星の宝石と石の世界   作:終日のたり

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宣言したとおりこの話はカミキヒカル(偽)視点です


僕の名前はカミキヒカル(偽)

誰か助けてほしい。

 

【推しの子】の黒幕サイコパス野郎ことカミキヒカル(芸名。本名は神木光。なお今は婿に入ったのでカミキでもなければ神木でもない)に自分が転生? してしまって早××年。原作のぶっとび鬱展開になんかしてたまるかと奮闘し続けた結果が、ここ最近一気に芽吹いてきて一息ついたところにこれだ。

 

「同じ組の石神千空くんだよ、友達になったの」

 

にこにこ天使の微笑みを浮かべる末娘ことエメちゃんに手を引かれ、不貞不貞し、いや無愛想、えーと気負った様子なく会釈をしてみせる少年。

「いしがみせんくう」という名前自体で前世からライトオタだった俺にはピンとくるものがあるというのに、これが日本人離れした白と緑のグラデーションカラーの髪(しかもドラゴンボールよろしく重力を無視している)に加え、ルビーよりももっと深い赤を宿した瞳の持ち主なのだから、もう答えは決まったようなものだ。

 

……勘弁してくれ。

 

本来双子であるはずのアイの子供(そして俺の!俺の子供!!)が三つ子だったときから「おや?」と思うことは確かにあったが、それはまあいい。

だがこれからルビーはアイのようなアイドルを目指すことは目に見えていて、アクアはアクアできっと俳優を志すはずだ。

唯一、原作に登場しない末っ子エメラルドはよく分からないが、たまに口ずさんでいる鼻歌が、鼻歌なのに思わず目を瞠るほどの歌唱力を覗かせているので、なんとなくこれも将来が見えている。

 

……親馬鹿だと思う? いやこればかりは実際に聞いて貰えばすぐに分かる。これは前世の話だが、親族がコレクションしていたレコードで美空ひ○りのアカペラを聴いたときと同じ衝撃を味わったから俺。マジで。

 

まあつまりこの先、うちの子達は全員が高確率で芸能人を目指すこととなるわけだ。そして(多少は親の欲目はあるだろうが)才能溢れる子供達を大人の悪意からメインで守るのは俺である。勿論アイや斎藤夫妻にも大いに頼ることとなるが、それでも父親として一家の大黒柱として、俺は全身全霊でこの愛しい家族を守らなきゃならない。

 

何が言いたいかって? 決まってる。

 

こちとら闇深い芸能界から生まれ出でるスキャンダルやら炎上やらを避けるので手一杯なんだ。この期に及んで「人類一度滅亡しまーす★」なんてサプライズは要らなすぎるんだよ。

 

……だが何度幻覚を振り払うべく瞬きを繰り返したところで、娘と手を繋いでいる少年は陽炎のように消えることもなければホログラムよろしく歪むこともない。そりゃそうだ。現実に存在してるんだから。

 

思わず頭を抱えたくなるのを堪えて、「千空君かあ、エメと仲良くしてくれてありがとうね」なんて優しいパパを演じる。頑張れ俺の表情筋。大丈夫。俺は俳優カミキヒカル。子供の前でいいお父さんを取り繕うくらい朝飯前だ。そのはずだ。

 

「あーっ! エメが男の子と手繋いでる!」

 

恐らくリアル保育園児と付き合うのにうんざりしたのだろうルビーが、アクアマリンの手を引いて戻ってきた。引っ張られるアクアマリンはやれやれといった顔をしていたが、もう1人の妹が見知らぬ子供(それも男)と手を繋いでいるのを視認するなりみるみるうちに険しい顔になった。

 

ルビーが妹アンチ(というか同担拒否?)から一転して過激派シスコンになったのも大概だが、こいつもこいつで(原作で見た通りとはえ)立派なシスコン(穏健派に見せかけた過激派)に育って何よりである。

 

「エメ、誰だよそいつ」

 

うわ待って待ってアクア、そのしかめっ面パパが嫌いな食べ物食べるときにそっくりなんだけど。嬉しいけどちょっとビビる。嬉しいけど。

 

「同じ月組の石神千空君だよ。千空、こっち私のお兄ちゃんとお姉ちゃん。三つ子なの」

 

待ってエメちゃん、もうその子のこと呼び捨てにしてんの? 距離詰めるの早くない?

