Dolls Nest外伝『ポロッカの秘宝』 作:ゆらNari
引き続きお楽しみいただけると幸いです。
あとこれを読むの初めてって人はDollsNestを是非!!
__ようやく開発の目処が立ったぞ
「誰?」
目が覚めると、リエルは建物の中にいた。
動くこともできず、ただ目の前の光景を眺めることしかできない。
そこでは、二人のニンフが話し合っていた。
__これを造れば、単機でホド全ての空を我々のものにできる。異形に震える毎日から脱却し、ホドの
笑う彼女を尻目に、見覚えのあるニンフが付近の資料を読んでいた。
そして最後まで読みきった後で、彼女は深くため息をついた。
__これを作るために、どれだけの資源が必要なのか分かってるの?
その声と共に、彼女が顔を上げる。
見覚えのあるニンフは、ナレフカだった。
「ナレフカ……!?」
左目の傷がない、服装が違うなど多少の差異はあるものの、確かにナレフカであった。
__案ずることはない、私には協力者が居る!アーヴドの技術を手にしたんだ
__シードル、私達はもう幼精じゃないの。技師型の彼女たちだって、女王陛下をこの下層から逃がすために技術を磨いてるのよ?
ナレフカは資料をシードルに返した。
__黙れ
彼女の言葉にシードルは怒りを露わにし、資料を奪うように取った。
__今のプラン……女王陛下を飛ばすなど絵空事だ!
その発言にナレフカは眉を顰めた。
__防衛線はもう限界なのよ?
__だが妥協策では駄目なのだ!!仮にここを脱したとて、今の我々では他の
シードルは資料を床に叩き付け、彼女を睨んだ。
__私は貴様らの作戦には同意しない。空は我々の、私のものだ!!
怒気を纏いながら足音を響かせ、彼女は部屋を出た。
ナレフカはただ茫然と見つめるしかできなかった。
怒りでも、悲しみでもない。
ナレフカの背筋に走るのは、理解しがたいものへの恐怖だった。
__あなたには……何が見えているの?
震えた声で、ナレフカは小さく呟いた。
__起きて。
そう聞こえた瞬間、リエルの視界がぼやけ始めた。
◆
「起きて!リエル、起きて!!」
目を覚ますと、そこは先ほどとは別の場所……廃墟の一角だった。
目の前には、見慣れた姿のナレフカ。
どうやら、夢だったらしい。
リエルはゆっくりと身体を起こし、
「えっと……おはよう?」
とぼけた声でナレフカに笑い掛ける。
「なにか呟いてたけど、大丈夫?」
心配そうに見つめるナレフカに「大丈夫」と返事をし、リエルは寝起きの目を擦りながら小さく答える。
「話してたよ」
「誰と?」
当然の反応。リエルはこれを言っていいものかと少し悩む。
もしかしたら、ナレフカにとっては悲しい過去なのかもしれない__
しかし、彼女は少し間を置いて、話し出す。
「ナレフカが__」
__瞬間、轟音と共に廃墟の一部が吹き飛んだ。
リエルとナレフカは反応が遅れ、その風圧に圧される。
「この前の奴!?」
あの特徴的な笑い声は聞こえない。
「……違う」
リエルは冷静に、崩れた壁の先に視線をやる。
敵影は見えない。
「砲撃の位置だけでも……」
リエルは物陰に隠れたまま袖より
電子音を上げながら装置が作動し、リエルの素体姿そっくりのホログラムが現れる。
「リエルが2人…!?」
「ちょっとお金が掛かるけど……」
その光景にナレフカは驚いたが、リエルはぼやきながらも依然廃墟の先を睨む。
その後まもなく、甲高い飛翔音が再び空に響く。
直後、偽装装置目掛けて砲弾が直撃し、再び爆風と共に廃墟に大穴を開ける。
その衝撃により廃墟は大きく揺れ、天井や柱に大きな亀裂が走る。
「ダメだ、爆風が規格外すぎる……」
このままでは廃墟の
「待てよ、砲撃……」
リエルは、ふと
__理屈は同じはずだ。
「ナレフカ」
彼女は突然、ナレフカに振り向いた。
唐突にリエルに振り向かれ、ナレフカは思わず目を丸くした。
「……ど、どうしたの?」
「私が囮になるから、敵を探って」
「え……?」
その言葉は冗談のようにも聞こえた。
だがその表情は硬く、冗談を言うそれではない。
「待って……リエル、それって……」
言葉に詰まるナレフカをよそに、リエルは続ける。
「こっちでも特定できたら通信する。一気に叩こう」
彼女はそう告げると、壁の大穴より飛び出す。
どうしようかと一瞬迷ったが、大きく深呼吸した後、ナレフカも飛び出す。
__リエルが空に飛び出した瞬間、再び砲撃音が響く。
「……!」
スラスターを吹かし、その場から離れると、先ほどいた場所を砲弾が掠め、そのままの勢いで爆発と共に地面を抉る。
「当たれば……死ぬよね」
リエルはその威力に、ただただ息を呑むしかできなかった。
だが、敵は待ってくれない。
先ほどとは違う砲撃音が響く。
リエルは直感的に頭を笠で隠すと、笠越しに身体に大きな衝撃が走る。
相手も
その砲撃は、まるでリエルを試しているようだった。
「いたた……」
笠でうまく弾道をそらしたとはいえ、その衝撃は全身に掛かる。
身体や装備に異常がないか、瞬時に確認する。
そのとき、リエルの視界に砲撃音と共に瞬く光を見つけた。
「あれは……!」
◆
「こちらに気付いたか」
リエルを標的として捉えているのは、巨大な多脚型のニンフ。
