Dolls Nest外伝『ポロッカの秘宝』   作:ゆらNari

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勢いに任せアカウントを作り、初投稿です。
拙いところもあると思いますが、何卒よろしくお願いします

※本作、多少のネタバレがあります!!

6/22 13:13 一部ふりがなを追加


『下層、再び』

__朽ちた育房(いくぼう)

その中心に聳える大樹の隙間、眠っていた1人のニンフが目を覚ます。

彼女はぼやけた視界で周囲を見渡すと、まだ重い(まぶた)を擦りながらゆっくりと立ち上がった。

 

「眠い……」

 

彼女は、リエル。

忠実なネマの人形。

或いは寂しがり屋の種子である。

 

手で埃を払いながら、背筋をぐっと伸ばす。

その後、懐のポーチに手を伸ばし、中身を漁り始めた。

 

「食べ物が無い……ヨヨの所に行こう」

 

ふらふらと、ヨヨの店へと歩を進める。

が、今日はどこか様子が違っていた。

 

「戦士様!いらっしゃいませ!」

 

「よく眠れたか?」

 

かつて下層で出会い、今や育房の住人となったギリー・ベルがヨヨと一緒にいた。

その珍しい光景に、リエルは一瞬戸惑った。

 

「2人が一緒なんて珍しいね?」

 

「ちょうどこの子のための髪飾りが出来たところでな。ようやく渡せたんだ」

 

彼女は何処か誇らしげに語った。

 

「そっか……」

 

ヨヨに必要なものを注文しながら、リエルは物欲しそうな、期待を込めた眼差しでギリーを見つめるが__

 

「そんな目をしても貴様にはやらんぞ」

 

「けち……」

 

話を突っぱねられ、リエルは小さく不満を呟いた。

 

「だが、情報ならくれてやらんこともない」

 

それを聞いて、強く目を擦る。

まだぼんやりとしていた瞳に、意思が宿った。

 

「情報?」

 

ああ、とギリーは頷き、続ける。

 

「ここのところ、下層でガーディナの羽蟲(はむし)どもが何やら騒がしい。ただの偶然か、或いは……」

 

__何か見つけたか。

 

リエルには、そう続くように感じられた。

 

__次に行くのは中層だったっけ

 

思考を巡らせる。

次の目的地は中層、ガーディナの重要拠点だ。

そのガーディナの連中が、こちらに地の利がある下層に出てくる。戦力を測るには、好都合であった。

 

「良いね。興味が湧いてきた」

 

彼女はにっと笑みを浮かべ、次の行き先を決めた。

 

リエルは商品を受け取り、早速機械根(きかいこん)に向かおうとした。

そこで、ヨヨに再び声を掛けられた。

 

「戦士様、また下層に行かれるんですか?でしたら、これを!」

 

ヨヨはポケットからカードのようなものを取り出して、リエルに渡す。

 

「これは……?」

 

「下層で拾ったカードキーです!ヨヨが持っていてもあまり意味はなさそうなので、戦士様にお渡ししておきますね!」

 

リエルはそれを受け取ると、ポーチにしまった。

ヨヨの拾ってきたものは必ず役に立つ。

リエルは今までの経験からそれを確信していた。

 

「じゃ、行ってくるね」

 

そう呟いて機械根に向かう。

 

「おい待てよ」

 

今度はギリーに呼び止められ、彼女は振り向く。

 

「うん?」

 

ギリーは得意げに笑い、自身のコレクションである重火器をどこからともなく取り出した。

 

「下層に行くんだろ?買ってけ!」

 

リエルの仏頂面が弛み、彼女は嬉しげに鼻を鳴らした。

 

「……もう」

 

 

場所は下層の降積地帯(こうせきちたい)

ニンフの姿も絶えて久しく、瓦礫と残骸が文字通り積もるその場所は、いまや異形の巣窟となっている。

風の唸る音と異形の呻き声のみが聞こえるはずのこの世界で、場違いな轟音が突如として響き渡った。

 