 

「見りゃ分かるわ。性別違うってことは二卵性……いやこの場合三卵生か? その割にゃ顔がそっくり過ぎてビビるけどな。いや、それとも異性一卵性双生児ってやつか? だとしたらレアケース過ぎてどっかの研究機関やら医療機関が連絡取ってくるかもな」

「え? なに? マシンガントークやばー」

「保育園児とは思えない語彙の連発だな」

「凄いよね。すっごい頭いいんだよ千空。喋ってるとめっちゃ面白いの」

 

軽く眼を回すルビー、感心するアクアマリン。

「お兄ちゃんとも話が合いそうかなって」と続けるエメラルドに思わず納得する俺。

 

何者か分からないとはいえほぼ確率で転生者であるエメラルドにとって、この保育園児とは思えない滑舌と頭脳を持つ少年はまともに会話ができる唯一の存在に映ったのだろう。そしてわざわざ俺達家族に紹介したのも、同じく精神年齢の差で困っているだろう兄姉と彼を引き合わせるためだ。ルビーに比べたらだいぶ大人しくアクアマリンより控えめなところのあるエメラルドだが、彼女なりに家族を大切にしていることは俺ももう分かっていた。

 

ていうかうちの娘マジで天使では? こんなに小さいのに家族思いで心優しいなんて、うっかり羽をなくして地上に落ちてきた天使なんでは?

 

「ご紹介に(あずか)った石神千空だ。まーよろしく頼むぜ三つ子さんよ」

「三つ子さんじゃなくてルビーだよ。エメのお姉ちゃんね」

「星野アクアマリンだ。アクアでいいよ」

「……全員宝石の名前かよ。つってもルビーだけコランダムか。アクアマリンじゃなくてサファイアだったら同じだったのにな」

「こらんだむ?」

 

耳慣れない単語に首を傾げるルビー。俺はそれよりもコランダムなんて単語を知っている保育園児に戦慄するしかない。

 

「ルビーとサファイアの元になる鉱石だよ。主成分は酸化アルミニウム。そん中で赤色の奴だけがルビー、青とか緑とか紫のは全部サファイアって呼ばれる。まあ名前が違うだけの同じ石だな」

「じゃあアクアマリンとエメラルドは?」

「そっちはどっちもベリルだな。鉄が含有されてるやつがアクアマリン、クロムやガナジウムが含まれるとエメラルド。ちなみにマンガンがちーっと含まれて淡赤になったやつはモルガナイトって呼ばれてんな」

「へー、おもしろー……ってちょっと待って!? じゃあ私だけお兄ちゃんやエメと仲間はずれなの!? うそ!!?」

 

なんでなんで!? と半泣きでこっちを見るルビー。予想外すぎる展開に硬直しかける俺。

 

……いやあのすまんルビー。このネーミングはアイが主導したものだし、アイは宝石の元である鉱石の種類なんて当然知識にないから深く考えてたわけじゃない。

 

そもそもアイは学歴が中卒、なんなら小学校もあまりまともに通えなかった時期もあるから義務教育レベルはかなり怪しいのだ。これについては俺も人のこと言えないけどな。

 

「お母さんは宝石の種類より、色や石言葉を重要視したんだよ。宝石のルビーはルビーの瞳と同じ色だし、石言葉だって素敵でルビーにぴったりなんだ」

「石言葉?」

「うん。花言葉とかと同じで、石にも石言葉があるんだよ。ルビーの石言葉は『情熱』とか『勇気』それに『情熱的な愛』なんてものがある」

「何それ素敵!」

 

半泣き顔が一瞬で満面の笑顔に早変わり。くっ、我が子ながら可愛い……! アイがしょっちゅう「うちの子きゃわ~~!!」なんて目を輝かせてスマホのカメラを連写する気持ちがよく分かる。俺も今やった。そして別に今じゃなくてもしょっちゅうやってる。

 

「ちなみに単純な宝石としての価値もルビーが基本高ぇぞ」

「急に情緒の無い豆知識出すなよ」

 

