悪魔と青春の記録   作:黒凪カズキ

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mission29 ~鍵~

~エリドゥ内部・中央最上階~

 

そこではリオと通信越しだがリオが誰かと話していた

 

???『リオ・・・・あなたがやっていることは本当に忌むべき事です。直視に耐えられません』

 

リオ「・・・・ヒマリ。貴女はいつも悪し様に私の事を罵るわね。陰気だとか浄化槽に浮かぶ腐った水だとか」

 

リオ「・・・・まぁ、いいわ。そんな風に私を非難する事ができるのは、このミレニアムで──」

 

リオ「──いえ、このキヴォトス上で、ヒマリ・・・・貴女くらいでしょうね」

 

リオ「そんな貴女だからこそ、私が今からしようとしていることを理解してくれるのではないかと、期待していたわ」

 

ヒマリ『「アリスのヘイローを破壊する」行為を、ですか?』

 

リオ「・・・・」

 

ヒマリ『あなたは自分のする行いを、ミレニアム──ひいてはキヴォトスを守るための・・・・そういった類の行為だと信じているのでしょうけれど』

 

ヒマリ『──結局のところ、少女を誘拐して都市に監禁し、ヘイローを破壊しようとしているだけじゃないですか』

 

リオ「その言葉は間違っていないわ──でも、貴女はそう考えているから、私の事が理解できず・・・・許容もできないのでしょうね」

 

ヒマリ『ええ。私はあなたに賛同しません。そして──シャーレの先生も黙ってはいないでしょう』

 

リオ「そうね。先生がアリスを回収しに来る確率は五分五分と言った所かしら・・・・」

 

リオ「それを含んだ上で、C&Cというミレニアム最高峰の戦力は向こうの手に渡っている」

 

リオ「この戦況を変えるにはシャーレをこちら側に引き込むしかないわ」

 

ヒマリ『確実に言いますがリオ、シャーレの先生は貴女側につくことはないわ』

 

リオ「どうしてそこまで確信を持てるのかしら。貴女、先生と一度でもまともに話したことがあるの・・・・?」

 

リオ「ないでしょう。仮に数回話を試みても彼がどんな考えを持っているのか分からない」

 

リオ「たとえシャーレの先生に理解されなくても、私は──私が正しいと信じる道を進むだけよ」

 

そういうとリオは通話を切った

 

リオ「起こり得る全ての変数を考慮した場合、目標達成確率は99%」

 

リオ「でも、それはシャーレの先生という謎を抜いて数値化したもの」

 

リオ「その人次第でこの変数は大きく変わるでしょう・・・・いえ、私がやれることはした、後は実行するだけ」

 

そのときエリドゥ内部全体に緊急アラートが鳴ると共に一人の生徒がリオに通信を掛ける

 

トキ『リオ様、エリドゥの監視から報告が』

 

リオ「・・・・分かったわ。結局、データが示した通りになるのね。では・・・・後はよろしく」

 

トキ『イエス、マム』

 

リオ「・・・・まずはシャーレの先生の居場所を特定して交渉から始めましょうか」

 

そのとき、リオの背後の空間に十字の亀裂が走る。

直後、裂け目が開き、その中からバージルが踏み込んできた。

 

リオ「!?シャーレの」

 

バージル「お前が調月リオか?」

 

リオ(一体どうやって?いえ、彼を理屈で理解するのはもう諦めた方がよさそうね)

リオ「えぇ、そうよ。それで、貴方がどうやって来たかはこの際、置いとくとして、貴方は少女の外見を備えた『アレ』を助けに来た。その解釈でいいかしら?」

 

バージル「・・・・天童をまるで物扱いのような言い方をするのだな」

 

リオ「物・・・・それも間違いではないわ、貴方たちが名付けた天童アリスというものは──道から侵略してくる『不可解な軍隊』の指揮官であり」

 

リオ「「名もなき神」を信仰する無名の司祭が崇拝した『オーパーツ』であり──古の民が残した遺産──」

 

リオ「その名も・・・・『名もなき神々の王女AL-1S』」

 

バージル「名もなき?」

 

