悪魔と青春の記録   作:黒凪カズキ

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今話はプロローグの前日譚となっており、2.5部は本編より前の出来事を描いた話となります。


2.5部 / 番外編
mission## 記憶 きっかけ 経緯 1/2 +α


ダンテとともにクリフォトの根を断ってから、約半年が経過しようとしていた。

 

ダンテ「バージル、そろそろさ、帰ってこないか? ネロたちが心配するぞ?」

 

バージル「知るか、俺は悪魔として生きると決めた、帰るならお前一人で帰れ」

「だが……まぁ、何だ、迷惑を掛けたとは思っている。人間界へ帰る用のポータルは開く、お前だけくだらん生活でも謳歌していろ」

 

意地でもネロたちのもとへ帰ろうとしないバージルに、ダンテは呆れたように口を開く。

 

ダンテ「いや、俺一人で帰ってもなぁ。お前がいなきゃ意味ないだろ」

 

バージル「何度でも言おう、俺は人間界に行く気など微塵もない」

 

ダンテ「それはあれか? あんたの自分勝手な行動で多くの人が犠牲になったけじめか?」

 

バージル「……」

 

ダンテ「こんな住み心地の悪そうな場所で生涯を終える気かよ」

 

バージル「そうだ、と答えたら?」

 

ダンテ「正気かよ」

 

バージル「お前と違って冷静な方だ」

 

ダンテ「あ? なんだもうひと勝負するか? バージル」

 

バージル「いいだろう、まだ勝負は決まっていないからな」

 

そしてまた、ダンテとバージルによる、何百回目とも知れない手合わせが始まった。

 

・・・・・

 

バージル「……これで20戦、またしても五分か」

 

ダンテ「中々、決着つかねぇな。少し休憩しないか? バージル」

 

そう言うと、ダンテはおもむろに地面へと座り込んだ。

 

バージル「俺はまだやれる」

 

ダンテ「あぁ、そうかよ」

 

バージルの意地っ張りな返答を、ダンテは軽く受け流す。そして――

 

ダンテ「はぁ、ストロベリーサンデーが恋しいなぁ」

 

ダンテは、わざとバージルに聞こえるような声で、人間界で好んでいたものの名前を口にした。

 

バージル「……」

 

ダンテ「オリーブ抜きのピザもあれから全然食べてないし」

 

バージル「………」

 

ダンテ「兄貴がカッコつけて魔界に残ると言わなければ」

 

ダンテの口から次々と零れる不満を聞き、バージルは眉間に皺を寄せながら立ち上がった。

 

バージル「はぁ、わかった、一時的に人間界と魔界を繋げる、ピザやら食ってきたらさっさと戻ってこい」

 

ダンテ「はぁー? いやまぁ、離ればなれになるよりかはマシだけどさ」

 

閻魔刀を振るい、空間に十字の切れ込みを刻む。

人と魔の結界を断ち切ろうとした――だが、その斬撃の軌跡は霧のように消えていった。

 

バージル「っ……」

 

ダンテ「まだかよ、バージル」

 

何度も試してみるが、どうやっても魔界から人間界へ帰るポータルを開くことはできなかった。

 

ダンテ「……? どうした」

 

バージル「残念だが、どういうわけか、人間界に帰ることは叶わない」

 

ダンテ「……はぁ〜!? なんでだよ? 前に自信持って『人間界に帰りたい? そんな問題、閻魔刀で解決する』とか言っていただろう」

「期待させておいて、できないって言うんじゃないだろうな?」

 

現実を受け入れられないダンテを、バージルは半ば呆れながら見つめる。

 

バージル「これが事実だ。受け止めろ」

 

ダンテ「いやいや、何が問題なのか探らないのか?」

 

バージル「問題か……閻魔刀による魔界と人間界の行き来は可能なのだが、この場所が特殊なのか……それとも、全く別の問題なのか」

 

ダンテ「閻魔刀貸せ。俺も試してみる」

 

バージル「閻魔刀の扱いが俺より不慣れな貴様が扱ったところで、無意味なことだ」

 

バージルが何か隠しているのではないか。ダンテはそう疑った。だが、閻魔刀を扱いきれないのもまた事実だった。

 

ダンテ「チェ……」

 

・・・・・

 

バージル「……はぁ」

 

……ダンテは、今は隣で寝ている。

 

疲れ果てたのか。

 

無防備に、間抜けな顔で。

 

俺は一人、静かに座す。

 

バージル(……人として生きることを決めたお前と悪魔として生きていくことを決めた俺)

 

