Dolls Nest外伝『ポロッカの秘宝』   作:ゆらNari

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2話です。

読んで下さると嬉しいです。
あとDollsNestおもしろいので買ってください(唐突)
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…待てよ?読んでる人はみんな買ってるか?


『ガーディナ』

下層の一区画。

かつては下層におけるギプロベルデの前線基地だったその場所は、主を変え現在も利用され続けている。

 

前時代の人類がマンモス団地と呼称する建物に類似したそれは、ガーディナにより度重なる要塞化と補修により、大きく形を歪めていた。

 

__まるで、異形のように。

 

「何の用だ」

 

拠点の司令室。

部屋の中心には総司令と思しきニンフが椅子に腰かけていた。

彼女は執務机に片肘をのせ、姿勢を崩した。

 

その視線の先には、1人の伝令が立っていた。

 

「マース司令に報告!我が方の哨戒(しょうかい)部隊、ミュラー以下トライブラスター隊員の全滅を確認!敵はおそらくポロッカの生き残りと思われます!」

 

マースと呼ばれたニンフは座ったまま動じる様子がない。

 

「それで?お前はそれを見て、何もせずむざむざと逃げ帰ってきたのか」

 

「……え?」

 

伝令ニンフは小さくそう呟き、弁解のために口を開いた。

 

「い、いえ……私は、その、通常型のニンフで……相手は、戦闘型が2人でしたので……」

 

「そうかい」

 

ため息すらつかずマースは短く返し、机より拳銃を取り出す。

そのまま伝令に向け、構える。

 

__一発。

 

乾いた銃声と共に伝令は頭部を撃ち抜かれ、倒れる。

マースはため息をこぼすと、拳銃を机に置き、手を叩いた。

 

「お呼びでしょうか」

 

司令室の扉が開き、2人のニンフが入ってくる。

 

「逃亡兵だ。技師型に食わせておけ」

 

「かしこまりました」

 

彼女たちは顔色を変えず伝令の死体を担ぎ上げ、司令室をあとにした。

 

「よろしいので?」

 

「ヘレスか」

 

護衛と入れ違いで、ヘレスと呼ばれたニンフが司令室に入ってきた。

 

「奴は使命でなく、言い訳を話した。伝令に伝令以上の仕事など、任せるつもりは無いのだがな」

 

ヘレスは苦笑する。

 

「昔から言い訳とギプロベルデがお嫌いでしたね。ここの制圧作戦からお変わり無いようで、安心しました」

 

「フ……お互い様だ」

 

彼女の言葉に、マースは小さく笑みを浮かべた。

それにつられてヘレスも笑っていたが、ほどなくして表情を硬くした。

 

「本題に入りましょう。司令自ら我々をお呼びしたのです。さぞ重要な任務だとお見受けしますが……?」

 

その言葉を聞き、マースは机から書類を取り出し、ヘレスに手渡す。

 

「部下達の置き土産だ。下層にはまだ使えるものがいくつもある。良い情報を流してくれたよ」

 

その中の一枚の写真が、ヘレスの目に止まる。

サーモグラフで加工されただけの写真だが、異常だった。

 

「この熱源は……?」

 

異形やただの自然現象にしては、熱源が異様に大きい。

また、写真の地表よりやや下に反応があり、それが地下から発せられていることは明白だった。

 

「そうだ。下層のどこかのコロニー跡に、まだ生きている"何か"がある……資源であれば兵器を増産し__」

 

「兵器ならば転用し、アルカンドとの戦争で使える」

 

ヘレスがそう続けると、マースの口元が吊り上がる。

 

「その通りだ」

 

マースが立ち上がると、彼女は姿勢を正した。

 

「『対ギプロベルデ機甲特戦隊(きこうとくせんたい)』各員に告げる。下層の熱源の調査と、邪魔物を排除せよ」

 

「部下は既に現地に派遣しております。戦果をご期待下さい」

 

ヘレスは敬礼し、司令室を後にした。

 

 

「ふぅ……」

 

倒れた異形を前に、リエルは息をつく。

 

「そろそろ休みましょうか」

 

