TSして地下に落ちた私が、人類最強の隣で生きていく話   作:幼女つおい

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お兄ちゃんズは怒ると怖い

 リヴァイ達のアジトへ運ばれた後、私は簡単な自己紹介やらどういう風に生きてきたかを話していた。

 誠に残念な話だが私も碌な生活ではなかったからね。

 盗みなどはできる限りやらないようにしていたが、それでも日々の生活で食いつなぐために廃棄になったパンなども漁って店主などから追いかけ回された経験は数え切れない。

 

 スラムでまともな生活が出来るのは一部の裕福なやつだけだ。

 まぁそいつらも結局地上の奴らからしたらスラムの住民でしかないが。

 

 んー人生ハードモード過ぎる。

 

 けど私がここまで生きてこれたのも前世で大人として生きていた記憶があったからだ。

 意外とメンタルとかはタフなお陰でここまでなんとかなったが、流石にずっとこのままなのは嫌だからな。

 そういう意味ではリヴァイからの提案は渡りに船だった。

 

 まぁやることはあんまり変わらないけど。

 

「今日は市場の裏手が狙い目なんだって。昨日新しい店ができたんだよ!」

 

 イザベルは軽快に歩きながらそう言って、ぴょんと段差を飛び越えた。

 現在私とイザベルとで食料の調達のために最近できた飲食のゴミを漁りに向かっている。

 

 新しく出来た場所だと普段の飲食店よりも多く廃棄となる物が多いから、それを調達するために今私達は動いている。

 こういう情報に目ざといのはファーランで、彼はリヴァイとつるむ前はちょっとしたギャングのボスだったとか。

 

 今はリヴァイがリーダーでそれにも納得しているらしい。というのはファーラン本人から聞いた。

 仲間になったんだからと言って色々教えてくれたんだ。いい兄貴分である。

 

「お、着いたな」

 

 イザベルの言葉に私はそちらに意識を向けると目的地にどうやらついたみたいだ。

 

 廃棄されたであろう食べ物が入ったゴミ箱には既に先客達がいたのか、ゴミを漁っている姿が見える。

 ごみの山に手を突っ込んでパン屑を拾って誰かと取り合って殴り合っていたり、年下から年上が強引に奪ってたりと、まぁこのスラムにはよく見る光景だ。

 

 弱者は強者から奪われるしかない。

 ここが“どんな場所”なのか、わかっていたはずだった。

 

 だけど。

 実際にこの目で見ると、やっぱりやりきれなかった。

 市場の裏手にはすでに数人の子どもたちが集まっていた。鋭い目。痩せた腕。声を潜めての駆け引き。

 

 ああ、知ってる。これは「飢えた者の目」だ。

 

「早く拾わないと、他の奴らに持ってかれちゃうよ!」

 

 イザベルの声に背中を押されて、私もそのゴミ箱に向かった。手慣れたように見えるかもしれない。けど、胸の奥はずっとざわついていた。

 

 その時だった。

 

「何勝手に取ってんだよ! ここは俺の場所だろ!」

 

 怒鳴り声に顔を上げると、小さな男の子が年上の少年に突き飛ばされていた。

 私の手が、勝手に動きかけた。

 でも、その腕をイザベルが素早くつかんだ。

 

「ダメだよ、ホシ」

 

「でも……!」

 

「ダメ。ここで助けても意味はない。ああいうの、日常なんだ」

 

 わかってる。わかってた。

 それでも、自分には力があってそれを使わないのがなぜか納得できなかった。

 

「……だからって、見て見ぬふりはしたくない」

 

「ホシ……」

 

 イザベルが少しだけ驚いた目をした。

 

「やっぱ変わってるよ、あんた。怒れるなんてすごいよ」

 

 その言葉が、どこか慰めのように響いた。

 この場所では“怒ること”すら、贅沢なのかもしれない。

 それでも私は、怒ることをやめたくなかった。

 

 私とイザベラが話している時、背後から重たい足音が近づく。

 

「おい、ガキども。勝手に拾ってんじゃねぇよ」

 

