バージル「何が目的だ?」
バルログ《色彩》「目的?そんなものはない、只簡単な事」
バルログ《色彩》「俺は強さを求め、強者と戦い、更なる高みへ至ること」
バルログ《色彩》「それ以外などどうでもいい!」
初手で動いたのはバルログだった。
拳に炎を纏わせ、一気にバージルへ殴り掛かる。
だが、その一撃は閻魔刀の鞘によって難なく弾かれた。
体勢を崩したバルログの胸元へ――目にも留まらぬ速度で、閻魔刀の斬撃がX字に走る。
バージルの間合いに入るのは危険と感じたバルログは瞬時に後方へと引き下がった
バージル「・・・・強さを求める事は否定しないが、悪魔として長い年月を掛け磨いだ力がその程度か」
バルログ《色彩》「分かったような口を! 」
付近に停車していた乗用車を掴み上げ、そして、そのままバージルへ向けて投げつけた。
飛来する車両を前に、バージルは閻魔刀を抜き放つ。
運転席と後部座席側が分かれ、乗用車は真っ二つとなり、左右へ分かれて落下した。
バージルはそのままバルログへ視線を戻す。
――だが、そこに奴の姿はない。
バージルは気配だけで位置を察知し、静かに視線を横へ向けた
真っ二つになった車両を死角として利用し、バルログが横合いから拳を叩き込む。
しかし、バージルは半歩だけ身を逸らす。その拳は届かなかった。
躱すと同時に閻魔刀を走らせ、バルログの腕へ目掛けて振るう
肘から先が宙を舞う。振り抜かれた拳ごと、バルログの腕は切り落とされていた。
バルログ《色彩》「うぐ」
切り落とされた片腕を抑えながら退く
バージル「でだ?お前の上にいる存在は誰だ?」
バルログ《色彩》「答える気など・・・・ない!」
バージル「そうか」
バルログの鋭い足蹴りが、熱を帯びながら迫る。
一方のバージルは再び閻魔刀を抜いた。だが、動かなかった。
攻撃の構えすら取らず、ただ迫る蹴りの軌道へ刃先を向ける。
柄を上へ、刃先を下へ。峰へ片手を添えたまま、刀身は微動だにしない。
バルログ《色彩》「その魔具ごとお前に蹴り込んでやる!」
勢いを殺さぬまま踏み込んだ脚が、その刃先へ触れる。
――衝突音は鳴らなかった。
抵抗すら感じさせぬまま、脚部は滑らかに断たれる。
振り切った脚の先には、既に太腿から下が存在していなかった。
バルログ《色彩》「っう・・・・!?」
片脚を失ったバルログは、その場へ膝をつき、残った腕で地面を支える
バルログ《色彩》「ここまで実力差が・・・・」
バルログ《色彩》「魔具となり力を溜め、磨き、強者へ至ったと思ったが」
バルログ《色彩》「お前ほどの魔を宿す相手には敵わないか」
バルログ《色彩》「・・・・このままで終わりはしない」
バージル「!?」
バルログが用いる魔力を全て解放する
全身の体毛から炎が噴き上がり、周囲のアスファルトや瓦礫は融解する。
ガラスや強化ガラスは割れ、その破片さえも熱で溶け落ちた。
膨大な熱エネルギーが四方八方を包み込み、周囲を赤く染め上げる。
バルログ《色彩》「これで奴は焼き焦げに――」
バルログ《色彩》「!?」
灼熱の奔流の中から、青白い魔力を纏った魔神が現れる。
人の姿は瞬く間に魔へと変貌し、蒼き甲殻が全身を覆う。
魔人と化したバージルは微動だにしなかった。
周囲を融解させる灼熱の奔流を受けながらも、一歩たりとも退かない。
ただ静かに、その場へ佇んでいるだけ。
バルログは最後の力を使い果たした。
膝を支えていた腕からも力が抜け、その巨体は地面へ崩れ落ちる。
それに対してバージルは通常の魔神化を解くと
片手をバルログへ向け魔具を得ようと試みるが
バージル「・・・・」
バルログの肉体は粒子となって消えていった
バージル(魔具にはならないか、色彩?の影響だろうか)
バージル「まぁいい、サンクトゥムタワーへ」
アロナ『・・・・』
アロナ『まだ懲りないんですか!?』
~D.U地区内・サンクトゥムタワー~
バージル「これか」
そうしてバージルは閻魔刀を抜き切り倒そうとすると
周囲一帯を揺るがす地響きが発生した。
バージル「はぁ、またか」
アロナ『先生!先ほどの悪魔と同様、高エネルギー反応を感知されました』
アロナ『反応場所は下です!!』
バージル「下?」
