=====回想======
(mission27の出来事)
セイア「赤く染まり果てた世界。建物の残骸があることからキヴォトスの未来に起こりうる出来事……」
セイア「そんな未来、今のキヴォトスでは想像もつかない場所で、先生は赤のロングコートを着た人物に剣のようなもので胸を貫かれていた」
セイア「……その先は視えなかったが、おそらくは──」
回想終了
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最古の悪魔「……愚かな。追い詰められた末の仲間割れか」
その言葉通り、バージルの胸には魔剣ダンテが深々と突き立っていた。
ポタ……ポタ……
傷口から、血が滴り落ちていた。
この時のバージルには、ダンテの行動が策なのか、それとも裏切りなのか、判断できなかった。
バージル「これは何の真似だ、ダンテ。貴様、正気か?」
「それとも、奴にでも洗脳されたか──?」
ダンテ「されてねぇよ」
バージル「……なら、何故?」
ダンテは一拍置いた後、行動の意図を話し始めた。
ダンテ「……リベリオンは閻魔刀と違い、人と魔を一つにする」
「形は変わっちまったが……その本質まで変わったわけじゃねぇ」
ダンテは静かに魔剣ダンテへ視線を落とす。
ダンテ「まだ、リベリオンの力も特性も残ったままだ」
バージル「まさか──」
ダンテが柄から手を離すと、魔剣ダンテは粒子となって崩れ、その力がバージルの体内へと吸い込まれていく。
バージル「っ……」
流れ込んだ魔剣ダンテの力が、バージルの肉体へと馴染み始める。
だが──
バージルの持つ閻魔刀が、微かに震え始めた。魔剣ダンテの力を拒むように──。
ダンテ「……やっぱり、閻魔刀が拒絶するか……」
ダンテは、ある程度こうなることを予想していた。
リベリオンと閻魔刀。
本来なら決して交わることのない二つの魔剣なのだから、拒絶されること自体は想定内だった。
ダンテ「なら、必要な鍵は……人でも悪魔でもない……」
「奇跡か──」
バージル「おい、ダンテ……何をしようとしている──」
バージルが疑問を抱く中、ダンテは懐からある物を取り出した。
それは──
大人のカードだった。
ダンテ「俺たちは悪魔であり人であり、そして先生でもある」
「唯一、キヴォトスに来てから持っていた物」
「これを使ったことはない。どんな代償を招くかも分からない」
バージル「……勝つために?随分とめでたい頭だな。何が起きるかも分からないものを使うとは──」
ダンテ「構わないさ、仲間のため、そして巻き込んでしまったあんたの所の生徒のために、俺がすべきことは──」
「デビルハンターとして、そして先生として……命くらい、くれてやるさ」
バージル「………」
ダンテ「でも悪いな……バージル。これは俺の責務だ。別時間軸の連中に助けを求めず、俺自身で何とかしなければならない相手なんだ」
「だから……自分勝手も承知の上だ。払えるもんは払う、だから奴を倒してくれ」
バージル「……」
ダンテが大人のカードを頭上へ掲げると、カードは眩い光を放った。
閃光とともに、閻魔刀の刀身が光の粒となって崩れた。
そこから溢れ出した力が、魔剣ダンテの力と混ざり合いながら、バージルの身体へと吸い込まれていく。
バージルの全身が光に包まれる。
光が収まった時、バージルの姿にも変化が現れていた。しかし、それは魔人化でも、真魔人化でもない。
悪魔の力を宿した姿でありながら、どこか神秘的な雰囲気を漂わせる、新たな姿だった。
それを名付けるならば──
魔神化。
そして、バージルの手元には──
閻魔刀の面影を残す、一振りの魔剣が現れていた。
その鞘には、肉や血管を思わせるものが絡みつき、禍々しい意匠を形作っていた。異様な存在感を放つその姿は、まさしく魔剣と呼ぶに相応しい。
ダンテ「……へへ、上手くいったようだな。さぁ、老魔。人が起こした奇跡を、とくとご覧あれ」
最古の悪魔「それが貴様らスパーダの血族の切り札というわけか」
「足掻こうとしても結果は目に見えているがな」
バージル「……」
「不思議な感覚だ……」
バージルはその魔剣を抜刀した。
しかし──そこにあるはずの刀身は、視界に映らなかった。
否、そこにある。ただ、視えないだけだ──空気の揺らぎが、それを物語っている。
そしてそれは──
