Dolls Nest外伝『ポロッカの秘宝』 作:ゆらNari
初めて世に出す小説なので励みになります。
もう話数も少ないですが、最後まで読んで下さるとすごく嬉しいです。
__ポロッカ跡となる巨大なクレーターの端。
ガーディナの兵士達はその一区画に陣地を敷き、マースの帰りを待っていた。
「……まさか、司令自らとは……」
「私達は待機だなんて……」
兵士達はクレーターの底を眺めながら、武器の手入れや動作確認、食事など思い思いに過ごしていた。
「メルツェの奴……大丈夫かな?」
「あれでもヘレス隊長と一緒に戦ったんだ。そう簡単には死なないだろ」
「……死んだとしても、きっと最期は誇りある死を遂げたはずさ」
戦場とは思えぬ、どこか気の抜けた会話も交わされていた。
ポロッカ跡の調査は異形の対処に比べれば全然易しい方だ。
少なくとも、ここにいる兵士達の認識はその一点で共通していた。
__ふと、兵士の1人が、違和感に気付いた
「……?」
風は吹いている。だが、砂がまるで何かに導かれるように、逆巻いていた。
風とは正反対の方向に、螺旋を描くようにクレーターの中心へと流れ込んでいく。
「なんだ?」
クレーターに目をやる。
そこでは、砂だけでなく、小さな瓦礫すらも微かに浮き上がっていた。
重力が狂ったかのように、それらは中心に向けてじわじわと吸い込まれていく。
同時に、周囲が揺れ始めた。
「……なんかまずいぞ!総員!戦闘準備!!」
最も階級の高い兵士の号令が響くと、気が緩んでいた兵士たちは慌てて武器を手にし、各自の持ち場へと駆けていった。
あわてふためく兵士達をよそに、クレーターに亀裂が入る。
次の瞬間、爆音とともに地表が破裂した。
火薬にも似た爆発音と共に、砂と粉塵が吹き上がる。
視界はたちまち黄色と灰に閉ざされ、まるで巨大な砂嵐が立ち上がったようだった。
「砂嵐……?でかすぎじゃないか!!」
「何が起きてる……!?」
ざわめく兵士達の耳に、咆哮のような駆動音と推進音が響いた。
砂嵐を裂いて、黒い巨影が浮かび上がる。
それは巨大な翼を左右に広げていた。
ガーディナにも輸送機はある。だが、明らかに比べ物にならない巨大さだった。
「な、なんだアレは……!」
「あれが、ポロッカの遺産なのか!?」
__空中要塞ヴァルクレム
それは確かに、飛行していた。
要塞内ブリッジでは、シードル配下の兵士達が忙しなく活動を行っていた。
「目標、ガーディナ多脚要塞!距離3500!」
兵士の1人が叫ぶと同時に、シードルは司令席より外を見る。
「これは傑作だ……いい慌てぶりだね」
満足気にそう呟いた後、ナレフカに視線を向ける。
彼女は、悲しげな瞳でシードルを見つめていた。
「そんな顔をしても、私は止まるつもりはないよ」
「シードル……お願い、もうやめてよ」
ナレフカの返答に、シードルは深くため息を吐いた。
「ここまで来てまだそんな戯言を」
頭を抱えた後、彼女はナレフカを睨み付けた。
「安心したまえ……君は全てが終わったその日に殺してあげるよ。ポロッカ再興をその特等席で見届けさせてあげるんだ。親友としての最後のよしみだよ」
目を丸くした彼女に、シードルは続ける。
「あと、君には感謝してるんだよ?私がここまでこれたのも、一番厄介だった種子が消えたのも、全部君のお陰だからね」
そんな2人をよそに、兵士達はなにやら計器を動かしていた。
「照準良し、主砲防護ハッチ開放良し!」
「主砲、発射準備完了!」
兵士の1人が叫ぶとシードルは頷き、再びナレフカに振り向いた。
「見るがいいナレフカ。今から見せる光は"狼煙"だ……!」
「狼煙……?」
眉を顰める彼女に、シードルは「そうだ」と答えながら続ける。
「虐げられてきた下層ニンフ達が、ホドの全てを支配せんとする……確固たる意志の雄叫びだ……!!」
笑みを浮かべ、ゆっくりと手を顔の近くまで上げ、指を弾く動作に入る。
「さぁ、我らの時代の幕開けだ!!総員、主砲発射後に戦闘開始!雑魚共を蹴散らして、上層の空を見に行くぞ!!」
シードルの指に力が入る。
ナレフカは、目を背けることしかできなかった。
「大出力泡電主砲、発__」
乾いた銃声が、突然響き渡った。
「な……え……?」
シードルが血を吐き、膝から崩れる。
撃ったのは、シエルだった。
「閣下!?」
機内に居たニンフ達が振り向くも、次の瞬間にはシエルが謎のリモコンを握っていた。
「どかーん」
スイッチが押された瞬間、彼女達が座っていた席が爆発し、3人を除く全員が粉々に砕け散った。
