ロードス島に転生だぁ?ワクワクが止まらねえな、オイ! 作:くさくさ
俺が前世の記憶を取り戻したのは、四歳の誕生日を迎えた、とある晴れた日の朝だった。
寝台の上で目を覚ますと、天井の木目が視界に飛び込んできた。ぼんやりとそれを見つめていると、突然、頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。断片的なイメージ、言葉、匂い、そして「俺、日本人じゃん」という明確な自覚。混乱する暇もなく、次々と記憶が鮮明になっていく。
(ああ、そうか。俺、死んだんだっけ)
交通事故だったか、病気だったか、正確な死因は思い出せない。だが、確かに一度人生を終え、そして今、この世界で「ロックス」という名の四歳の子供として生きている。その事実を、俺の脳は混乱することなく受け入れた。
耳を澄ませると、隣の部屋から大人たちの話し声が聞こえてくる。「ファリス」「魔神戦争」「ロードス島」……聞き慣れない単語の中に、妙に引っかかる言葉が混じっていた。
「……ロードス島、ねぇ」
その瞬間、稲妻が頭を貫いたような衝撃が走った。「ロードス島戦記」――。中高生の頃に夢中になった、ファンタジー小説、OVA、コミック、様々なメディアで展開された、あの作品の世界観。まさか、あの呪われた島、戦乱の地、ロードス島に転生したというのか?
慌てて脳内の記憶を漁る。朧げながらも、大まかな歴史の流れや主要人物のプロフィールが蘇ってくる。そして、俺が生まれた年が、あの「英雄戦争」の約二十五年前であることに気が付いた。
「せめて邪神戦争後に生まれたかった!」
思わずそう叫びたくなった。いや、声には出さなかったが、心の中では絶望的な叫びが響いた。ロードス島は邪神戦争後には「呪われた島」とは呼ばれなくなる。平和とは言わずとも、少なくとも英雄戦争から邪神戦争までのような空前の戦乱期では無くなるはずだ。よりにもよって、なぜこの厄介な時代に生まれてしまったのか。
しかし、俺は根がポジティブな人間だった。絶望は一瞬で終わった。
(まあ、そうは言ってもしょうがねえな!)
これが今の、そしてこれからの俺の状況だ。生まれたからには生きるしかない。これから先の戦乱の世を生き抜く。どうせなら最高にワクワクしながら生きよう。そして老衰で満足しながら死のう。前世では訳の分からん内に死んでしまったからな。
この世界に対する畏れはある。何しろロードス島だ。呪われた島だ。しかし、少年時代に慣れ親しんだ、このファンタジー世界に対する憧れや、未知の世界へのワクワク感も同時に込み上げてくる。ロードス島戦記で知っている知識は、モンスター、重要人物、魔法、古代遺跡、魔法アイテムなど、限られた部分だ。それ以外の、この世界の日常や文化、人々との出会い……。それらすべてが、俺の好奇心を刺激してやまなかった。