「しつこい!」

 

爆発と同時に開いた廃墟の穴から、紫色のニンフが飛び出す。それを追うように、更に3人のニンフが穴より現れた。

 

「我々から逃げられるとでも!?」

 

紫のニンフを追う彼女たちは、スリット状のセンサーを怪しく煌めかせながら黄土色の薄暗い空を駆ける。

 

「墜ちろぉ!!」

 

3人の中で先頭を行くニンフの機関銃が唸りを上げる。

 

「……!」

 

だが、逃げるニンフは蝶のように鮮やかな機動で軽々とそれをいなす。

それと同時に翼の向きを急激に変えて急制動を行うと、転回して両肩のロケット砲を構えた。

 

「ラドラー、避けろ!」

 

ニンフの1人が叫ぶと、彼女のロケットがラドラーと呼ばれたニンフを掠める。

だが狙いは、背後のビルだった。榴弾がビルの基部に直撃し、崩落。

それと同時に多量の砂煙が舞った。

 

「小癪な真似を……!ラドラーはこの先に回り込め!コルンは私と来い!」

 

苛立ち混じりに2人にそう告げると1人のニンフが小さく頷き、砂煙より消える。残る2人はセンサーを頼りに紫のニンフを捕捉した。

 

「ッ……!足止めにならないか」

 

紫のニンフに焦りが見え始め、手に持っていた銃を構えた瞬間ーー

 

「さっさと墜ちろォ!!」

 

真横から回り込んだラドラーが廃墟の隙間から現れ、拳型の打撃兵装を紫のニンフに振り抜いた。

 

「っ……!?」

 

完全な不意打ちだった。

紫のニンフは攻撃を銃身で受け止める。

だが、それにより完全に脚が止まってしまい、死角からの砲撃に気付かなかった。

 

「しま…っ!」

 

攻撃をまともにくらい、彼女はその衝撃のまま地面へと叩きつけられた。

 

墜ちたのを確認し、3人のニンフはゆっくりと着地。銃口を彼女に向けた。

 

「その鎧殻(がいかく)、ポロッカか、まだ生き残りがいたとはな。鹵獲(ろかく)できたと知れば、女王もお喜びになるだろう。」

 

彼女は機関銃を向けながら話すと、紫のニンフは相手を睨み付ける。

それを咎めるように、銃口を彼女の頬に押し当てた。

 

「その鎧殻は……そうだな、今後は我々が活用してやる、ありがたく思え。」

 

それは、中身には用がないと告げていた。直感的に"殺される"と感じ取った彼女は、両脚に力を入れ、最後の足掻きを試みようとした。

 

__直後、光が走り機関銃が破壊された。

 

「新手か!?」

 

3人は散開しながら飛びつつ、光の飛んできた先へ鋭い視線を向ける。

 

この先には、瓦礫の上で1人のニンフが立っていた。右肩の熱塵(ねつじん)砲より煙が上がっており、防塵(ぼうじん)用の外套(がいとう)によりその素性は隠されていた。

だが、外套より覗く鎧殻は、アルカンドのものであると彼女たちは確信していた。

 

「あの機動外肢(きどうがいし)……上のカルトか!?」

 

「落ち着け」

 

隊長格のニンフは、コルンより予備の武器を受け取りながら部下を制止させ、相手に銃を向ける。

 

「貴様、アルカンドの手の者か!」

 

その答えに対し、謎のニンフは外套を脱ぎ捨てた。

様々な勢力の鎧殻により継ぎ接ぎされたその姿は、どの情報とも合致しない。

 

「……私は人形」

 

彼女__リエルはそう呟くと、両脚のスラスターを点火させ、凄まじい勢いで3人に迫った。

 

「紫のは後回しだ。動けるアイツから叩きのめすぞ!」

 

