シロコ?「……この世界の先生は、ここまで来たんだ」
シロコ?「でも、未来を変えることはできない。キヴォトスが終焉を迎える事は、決まっている」
バージル「……これが色彩の影響か」
シロコ?「違う。私は、色彩に操られてなんかない……この世界を、定められた未来へと導く──その役割を私が担当しただけ。色彩はその手段の1つに過ぎない」
シロコ?「……むしろ、私の方が色彩を利用しているのかも」
バージル「……色彩を利用して何するつもりだ?」
シロコ?「私の役割は、すべての命を『
シロコ?「だから──」
するとシャーレ執務室にリンが大慌てで入ってきた
リン「先生、問題が発生し──」
リン「あ、あなたはアビドスの……!?」
モモカ「リン先輩、どうしたの?大きい声を出して」
アユム「し、侵入者です!」
アヤネ「侵入者、です、か?──あ、れ……?」
アヤネ「……し、シロコ……先輩……?」
シロコ?「……」
シロコらしき少女は、アヤネの姿を認めると一瞬だけその視線を向ける。しかし、言葉を交わすことはなく、自らが生み出した黒いゲートへ静かに身を沈めた。
残された黒い裂け目はゆっくりと閉じ、執務室には再び静寂だけが残る。
アヤネ「せ、先生……シロコ先輩は……いったい……」
アユム「つ、通路が……消えて、しまいました……」
アヤネ「……シロコ先輩」
バージル「七神、慌てた様子だったが何があった?」
リンは一度深呼吸し、乱れた息を整える。
リン「え?あ、はい、モモカ、状況はどうなっていますか?」
モモカ「えーっと……また、キヴォトス全域で超高濃度エネルギー体が観測されてるんだよね……」
モモカ「つまり、今まで私たちがやってきたこと、ぜ~んぶ水の泡ってこと……」
リン「……ですが、以前とは少し様相が異なります」
モモカ「レッドウィンターの氷海、廃墟化した遊園地の地下、ゲヘナのヒノム火山、トリニティのカタコンベ……」
リン「アユム。前回、この現象を観測してから何時間後にサンクトゥムが出現したか覚えていますか?」
アユム「ええと……24時間ほど、です」
モモカ「ってことは、私たちに残された時間もそのくらいかぁ……」
アユム「こんな状況で、新しく出現したサンクトゥムと戦うだなんて……みなさんは一息つけてすらいないのに……」
モモカ「だねぇ~……どうにか、今の段階で2回目のサンクトゥム出現を阻止しないと」
モモカ「どうしたもんかねぇ~。そもそも対抗手段とか、あるのかな?」
バージル「簡単な話だろう?元凶を潰せば解決する」
モモカ「簡単に言うけど、その居場所が分からないんだよねぇ」
リン「……居場所、ですか」
リン「そもそも、これほどのエネルギーが自然発生したとは考えにくいですね。どこかに供給源があると考えれば──」
リン「モモカ、キヴォトス全域で探知されたエネルギーの流れを確認できますか?」
モモカ「へ、エネルギーの流れ?」
リン「サンクトゥム攻略と共にエネルギーは消失しました。にもかかわらず、再びキヴォトス全域で観測されています。ならば、そのエネルギーはどこかから供給されているはずです 」
アユム「な、なるほど、どこからか必ず供給源があるはずという事ですね」
モモカ「……ふーん、そういう事ね。ちょっとやってみる」
モモカは端末へ視線を落とし、慣れた手つきで解析を進めていく
モモカ「……たしかに、リン先輩の言う通り、各座標に供給しているエネルギーの流れはあるけど……」
アユム「では、その流れを辿っていけば……!」
モモカ「そうだねぇ~ちょっと待ってて」
モモカは端末へ視線を落とし、次々と表示される膨大なデータを高速で解析していく。室内にはキーボードを叩く音だけが響き、誰もが固唾を呑んでその結果を待っていた。
やがて──
モモカ「見つけたかも」
モモカ「全部のエネルギーが、一つの場所から流れてる。おそらく、ここがエネルギーの供給源だね」
モモカ「つまり、ここが虚構のサンクトゥムを生成している中心」
リン「それは、どこなのですか……?」
モモカ「空の遥か彼方、キヴォトスの上空75,000メートル──」
アユム「えっ!?それって、成層圏──いえ、もはや宇宙じゃないですか!?」
リン「……空の遥か彼方、ですか」
モモカ「うん。そこに、今までのサンクトゥムタワーより高濃度のエネルギーを持った構造体があるみたい」
アユム「その構造体が……全ての元凶……という事ですか?」
モモカ「……まさか、空中に隠れてるなんてね」
