倒れたかと思ったが、まだ微かに動いている。
突き刺さった魔力の剣を必死に引き抜こうとしていた
とどめとして、バージルはヒエロニムスの周囲に幻影剣を出現させる。
無数の剣が体中に突き刺さり、ヒエロニムスはついに倒れた
バージル「・・・・拍子抜けだな」
バージル(結局、何だったんだか)
バージル「立てるか?白洲」
アズサ「う、うん、ありがとう先生」
バージル「・・・・アリウススクワッドは?」
アズサ「・・・・わからない。気づいたらもう・・・・」
・・・・・
・・・
・
その後、スクワッドを探したが、姿は見つからなかった
事件後
今回の事件で多くの生徒が負傷したものの、死亡者は一人も出なかった
巻き込まれた生徒たちは、後遺症もなく過ごせたようだ
そして、意識不明だったセイアは目を覚ました
誰も被害を出さずに、事件は終結した
スクワッドは・・・・近くで会話を聞いた限り、これ以上何も事を起こさないだろうと考えた
これでトリニティの一件は終わり、やっとゆっくりシャーレに戻れる――と思ったのだが
数週間後
バージル「・・・・卒業したはずだろう。なぜまた、こうして・・・・」
ヒフミ・ハナコ・コハル・アズサ「・・・・」
ヒフミ「あ、あはは・・・それが、その」
ヒフミ「ペロロ様のコンサートに参加してたのですが、実は試験日だったようで・・・・」
アズサ「次の試験範囲はまだ習ってない」
コハル「えっと、その・・・・3年生の試験を受けてみたんだけど・・・・」
ハナコ「ひとりだけ放置プレイなんて、寂しいじゃないですか♡」
バージル「・・・・」
バージルは呆れすぎて、眉間を摘まんだ
コハル「な、何!そんな反応しなくても良いじゃん!?」
ヒフミ「あ、あの、ほんとうすみません先生・・・・何だかまだこんなことになって・・・・」
ヒフミ「で、ですが今回は退学もありませんし、試験範囲もちゃんと普通なので・・・・!」
バージル「なら、いいだろう?俺がいなくても、自分たちでなんとかなるよな」
ハナコ「いいじゃないですか、先生もいればさらに楽しいですし」
アズサ「そうだな、もっと先生について知りたいから」
バージル「・・・・勉学に集中しろ」
ヒフミ「せ、せめて暇でしたらたまにで良いので教えに来てください」
バージル「・・・・気が向いたらな」
・・・・
夜中、シャーレに帰る道中
バージル「・・・・雨か」
傘をさしながら地面に溜まった雨水を踏みながら進む。雨音と足音以外の音が響かない道を歩いていると、自分以外の足音が聞こえた。歩いてきたのは
バージル「錠前サオリ・・・・」
サオリ「・・・・先生」
その目には覇気がなく、絶望に沈んだ表情をしていた
ヒエロニムスがあっけなさすぎた・・・・それだけ
本来であればこの後は「カルバノグの兎編」に入りますが、本作ではカットし、次回より第二部へと突入します