ロードス島に転生だぁ?ワクワクが止まらねえな、オイ!   作:くさくさ

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朝の挨拶は元気よくだろ!なあ、オイ!

思考を巡らせていると、足元から冷気がじんわりと伝わってくる。どうやら、いつの間にか寝台から降りていたらしい。部屋の扉を開け、食堂へと向かう。

 

食堂では、すでに家族が朝の支度を始めていた。テーブルには素朴な黒パンと、少しだけ焦げ目のついた腸詰め、そして何種類かの葉野菜が並んでいる。

 

「父上、母上、兄上、おはようございます」

 

俺は覚えたての、はきはきした声で、はっきりとそう挨拶した。前世の記憶が戻ってから初めて発する言葉だった。

 

その瞬間、部屋の空気が凍り付いたような気がした。

 

父は、城に出仕する準備を終え、純白の騎士服に身を包んでいた。二十九歳。長身痩躯、口ひげを生やした精悍な面構えは、ヴァリス王国の新興騎士家の二代目として、威厳と覚悟を秘めているように見えた。彼は俺の挨拶に、ぴたりと動きを止めた。

 

母は二十七歳。狐を連想させるような、賢そうで細面の美人だ。父の騎士服の襟元を整えながら、やはりその動きを止めて俺を見た。普段細目の彼女は、今は驚きに大きく見開かれている。

 

そして、四つ上の兄。八歳相応の体つきをした少年で、常にぼーっとしていることが多い。今も、両親の会話に意識が向きすぎていたのだろう、手に持っていた黒パンから、上に乗せた葉野菜と腸詰めが今にも落ちかけている。俺の挨拶を聞き、ようやく意識がこちらに向いたようだが、その口は半開きのままだ。

 

三者三様だが、皆一様に戸惑いの表情を浮かべていた。彼らにとって、四歳の、つい昨日まではたどたどしい言葉しか話せなかったはずの俺の「しっかりした」挨拶は、よほど衝撃だったのだろう。

 

俺はというと、彼らの反応に内心ニヤリとした。

(よし、計画通りだ)

 

今日から、この俺、ロックスの第二の人生が、本当の意味で始まったのだ。

 

「ロックス、お前、今……」

 

父は口を開きかけたが、言葉にならない。母はただ驚いたまま、俺を凝視している。兄は口から落ちかけたソーセージを慌てて受け止め、ようやく呆然とした顔で俺を見た。

 

「何か、おかしなことを申し上げましたか、父上?」

 

俺はできるだけ幼く、しかし戸惑いを装うように首を傾げた。もちろん、内心ではこれで彼らの思考が停止していることを確信していた。一気に全てを明かすのではなく、少しずつ、彼らの常識を塗り替えていくのだ。

 

父は一度大きく目を見開き、それからゆっくりと瞬きをした。

 

「いや、いや、おかしくはない……。しかし、ロックス、お前、今朝は随分と……元気がいいというか、ハキハキとしているな」

 

父の言葉に、俺は満面の笑みで答えた。

 

「はい! 今日はなんだか、頭がすっきりしています! 昨日、誕生日だったからかな? 父上や母上が話していることが、今までよりもよくわかるようになった気がするんです」

 

俺は少し身を乗り出し、期待に満ちた瞳で父上と母上を見上げた。曖昧に、しかし期待を抱かせるように。これが俺の計画の始まりだ。

 

母はゆっくりと俺の前に膝をつき、心配そうな顔で俺の額に手を当てた。その瞳は、まだどこか疑いの色を含んでいる。 「ロックス、本当にどうしたの? 熱でもあるのかしら。急にそんなにちゃんとしたお話ができるようになるなんて……」

 

「ううん、熱はないよ、母上。だけど、なんだか、頭の中がとっても明るくなったみたいなんだ。だから、もっと色々なことを知りたいな!」

 

俺は無邪気を装って、そう告げた。正直、いきなり子供が頭脳明晰になったら、魔神が存在するような世界では疑われる危険もあるので、どのくらいの匙加減にするか迷うところだ。

 

父は顎に手を当てて考え込み、やがてフッと口元を緩めた。その顔には、困惑よりもむしろ、面白いものを見つけたような楽天的な光が宿っていた。

「なるほどな……。ロックスも四つになって知恵がつき始めたということか。子供とは面白いものだ。成長とは、かくも突然に訪れるものか!」

 

父はそう言って、俺の頭を大きな手でわしゃわしゃと撫でた。母は父の楽観的な態度に、未だ納得しきれない様子でぎこちなく微笑んでいる。兄は未だに何が起こったのか理解しきれていない顔で、こちらをぼんやりと見ている。

 

「さて、私はそろそろ城へ向かわねばならぬ。ロックス、お前は母上の言うことをよく聞いて、良い子にしているのだぞ」

 

父はそう言い残し、母と兄に短い視線を送り、食堂を後にした。彼の足音が遠ざかっていくのを耳にしながら、俺は内心で安堵の息を吐いた。

 

(ふぅ。記憶の中の親父は能天気というか楽天家っぽかったからいけそうと判断したが、何とかなりそうだな。お袋は心配性だから、これから心配かけるかもしれないけど……まずは最初のハードルは越えたかな)

 

父の姿が見えなくなると、母は再び俺の顔を心配そうに覗き込んできた。その瞳には、未だに戸惑いの色が残っていた。

 

「ロックス、本当に大丈夫なの?」

 

母の問いに、俺は満面の笑顔で「うん、大丈夫!」と答えた。

母は俺の答えに、ふわりと息を吐き、ようやく顔に本当の笑みを浮かべた。

「そう。それならいいのよ。さあ、ロックス、ライルも。早く朝食を食べてしまいなさい。朝食が冷めてしまうわ」

 

母の声に促され、兄もハッとしたように黒パンから零れ落ちかけていた腸詰めを手で押し込め、かぶりつく。俺も食卓へと着き、いつも通りの、ささやかな朝食が始まった。

 

この日は、俺にとって、そして家族にとっても、凄く特別な一日として記憶されることになった。




主人公が急に頭脳明晰ムーブかましましたが、これはAI君が提案しました。ちょっと非現実的じゃないかと疑問に思ってそのことを指摘したら、「ご都合主義だよ。そもそもファンタジー世界なんだから、現実のこと言っても仕方ないでしょ(要約)」という身も蓋もない答えがw。ドライすぎる。
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