Dolls Nest外伝『ポロッカの秘宝』   作:ゆらNari

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3話です。

引き続きお楽しみいただけると幸いです。

あとこれを読むの初めてって人はDollsNestを是非!!



『過去と今』

__ようやく開発の目処が立ったぞ

 

「誰?」

 

目が覚めると、リエルは建物の中にいた。

動くこともできず、ただ目の前の光景を眺めることしかできない。

そこでは、二人のニンフが話し合っていた。

 

__これを造れば、単機でホド全ての空を我々のものにできる。異形に震える毎日から脱却し、ホドの覇者(はしゃ)にもなれるはずなんだ

 

笑う彼女を尻目に、見覚えのあるニンフが付近の資料を読んでいた。

そして最後まで読みきった後で、彼女は深くため息をついた。

 

__これを作るために、どれだけの資源が必要なのか分かってるの?

 

その声と共に、彼女が顔を上げる。

見覚えのあるニンフは、ナレフカだった。

 

「ナレフカ……!?」

 

左目の傷がない、服装が違うなど多少の差異はあるものの、確かにナレフカであった。

 

__案ずることはない、私には協力者が居る!アーヴドの技術を手にしたんだ

 

__シードル、私達はもう幼精じゃないの。技師型の彼女たちだって、女王陛下をこの下層から逃がすために技術を磨いてるのよ?

 

ナレフカは資料をシードルに返した。

 

__黙れ

 

彼女の言葉にシードルは怒りを露わにし、資料を奪うように取った。

 

__今のプラン……女王陛下を飛ばすなど絵空事だ!

 

その発言にナレフカは眉を顰めた。

 

__防衛線はもう限界なのよ?

 

__だが妥協策では駄目なのだ!!仮にここを脱したとて、今の我々では他の()に潰されるのが関の山だ!

 

シードルは資料を床に叩き付け、彼女を睨んだ。

 

__私は貴様らの作戦には同意しない。空は我々の、私のものだ!!

 

怒気を纏いながら足音を響かせ、彼女は部屋を出た。

ナレフカはただ茫然と見つめるしかできなかった。

 

怒りでも、悲しみでもない。

ナレフカの背筋に走るのは、理解しがたいものへの恐怖だった。

 

__あなたには……何が見えているの?

 

震えた声で、ナレフカは小さく呟いた。

 

__起きて。

 

そう聞こえた瞬間、リエルの視界がぼやけ始めた。

 

 

「起きて!リエル、起きて!!」

 

目を覚ますと、そこは先ほどとは別の場所……廃墟の一角だった。

目の前には、見慣れた姿のナレフカ。

 

どうやら、夢だったらしい。

 

リエルはゆっくりと身体を起こし、笠型の頭環(Type13 CF Takama)を被る。

 

「えっと……おはよう?」

 

とぼけた声でナレフカに笑い掛ける。

 

「なにか呟いてたけど、大丈夫?」

 

心配そうに見つめるナレフカに「大丈夫」と返事をし、リエルは寝起きの目を擦りながら小さく答える。

 

「話してたよ」

 

「誰と?」

 

当然の反応。リエルはこれを言っていいものかと少し悩む。

もしかしたら、ナレフカにとっては悲しい過去なのかもしれない__

 

しかし、彼女は少し間を置いて、話し出す。

 

「ナレフカが__」

 

__瞬間、轟音と共に廃墟の一部が吹き飛んだ。

リエルとナレフカは反応が遅れ、その風圧に圧される。

 

「この前の奴!?」

 

あの特徴的な笑い声は聞こえない。

 

「……違う」

 

リエルは冷静に、崩れた壁の先に視線をやる。

敵影は見えない。

 

「砲撃の位置だけでも……」

 

リエルは物陰に隠れたまま袖より偽装装置(ぎそうそうち)を取り出し、投げる。

電子音を上げながら装置が作動し、リエルの素体姿そっくりのホログラムが現れる。

 

「リエルが2人…!?」

 

「ちょっとお金が掛かるけど……」

 

その光景にナレフカは驚いたが、リエルはぼやきながらも依然廃墟の先を睨む。

 

その後まもなく、甲高い飛翔音が再び空に響く。

直後、偽装装置目掛けて砲弾が直撃し、再び爆風と共に廃墟に大穴を開ける。

その衝撃により廃墟は大きく揺れ、天井や柱に大きな亀裂が走る。

 

