Dolls Nest外伝『ポロッカの秘宝』 作:ゆらNari
土曜から三連休になったのでこれの後月曜にも投稿予定です。楽しんでいただけたら幸いです。
__暗い下層に、閃光が走る。
数多の火砲が火を噴き、砂漠に注いだ砲弾が砂塵を巻き上げた。
それは、たった一人の個人に向けられて良い投射量ではなかった。
「……大きいのから潰す」
リエルは砂漠を滑走しながら、眼前を走行する多脚要塞に目を向けた。
正面から行けば的になる。
しかし、焦れていては遮蔽物が目減りしてしまうだろう。
「……ここが下層で良かった」
リエルは槍のバーニアを点火させ、多脚要塞に向けて投擲した。
ロケットのように放たれたそれは、高速で走っている要塞を横切る。
「じゃあ、TAKE2と行こうか」
空に消えた槍は、程なくして奥に聳える廃墟の中へと消えた。
そして次の瞬間、異形達の甲高い鳴き声が、砂漠に響き渡った。
その瞬間、ガーディナの兵隊たちは否応なしに振り向かされた。
異形に襲われて間もない彼女たちに、その声を無視する事は不可能だった。
その隙を、リエルが見逃す筈が無かった。
「私は優しいから」
戦車の上に降り立ったリエルは、肩部の熱塵砲を中核に向けて撃ち放った。
戦車の上部が膨らみ、爆裂した。
爆炎に押し出された鉄片が注ぐ中、リエルは次々と戦車に飛び移っては破壊して行く。
「お前たちみたいに遊ばない」
要塞の過半数を失い、異形とリエルに備えて密集隊形を取った彼女達の頭上に、リエルが降り立った。
「どうか安らかに……死ね」
彼女は優しげな口調で毒を吐いた。
「接敵っ!!」
ニンフ達はリエルに銃を構える。
しかし、彼女達は取り囲まされた事に気付く。
この位置では、ほぼ確実に誤射は免れなかった。
「武器を変え__」
そう指示しながら武器を抜いたニンフは、熱塵砲に貫かれた。
続けざまに、リエルは2丁の拳銃を引き抜いた。
「嫌っ__」
彼女に銃口を向けられたニンフは恐怖に顔を歪めた。
だが次の瞬間には頭が吹き飛んだ。
「私以外クソだ!!」
リエルは叫びながら、引き金を引き続ける。
リロードの隙を狙うニンフは、悉く熱塵砲で焼かれた。
まるで舞踏を踊るように舞いながら、ニンフ達の頭を正確に撃ち抜き続ける。
「私以外信じれない!!信じたくないんだよ!!」
気が付けば、リエルの周囲に居たニンフは、最後の一人となっていた。
「みんな……なんで……なんでぇ……」
一人残った兵士は、リエルに銃を向けていた。
二人は同時に発砲した。
弾丸がリエルの頬を掠め、兵士の額に弾丸が直撃し、頭が弾んだ。
「なんでだろうね」
リエルは、疲れきった口調で呟いた。
「種子ォッ!!」
一台の要塞が彼女の元に迫っていた。
その上部には、怒りの形相を浮かべたメルツェが、重砲を構えていた。
「ああ……お前も殺さないと」
リエルはそう呟くと、死体の中から一振りの剣を拝借した。
「死ねよおぉぉ!!!」
メルツェの持つギプロベルデ製の重砲より光が煌めき、青い球状の砲弾が彼女の咆哮と共に放たれる。
リエルは近くの死体を投げ、それを相殺する。
「無駄だよ」
死体と弾を中心に、プラズマの爆発が起きた。
その爆発を隠れ蓑に、奥から複数のミサイルが殺到する。
リエルはそのまま正面へと飛びながらミサイルを避け、メルツェへと接近する。
「こっちのォ……台詞だぁ!!」
爆発の先には、先ほどと同じように重砲のチャージを行っていたメルツェ。
「……ッ!!」
彼女は砲撃前にその砲身を蹴り上げ、砲撃を無理矢理反らす。
「弱いくせに……!」
苛立ち交じりに呟きながら、勢いに任せメルツェに剣を振りかぶるも空を切る。
上を見る前に、銃弾の雨が上から襲い掛かった。
「死ねっ!死ねっ!!死ねっ!!!」
呪詛が木霊する中、リエルは冷静に拳銃を取り出し、数度発砲する。
弾倉に火花が走る。だが、メルツェは怯まず、黙ってそれを投げ捨てた。
「ックソがァ!!」
彼女はそう吐き捨てるとそのまま要塞の甲板に着地し、再び重砲を構えようとする。だがリエルの動きを見て発射が間に合わないと判断し、即座にそれを彼女へと投げ捨てた。
その武器を投げ捨てる
瞬間、熱塵砲がそれを貫いた。
__爆発。
それに巻き込まれ、先程まで乗っていた多脚要塞は崩壊し、更なる爆発を引き起こした。
◆
しばらくの戦闘で、残っていた多脚要塞は全滅。
決死隊のニンフも、数を大きく減らしていた。
それだけやっても、メルツェはまだ粘っていた。
「なんで死なないんだよ」
理解できない__リエルは疲れた様子で呟く。
戦闘でリエルの副腕に搭載された熱塵砲が動作不良を起こし、火花が飛び散っていた。
彼女は舌打ちをしながらパージする。