リオ「そういえば貴方はキヴォトス外からきた存在だったわね」

 

リオ「なら、理解しやすいように言うと、つまり、「アリス」は──」

 

リオ「この今のキヴォトスを滅ぼすために生まれた存在なのよ」

 

バージル「・・・・」

 

リオ「でも、それを止める方法は一つだけ、この世界から存在を消すこと」

 

リオ「隔離、監視、管理。考え得る手段は全て検証した」

 

リオ「その結果、最も確実かつ安全性の高い結論がこれだと判断したわ」

 

バージル「なるほどな、それで天童を連れてヘイローを破壊しようと」

 

リオ「理解してもらえて何よりだわ、それで先ほどの質問の答えを聞きたいわ、先生は天童アリスをどうするつもり?」

 

するとバージルは僅かに目を伏せると

 

バージル「・・・・だが、俺の意思は変わらんな」

 

リオ「?・・・・どういうこと?もしかして、アリスという不可解な存在を生かすつもりではないでしょうね?」

 

バージル「そもそもだ。調月、俺は天童を助けに来たわけではない」

 

リオ「私に協力する気も助けに来たわけでもないなら、貴方は此処に何しに来たの?」

 

バージル「俺は、あくまで天童アリスの安全を保証するために来た 」

 

リオ「・・・・意味が分からないわ」

 

バージル「俺は天童の安全を保証するためにここへ来た」

 

バージル「それ以上でも、それ以下でもない」

 

バージル「後はあいつらの問題だ」

 

リオ「つまり貴方は、アリスを消すという私の選択を認めるつもりはない、と?」

 

バージル「・・・・そんなところだ」

 

リオ「残念ね。貴方なら理解してくれると思ったのだけれど」

 

バージル「そもそも、ゲーム開発部やC&Cなど、あいつらを説得してから俺に話せ」

 

リオ「・・・・それも、そうね。でも先生貴方も少し勘違いしているわ」

 

バージル「というと?」

 

リオ「あの子たちを食い止めている間に『ソレ』・・・・アリスのヘイローを破壊するという非道なことはしないわ」

 

リオ「私が用意した全ての手札を使って、あの子たちを止める」

 

リオ「そして、自分たちではどうにもならないと理解してもらう」

 

リオ「それが私のやろうとしていることよ。それで先生に聞きたいことがあるわ」

 

バージル「なんだ?」

 

リオ「先生、貴方はあの子達を手助けに行く気は──」

 

バージル「そのつもりはない」

 

リオ「・・・・食い気味にいうのね」

 

バージル「これはあいつらの戦いで、俺は部外者だ 」

バージル(俺がいつまでも此処にいるとは限らん )

 

数時間後――

 

バージルは壁にもたれ掛かりながら、リオが時折漏らす独り言を聞いていた。

 

どうやら、リオが用意した戦闘用ロボットやリオの専属ボディーガードのトキが、ことごとく突破され、そして──もう間もなく、ここへ到達するそうだ

すると、この部屋の扉が勢いよく開かれた

 

モモイ「着いた!」

 

ミドリ「ここがエリドゥ中央タワーの最上階」

 

バージル「ようやく来たか」

 

モモイ「先生!先生が此処にいるということは」

 

リオ「・・・・アリスならここにいるわ」

 

ミドリ「会長・・・・」

 

モモイ「まだ戦うつもり!?」

 

リオ「・・・・いいえ。トキが倒れた時点で、私が持っている手札はすべて消えた」

 

リオ「認めましょう・・・・私の負けよ」

 

モモイ「それよりも、アリス、アリスは・・・・いた!」

 

モモイが指差した先には、ケーブルに繋がれたまま椅子にもたれかかり、眠り続けるアリスの姿があった。

モモイはすぐさま駆け寄り、ミドリとユズもその後を追う。

 

モモイ「アリス!お待たせ!」

 

ミドリ「アリスちゃん!」

 

ユズ「アリスちゃん・・・・」

 

その時、いままで部屋半分を覆うモニターの光で青く染まっていた室内が、一転して赤紫に染まる。

 