脚部だけでなくその姿そのものが異質であり、ガーディナの装備だけでなく、様々なコロニーの
「まぁ、手はある」
ケルシュの足元、彼女の居るビルの周囲には、さながらクモの巣のようにワイヤートラップが多数張り巡らされていた。
リエルへ再び照準を合わせると、彼女が近づいてくるのが見えた。
「……!」
照準が合ったタイミングで、抱えていた巨大な狙撃砲を放つ。
だが、砲撃音が上がったと同時にリエルは攻撃を避ける。
「外れた」
金属音と共に薬莢が排出され、慣れた手付きで再び弾を込める。その後、懐から補給剤を取り出し、かじる。
__ケルシュ、奴らを見つけたらひとまず戦え。負けても問題はない、私がどうにかする
ケルシュの脳裏に、作戦前のヘレスの言葉がよぎる。
「隊長なら……問題はないか」
再び、リエルに照準を合わせる。
が、ケルシュはリエルのいる場所よりやや右を撃った。
彼女の動きを見るに、素体に付いた腕の甲冑で弾いたらしい。
「味な真似を……」
確かにリエルは一部アルカンド製の
だがケルシュは、彼女がアルカンドの連中とは違うと確信していた。
それは同時に、ケルシュに決定打が無いことも意味している。
「分が悪い……か」
ぶっきらぼうにそう呟いた瞬間、センサーに反応があったと同時に後方より
「センサーに反応……速い!!」
ケルシュは推進機動により瞬時に避けながら振り向き、対象を睨む。
「外れた!?……でも!」
その対象はナレフカだった。
彼女は間髪入れずに両肩に搭載したロケット砲を発射する。
「貴様……あの地雷原を"避けた"のか!」
だがケルシュは、背嚢に搭載した迎撃機を展開し、ロケット砲を銃撃。
寸前で撃墜した。
「その迎撃機……ポロッカの!」
「あぁ……メルツェの言ってた腰巾着はお前か!」
ケルシュは狙撃砲と副腕の大型速射砲をパージし、懐からこれまた大型のガトリング砲を取り出した。
ガトリング砲がナレフカを捉え、迎撃機とともに金属を裂くような唸りを挙げる。
「これくらい!」
迎撃機とガトリング砲の弾幕にまともに晒されてしまうが、ナレフカは重力を無視したような旋回機動でそれを回避する。
当たらないと見るや、ケルシュは背面の大型スラスターで大きく飛び上がる。
「は……!?」
大型機だから飛べないだろう。その予想を大きく裏切られたナレフカは一瞬呆気にとられる。
空中で巨体が一瞬静止する。
その影がナレフカを捉え、上からその質量を叩きつけた。
「飛行型との戦いは上で学習済みだ」
土煙が晴れる。
倒れた彼女の鎧殻を、ケルシュは前方の2脚で踏みつけていた。
潰れるような金属音がキリキリと鳴り続ける。
「あなた……本当に、ガーディナのニンフなの?」
ケルシュはガトリング砲をナレフカの顔面に向ける。
「ガーディナのは物足りなくてな」
そう吐き捨てたところで、リエルが近づく。
「ナレフカ!」
槍を投げようとしたが、迎撃機の銃口が向く。
振り向かぬまま、ケルシュは話した。
「動くなよ。動けばお前もろともこいつを殺す」
「う……!」
その言葉を聞き、槍を持つ手が止まる。
殺すべき敵は目の前にいる。だが、自分が動けばナレフカが終わる。
自分が死んでも再生産されるので問題はない。
しかし、ナレフカが死ぬのはまずい。
ケルシュが話し終えたところで、ナレフカは口元をふっと歪めた。
その表情に彼女は眉をひそめた。
「何がおかしい」
「ポロッカの航空士が……甘く見られたものね」
__戯れ言を
そう心で
「私達にはね、自分ごと異形を焼き尽くすだけの覚悟があるのよ……!」
瞬間、ナレフカは躊躇なくロケット砲を旋回させた。
銃口はケルシュへと向けられる。
彼女は引き金を引こうとしたが、突如として回転が凍り付いたように止まり、後を追うように小爆発が起きた。
見ると、ガトリング砲にナイフが突き刺さっていた。
「な……!」
リエルの方へ振り向くと、彼女はナイフを投げ終えたばかりの姿で立っている。
彼女に向けていた迎撃機にも同じナイフが突き刺さっていた。
「燃え尽きろぉッ!!」
彼女の叫びに呼応するように、炎の咆哮が轟く。
リエルの前で、2人が光に包まれた。
__煙が晴れる。
そこには、
「これ……が、ポロッカ……の、航空士……の……力よ……!」
鎧殻は無惨にも破壊され、動くことすらままならない。
「ナレフカ!!」
リエルは、急ぎナレフカに駆け寄った。
同時に、複数の気配を感じ、周囲を見渡す。
気が付くと、周囲を多数のニンフに囲まれていた。全員がナレフカに銃を向けており、リエルは動くに動けない。
「まさかケルシュと相打つとは……やるねぇ」
そのニンフの中で、隊長格と思しきニンフが、バズーカを構え前に出る。
「ヘレス……たい……ちょ……」
息も絶え絶えに、ケルシュが呟く。
__ヘレス
こいつがメルツェやケルシュを率いる隊長であると、リエルは理解した。
「お前が……」
「鎧殻を外して投降しろ」
ヘレスは目を合わせることなく、冷たい声のみを残した。
読んで下さりありがとうございました。
次回は7/13(日曜)12:00~ 投稿予定です
キャラ紹介
ケルシュ
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