バージル(もし選ぶ道が逆だとしたら、俺が人としての生き方を……)

 

バージル(……くだらん、考えるだけ無駄か、瞑想でもして、雑念を払おう)

 

近場にいる悪魔は命惜しさに大人しくしているようだ。今は、心を沈めるとしよう。

 

あらゆる雑念を斬り捨て、ただ、無となり、目をつぶる。

 

そのとき、遠くからでは姿までは分からない。

ただ、六枚の翼を持ち、どこか神々しさすら感じさせる存在が、魔界の上空からゆっくりと降りてきた。

 

バージル「おい、ダンテ…」

 

ダンテ「起きてるさ、それにしてもなんだこの感じ──魔王と名乗っていたときのあんたよりもヤバそうな雰囲気を出してるぞ」

 

バージル「……昔の事を掘り起こすな」

 

???「魔剣士スパーダの血族かまだ生きていたのか」

 

ダンテ「なんだあんた、親父の知り合いか?」

 

???「そうなるとムンドゥスは失敗に終わったか」

「まぁ、いい、ここで血筋を断てばいい話」

 

ダンテ「ムンドゥス……あんたは一体なんだ? ド派手な登場で現れたと思ったら自問自答して」

 

???「俺に名などない」

 

ダンテ「へぇー、どっかで聞いたセリフだな、なぁバージル?」

 

バージル「何度も言うが前のことを掘り起こすな」

 

ダンテ「というわけだ。この兄貴の黒歴史に触れるからせめて名がほしいところだが」

 

最古の悪魔「……どの悪魔よりも長く生きている。最古の悪魔とでも呼べ」

 

ダンテ「つまりおじいちゃんねぇ、大丈夫ですかーおじいちゃん、杖忘れてるぜ? 転ぶと危ない年齢だろ?」

 

バージル「貴様も年配と言っても遜色ない見た目をしてるだろ?」

 

ダンテ「んなことは言われなくてもわかってる。でも真隣で言うなよ!」

 

最古の悪魔「……」

 

ダンテ「……へへっ、なんだ黙り込んで、随分とお喋り嫌いじゃねぇか、これから俺たちに倒させるっていうのに」

 

最古の悪魔「魔剣士スパーダと似て非なる性格だ……」

 

ダンテ「あ? さっきから親父の名前を呼んで、あんた親父の何を知っている」

 

最古の悪魔「……いいだろう、教えてやろう、そして狼狽え、絶句しろ」

 

 

 

「……魔剣士スパーダは我が殺した」

 

ダンテ「……は?」

 

バージル(魔剣士スパーダですら手に負えず、死に至らしめた存在か)

 

ダンテ「お前が…親父を?」

 

最古の悪魔「余裕の雰囲気が崩れたな……そうだ、我が殺した。だったらどうする?」

 

ダンテ「……」

 

ダンテは黙り込み、俯いたまま拳を握り締めた。その姿を見れば、怒りに満ちていることは明らかだった。

 

バージル「……貴様のような悪魔、俺は知らんな。とはいえ強さは本物」

「今まで姿を隠していたのは、スパーダとの戦闘で大きく疲弊したためか、それかスパーダ自身が命を焼き尽くして、貴様を封印したというところか?」

 

最古の悪魔「……死人に口無し。どうせ貴様らはここで死ぬ。真実を知る必要もあるまい」

 

ダンテ「……お前が!」

 

ダンテが今にも飛び出そうとする。それを見たバージルは横から鳩尾へ拳を叩き込んだ。

 

バージル「落ち着け、ダンテ」

 

ダンテ「ぐっ……!」

 

呼吸を奪われたダンテはその場で足を止める。

 

バージル「怒りのまま剣を振るうほど、お前は愚かだったか?」

 

ダンテ「あんたは何とも思わないのかよ」

 

バージル「……今の状況を考えろ」

 

ダンテ「……そうだな。どうも俺は家族絡みになると、すぐ頭に血が上る。悪かったな、バージル」

 

バージル「理解しているなら、それでいい」

 

最古の悪魔「……哀れだ。実力にこれほどの差があるというのに、それでもなお向かってくるか」

 

ダンテ「何もしないで終わるより、せめて傷跡の一つくらい残してやるさ」

 

バージル「ふん……好き勝手されるだけで終わるなど、屈辱以外の何物でもない」

 

最古の悪魔「スパーダと同じ末路を辿らせてやろう」

 

ダンテ「……手加減なしでいくぞ、バージル」

 

バージル「当然だ」

 