モニターには『Divi : sion』の文字が映し出され、それと同時に、モモイたちと通信を取っていたヴェリタスのチヒロの通信が乱れ始める。

 

チヒロ『ぃま・・・・急に・・・・な・・が・・・・!?通信が・・・・』

 

リオ「エリドゥのシステム全体が・・・・ハッキング・・・・」

 

リオ「いえ、これは単純なハッキングではない・・・・」

 

リオ「都市全体が『何か』に変質していっている?」

 

モモイ「こんな事してる場合じゃない!早くケーブルを外してアリスを・・・・!」

 

???「その行為は推奨しません」

 

不意に響いた無機質な声に、その場の全員が視線を向ける。

その発声源は、今まで眠っていたアリスであり、彼女はゆっくりと身を起こし、こちらを見据えている。

 

アリス?「現在『王女』の表層人格は内部データベースの深層部に隔離されています」

 

アリス?「強制的に接触を解除すると、取り返しのつかない損傷が起こるでしょう」

 

モモイ「アリス・・・・!?一体何を・・・・?」

 

ミドリ「お姉ちゃん、この子はアリスじゃないよ・・・・」

 

アリス?「アリス・・・・?」

 

アリス?「それはあなた達が私たちの『王女』を呼ぶ際の名称・・・・」

 

アリス?「『王女』に名前は不要です。名前は存在の目的と本質を乱します」

 

ミドリ「何を言ってるの!?ねえ、あなたは誰!アリスちゃんを返して!」

 

Key「私の個体名は<Key>」

 

Key「王女を助ける無名の司祭たちが残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ『鍵』<Key>です」

 

Key「彼女は『王女』であり、私は『鍵』。それが私たちの存在であり目的」

 

Key「今、我々を妨害していた攻撃が止まったことを確認しました」

 

Key「只今よりエラーを修正し、本来あるべき玉座に『王女』を導かせていただきます」

 

Key「AL-1Sに接続されたリソースを確保するため、全体検索を実行」

 

Key「リソース領域の拡大。リソース名、要塞都市「エリドゥ」の全体リソース──1万エクサバイトのデータを確認」

 

Key「・・・・現時刻をもって、プロトコルATRAHASIS稼働」

 

Key「コードメイ『アトラ・ハシースの箱舟』起動プロセスを開始します」

 

リオ「・・・・!!アトラ・ハシース・・・・!?」

 

Key「プロセスサポートのため追従者を呼び出します」

 

リオ「・・・・エリドゥ各地で追従者の出現・・・・?」

 

バージル(状況がつかめんな・・・・)

 

リオ「私は・・・・キヴォトスに終焉がもたらされることを懸念して、この要塞都市エリドゥを建設した」

 

リオ「私が動員できるミレニアムの全ての技術と力、エネルギー、そして資源をここに集めたというのに・・・・」

 

リオ「けれど・・・・むしろ、そのせいで・・・・この都市が・・・・」

 

リオ「終焉の発端に・・・・?」

 

リオ「私は・・・・間違っていた?」

 

Key「箱舟制作に必要なリソース確保23%・・・・46%・・・・」

 

Keyの言葉と同時に、エリドゥ全域から莫大な電力が中央タワーへ集まり始める

 

リオ「先生!このままでは・・・・!エリドゥの全てのリソースを奪われてしまったら、キヴォトスが終わってしまう」

 

リオ「このままでは、世界が滅びる・・・・!!」

 

リオ「みんなを連れて逃げてちょうだい、先生」

 

バージル「お前はどうする気だ?」

 

リオ「今からこの都市自体が変貌し、箱舟という新しい概念に歪曲される。そうしたら・・・・このキヴォトスは・・・・」

 

リオ「私のせいよ・・・・私がこの都市を作らなかったら、最初からこんな事にならなかったのに・・・・」

 

リオ「だから私が、止めないと・・・・」

 

ユズ「ど、どういう意味ですか・・・・?」

 

リオ「・・・・私一人で、システムを止めて見せるわ」

 

リオがそう決断したとき

 

モモイたちが持つ通信機から声が響き渡る

 

ユウカ「ノア!今よ!電力という電力を全部落としちゃって!」

 