 低い声。背中がこわばる。振り向けば肩幅の広い男がふたり、道を塞ぐように立っていた。煤けたジャケットにサビた鉄パイプ。地下のならず者、縄張り荒らしを許さないタイプだ。

 

「この辺はうちの“管理下”なんだよ。利用料、払ってもらわねぇとな?」

 

 イザベルが即座に私の前に出る。

 

「見逃してよ兄さん。うちら子どもだし、たいしたもん拾ってないって!」

 

「見逃してもらいたかったら、それなりの“礼”をしてもらわねぇと。なぁ?」

 

 男のひとりがニヤついて手を伸ばしてくる。私は思わず腕を構えた。空気が震える――ここで使わずしていつ使うのか!

 

 男の体を停止させるために力を使おうとした時、私の肩に誰かの手が置かれる。

 

「それ以上動けば、テメェのその汚えブツを二度と使えなくするぞ」

 

 私の後ろにいつの間にか立っていたのはリヴァイだった。

 無表情。その目に怒気すらない。ただ、静かに告げたその声に周囲の空気が凍った。

 

「誰だ、てめぇ――」

 

 言い終える前にリヴァイが動いた。

 鉄パイプ片手に一閃。最初の男が呻き声とともに膝をついた。もう一人がナイフを振り上げるが、それすら届く前に肘打ちと膝蹴りが顔面に叩き込まれる。

 

 わずか数秒。

 二人のギャングは声もなく地面に転がっていた。

 

 イザベルが小さく声をあげ私の袖を握る。その手のひらが、かすかに震えているのがわかった。

 

「ありがとう、兄貴……!」

 

「チッ! 汚え血を付けんなよゴミども」

 

 崩れたギャングたちに目を落としたリヴァイはポケットから短い縄を取り出し、気絶した男たちの手首を乱暴に縛りはじめた。

 

「こいつら、地下街の第二層の連中だ。最近あちこちに手を出してるって噂だ」

 

「兄貴……殺さないの?」

 

「殺してもゴミが増えるだけだ。しばらく動けないようにしとけばいい」

 

 あっという間の出来事に目を白黒していたら、なんか終わってた。

 リヴァイ凄すぎぃ。

 

「ホシ?」

 

 私が呆然としているとイザベルが心配そうに私の顔を覗き込む。

 

「ガキにはショッキングな光景だったか?」

 

 一見挑発しているようにも聞こえるが、リヴァイの目を見ればわかる。

 あれは心配している目だ。たぶんここでこいつらを殺さないのも私がいるからかも。

 敵対ギャングをこのまま放置なんてするわけ無いし。

 

 贅沢なことを言えば彼に人殺しなんてさせたくないけど、この世界ではこれが普通で、変な同情でもすればすぐさま報復がある。

 世知辛い世の中だよ。

 

「大丈夫。私はイザベルと一緒にアジトに戻るよ」

 

「それがいいね。そんじゃ兄貴、俺とホシはアジトに戻ってるね!」

 

「あぁ。帰りは少し遅くなるが気にするな」

 

 リヴァイは一瞬だけこちらを見て、気絶している男たちの元へ歩いていく。

 なんだろ? 私になにか言いたかったのかな?

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 路地から離れた湿気のこもった小部屋で、リヴァイは沈黙の中にいた。

 

 照明代わりの裸電球が天井でかすかに揺れ、その下でギャングの男のひとりが椅子に縛り付けられていた。顔にはすでに数発の痕が浮かび、唇の端から血が垂れている。

 

「もう一度聞く。誰の指示で、あの場所を荒らしていた?」

 

 リヴァイの声はいつもと変わらず静かだった。だがその静けさが、逆に重圧となって男の肩を押し潰していく。

 

「……知らねぇ……勝手にやっただけだ……」

 

 ゴキッと鈍い音が鳴る。リヴァイの拳が男の頬を撃った。感情がないようでいてその一撃には容赦がなかった。

 

「無駄だよお兄さん。あんたみたいな小物が勝手に動けるわけねぇ」

 

 ファーランが壁にもたれながら言った。彼の手にはメモ帳が握られており、すでにいくつかの名前が書かれている。

 