その後、近くの死体から手頃な銃を拾った。
「分解装置起動……」
背嚢のセル分解装置を起動する。
自身の身体がふらつく感覚と同時に弾薬を形成し、そのままマガジンに弾を込める。
武器は銃と剣のみになってしまった。
「……クソが」
追い詰められているわけではない。
だが、一瞬でケリをつける予定だったメルツェに相当粘られている。
それが彼女にとっては、堪らなく腹立たしかった。
「何も出来ない癖に……何も応えられない癖に」
そう呟き、彼女は飛んだ。
それは、種子としての、応え続けた者としての
一方メルツェも、副腕の武装が動かなくなり、それをパージする。
その後、副腕にくくりつけていた擲弾砲を取り出し、他の武器を確認する。
「擲弾砲……1、拳銃……2、大剣……1……まだ戦える……殺せる……!!」
メルツェの瞳はいつになくぎらついていた。
怯え、興奮、快楽、勝利への希望__その全てが溶け合い、それが乾いた笑いと共に声に出た。
「隊長……ケルシュ……見てるかな……?ハハ……ハ……」
既に死んだ者の名を、誰に問いかけるでもなく呟く。
今までの、ただ素直に感情を爆発させただけの彼女は既にそこにはいない。本物の、確かな狂気が彼女を支配していた。
メルツェも物陰から姿を表し、再び飛ぶ。
__2人は、再び合間見えた。
「見つけたぞおぉ!!」
メルツェは彼女を見つけるや否や、咆哮と共にリエルに向けて何発も砲弾を放つ。
「死んでよ、役立たず」
彼女は銃を広範囲に乱射することでそれを破壊する。
「何だよ!!ひとりぼっちの化物がぁっ!!!」
メルツェは弾切れになった擲弾砲を捨てて2丁の拳銃を取り出す。
焼夷弾を放つその自動機関拳銃2丁を正面のリエルに向ける。
「燃え尽きろぉぉぉ!!!」
焼夷弾が粘着しリエルを、銃を焼く。
動きが鈍ったところを、メルツェは見逃さなかった。
「ハハハ……ついに……燃えたぁ……!」
メルツェは武器を再び投げ捨て、大剣を構え地を滑る。
狙うは一人。自身の仲間を殺し、自分を燃やし、そして、自分の部隊の2人を殺した種子。
「死ねえぇぇぇぇっ!!!」
リエルの身体は燃え、その場にうずくまっていた。だが、その叫び声とメルツェの突撃を待っていたかのように顔を上げた。
「死ぬのはお前だよ。弱いの」
そう吐き捨てたと同時に、右手に持っていた剣を逆手に持ち替え、そのまま正面に振りかぶった。
__一閃
「は……?」
メルツェの両腕が、肘から先で宙を舞った。
武器ごと、大きく血しぶきを描いて飛ぶ。
「え……?」
頭が理解を拒んでいる。それ故かメルツェはいつになく冷静に、情景を分析していた。
__ああ、腕が飛んでいる。種子の持ってる剣でやられたのか
彼女の狂気は次第に恐怖へと変わり、同時に痛みも走る。
「っあああああぁっ!!!」
たまらずメルツェは飛び上がり、身体を廃墟にぶつけながら空へと逃げるも、リエルはすぐにそれを追った。
「なんだよ!なんだよ!!なんなんだよぉぉ!!!」
リエルは剣をもったまま、無言で彼女を追う。
「なんで!なんでそんなになってまで戦えるんだよ!!なんで奪えるんだよ!!!」
自暴自棄になったメルツェは急に方向転換し、リエルに向けてミサイルの如く突っ込んだ。
「なんでだよぉぉぉ!!」
剣が、メルツェの喉元に突き刺さる。
勢いのままそれに突っ込み、口から大きく血を吐いた。
「がっ……ひゅ……っ」
息も絶え絶えとなったメルツェに、リエルは冷淡に吐き捨てた。
「……たくさん死んだからだよ」
「ぃ……ぅ……」
__理不尽だ
メルツェは確かにそう言った。
リエルが剣を放すと、メルツェはそのまま地に墜ちる。
リエルはため息を吐きながら、地に足をつける。
「やっと死んだ」
その言葉には疲労と、やり場の無い怒りが混ざっていた。
リエルの前には、屍の山が築かれていた。
彼女はそれを見ても、何も感じない。
八つ当たり同然に暴れたものの、何一つ満たされていなかった。
「あれ……」
ふと袖の中を探ると、そこには拳銃が残っていた。
彼女はそれを手に取る。
「……疲れたな」
その声色には疲労のみが全面に出ていた。
鎧殻も既に各部で損傷が見られており、まともに動ける様子では無い。
リエルは少し息を吐いた後、こめかみに銃口を向ける。
「もう、帰ろう」
引き金を引いた瞬間、彼女の頭は弾けた。
読んで下さりありがとうございました。
次回は8/11(月曜)12:00~ 投稿予定です
キャラ紹介
メルツェ(対種子仕様)
https://docs.google.com/document/d/1pXMYUROIwYwIB3weHcLLuVLiz7hpliMOMAQG4u7ktw8/edit?usp=drive_link