リン「先生、第1サンクトゥムから第5サンクトゥム、全エリアのスタンバイを確認しました」
リン「再度、「虚構のサンクトゥム攻略戦」の作戦概要を展開します」
リン「攻略部隊は、各守護者への攻撃可能圏内まで接近してください」
リン「道中、敵の防衛ラインで交戦予定となります。そうして総計5つの攻撃ルートを確保していただきます」
アユム「また、防衛部隊は、サンクトゥムの攻略が終わるまで各自治区を守らなければなりません」
アユム「攻略開始と同時に、サンクトゥムから敵が召喚され、キヴォトス全域に広がる可能性が高いです」
アユム「ゲヘナ、ミレニアム、トリニティ、百鬼夜行、レッドウィンター、山海経など──防衛部隊は全方位からの襲撃に備えてください」
モモカ「各自治区の防衛が成功して、全サンクトゥムの攻略ルートを確保できたら、守護者集中攻撃のカウントダウンを始めるよ~」
モモカ「カウントダウンが終わったら一斉攻撃だからね~!タイミング間違えないでよ~!」
リン「以上が『サンクトゥム攻略戦』の全貌です」
リン「先生から何かご質問はありますか?」
バージル「ないな」
リン「では、これより皆さん、配置についてください」
・・・・・
アロナ『それでは先生、各サンクトゥムの攻略担当を改めて確認しますね』
アロナ『第1サンクトゥム──アビドス砂漠エリア。攻略対象は“ビナー”』
アロナ『担当は、アビドス対策委員会と便利屋68です!』
アロナ『第2サンクトゥム──ミレニアム郊外閉鎖区域。攻略対象は“ケセド”』
アロナ『担当はCleaning&Clearing、特殊現象調査部の和泉元エイミさん、そしてトリニティの正義実現委員会ですね』
アロナ『第3サンクトゥム──廃墟化した遊園地。攻略対象は“シロ&クロ”』
アロナ『担当は、ゲヘナ風紀委員長の空崎ヒナさん、ミレニアムのゲーム開発部、そしてSRTラビット小隊のみなさんです』
アロナ『第4サンクトゥム──カタコンベ内バシリカ。攻略対象は“ヒエロニムス”』
アロナ『担当は、トリニティ総合学園から救護騎士団、シスターフッド、補習授業部、
そしてアリウス分校のスクワッドのみなさん』
アロナ『第5サンクトゥム──要塞都市エリドゥ近郊。攻略対象は“ホド”』
アロナ『担当は、ミレニアムスクールから生徒会セミナー、ヴェリタス、そしてゲヘナ学園から温泉開発部』
・・・・・
アロナ『となります』
バージル「スクワッドやラビット小隊も協力しているのか」
アロナ『そうですね、キヴォトスの危機なので』
バージル「ラビット小隊に関してはスクワッド以上に絡みがないのだがな」
アロナ『警戒心が強いですからね』
バージル「まぁ、あれくらいが普通だ」
バージル「むしろ距離感がおかしい生徒もいる」
アロナ『ワカモさんとかですか?』
バージル「……」
アロナ『よくシャーレに来ていますしね』
バージル「全くだ」
アロナ『話しているうちに全サンクトゥムの攻略準備が整いました』
・・・・・
リン「先生。これより、総攻撃のカウントダウンを始めますが、先生の指揮準備もよろしいでしょうか?」
バージル「あぁ、いつでも」
リン「それではカウントダウンを刻みます」
リン「5……4……3……」
リン「2……1……」
リン「総攻撃、開始!!」
リン「……みなさん、キヴォトスを……よろしくお願いいたします」
アロナ「それでは先生、アロナちゃんが先生の指揮等をサポートしますのでご安心を!」
バージル「……」
・・・・・
サンクトゥム攻略開始から数分、周囲に衝撃とシャーレに揺れが入る
リン「……っ!何事ですか!?」