「……“ドク”ってやつだ。第二層の古倉庫……水路の南口に、溜まり場がある……」

 

 ようやく絞り出したその言葉にリヴァイは小さく頷いた。

 

「そこまで吐けば十分だ」

 

 男が安堵の表情を浮かしかけたそのとき、リヴァイの膝がみぞおちに深くめり込んだ。

 呻き声とともに男が椅子ごと崩れ落ちる。

 

「……無駄に時間掛けやがって」

 

 立ち上がったリヴァイがファーランを見た。

 

「準備しろ。今日は“掃除”の日だ」

 

「あいよ。リヴァイ」

 

 ファーランはニヤリと笑いながら、隠し武器の小袋を腰に巻きつける。目の奥に宿る光が、いつもの陽気さとは違う冷たさを持っていた。

 

 

 地下第二層――。

 

 

 かつて倉庫街だった一帯は今や廃材と鉄骨の迷路と化していた。薄暗い灯りがいくつか天井の裂け目から差し込むが、それも霧と煤けた空気にぼやけている。

 

 リヴァイとファーランは水路沿いの壁に沿って音を殺して進んでいた。手には刃渡りの短いナイフと錆びた鉄パイプ――手早く仕留めるための掃除道具。

 

「……こっちだ。倉庫の奥、ほら、灯りがある」

 

 ファーランが囁く。小さな灯火が揺れている先に、男たちの低い笑い声が聞こえた。

 

「ドクの連中、油断してやがるな」

 

「上出来だ。音を立てずに一掃するぞ」

 

 ふたりは倉庫の壁際に張り付き、隙間から中を覗いた。

 そこには五人ほどの男たちがいた。ひとりは椅子にふんぞり返り焼酎瓶をあおっている。ドク、という名のボスらしき男は顎に太いひげを生やし、片目に包帯を巻いていた。

 

 リヴァイが指で三つ数え、無言のカウントダウンを始めた。

 

 三、二、一。

 

 その瞬間、リヴァイは影のように飛び出した。

 最初の男の首筋にナイフが深く刺さる。呻き声も出す間もなく崩れる。ファーランはすぐにもうひとりを背後から絞め落とした。残りの三人がようやく異変に気付き立ち上がる。

 

「な、なんだてめ――ぐあっ!」

 

 叫びかけた男にリヴァイの膝蹴りが胸に突き刺さり、肺の空気を奪う。

 

「敵だ! ドクを守れ――!」

 

 残り二人が凶器を振り上げるがファーランが軽やかに足払いをかけ、その隙にリヴァイの刃が喉元を走った。

 数秒と立たずに五人のうち四人が沈黙していた。

 最後に残ったのは“ドク”だった。彼は椅子を蹴飛ばしながら逃げようとしたが、出口の前にリヴァイが立ちふさがる。

 

「……てめぇ……何者だ……!?」

 

「ゴミ掃除人だ」

 

 返す言葉と共にリヴァイの膝がみぞおちに突き刺さる。

 呻きながら崩れ落ちたドクに、ファーランが上から見下ろした。

 

「お前も運がわるいな。敵にしちゃいけねぇ奴に手を出して」

 

「し、知らねぇ……部下が勝手にやったことだ!」

 

 その言葉に、リヴァイの目が鋭く光った。

 

「じゃあ同じ目に遭え」

 

 鉄パイプが無言で振り下ろされ、ドクの呻きが倉庫に響いた。

 やがて静けさだけが残る。

 

「……生かすか?」

 

 ファーランの問いに、リヴァイは短く答える。

 

「生かしておく。理由はひとつ――地下の連中に恐怖を伝えるためだ」

 

「わかった。派手に流そうぜ。“ドクの組が潰された”ってな」

 

 二人は倉庫を出た。燃料タンクを破り床に灯油を撒いていく。

 そして火を灯すと、あっという間に炎が立ち上った。

 煤煙と火の手が地下の夜に溶けていく。

 

 ホシとイザベルがいるアジトの方角へと、静かな風が吹いていた。




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イザベルの一人称は漫画版の「俺」にしています。アニメだと「私」ですがオレっ娘好きなので!
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