3人にとって、リエルの存在感と匂いは感じたこともない不気味なものであり、確実に恐怖を与えていた。

 

先程と同じように、リエルを3人のニンフが追う形となる。

 

「直線勝負は相手が上か。なら……!」

 

敵を分析しながら、懐から数個の蓄光(ちっこう)石と手榴弾を取り出し、正面を向いたまま3人に向かって落とした。

 

「ぐ…っ!?」

 

石の眩しさに気を取られつつも、ラドラーは手榴弾を弾く。が、そこでコルンはあることに気づく。

 

「……ミュラー!あいつ、何処にもいない!」

 

「近くには行ってない筈だ!探せ!」

 

3人は手榴弾の爆発を合図に再び散開し、廃墟を探した。

コルンは、焦燥を押し隠すように周囲を見渡していた。

 

「くそ、何処だ……?」

 

彼女は、一度頭とスラスターを冷やすために、崩れかけた梁に着地する。

緊張を解くために息を大きく吐いた瞬間、轟音とともに熱塵砲の光が背中から貫通し、声もなく鎧殻の爆炎に消える。

 

「何の音だ!?」

 

その音で、残りに気付かれた。だが、リエルは梁から飛び上がり、合流した2人の正面に現れる。

 

「あいつ……コルンを!」

 

「数ではまだ有利だ。挟み撃ちで仕留めるぞ!」

 

2人は左右に分かれ、廃墟に消える。それを見てリエルも再び動き出す。

そのまま飛行を続けていると、正面からラドラーが、後方から武器を剣に持ち変えたミュラーが一気に距離を詰める。

 

「コルンの……仇ィッ!」

 

左右には壁であり、逃げ場はないように思えたが、リエルは冷静に槍に持ち変え、構える。

 

そして、2人が同時攻撃しようとしたところで、槍の穂先を上へと掲げる。

 

「…!?」

 

瞬間、リエルは急に上へと飛んだ。機動が、槍の穂先に小型推進器によるものだと気付くのは少し遅かった。

2人は勢いを殺しきれずに顔面からぶつかり、拡張頭環(かくちょうとうがん)が破壊され素顔が露になる。

 

「な……に……」

 

彼女たちが最期に見た光景は、左右の熱塵砲が輝く瞬間であった。

 

__爆炎を背景にリエルはゆっくりと、紫のニンフのもとに着地した。

 

「大丈夫?」

 

「……ありがとう」

 

リエルはニンフの手を引き、ゆっくりと立たせる。

 

「何で助けてくれたの?」

 

ニンフの問いに、リエルは少し考える。

 

「向こうの方が……血生臭くて」

 

リエルの発言に、ニンフは思わず笑みをこぼす。

 

「自己紹介がまだだったわね。私はナレフカ。貴女は?」

 

「リエル」

 

簡潔にそう答えた後、ナレフカの鎧殻に目をやる。

 

「ポロッカ産まれなの?」

 

ナレフカが答えようとしたところで、リエルは無言でカードキーを突きつけた。

突然の行動に驚きつつ、それを凝視する。

一瞬の動揺の後、ナレフカはリエルに視線を向けた。

 

「貴女……これ、何処で?」




読んで下さりありがとうございました。
次回は6/29(日曜)12:00~ 投稿予定です

キャラ紹介(下記リンクより飛べるはず……!)

リエル
https://docs.google.com/document/d/1CVC0TRt7ZMcq_yvuvBe7BPOzHbxcvKCuaSHEEQBBzwE/edit?usp=drivesdk

ナレフカ
https://docs.google.com/document/d/1v5EsHcYeNGeF0iy7hrAsTKZwx44qyN0vop9_YvHoDMw/edit?usp=drivesdk

敵の3人組
https://docs.google.com/document/d/19UyCSqRTeoEdRwvpW58XpNANIZsLdeCPHShkVy4hj8s/edit?usp=drivesdk
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