あと保育園児が金の話をするな、と苦言を呈するアクアマリン。お前のその反応も保育園児じゃないんだよなあ……。

 

最近半ば隠すことを諦めて大人びた振る舞いをする三つ子(ルビーは夭折したせいで一番子供っぽいが)と、豊富な語彙で当たり前のように会話に馴染んでいる白菜……いやネギ……もとい石神少年を順番に見比べる。

 

……よし、考え方を変えよう。捉えようによってはこの出会いは寧ろ幸運だ。

もし本当にこの世界が【推しの子】のみならずD.STONEの世界ともクロスしているなら、人類はあと10年ちょっとで一度滅亡する。石化という形で3700年もの時間が経過し、文明は消え失せ人間は原始生活を強いられることとなる。それだけならまだ幸運で、石化状態のまま致命的なまでに体が破壊されれば、そのまま風化して二度と蘇生することは出来ない。

 

うちの三つ子は全員肉体に不相応な精神年齢を持つが、少なくともDr.STONEに出てきたような極端な一芸特化型(それも生存や発展に直接貢献するタイプ)ではない。つまり石化復活の優先度は極めて低い、言ってしまえば「その他大勢」に分類されてしまう人間だ(無論、これは俺やアイ自身も当てはまる)。

 

そこで重要になるのが石神千空だ。

 

彼は少年ジャンプの主人公らしくなく現実主義かつ合理主義で体力ミジンコの科学バカだが、一方で少年ジャンプの主人公らしく義理人情に厚くそれでいてロマンチストな一面もある。そうでなければ幼馴染みの大木大樹ならまだしも、(幾ら手芸チートとはいえ)体力持久力が自分以下であろう小川杠を2番目に目覚めさせようするはずがない。

 

が、かといって彼は他の科学部メンバーを私情ありきで起こそうとはしなかったし、杠の両親をはじめとする見知った(であろう)大人達の復活も後回しにした。

 

つまり(本当に人類石化が起こった場合、という注釈がつくが)石神千空の『こいつ復活させようランキング』が高くなるのは

 

石神千空が持たない能力を持つ者(それが高い水準であればある程良し)>>>>越えられない壁>>石神千空にとって親しい(或いは大切な)人間

 

ということだ。

最終的に無事に目覚めさせて貰えば問題はないし、そもそも自然災害その他で肉体が砕けてしまう可能性は大いにある。

 

かといって石化解除をあまり最後に回されたりその他大勢と一緒くたにされてしまうと、その間に砕ける可能性やそもそも見つけて貰えない可能性すら出てくる。それなら、文明復興というとんでもねえ鬼畜ゲーに我が子を突き落としてでも、序盤から復活させる候補に入れて貰うよう今から画策するべきではないか?

 

……よし。

 

「ええと、千空君?」

「あ゛?」

 

保育園児にしてはやけにドスの聞いたハスキーボイス(本当に妙な迫力がある。これがジャンプ主人公か?)で片眉をつり上げる少年に、俺は身バレ防止のためかけていたメガネと帽子を外してみせる。

近くにいた別の子のママさんがすかさず気づいて「きゃあ!」なんて叫んだのが聞こえたが、今は構っていられない。

 

「僕はこの子達のパパで、星野光といいます。よければうちの子達と、これからも仲良くしてくれると嬉しいな」

 

人好きする笑みを意識して浮かべ、幾つも年下の子供に握手を求める。勿論膝は地面に付けて、視線を合わせるのも忘れない。

ちょっとびっくりした顔で握手に応える未来の救世主(多分)も、この時ばかりは年相応の保育園児だった。




○星野光(旧姓:神木)に憑依したか成り代わったかした誰か
前世は【推しの子】およびDr.STONE読破済みのライトな二次元オタ。ガワと才能はカミキヒカルで中身が成人男性だったので、上手いこと芸能界を生き抜いて今は実力派イケメン俳優として引っ張りだこになっている。なおそれでも姫川愛梨によるレ○プは避けることが出来なかったが、これはそっち方面で姫川が百戦錬磨だったことが理由として大きい。
アイが壊滅的な炊事洗濯はほぼ彼とミヤコさんがやっている。
前世の死因は交通事故。享年30歳。
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