バージル自身の名を冠する、唯一の魔剣。
魔剣バージル(Devil Sword Vergil)
見えざる刀身を最古の悪魔へと向けると、魔神化したバージルは六枚の翼を大きく広げた。
次の瞬間、真魔人化すら凌ぐ速度で最古の悪魔へと迫る。
最古の悪魔は突進してくるバージルへ、六枚の翼から無数の羽根を放った。
しかし、その全てをバージルの幻影剣が迎え撃つ。
最古の悪魔が放った羽根と幻影剣が激突する。
火花が散り、羽根は砕け散った。
だが、幻影剣は消えない。
なおも宙を舞い、主の周囲を旋回する。
バージルは無理に間合いを詰めることはせず、一定の距離を保ったまま魔剣を振るった。
一閃──斬撃が最古の悪魔へと飛ぶ。
その斬撃を、最古の悪魔は片腕を差し出して受け止めようとする。
しかし──斬撃は、その腕をすり抜けた。
まるで腕という存在そのものを無視するかのように、斬撃はそのまま胴体へ到達し、肉体を大きく切り裂いた。
最古の悪魔「なっ!」
傷口から血が噴き出した。
最古の悪魔「これは……甘く見すぎていた。此奴は今、先ほどとは比べ物にならない。いや、それどころか……スパーダすらも……」
バージルは再び魔剣を構え、斬撃を放とうとした。
最古の悪魔はバージルへ迫ると、巨腕を大気ごと引き裂く勢いで振り抜いた。周囲の空気を巻き上げながら、一直線に叩き込まれる。
しかし──
バージルはその腕を極限まで引き付け、紙一重で身を反らして躱す。
生まれた隙を逃さず、バージルは魔剣バージルをその腕へと斬り込ませた。
バージルは魔剣を振り抜いた。
刃を通して、尋常ではない抵抗が伝わってきた。まるで分厚い革ではなく、生きた大地を断ち切っているようだった。
それでも構わず、魔剣をさらに深く食い込ませる。
見えざる刃を肩口まで滑らせるように、斬り上げた。
その勢いのまま、バージルは最古の悪魔の背後へと回り込む。
最古の悪魔「この鬱陶しい蠅め!」
最古の悪魔の翼が形状を変え、そのうちの一枚がバージルを襲う。バージルはそれを魔剣によって両断し、さらに畳みかけようとするが──
バージル「っ……!」
その瞬間──魔神化の力が限界を迎え、六枚の翼が霧散した。
その隙を逃さず、最古の悪魔はバージルへ向けて腕を振り下ろした。バージルはその一撃をまともに受け、地面へと叩き落とされる。
大きなクレーターが形成される。
最古の悪魔「先ほどまでの形態を維持できなくなったようだな」
バージル「……」
バージルの頭から血が流れ出る。だが、その表情に動揺はない。
バージルは手を握り、そして開く。
自身の身体に残された力を確かめるように。
そして──魔神化が解けたにもかかわらず、魔剣バージルだけはその手に残っていた。
最古の悪魔「先ほどまでなら脅威だった。だが、あの姿を失った今……貴様に何ができる?」
バージル「……」
バージルは答えない。
ただ、魔剣バージルを握る手に力を込めた。その口元には、僅かな笑みが浮かんでいた。
最古の悪魔は自身の翼の一枚をもぎ取り、その形状を変えた。
それは一振りの巨大な大剣へと変貌していた。
最古の悪魔「このまま、死ね」
振り下ろされた大剣を、バージルは魔剣バージルの不可視の刃で受け止めた。
最古の悪魔「っ!?」
不可視の刃と巨剣が激突する。
圧倒的な体格差にもかかわらず、両者の力は完全に拮抗していた。
それどころか──バージルは余裕の笑みを浮かべていた。
最古の悪魔「何がおかしい!」
その瞬間──
バージルの背後に、鮮やかな水色の半透明な分身体が現れた。
先ほどまでの魔神化した姿、そのものだった。
何の前触れもなく、魔神化したバージルの分身体が、最古の悪魔の手首を深々と斬り裂いた。
握力が弱まったその隙を突き、バージルは地面を蹴って走り出す。
最古の悪魔へと迫ったバージルは飛び上がり、その胴体に斬りかかった。
瞬く間にバージルは背後を取り、振り抜いた魔剣──その見えざる刀身を、ゆっくりと鞘へと収めた。
一拍遅れて──最古の悪魔の胴体に、深い斬撃痕が刻まれた。
そして最古の悪魔は地へと倒れ込んだ。
止めを刺そうと身を屈め、魔剣の柄に手を掛けようとする。そのとき、魔神化の反動が一気に押し寄せ、バージルは地に膝を突く。
最古の悪魔は起き上がり、バージルに向けて鋭利な翼を二枚伸ばす。
が──
パンッ!!