黒煙がブリッジを覆い、アラートが鳴り始める。
「……シエル、なんで?」
シードルは倒れ、心底絶望して怯え切っていた。
「もう1人で充分だからかな。閣下はホドの支配とポロッカの再建を目指してたけど……私は違うんだ」
「嘘だ……だってあんなに一緒に」
「私の目的は、ホドにある主要コロニーの一掃。全部を混沌に戻す事なんだ」
シエルは、拳銃をシードルに向けた。
「ごめんね、
「やだよ、やめて!私何でも言うこと聞くよ、だから__」
シードルの命乞いを、銃声がかき消した。
「シードルっっ!!」
ナレフカは叫び、暴れて拘束具を鳴らす。
「何で!!シードルは、貴方を信じてたのに!!」
シエルはその場にへたり込むと、顔を覆った。
「あはは、えへっ、へへ……種子を信じちゃダメだよ!シーちゃん!!ポロッカも、ナガラが壊れたのにも関わってるんだよ!!」
彼女は涙を流して笑っていた。
「シーちゃんはね。私が孤立させたの!!」
彼女は声を張り上げ、シードルの死体に再び発砲した。
「通常型のシーちゃんが死なないように助けてね!!このクソみたいなプロジェクトを立ち上げて貰ったんだ!!」
シエルは、ひきつった笑い声を上げていた。
「異形が攻めてる時に、こんな事できる筈無いよねぇ!!でもっ、シーちゃんは信じてくれた!!私が言うならって」
彼女はシードルの死体を起こし、抱き締めた。
「だから、私もシーちゃんのたった1人の味方になったの!!あの子を励まして、頭の弱いニンフ達もそそのかして!あの子の自尊心を守ってあげたの!!」
シードルの瞳孔は開き切っており、涙を流していた。
「シーちゃんはね!言ってくれたの!大好き、ずっと友達だって!!シーちゃんには私しか居ないもんね!!」
シエルはシードルを手放し、鈍い音を立てて死体が倒れた。
「でもねでもねでもねっ!?私にはママしか居ないの!ママの使命が一番だったの……」
シエルは、両手で涙を拭った。
「私も大好きだよシーちゃん。ずっと、ずっっっと、友達で居ようね。うふふ、あは、えへへ」
彼女が笑い始めると、目元から少しずつ、涙ではなく__血が出始めた。
「……狂ってる」
ナレフカは震えながら呟いた。
「狂ってる?」
シエルが勢い良く振り向く。
リエルと似て美しいが狂気を孕んでいるような壊れた瞳が、ナレフカを見つめる。
「だってだってだって……しょうがないじゃん!!」
彼女は倒れたシードルの死体を、八つ当たりするかのように蹴る。
「ママにね、裏切るように作られたんだよ?沢山友達を作って、何度も殺したんだよ?」
彼女は拳銃を引き抜き、ナレフカの口に捩じ込んだ。
「何度も、何度も何回もたくさん、いっぱい!!友達を殺したんだよ!???」
シエルは絶叫するように、まくし立てた。
「普通になれる訳ないじゃん。心があるならさ」
臓腑から絞り出したような低い声で囁くと、彼女は引き金に力を込めた。
「うぅ……」
シエルの狂気にあてられ、ナレフカは涙を流し、引き金が沈む。
__突如、ひび割れたレーダーが小さく警報を鳴らした。
シエルは振り向き、ナレフカに銃を向けたままレーダーを一瞥した。
「距離ゼロ……?上か」
「ナレフカっっ!!!」
ブリッジの窓が割れ、リエルが室内に飛び込んだ。
加速状態から、彼女は錆を引き抜く。
神速の抜刀から出された突きが、シエルの拳銃に突き刺さる。
「ああ、来たんだ」
シエルは指を切り落とされながら拳銃を手放し、飛び退いた。
そして鎧殻のバイザーが降り、彼女の目元を覆うと、光を灯した。
「リエルっ!??」
ナレフカは拳銃を吐き出し、彼女の名前を呼ぶ。
「うんっ」
リエルは刀を素早く降ると、ナレフカの拘束具を断ち切り、修復剤を彼女の口に押し込んだ。
「助けに来たよ」
彼女は屈託の無い笑みを浮かべた後、シエルに切先を向けた。
読んで下さりありがとうございました。
次回は8/31(日曜)12:00~ 投稿予定です
キャラ紹介
シードル
https://docs.google.com/document/d/1MbGh90KgSfwtfyhZFEgCWyZnnrD6mf4bgYrJIxaDlH0/edit?usp=sharing
シードル配下達
https://docs.google.com/document/d/1_vT91sxnnJ4dq7GwNz8CPTNCzp_gTv6EnkZU5G5PRmY/edit?usp=drivesdk