すると地面を突き破り、巨大――いや、その言葉ですら生ぬるいほどの巨体が地上へ姿を現した。
その全貌を見たバージルは眉をひそめる。
それはあまりにも珍妙な生物だった。
バージル「・・・・なんだこの生物」
その時、バージルへ通信が入った。
七神リン『先生!今どこにおられるんですか!?』
バージル「あ?今は元サンクトゥムタワーがあった場所の懐だが」
七神リン「まさか!第六虚構のサンクトゥムタワーに!?」
バージル「第六?・・・・まぁいい」
バージル「それより、お前達は避難できたのか」
七神リン「え?え、えぇ、勝手ですみませんがシャーレを拠点にしていまして」
バージル「それは勝手にしてろ、もうないなら切るぞ」
七神リン「え?ちょ、せんせ──」
バージル「・・・・さて、俺も自分勝手に動き過ぎたな、さっさと倒して一度シャーレに戻るとしよう」
アロナ『あ、自覚あったんですね』
バージル「とはいえ、デカいな」
アロナ『それに目からビームを出しています!』
バージル「・・・・そういえば、こいつ阿慈谷が好きだった物に似てるな」
バージル「たしか、ピエロ。ペルソナ。ぺ・・・・」
アロナ『えっと、ペロロ様では?』
バージル「そう、それだ」
アロナ『それ、ヒフミさんが聞いたらなんて思われるか』
バージル「・・・・?まぁいい、倒すか」
アロナ『えっと、どう倒すのですか?』
バージル「アロナ、お前は戦闘に参加するわけではない黙ってろ」
アロナ『酷い!』
僅かに思案した後、バージルは街灯へ向けて幻影剣を射出する。
放たれた幻影剣が灯具へ突き刺さった瞬間、バージルの姿が掻き消えた。
残像だけをその場へ残し、一瞬で幻影剣の位置へ移動する。
そのまま慣性を殺さず、勢いを乗せてさらに上空へ跳躍する。
ペロロの怪獣へ向け、一気に空中へ躍り出た。
巨大怪獣は即座に反応し、両目から極太のレーザーを放つ。
だが、バージルは空中で身体を捻り、その熱線を紙一重で回避した。
直後、手にしたミラージュエッジを巨大怪獣の腹部へ突き立てる。
魔力で形成された刃は確かに肉体へ食い込む。
しかし、あまりにも巨大な体躯故か致命傷には至らない。
巨大怪獣 「ペロォォォォォッ!!」
怒号のような咆哮と共に、怪獣は激しく暴れ出した。
振り払われたバージルの身体が上空へ投げ出される。
バージルはミラージュエッジを背へ戻すと、閻魔刀へ手を添えた。
そして、そのまま怪獣へ向け急降下する。
巨大怪獣は口を大きく開き、複数のカプセルを吐き出した。
空中で開かれたカプセルから現れたのは、人間大のペロロ達。
一斉にバージルへ突進する。
――一方、バージルの刀身が鞘から僅かに覗く。
その刹那、バージルとペロロ達はすれ違っていた。
ペロロの軍勢は、そのまま勢いを失わず空へと突き進む。
バージルは僅かに覗かせた刃を、そのまま鞘へ納めた。
遅れて無数の斬撃が走る。
ペロロの軍勢は細切れとなり、そのまま爆散した。
閻魔刀を完全に抜き放つと同時に、幾つものバージルの幻影が周囲へ現れた。
四方八方から無数の斬撃が巨大な肉体へ刻み込まれていく。
やがて地面へ降り立ったバージルは、静かに閻魔刀を納めた。
カチリ――と、小さな音が鳴る。その直後。
巨大怪獣の全身へ無数の斬線が走り、その巨体は粒子となって崩れ去っていった。
バージル「見掛け倒しもいいところだな」
アロナ『先生が戦っている間に調べたんですけど、あれは普通のペロロ様じゃなくて、“ペロロジラ”っていう存在みたいです!』
アロナ『通常のペロロ様と違って背中に恐竜めいた突起物が生えているのが特徴らしくて── 』
バージル「・・・・」
アロナ『あ、興味ない顔してますね』
その時、再び地響きが響いた。今日だけで何度目だろうか。
バージルが視線を向けると、偽物と思われるサンクトゥムタワーがゆっくりと崩れ落ちていく。
バージル「・・・・なんだったんだか」
アロナ『先生、それで七神リンさんが話しそうにしていたので早くシャーレに戻った方が』
バージル「それもそうだな・・・・」
アロナ『・・・・先生?どうしました』
バージル(残骸が増えているような・・・・気のせいか)
バージルはシャーレへの帰路につく。その背を、遠くから見つめる者がいた。