二人の身体から膨大な魔力が噴き上がる。

蒼白と深紅の魔力が辺りを震わせ、光が二人を包み込んだ。

 

光が弾けると、そこに立っていたのは人ではない。

 

魔そのものの姿──全ての力を解放した魔人と化したダンテとバージルだった。

悪魔全体の中でも群を抜いて強く、一、二を争うほどの実力を持つ二人だが──

 

 

・・・・・

 

ダンテ「はぁ、はぁ」

 

バージル「……っち」

 

今の二人では、その悪魔の身体に傷を入れることしかできなかった。

 

最古の悪魔「こんなものか。この程度ならスパーダの方がまだやりあえていた」

 

ダンテ「まだ……やれるか? バージル」

 

ダンテは足をふらつかせながら立ち上がる。

 

バージル「貴様こそ言えることではないはずだ」

 

閻魔刀を地に突き、それを杖代わりにしてバージルは立ち上がる。

 

ダンテ「このままだと、俺たち二人ともこいつにやられてお陀仏するぞ」

 

バージル「ダンテ、奴に渾身の一撃を叩き込めるか?」

 

何か考えがあっての発言だった。

 

ダンテ「はぁ? 何やろうとしているんだ?」

 

バージル「奴と戦闘を交えてわかったことがある」

「現状閻魔刀による人間界から魔界への行き来を妨げている元凶が奴だ」

 

ダンテ「つまり、あいつをどうにかしない限り、俺たちは魔界に取り残されたままと」

「じゃあ簡単に言えばあいつを倒せば俺たちはネロたちの所へと帰れるんだな」

 

バージル「それか、その妨げを維持できないほどに痛手を加えれば可能だろう」

「閻魔刀の力が作用しないほどの強固な結界で俺たちを魔界から人間界に行けなくするなど、相当な集中力が必要なはずだ」

 

ダンテ「オケー、大方理屈は分かった。でも、相当な集中力を使っているなら、時間稼ぎとかはどうだ? 正直逃げ腰になるのはいい気にならないが」

 

バージル「……奴が時間を気にする素振りもない。得策とは言えんだろう」

 

ダンテ「……なら前者の方か、まぁ下手にやられるよりかはマシか、かけてみる価値はあるな」

 

バージル「もしこの策が端から間違いだったら……あとはわかるよな」

 

ダンテ「縁起でもねぇこと言うな」

 

最古の悪魔「話は済んだか?」

 

ダンテ「バージル、準備をしろよ?」

 

バージル「愚問だな、できている」

 

ダンテは真魔人となり、最古の悪魔へと飛び掛かり、魔剣を振るう。

しかし──

 

最古の悪魔はダンテを避け、真っ先にバージルの方へと向かった。

 

ダンテ「なっ!?」

 

バージル「っ!」

 

最古の悪魔「貴様が一番危うい鍵、いや、その魔具が危なっかしい物だ」

 

最古の悪魔はバージルの胴と、閻魔刀を握る左腕をそれぞれ掴むと、力任せに左腕をもぎ取る。

鈍い音と共に左腕が肩口から離れる。鮮血が舞う。

 

閻魔刀をなおも掴み続ける左腕は、彼方へと投げ捨てられる。

 

バージル「ぐっ……!」

 

ダンテ「バージル!」

 

バージル「愚弟!貴様が敵う相手ではないことぐらいわかるはずだ!」

「感情で動くな!」

 

片腕を失ってなお、冷静さを保ち続けダンテに告げた。それを聞いたダンテは、バージルのもとへ駆け寄ろうとする足を止め、閻魔刀へと走り出す。

 

最古の悪魔「刀狙いか」

 

最古の悪魔がダンテへ意識を向け、駆け出そうとした、その瞬間。

 

バージル「隙だらけだ」

 

捕らえられているバージルは分身を召喚する。

分身がミラージュエッジを構え、最古の悪魔の片目を狙った。

 

最古の悪魔「ぐっ!」

 

最古の悪魔は片手で目を覆い、苦しむ。

バージルを掴む手が緩み、バージルはその腕から脱した。

 

バージル「ダンテ!」

 

バージルの叫び声を聞きダンテは初めて、閻魔刀で空間そのものを一刀のもとに切り裂いた。

 

最古の悪魔の意識が乱れたことで、魔界と外界を繋ぐ亀裂が生まれた。

 

バージルはダンテの方へと走るが最古の悪魔は片目の修復を優先し、再生を続けていた。

裂け目を抜けたバージルを確認すると、ダンテも後に続いた。

 