リン「なるほど……それが全ての元凶であれば、そこにキヴォトスを終焉に導く者がいるのでしょう」
元凶の存在が明らかになると、リンたちはすぐさま攻略作戦の立案に取り掛かる。慌ただしく報告と指示が飛び交い、執務室は再び張り詰めた空気に包まれた。
その様子を一瞥したバージルは、自分がこの場に留まっていてもできることはないと判断する。踵を返すと、誰にも告げることなく、静かにシャーレを後にした。
・・・・
アロナ『えっと、先生黙って出て行って良かったのでしょうか?』
バージル「結果良ければ──というだろう」
アロナ『それはそうなのですが。それでどうするつもりですか?』
バージル「閻魔刀を使う。それで色彩の嚮導者がいる場所へ向かう」
バージル「大方、場所は把握できた。後は、俺たちの目の前に現れた砂狼と同様、ゲートを作り出し、向かう」
アロナ『まぁ、そう言うと思いました』
バージルは閻魔刀を抜き、迷いなく空へ十字を描くように刀を振るう。
空間には一瞬だけ紫紺の亀裂が走る。しかし、その亀裂は何かに拒絶されるように揺らぎ、ゲートが開くことなく霧散した。
バージル「っ……なるほど、そう甘くはいかんか」
アロナ『え?では、どうしたら』
バージル「俺の中ではもう一つ案がある」
アロナ『それって?』
バージル「俺自身の力。俺が保有する魔を全て解放する、そうして力技で向かう」
バージル「その状態であれば空を駆けることなど容易い」
アロナ『それはダメです!黒服さんの話は聞いていなかったのですか!?』
アロナ『先生の力はキヴォトスにとって猛毒なんですよ!先生の身に何が起きるかリスクが大きすぎます!』
バージル「他に方法があるとも思えんが………いや」
バージル「黒服か。奴なら解決策を知っている可能性がある。」
・・・・・
バージルは踵を返し、黒服のもとへと向かった。やがて辿り着いた先で、静寂に包まれた空間へ足を踏み入れると、 まるで来訪を見越していたかのように、 黒服が静かに口を開く。
黒服「これはこれは先生、貴方の方から私へ会いに来るとは」
バージル「貴様の事だ、どうせ、俺が来た理由は分かっているだろう?」
黒服「遥か彼方に存在する建造物まで行く方法でしょうか?」
バージル「……そうだ、貴様なら知っているだろう?」
黒服「ありますよ。アレであれば、色彩の嚮導者に到達できるかもしれませんが──」
黒服「フフフ……無償で話すわけにはいけません、「代償」や「対価」を支払ってもらわないといけませんね」
バージル「……」
黒服「クックックッ……では、私は何かを要求いたしましょう……そうですね、『ゲマトリア』への加入──なんていかがでしょう?」
バージル「……」
黒服「……冗談です」
黒服「既にゲマトリアは解散しましたので。今回は特別に教えて差し上げますよ」
黒服「先生がこれから向かおうとされている要塞の名は『アトラ・ハシースの箱舟』」
バージル「アトラ・ハシース、聞き覚えがあるな」
黒服「ええ、以前、同じ名の箱舟がミレニアムに顕現した事があるかと。既にご存じだと思いますが──」
黒服「その正体は──この大地に埋葬されし、古のキヴォトスの民『名もなき神』の遺産」
黒服「いわゆる、古代文明によって生み出された物──と捉えていただければ」
黒服「唯一『アトラ・ハシースの箱舟』に対抗できる古代文明の遺産」
黒服「──それはアビドスに在ります」
黒服「私はカイザーコーポレーションを介し、アビドス砂漠で『超古代兵器』を探していました。」
黒服「私自身にとっては、不確かな伝承に過ぎませんでしたので」
黒服「ただ、カイザーは違いました。キヴォトス最強の兵器を手に入れ、世界を支配できると信じていたのです」
黒服「そしてついに、彼らは成功したのです──『超古代兵器』の発掘に」
黒服「しかしそれには大きな欠点があるのです」
バージル「欠点?」
黒服「『サンクトゥムタワー』なしでは『超古代兵器』は起動できません」
黒服「そして、そのサンクトゥムタワーは既に破壊されています。故に今、『超古代兵器』を扱える者は存在しません」
黒服「──サンクトゥムタワーに匹敵するオーパーツ、『シッテムの箱』の所有者を除いては」
バージル「なるほど、だが本当にそれが対抗できる物なのか?」
黒服「ククッ……ええ、可能ですよ、何せ、アレは──『船』なのです」
黒服「『アトラ・ハシースの箱舟』と同様に、それもまたキヴォトスの起源が込められた名──『兵器』の最終形態」
黒服「──宇宙戦艦です」
バージル「……」