モモカ「えーっと……うえぇっ!?」
アユム「ど、どうしたんですかモモカちゃん!?」
モモカ「しゅ、襲撃!!シャーレ周辺に敵襲!シャーレ北側正門に敵の軍勢、そして南側後門に……」
リン「南側に何が現れたのですか?」
モモカ「正体不明の騎士らしき存在を確認!」
アユム「サンクトゥムと同等の高濃度のエネルギー反応です」
バージル「……」
モモカ「事前にシャーレも防衛線張っといて良かったけど─」
モモカ「正門と後門では、ヴァルキューレと避難誘導中の生徒たちが応戦してるけど、長くは持たないかも!」
バージル(後門……先程の悪魔や怪獣と同類か、前者であれば──)
バージルはシッテムの箱を仕舞うと、そのまま部屋を後にした
リン「先生? どちらへ?」
バージル「シャーレ後門……」
リン「た、戦いにいくのですか? 今はサンクトゥム攻略戦の最中ですが……」
バージル「なら、指揮を取りながら、相手をすればいいだけの事」
バージル(指揮関連はアロナがほとんど行うだろう)
バージル「由良木モモカ……」
モモカ「え?何かな先生?」
バージル「後門は俺一人で相手をする、ここ周辺にいる生徒は正門を相手にしろと伝えろ」
モモカ「えー、しょうがないなぁ、ほんと自由人だね」
そう言い残しバージルは後門へと向かった
~シャーレ・後門~
後門へ到着したバージルの視界に、一人の生徒が飛び込んできた。
その生徒は、たった一人で敵を食い止めていた。
バージル「……ワカモ」
ワカモ「……っ、貴方様」
ワカモ「申し訳ありません……このような敵すら討ち取ることができませんでした」
ワカモの身体に目立った傷はない。だが呼吸は荒く、額には汗が滲んでいる。
長時間の戦闘による消耗は明らかだった。
バージル「気にすることではない、俺が相手をする。どいてろ」
ワカモが相手にしていたのは、バージルの予想どおり、バルログに続いてこの世界へ現れた悪魔だった
その存在は、かつてバージルの半身──ユリゼンが尖兵として使役していた悪魔。名を、キャバリエーレアンジェロ
右手には人を薙ぎ払えるほどの巨大な剣、左腕には巨大な盾。一見、以前と変わらない姿だが──
明らかに
その違和感の正体を確かめるように、バージルは閻魔刀を抜き、臨戦態勢に入る
キャバリエーレとはまだ距離がある。
十分に雷撃を放てる間合いにもかかわらず、雷弾や落雷をバージルへ向けて放ってくることはなかった
ただ巨大な剣を携えたまま、そこに立っている。
そして戦いが行われる前にバージルはキャバリエーレの違和感に気づく
バージル「なるほど、そういう事か」
バージル「アロナ、あの騎士もどきの中に生体反応はあるか?」
アロナ『え?いえ、ありませんが』
あの時とは違う。
母の姿を被った悪魔を核としていた本物とは異なり、この個体には核となる悪魔が存在しない
何を動力としているかは知らん。だが、核も意思もない。ただの空の鎧……操り人形に過ぎん
バージル「まぁ、いい」
閻魔刀を静かに構え、歩みを止めない。
バージルは一歩また一歩、足を踏み込み近づく。
それに対してキャバリエーレは盾で体を覆っている。
両者の間合いは、静かに縮まっていく。
そして互いに剣が届く間合い。沈黙を破り、先に動いたのはキャバリエーレだった。
右手に握る巨剣で、大きく薙ぎ払ってくる。
それに対してバージルは納刀状態の閻魔刀で弾く
体勢を崩したキャバリエーレへ向け、ヤマトの鋭い刺突を放つ。
だがキャバリエーレは即座に盾を差し込み防御。刀身は装甲を貫けず、甲高い金属音と共に逸らされた。
バージル「硬いな……」