ノア「は~い、ユウカちゃん。その言葉を待ってました♪」

 

ユウカの合図と共に、ノアが通信の向こう側で何らかの操作を行う。

その直後、中央タワーへ集まっていた電力が一斉に途絶えた

 

Key「・・・・リリース確保失敗。システムシャットダウン」

 

ユウカ「みんな、大丈夫!?」

 

モモイ「ユウカ・・・・!」

 

ミドリ「ノア先輩!」

 

ユズ「こ、ここには、どうやって・・・・?」

 

ユウカ「状況が普通ではないということはよくわかりました」

 

ノア「最初は都市の位置を伝えるだけで、手を引くつもりだったのですが・・・・」

 

ノア「ふふっ。ユウカちゃんが、やっぱりそれだけじゃダメだって・・・・最後まで何とかしないと。と言ってましてね」

 

ユウカ「ちょっ・・・・ノア!? そういうのは言わない約束でしょ!?」

 

ノア「はて? 私が記憶している限り、そのような約束をした覚えはありませんね」

 

ユウカ「うぅ・・・・そ、そんなことより、会長!!」

 

ユウカの声にリオがピクリと反応する

 

ユウカ「セミナーの予算を横領してこんな都市を作るなんて・・・・後で説教ですよ!覚悟しておいてください!」

 

リオ「・・・・ユウカ」

 

Key「リリース確保プロセスエラー。緊急状況発生Divi:Sion電源、プロトコル実行を保護するためエリドゥ中央タワーに集・・・・」

 

するとタワー最上階まで下層あたりからの揺れが伝わってきた

 

Key「・・・・邪魔者?そんなことないはず。都市内の残存兵力はゼロ」

 

Key「論理エラー発生。確認のため、画面を表示します」

 

Keyが映し出した画面には、追従者たちを次々と撃破していくアバンギャルド君の姿が映っていた。

それは、ゲーム開発部の進撃を阻むためにリオが投入した機体で、一度は撃破されたはずだが、エンジニア部によって修復・改修されたのだろう。今度は追従者たちを相手に戦っている

 

Key「状況判断不可。命令修正及び再実行。追従者は想定外の兵力と戦闘を避け、エリドゥ中央タワーに集結・・・・」

 

その時だった。

最上階の扉が開き、一台の車椅子が静かに室内へ入ってくる。

 

???「申し訳ありませんが、その子たちはここまで来られませんよ。タワーの入口でしたら、エイミとC&Cのメンバーが塞いでおりますので」

 

リオ「ヒマリ・・・・貴女、逃げたんじゃ・・・・」

 

ヒマリ「逃げるだなんて・・・・なんと寂しいことを。この先の状況について、ある程度見当がついておりましたから」

 

ヒマリ「隔離施設を抜け出した後、急いでここに来たのです」

 

ヒマリ「リオのことですから・・・・まだ事件を引き起こすだろうと予測していたのです」

 

ヒマリ「どうですか?ふふっ──当たりましたか?」

 

ヒマリ「さて、これが<Key>・・・・無名の司祭の「オーパーツ」を稼働させるためのトリガーAiですね」

 

ヒマリ「このまま放っておけば、きっとアリスの人格は<Key>に置き換えられ・・・・無名の司祭が望む通り「名もなき神々の王女」として覚醒することになるでしょう」

 

ユズ「そ、それじゃあ・・・・!」

 

モモイ「!!ヒマリ先輩・・・・それって・・・・」

 

ミドリ「アリスちゃんは、このまま・・・・」

 

ヒマリ「もちろんそれを防ぐ方法もあります。事態は一刻を争います・・・・既に、無名の司祭は動き出しておりますから、その前に私たちの手でアリスを──」

 

ヒマリ「<Key>の起動でデータベースの深部に隔離されてしまったアリスを起こすのです」

 

ヒマリ「そうすれば、この事態を止める事ができるでしょう」

 

モモイ「そんなこと・・・・本当にできるの?」

 

ミドリ「アリスを連れ戻せるってことですか!?」

 