一発。
続けざまに──パンッ!!
もう一発。
突如として飛来した銃弾が、最古の悪魔の二枚の翼を弾き飛ばした。
それを放ったのはダンテだった。
手にしているのは、エボニー&アイボリーではない見慣れぬ拳銃。
ダンテ「今だ!バージル!」
立ち上がったバージルは魔剣バージルを構える。
すると空気が静まり、地、空……目に映るものすべてが淡い水色へと染まった。
バージル「神をも超えた力を思い知れ!」
魔剣の鍔元が一瞬だけ蒼白く煌めいた。
次の瞬間──視界いっぱいに、空を裂く亀裂が走った。
そして気づけば、バージルは最古の悪魔の背後に片膝を突いていた。
ゆっくりと、魔剣を納刀する。
納刀の音と共に亀裂が弾け、最古の悪魔の肉体を、無数の斬撃が切り刻んだ。
最古の悪魔「ま……だ……終わ……って」
なおも死に抗おうとする最古の悪魔。
だが──その声が途切れると同時に、身体は完全に崩れ去った。
・・・・・
バージルは、一息ついた。
すると、魔剣バージルが不意に光り出し、バージルの手から離れる。
光の中から、見覚えのある武器と遺物が次々と姿を現した。
魔剣バージルが消え、そこに残されていたのは──
リベリオン。
バージルの閻魔刀。
フォースエッジ。
そして、かつて一つに統合されていたパーフェクトアミュレット。
バージル「……これはどういうことだ?」
ダンテ「……さぁな、まぁ、この感じだと代償じゃねえのか?」
バージル「代償……または、本来交わることのない二振りを、無理に一つへとした結果……なのかもしれんな」
そしてダンテはリベリオンを、バージルは自身の閻魔刀を手に取った。
二人がそれぞれの柄を握った──その瞬間だった。
ピシッ……
小さな亀裂が刀身へ走った。
ダンテ「……?」
次の瞬間。
パリンッ!!
亀裂が刀身全体へ走った直後、崩れ落ちた二振りの魔剣は、周囲の砂に紛れるように消えていく。
二人は、何も言えなかった。
目の前で起きたことを受け入れられず、ただ驚きと困惑の中に立ち尽くしていた。
二人の間には、長い沈黙が流れる。
・・・・・
ダンテ「……まさか耐えきれなくて、跡形もなく消えちまうなんてな」
バージル「……最古の悪魔を討つために講じた策の代償がこれとはな」
バージルは、砂へと変わった魔剣の残骸を黙って見つめていた。
自らの半身とも言える閻魔刀を失ったのだ。動揺がないわけではない。
だが──いつまでも引きずっているわけにもいかなかった。
バージルは小さく息を吐くと、視線を前へ戻した。
バージル「……はぁ。失ったものを嘆いたところで、戻ってくるわけではない」
そうして気持ちを切り替えた、その時だった。
ダンテが何かを思いついたように歩き出す。
ダンテ「……なぁ、バージルよ?」
バージル「……なんだ?」
バージルが使っていた閻魔刀は、すでに失われた。
しかし──この世界には、もう一振りの閻魔刀が残されている。
ダンテは、戦闘前に地面へ突き立てていたその刀へ歩み寄ると、何気ない仕草でバージルへと放り投げた。
バージル「……これは貴様が持っているべきものだろう。俺の物ではない」
バージルは受け取った閻魔刀を、ダンテへ返そうとした。だが、ダンテは僅かに表情を緩めた。
ダンテ「いや、俺じゃ扱いきれないし……それに、この刀はあんたが持ってる方がしっくりくる」
そう言うと、ダンテはフォースエッジとパーフェクトアミュレットへ歩み寄り、それらを拾い上げた。
その瞬間、パーフェクトアミュレットの宝玉に亀裂が走った。
ピシッ……
次の瞬間──
パリンッ!!