周囲には無数のオートマタの残骸。
その中心に、一人の男が立っている。
謎の男「・・・・これで終わりか?」
謎の機械的な声「肯定。この世界の先生が第六サンクトゥムと接触し、出現したオートマタ六十八機の完全停止を確認」
謎の機械的な声「お疲れ様でした、先生」
謎の男「・・・・」
謎の機械的な声「・・・・・先生?」
謎の男「・・・・」
謎の機械的な声「・・・・警告。あまりここに留まるのは大変危険です。この世界の生徒さん方に見られる可能性があります」
謎の機械的な声「推奨、直ちにアトラ・ハシースに戻るべきです」
謎の男「・・・・了解。A.R.O.N.A」
男は踵を返す。
その片手には一枚のカード。
もう片方の手には、鞘に納められた刀が握られていた。
~シャーレ~
リン「バージル先生!」
バージル「七神・・・・」
リン「本来なら先生にはお聞きしたいことや注意したいことが山ほどあります」
リン「ですが今はそのような状況ではありません」
リン「恐縮ですが、会議室へ向かいながら今後の『虚構のサンクトゥム攻略戦』について説明させていただきます」
リン「できればもっと詳しく話したいところですが、時間が惜しいので会議室に向かう道中で耳に入れてください」
リン「まず私たちはあの塔を2週間以内に破壊しなくてはなりません」
リン「キヴォトスに出現した六つの塔。それらを『虚構のサンクトゥム』と命名させてもらい、これからの事を話します」
リン「その虚構のサンクトゥムがキヴォトスにどう影響するのかは省かせてもらいます」
リン「現状稼働している虚構のサンクトゥムは計五カ所」
リン「本来六基存在していましたが、第六サンクトゥムは先程停止を確認しました」
リン「アビドス砂漠、D.U.近郊の遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖区域、トリニティとゲヘナの境界付近、そしてミレニアム近郊の新都市です」
リン「それらを守る守護者の撃破。それが今回の会議で決定した内容です」
バージル「なるほど、でだ、俺が前線に出て倒して行けばよいと?」
リン「・・・・そうしたい所は山々ですが、各自治区の市民や生徒の避難先の確保、同時に自治区の治安維持をしなくてはなりません」
リン「いつ何があるか分からないのが現状です。先生は戦況を見渡せるここで、生徒方の指示をお願いします」
大方の説明を終えた頃、一行は会議室として使用している空き部屋の前へ到着した。
中にいたのは各学園の生徒達だった。
早瀬ユウカ、天雨アコ、鬼方カヨコ、浦和ハナコ、奥空アヤネ、由良木モモカ、岩櫃アユム。
リン「シャーレの先生が舞い戻られました」
バージルが入ってくる早々に安堵する者、バージルの身勝手さに呆れる者、先生らしいと流す生徒に分かれている中、リンは咳払いをした後、質問してきた
リン「それでは、最後に先生、D.U.のサンクトゥムに行かれたそうですね」
バージル「それがどうした」
リン「六つの塔の中でも、D.U.区で強大なエネルギー反応を観測しました。ですが、つい先程その反応が途絶えました」
リン「それについて、端的で構いませんのでご説明を」
バージル「守護者だったか。そう呼ぶなら、そいつは倒した」
リン「・・・・そうですか、他に起きたことはなかったでしょうか?」
リン「先生がサンクトゥムと接触した以上、新たに召喚されたオートマタなどは?」
バージル「・・・・見かけなかったな」
リン「そうですか・・・・そちらの方はどうですかカンナ局長」
カンナ『D.U.区内、全域を調査しましたが、行政官が危惧するようなことはありませんでした』
リン「分かりました。ありがとうございます」
リン「では、私たちのやるべき事は少し楽になりました」
リン「私たちの目標は、残る五つの『虚構のサンクトゥム』を破壊すること── 」
リン「全自治区の防衛及び避難状況の把握。そしてサンクトゥムの攻略・・・・全て先生の方で確認していただくことになりますが、構いませんか?」
バージル「あぁ、それでいい」
リン「分かりました。ではこれより──「虚構のサンクトゥム」攻略作戦を始めます」