「ダメだ、爆風が規格外すぎる……」

 

このままでは廃墟の崩落(ほうらく)も時間の問題だ。あの火力ならばビル一つ崩すのになんの苦労もないだろう。

 

「待てよ、砲撃……」

 

リエルは、ふと禁域(きんいき)を陣取っていた大型狙撃兵器を思い出す。あちらが撃ってきたのは巨大な杭だったが、発射音、或いは発射光を確認した後に動けば回避はできた。

 

__理屈は同じはずだ。

 

「ナレフカ」

 

彼女は突然、ナレフカに振り向いた。

唐突にリエルに振り向かれ、ナレフカは思わず目を丸くした。

 

「……ど、どうしたの?」

 

「私が囮になるから、敵を探って」 

 

「え……?」

 

その言葉は冗談のようにも聞こえた。

だがその表情は硬く、冗談を言うそれではない。

 

「待って……リエル、それって……」

 

言葉に詰まるナレフカをよそに、リエルは続ける。

 

「こっちでも特定できたら通信する。一気に叩こう」

 

彼女はそう告げると、壁の大穴より飛び出す。

 

どうしようかと一瞬迷ったが、大きく深呼吸した後、ナレフカも飛び出す。

 

__リエルが空に飛び出した瞬間、再び砲撃音が響く。

 

「……!」

 

スラスターを吹かし、その場から離れると、先ほどいた場所を砲弾が掠め、そのままの勢いで爆発と共に地面を抉る。

 

「当たれば……死ぬよね」

 

リエルはその威力に、ただただ息を呑むしかできなかった。

だが、敵は待ってくれない。

 

先ほどとは違う砲撃音が響く。

リエルは直感的に頭を笠で隠すと、笠越しに身体に大きな衝撃が走る。

 

相手も榴弾砲(りゅうだんほう)では当たらないと悟ったのだろう、徹甲弾(てっこうだん)に切り替えていたのだ。

その砲撃は、まるでリエルを試しているようだった。

 

「いたた……」

 

笠でうまく弾道をそらしたとはいえ、その衝撃は全身に掛かる。

身体や装備に異常がないか、瞬時に確認する。

 

そのとき、リエルの視界に砲撃音と共に瞬く光を見つけた。

 

「あれは……!」

 

 

「こちらに気付いたか」

 

リエルを標的として捉えているのは、巨大な多脚型のニンフ。

脚部だけでなくその姿そのものが異質であり、ガーディナの装備だけでなく、様々なコロニーの鹵獲(ろかく)品を纏っていた。

 

「まぁ、手はある」

 

ケルシュの足元、彼女の居るビルの周囲には、さながらクモの巣のようにワイヤートラップが多数張り巡らされていた。

 

リエルへ再び照準を合わせると、彼女が近づいてくるのが見えた。

 

「……!」

 

照準が合ったタイミングで、抱えていた巨大な狙撃砲を放つ。

だが、砲撃音が上がったと同時にリエルは攻撃を避ける。

 

「外れた」

 

金属音と共に薬莢が排出され、慣れた手付きで再び弾を込める。その後、懐から補給剤を取り出し、かじる。

 

__ケルシュ、奴らを見つけたらひとまず戦え。負けても問題はない、私がどうにかする

 

ケルシュの脳裏に、作戦前のヘレスの言葉がよぎる。

 

「隊長なら……問題はないか」

 

再び、リエルに照準を合わせる。

が、ケルシュはリエルのいる場所よりやや右を撃った。

彼女の動きを見るに、素体に付いた腕の甲冑で弾いたらしい。

偏差(へんさ)撃ちを試したが、見事に読まれていた。

 

「味な真似を……」

 

確かにリエルは一部アルカンド製の鎧殻(がいかく)だ。

だがケルシュは、彼女がアルカンドの連中とは違うと確信していた。

それは同時に、ケルシュに決定打が無いことも意味している。

 

「分が悪い……か」

 

ぶっきらぼうにそう呟いた瞬間、センサーに反応があったと同時に後方より熱塵銃(ねつじんじゅう)独特の発砲音、そして遅れて爆破音が鳴る。

 

「センサーに反応……速い!!」

 

ケルシュは推進機動により瞬時に避けながら振り向き、対象を睨む。

 

「外れた!?……でも!」

 

その対象はナレフカだった。

彼女は間髪入れずに両肩に搭載したロケット砲を発射する。

 