パーフェクトアミュレットは、音を立てて二つに分かれた。
そこに残ったのは──、二つのアミュレットだった。
ダンテ「……おいおい、これもかよ」
バージル「……はぁ。スパーダが残した遺産が、代償によってここまで失われるとはな」
バージルは、唯一その姿を残したフォースエッジへ視線を落とした。
ダンテ「……ま、あんたにとってはいい教訓になったんじゃないか?」
バージル「何が言いたい?」
ダンテ「どうせ、あんたは向こうの世界の最古の悪魔も倒すつもりだろう?」
「なら、俺がやったことは、悪い意味でも参考にはなったわけだ」
ダンテは、どこか前向きな様子でそう言った。
バージル「……最古が障壁となる場合は、そうかもな」
ダンテの言っていることに間違いはない。今回の一件は、バージルにとって十分すぎるほどの教訓となった。
ひと段落ついたところで、バージルは立ち上がる。
バージル「……さて、ダンテ、帰るぞ」
バージルがそう言うと、ダンテは俯いた。先ほどまでのお気楽そうな表情は消え、どこか渋い顔を浮かべている。
ダンテ「……いや、俺はこの世界に残るさ」
バージル「……なに?」
ダンテの突然の「帰らない」という言葉に、バージルは理解が追いつかなかった。
ダンテ「もう俺は、先生なんかじゃない。このキヴォトスを見れば分かるだろ?」
ダンテは、眼前に広がる滅び果てたキヴォトスを遠い目で眺める。
生徒も、住民も──もう誰一人として残っていない。その光景を前に、ダンテは自らが招いた結末を悔いるように、ただ静かに世界を見渡していた。
それに対し、バージルは呆れたように口を開く。
バージル「違うな、貴様はまだ先生だ。俺の世界には、貴様が連れて来た生徒が一人いるはずだ」
ダンテ「……シロコか。俺にはもう、あの子と向き合う資格は無くなったんだ」
「先生として果たすべきことを、俺は何一つ果たせなかった」
「だから……後はあんたに委ねるさ、兄貴」
バージルの言葉に、ダンテは表情を変えなかった。
まるで、その答えだけはとうに決めていたかのように──冷静に言葉を返した。
バージル「何を勝手な」
ダンテ「俺は、あんたの所の生徒達に敵として現れて、そして死んだ男なんだ。そういうことでいいだろ? 俺が生きて戻ったところで、あいつらを混乱させるだけだ」
「キヴォトスを滅ぼそうとした男として、このままあんたの世界に帰るわけにもいかねぇしな」
ダンテは、自らが敵として生徒たちの前に現れたことを理由に、バージルの世界へ戻ることを頑なに拒んでいた。
事情を知らない生徒たちに余計な混乱を与えるくらいなら、あいつらにとっては敵として死んだ男のままでいた方がいい──そう考えているのだ。
──その姿は、かつての自分とどこか重なっている。
それでも──
バージル「良くないな。たとえ、俺の所の生徒が、そして貴様の所の砂狼がそれでいいと言おうとも」
「俺がそれを許さん」
どうしてもこの滅びたキヴォトスに残ろうとするダンテを、バージルは無理にでも連れて帰ろうとした。
その時──
バージル「っ……うぐ」
突如として全身を襲った疲労に、バージルは片膝を突いた。
ダンテ「大きな力を得た代償が来たな」
バージルは、ダンテから渡された閻魔刀を杖代わりに、ゆっくりと立ち上がった。
バージル「……」
最古の悪魔との戦いで負った傷も決して軽くはない。だが、それ以上にバージルを苦しめていたのは、魔神化の反動だった。
それでも、その目つきだけは変わらない。鋭い眼差しをダンテへと向け、決して退こうとはしなかった。
ダンテ「どうしても、俺をここに残してはくれないのか」
バージル「そうだ……となれば、やることは一つだろう、ダンテ?」
ダンテ「……好きだよなぁ、喧嘩。でもなバージル、今のあんたじゃ勝てねぇだろ。随分と消耗してるぜ」
それでもバージルは退かない。弱り切った身体を無理やり動かし、再び臨戦態勢へ入った。
バージル「抜かせ!」
バージルは一歩、前へ踏み出した。ダンテは小さく肩をすくめた。
ダンテ「これだから兄貴は……。さて、どうやってあんたを現代に戻すか」
???「ん、なら私が連れて帰るよ」
その時──
二人の背後から、聞き慣れた声が響いた。
ダンテ「……なんだ、ついてきてたのか……シロコ」
シロコ《別時間軸》「……気になって、後を追ってきた」
次の瞬間、シロコは弱ったバージルの背後から腕を回し、その身体を押さえ込む。
バージル「離せ! 別時間軸のシロコ!」
バージルは必死に抵抗する。
しかし、魔神化の反動と最古の悪魔との戦闘で疲労しきった身体では、シロコの拘束を振りほどくことができなかった。
普段ならば、彼女がどれほど力を込めようとも、バージルを押さえ込むことなどできなかっただろう。
ダンテ「悪いな、兄貴」
「シロコ、そのまま抑えてくれ」
そう呟くと、ダンテはバージルの首筋へ静かに手刀を落とした。
バージルの意識は、そのまま闇へと沈んでいく。
本編の後日談を投稿し終えたところで、第二部は終了となります。
第二部終了後は、いったん本編から少し離れ、2.5部を投稿する予定です。