ヒマリ「できますとも。リオ、ダイブ設備くらいありますよね」

 

リオ「ええ、あるわ・・・・でもそんな事、危険すぎる。たとえアリスの精神世界に侵入で来たとしても、下手すれば二度と戻ってこれなくなってしまうのよ」

 

リオ「そもそも、そんなこと一体誰が──」

 

ヒマリ「現状、アリスを連れ戻せるのはゲーム開発部しかおりません」

 

ヒマリ「危険が伴いますが・・・・それ以外に方法はありません」

 

ユズ「・・・・やります。アリスちゃんを・・・・連れ戻せるのなら」

 

ヒマリ「ほらね?」

 

リオ「・・・・」

 

ヒマリ「それでは、私が今からアリスの精神を分析して隙間を作ります」

 

ヒマリ「皆さんがアリスの精神世界に入って、彼女を連れ戻してきてください」

 

ヒマリがそう言うと、ゲーム開発部の面々は顔を見合わせる。

そして互いに頷き合った。

 

ヒマリ「覚悟はできたそうですね、それでは始めましょう」

 

ゲーム開発部の面々はダイブ設備を装着する。

頭部を覆うバイザー付きのヘルメットには幾本ものケーブルが接続されており、その先はアリスへと繋がっていた。

 

ヒマリ「・・・・準備完了です。それでは皆さん、お願いします」

 

その言葉と同時に、ゲーム開発部の面々の身体から力が抜ける。

まるで魂だけが別の場所へ引き込まれたかのように、彼女たちは椅子にもたれかかった。

 

リオ「・・・・まず、第一段階は上手くいったようね」

 

やがて──

 

それまでタワー中央へ侵攻していたロボットの軍隊が、一斉に動きを止め、部屋を赤紫に染めていたモニターの光も消え、『Divi : sion』と表示されていた画面は元の表示へ戻っていく。

 

その後、ゲーム開発部の面々がゆっくりと身を起こす。

 

リオ「・・・・本当に、こんなことが可能だなんて・・・・私の計算では・・・・こんなに上手くいくはずが」

 

リオ「・・・・どうして? 」

 

リオは言葉を失った。

 

彼女の計算では導き出せない結果が、今、目の前にあった。

 

モモイたちは固唾を呑みながら、眠ったままのアリスを見つめていた。

 

そして──アリスの瞼がゆっくりと開かれる。

 

モモイ「アリス!?」

 

ミドリ「アリスちゃん!起きた!?」

 

ユズ「・・・・アリスちゃん!」

 

アリス「モモイ、ミドリ、ユズ・・・・」

 

「アリスー!」「「アリスちゃん!」」

 

ゆっくりと身を起こしたアリスに、ゲーム開発部の三人は一斉に抱きついた。

 

 

 

──後日

 

~シャーレ・執務室~

 

アロナ『お疲れ様です、先生・・・・』

 

バージル「ふん。俺が関わらなくとも、あいつらだけでなんとでもなっただろう」

 

アロナ『そんなことありません!』

 

バージル「・・・・」

 

アロナ『先生があの場にいたから、生徒さんたちは安心して天童アリスさんを助けに行けたんです』

 

アロナ『だから今回の件は、先生がいたからこそ乗り越えられたんですよ!』

 

バージル「どうだかな」

 

アロナとの会話の最中に進めていたシャーレの書類仕事を終わらせると、バージルはペンを置き、静かに椅子へ背を預ける。

 

少なくとも今は、生徒たちに関する問題も一段落したと言っていい。

 

バージルは机に立て掛けられた閻魔刀へ視線を向けた後、何か決意を固めた。

 

それは──バージルがこのキヴォトスに来てから今に至るまで、未だ行方の知れない存在。

 

愚弟(ダンテ)の捜索を始めようと、意を決するのだが──

 

アロナ『あ、先生!また生徒さん達の間で問題が起きたみたいで、事態の収拾のためシャーレに要請が来ています!』

 

バージル「・・・・」

バージルは小さく目を閉じ、深くため息を吐いた




時計じかけの花のパヴァーヌ編、完。

次回、『あまねく奇跡の始発点編』突入
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