「貴様……あの地雷原を"避けた"のか!」

 

だがケルシュは、背嚢に搭載した迎撃機を展開し、ロケット砲を銃撃。

寸前で撃墜した。

 

「その迎撃機……ポロッカの!」

 

「あぁ……メルツェの言ってた腰巾着はお前か!」

 

ケルシュは狙撃砲と副腕の大型速射砲をパージし、懐からこれまた大型のガトリング砲を取り出した。

 

ガトリング砲がナレフカを捉え、迎撃機とともに金属を裂くような唸りを挙げる。

 

「これくらい!」

 

迎撃機とガトリング砲の弾幕にまともに晒されてしまうが、ナレフカは重力を無視したような旋回機動でそれを回避する。

 

当たらないと見るや、ケルシュは背面の大型スラスターで大きく飛び上がる。

 

「は……!?」

 

大型機だから飛べないだろう。その予想を大きく裏切られたナレフカは一瞬呆気にとられる。

 

空中で巨体が一瞬静止する。

その影がナレフカを捉え、上からその質量を叩きつけた。

 

「飛行型との戦いは上で学習済みだ」

 

土煙が晴れる。

倒れた彼女の鎧殻を、ケルシュは前方の2脚で踏みつけていた。

潰れるような金属音がキリキリと鳴り続ける。

 

「あなた……本当に、ガーディナのニンフなの?」

 

ケルシュはガトリング砲をナレフカの顔面に向ける。

 

「ガーディナのは物足りなくてな」

 

そう吐き捨てたところで、リエルが近づく。

 

「ナレフカ!」

 

槍を投げようとしたが、迎撃機の銃口が向く。

 

振り向かぬまま、ケルシュは話した。

 

「動くなよ。動けばお前もろともこいつを殺す」

 

「う……!」

 

その言葉を聞き、槍を持つ手が止まる。

殺すべき敵は目の前にいる。だが、自分が動けばナレフカが終わる。

 

自分が死んでも再生産されるので問題はない。

しかし、ナレフカが死ぬのはまずい。

 

ケルシュが話し終えたところで、ナレフカは口元をふっと歪めた。

その表情に彼女は眉をひそめた。

 

「何がおかしい」

 

「ポロッカの航空士が……甘く見られたものね」

 

__戯れ言を

 

そう心で(あざけ)りながらガトリング砲を空転させるケルシュ。ナレフカは続ける。

 

「私達にはね、自分ごと異形を焼き尽くすだけの覚悟があるのよ……!」

 

瞬間、ナレフカは躊躇なくロケット砲を旋回させた。

銃口はケルシュへと向けられる。

 

彼女は引き金を引こうとしたが、突如として回転が凍り付いたように止まり、後を追うように小爆発が起きた。

見ると、ガトリング砲にナイフが突き刺さっていた。

 

「な……!」

 

リエルの方へ振り向くと、彼女はナイフを投げ終えたばかりの姿で立っている。

彼女に向けていた迎撃機にも同じナイフが突き刺さっていた。

 

「燃え尽きろぉッ!!」

 

彼女の叫びに呼応するように、炎の咆哮が轟く。

 

リエルの前で、2人が光に包まれた。

 

__煙が晴れる。

 

そこには、満身創痍(まんしんそうい)になったケルシュとナレフカが、互いに睨みあっていた。

 

「これ……が、ポロッカ……の、航空士……の……力よ……!」

 

鎧殻は無惨にも破壊され、動くことすらままならない。

 

「ナレフカ!!」

 

リエルは、急ぎナレフカに駆け寄った。

 

同時に、複数の気配を感じ、周囲を見渡す。

 

気が付くと、周囲を多数のニンフに囲まれていた。全員がナレフカに銃を向けており、リエルは動くに動けない。

 

「まさかケルシュと相打つとは……やるねぇ」

 

そのニンフの中で、隊長格と思しきニンフが、バズーカを構え前に出る。

 

「ヘレス……たい……ちょ……」

 

息も絶え絶えに、ケルシュが呟く。

 

__ヘレス

 

こいつがメルツェやケルシュを率いる隊長であると、リエルは理解した。

 

「お前が……」

 

「鎧殻を外して投降しろ」

 

ヘレスは目を合わせることなく、冷たい声のみを残した。




読んで下さりありがとうございました。
次回は7/13(日曜)12:00~ 投稿予定です

キャラ紹介

ケルシュ
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