再度キャバリエーレの剣撃、バージルの横腹に目掛けてきり裂くが
バージルは残穢だけをその場へ残し、瞬時に背後へ移動する。
そして背に閻魔刀の刀身で斬り上げる、キャバリエーレを両断までとはいかず、装甲を深々と裂き、内部構造が露出するほどの傷を刻んだ。
バージル「やはり空だな」
キャバリエーレはすぐ背後にいるバージルを払おうと剣を振るうがそれをも躱す
キャバリエーレは両手で巨剣を振り上げる。
地面ごと叩き潰さんとする一撃。
しかしその瞬間、バージルの姿が掻き消えた。
巨剣は虚しく地面を砕く。
そして気付けばバージルは数十メートル先に立っていた。
納刀したヤマトの柄に添えられた右手が、瞬時に動く
その刹那、キャバリエーレを飲み込む巨大な斬線が無数に走る
装甲へ深々と刻まれた傷から火花と魔力が噴き出した。
それで終わらない。
無動作に近い速度で放たれる抜刀。
二度、三度。目にも留まらぬ斬撃が続く。
その度に空間が裂け、装甲が切り刻まれていく
そしてバージルは攻撃の手を止めた。
装甲の各所には無数の斬線が刻まれていたが、キャバリエーレはなお直立したまま──
にもかかわらず、バージルは何事もなかったかのようにシャーレへ戻るよう歩き出した。
最後に背を向けたまま、幻影剣を一振り射出する。
幻影剣がキャバリエーレの胴体へ突き刺さった、その瞬間――
まるでジェンガの最後の一片を抜かれたかのように、キャバリエーレの身体は均衡を失い残骸となって崩れ落ちた
その場を後にし戻ろうとすると
ワカモ「貴方様」
バージル「なんだ、まだいたのか」
ワカモ「はい、間近で先生の余裕ある戦いぶりを拝めるとは。私、感激です」
いつの間にかワカモはバージルのすぐ傍まで歩み寄っていた
バージル「……何度も言うが近い」
ワカモ「おや、失礼しました」
ワカモ「では──先生、私もあのお巡りさん達と貴方様の居場所をお守りさせてもらいます。では──」
ワカモはそう言い残すと、瓦礫の上を軽やかに跳び越え姿を消した。
バージル「……居場所か」
・・・・・
シャーレへ戻ると、バージルはシッテムの箱を開いた。
アロナの支援によって、各攻略部隊から次々と報告が届き始める。
『第一サンクトゥム、守護者撃破を確認!』
『続いて第二サンクトゥム、守護者撃破を確認!』
『第三サンクトゥムも攻略完了です!』
『第四サンクトゥム、消滅を確認!』
『第五の虚構のサンクトゥム、守護者撃破! サンクトゥムの崩壊を確認!』
アユム「……さ、最後のサンクトゥム、消滅を確認しました……!」
モモカ「せ、成功した、の……?」
アユム「これで六つ全てのサンクトゥムが消滅……『虚構のサンクトゥム』攻略は完了しました!」
アユム「やりました、リン先輩……!!キヴォトスを守ることができました」
リン「ですが、まだ終わってはおりません」
リン「この現象の原因解明と再発生の可能性を分析……破壊されたシラトリ区の再建も──」
リン「私たちがやらなくてはならない仕事が山積みです」
リン「ですが、ひとまずは──」
リン「……本当に、お疲れさまでした先生」
すると、見る見るうちに、空は本来の淡い青空を取り戻していく。
モモカ「空が……」
リン「元に戻りましたね」
そしてバージルは部屋を後にし、執務室へ戻った。
執務室の扉を開けた瞬間、そこには人の気配があった。
そこには一人の少女が立っていた。
見覚えのある顔。見覚えのあるヘイロー。
バージル「砂狼……か?」
だが、その容姿はバージルの知る砂狼シロコとはまるで違っていた。
シロコ?「……」
第二部が完結したら、そのまま第三部へ行く前に番外編でも書くか~