ナレフカが声をかけた。

彼女の導きで異形の少ないルートを飛んでいるが、少ないとはいえ、ゼロではない。

リエルは小さく頷き、ナレフカの指差した廃墟へと向かうのだった。

 

廃墟内に小さな個室を見つけ、2人は腰を据えた。

 

__しばしの沈黙の後、初めて口を開いたのはリエルだった。

 

「ポロッカのニンフは全滅したって聞いてたけど……」

 

カードキーをみせてから、彼女はリエルに協力の姿勢をみせてくれた。

リエルにとってはありがたいが、同時に引っ掛かることも多かったのだ。

 

「うん、私もそう思ってた。でも、1人だけ死に損なっちゃったみたいね」

 

ナレフカは物憂げに天井を見つめる。

その姿は物悲しげではあるが、どこか決然とした雰囲気を感じ取れる。

 

リエルがその表情を見つめていると、心の内で(くすぶ)っていた疑念が表面に現れた。

 

「そのカードキーで、何をするの?」

 

「……!」

 

何かを言いかけたが、彼女はふと黙り込んだ。

その後暫くの熟考の末、ぽつりと呟くように口を開く。

 

「長くなるけど、大丈夫……?」

 

リエルが小さく頷いた瞬間__

 

「アハハハハハハ!!」

 

突如として笑い声と共に壁が爆発し、それにより空いた穴から多数の小型ミサイルが暴風のように襲いかかってきた。

 

「ナレフカ!」

 

叫ぶも、ナレフカの反応は1歩遅れた。

リエルは銃を取り出し、ミサイルに向けて撃ち込む。

1つに当たると連鎖的に爆発を起こし、直撃を免れる。

 

「へぇ~?あれを避けるんだ」

 

爆煙の先には、1人のニンフ。獣脚(じゅうきゃく)タイプの鎧殻特有の駆動音が耳に入り、持っている銃には燃料タンクのようなものが見える。

それが火炎放射器であると、リエルは直感的に理解した。

 

「この前の奴らの仲間?」

 

「この前……?とりあえず燃えちゃえ!!」

 

火炎放射器を構えると、赤い光と炎が煌々と煙を巻き込み、部屋全体を紅蓮に包み込む。

赤く輝く部屋に、敵対ニンフの高笑いが木霊する。

 

「アハハハ!閉所でこのメルツェと鬼ごっこをするつもりなの?」

 

リエルはナレフカを連れ、建物の中へと避難した。

物陰に隠れ、戦闘の準備を行う。

 

「メルツェとか言ったっけ…」

 

マガジンを装填しながら、リエルは呟く。

自身のレーダーの隅、高温を示すメーターがアラートで点滅している。

 

「……厄介だな」

 

下層で浸食(しんしょく)寄生(きせい)をしてくる異形には慣れている。だが、炎となると慣れる以前の問題だ。迂闊な行動をしてはナレフカ共々焼き殺されるだろう。

 

__閉所に入ったのはミスか……?どうしよう……

 

ふと、思考を巡らせていたリエルの耳に、ナレフカの声が入ってきた。

 

「この先の広間なら、なんとかできるかも」

 

「広間……?」

 

ナレフカが頷く。

 

「うん、作戦は__」

 

__恐らく、この廃墟はかつて栄華を誇っていたのだろう。その広間にはかつての豪勢さが垣間見れる階段や柱、受付窓口などが点在していた。

 

「どこに行ったのかなぁぁ~?」

 

壁の一角を蹴り壊し、メルツェは威嚇代わりに火炎放射を虚空に吹かす。

 

(わら)う彼女の前に、リエルが現れる。

 

「えっ……と……ごめんなさい!降参します!」

 

両手を精一杯に上げ、降参の意を示すリエル。

その姿を見たメルツェは、露骨につまらなさそうな表情をした。

 

「……は?降参?許されると思ってるのか!!」

 

つまらなさそうな表情から一変。少しずつ怒りの表情となり、ミサイルを発射する。

が、それはリエルを狙ったものでなく、上に待機していたナレフカに向けられたものだった。

 