亀裂の向こうは上空だった。

ダンテが初めて空間を裂いたためか、座標が大きくずれ、地上から遥か彼方の高度に出てしまっていた。

 

最古の悪魔の目の修復は完了し、ダンテたちへ向けて、目にも留まらぬ速さで飛来した。

 

しかし、遅れて裂け目を抜けたダンテは、最古の悪魔の腕に捕らえられた。

 

ダンテ「ぐっ、もう少しのところだったが」

 

バージルはダンテが捕まるところを見ると真魔人化してダンテの元へ駆けようとするが──

 

ダンテ「来るな! バージル!」

 

ダンテがそう言い放った後、バージルの切り離された左腕を掴んだ。

その手は、閻魔刀の鞘を強く握ったままだった。

ダンテはその腕ごと、バージルへと投げ渡す。

 

最古の悪魔は、バージルと閻魔刀ごと捕らえようと、腕を裂け目の向こうへ伸ばした。

 

最古の悪魔の腕は、まるで液体から気体へと変わるように崩れ、消えていく。バージルは捕らえられずに済む。

 

バージルは、自らの切り離された左腕を拾い上げる。

その手は、なおも閻魔刀の鞘を強く握り締めていた。

 

そのまま、閻魔刀を握り続ける左腕ごと取り戻そうとした。

だが――

 

切り離された腕の握力が、ついに失われる。

 

指が緩み、閻魔刀は引き離された腕からすっぽりと抜け落ちた。

 

バージル「……っ」

 

納刀されたままの閻魔刀は、そのまま遥か下方へと落ちていく。

 

バージルは手を伸ばそうとするが、消耗しきった身体は動かなかった。

ただ、魔界とこの世界を繋ぐ亀裂が閉じていく光景と、遠ざかっていく閻魔刀を見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

 

================

~ネロ視点の人間界~

 

 

 

 

ダンテとバージルが魔界に行ったきり、そろそろ半年が経とうとしていたが、まだ帰ってくる気配はなかった。

 

ネロ「はぁ、一体いつになったら帰ってくるんだ。俺の事情も知らないで……」

 

バージルから預かった詩集を見つめながらネロは机に体を預けそっとため息をつく。そんな彼に、幼馴染であるキリエが声をかける。

 

キリエ「ネロ? また思い詰めてるの?」

 

ネロ「あれから半年、帰ってくる気配がないし、そりゃあ、親父とダンテは元気にしてそうだけど、こっちの身にもなって欲しいよ」

 

キリエ「そうね。私もネロの本当のお父さんに正式にご挨拶しないといけないわ」

 

ネロ「やめとけ、絶対あいつはそのことに関して一ミリも興味は持たないって」

 

キリエ「そう? 話したら良い人かもだし、ネロのパパ、バージルさんは人情深い人かもしれないし……」

 

ネロ「ほんの数分だけの対面だったが、それだけは絶対ない」

 

キリエ「でもネロのお父さんなわけだし、なくはない話だと思うわ」

 

ネロ「……」

 

キリエの優しい言葉に、ネロは結局言い返せなかった。

そんな中──

 

ニコ「ネロ、お前に電話───お邪魔だったか?」

 

ネロ「からかうのはやめろ、それで、電話? 誰からだ?」

 

ネロが話を逸らすようにニコの話に移る。

 

ニコ「モリソンからだ」

 

と言いニコはネロに向けて電話機を投げるとネロはそれを掴む。

 

ネロ「……もしもし?」

 

モリソン『ネロか?』

 

ネロ「ああ。今、電話変わったぞ。それで電話をかけてきた以上……悪魔絡みか?」

 

モリソン『ああ、一応部分的にな』

 

ネロ「部分的?」

 

モリソン『少しこっちも起きた出来事の情報収集している最中でな、詳しくは分からないんだ』

 

ネロ「なんだよ、そりゃあ、それがどう悪魔と関係あるんだよ?」

 

モリソン『まぁ、まずは話でも聞いてくれ』

 

ネロ「……」

 

モリソン『まず、依頼とかではなく注意喚起だ』

 

ネロ「注意喚起?」

 

モリソン『ダンテが借金ばかりで魔具を質に入れていることは知っているか?』

 

ネロ「……何か質を入れてるのは察せたが、魔具を入れてるのかよ」

 

モリソン『あぁ、呆れる話だよな』

 

ネロ「それで、結局のところ何だ?」

 

モリソン『魔具が一つ行方をくらませた』

 

ネロ「……何の魔具だ?」

 

 

 

 

モリソン『――閃光装具ベオウルフだ』

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