「見え見えなんだよ!!」

 

上をみると、狙撃を仕掛けようとしたナレフカの姿。

 

「……!」

 

ナレフカは乗っていた瓦礫を蹴り上げ、ミサイルを避ける。

それを見た彼女は歪んだ笑みを見せ、火炎放射器をナレフカへと向ける。

 

「燃えろ燃えろぉ!!」

 

炎が、ナレフカへと襲いかかる。

 

彼女の鎧殻が、高温のアラートを鳴らし続ける。

 

「ぐ……ぅ……!」

 

「今……っ!!」

 

リエルは懐に隠し持っていた銃を取り出し、火炎放射器目掛けて発射する。

 

銃弾はまるで吸い込まれるように火炎放射器の燃料タンクに当たった。

と同時に、炎を出し続けていた火炎放射器の燃料タンクが裂け、爆発。メルツェへと燃え移った。

 

「な……!?」

 

彼女は思わず火炎放射器を手放したが、既に炎は彼女を包み、さらに燃え上がる。

 

「っぎいぃぃぃ!!?」

 

高温と損傷によるアラートと炎による痛みからか、彼女は叫ぶことしかできない。

いくらか転げ回り、メルツェはたまらず広間より落下した。

 

__2人は燃え盛る廃墟より脱出する。

すると、ナレフカは思わずへたり込んでしまった。

 

「は、はぁぁぁ……」

 

その情けない声に、リエルは目を丸くした。

 

「結構戦えるニンフと思ってたけど」

 

「私達下層のニンフって、異形としか戦ってないからね……」

 

自嘲(じちょう)気味に笑うナレフカに

あぁ。とリエルは空返事をして、ふと、あることを思い出す。

 

「そういえば、あのときの話の続きって……」

 

その言葉に、ナレフカは疲れたような、困ったような笑みを浮かべた。

 

「ごめん、また今度話すね……」

 

 

「ぜぇ……っ、ぜぇ……っ」

 

重たい擦れ音を響かせながら、拠点の入り口の門が開かれる。

焼けた匂いとともに拠点に入ってきたのはメルツェだった。

それをヘレスが出迎える。

 

「おかえり。こっぴどくやられたな」

 

焼け焦げた素体、亀裂とへこみだらけの鎧殻、片手には血みどろになった異形の頭__

ヘレスは何がおきたのか容易に想像できた。

 

「ヘ……レス……ぅ!」

 

「大方、燃やそうとしたら燃やし返されたか?慢心は死に繋がると昔教えたはずだが」

 

マースと話していたときとは違い、冷淡に話しかける。

彼女は小さく唸った後、異形の頭を地面に叩きつけてヘレスへとしがみついた。

 

「悔しい……悔しい悔しい悔しい悔しいっ!」

 

「そう思うなら、まずはそのふざけた格好を直せ。司令には私から話しておく」

 

医務室に連れていかれるメルツェを眺めながら、ヘレスは深く思考を巡らせる。

 

「想定外だな……作戦を考え直す必要があるか」

 

おもむろに通信機を取り出し、何者かへと連絡を取るのだった。




読んで下さりありがとうございました。
次回は7/6(日曜)12:00~ 投稿予定です

キャラ紹介

メルツェ
https://docs.google.com/document/d/11vwjvgQy32GKoXoMtAC8C2Fn-etVbKSd_FeQ-vsh9Fw/edit?usp=drivesdk

用語
対ギプロベルデ機甲特戦隊
ギプロベルデとの戦闘において名を馳せたガーディナの戦闘型ニンフ三人小隊。三位一体の連携を以って挑んできたギプロベルデ鎧化兵の悉くを葬り去って来た。
ギプロベルデの鎧化兵亡き現在ではしばしばアルカンドとの小競り合いにも参加しており、脅威と見られている。
が、実際の評価はそこまでであり、彼女らの仮想敵ではないアルカンドの航空鎧化兵相手に目立った実績を上げられていないというのが現状である。
そのため、試験的に様々な戦術を練ってアルカンドとなんとか戦っていた。
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