元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

11 / 28
神様、料理します

昼下がり。

 

ホロライブ事務所の休憩室。

 

 

 

シグレ「…………」

 

 

 

彼は真剣な顔でスマホを見つめていた。

 

 

 

そこに映っているのは――

 

 

 

《初心者でも簡単! 5分で作れる絶品チャーハン!》

 

 

 

シグレ「……なるほど」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

大神ミオ「シグレくん、なに見てるの?」

 

 

 

後ろから覗き込んできたのは大神ミオ。

 

買い出し帰りらしく、袋いっぱいに食材を抱えている。

 

 

 

シグレ「料理だ」

 

ミオ「えっ」

 

シグレ「人間界で生きる以上、“自炊”なる技能は避けて通れぬと判断した」

 

ミオ「急に偉いね!?」

 

 

 

そこへさらに――

 

 

 

不知火フレア「お、なんか面白そうなことしてる?」

 

角巻わため「料理!? わためぇお腹空いた!」

 

 

 

フレアとわためまで集まってきた。

 

 

 

シグレ「む、ちょうど良い。貴様ら、人間界の調理術を我に教えよ」

 

フレア「なんかRPGのイベント始まった?」

 

わため「神様ってご飯作らないの?」

 

シグレ「神は供物を受け取る側だからな」

 

ミオ「うわ、急に神様っぽい」

 

 

 

◇

 

 

 

数十分後。

 

事務所キッチン。

 

 

 

シグレはエプロン姿になっていた。

 

 

 

フレア「……なんか妙に似合うな」

 

わため「新婚さん感ある!」

 

シグレ「何故だ」

 

 

 

ミオが冷蔵庫を開けながら言う。

 

 

 

ミオ「で、何作るの?」

 

シグレ「“ちゃーはん”だ」

 

わため「チャーハン!」

 

フレア「初心者が選ぶには微妙に難しいライン来たな……」

 

 

 

シグレはスマホを見ながら頷く。

 

 

 

シグレ「安心せよ。“簡単”と書いてあった」

 

フレア「あっ、その言葉を信じちゃダメなやつ」

 

 

 

◇

 

 

 

まずは卵。

 

 

 

ミオ「はい、卵割ってみよっか」

 

シグレ「任せよ」

 

 

 

パカン。

 

 

 

ベチャ。

 

 

 

わため「あっ」

 

 

 

中身が全部シンクへ落ちた。

 

 

 

シグレ「…………」

 

ミオ「だ、大丈夫大丈夫! 最初はみんな失敗するから!」

 

フレア「殻だけ綺麗に残ってるの逆に才能だよ」

 

 

 

二個目。

 

 

 

グシャッ。

 

 

 

シグレ「何故だ!?」

 

わため「力が強すぎる!」

 

 

 

三個目でようやく成功。

 

 

 

シグレ「……ふぅ」

 

ミオ「なんで卵割るだけでラスボス戦みたいな空気になるの」

 

 

 

◇

 

 

 

次は炒め工程。

 

 

 

ジュワァァァァッ!!

 

 

 

シグレ「うおっ!?」

 

 

 

油が跳ねた瞬間、神様が飛び退く。

 

 

 

フレア「いや避けすぎ避けすぎ!」

 

ミオ「火から3メートル離れないで!?」

 

 

 

シグレはフライパンを睨む。

 

 

 

シグレ「この器具……敵意がある」

 

わため「フライパンに意思を感じてる」

 

 

 

ミオ「ほら、ちゃんと振って!」

 

シグレ「こうか!?」

 

 

 

ブワッ!!

 

 

 

チャーハンが宙を舞う。

 

 

 

フレア「うわあああ!?」

 

わため「米が飛んだぁぁ!!」

 

 

 

数粒、天井に張り付いた。

 

 

 

シグレ「…………」

 

ミオ「すごいなぁ……ここまで豪快な初心者初めて見た」

 

 

 

◇

 

 

 

その時。

 

 

 

ガチャッ。

 

 

 

獅白ぼたん「お疲れ様でー……すごい匂いするね?」

 

 

 

ぼたんがキッチンへ入ってきた。

 

だが次の瞬間。

 

 

 

ぼたん「……なんで天井に米ついてるの?」

 

 

 

全員沈黙。

 

 

 

フレア「神の力です」

 

ぼたん「雑な説明だなぁ」

 

 

 

ぼたんは笑いながら、シグレのフライパンを覗き込む。

 

 

 

ぼたん「お、でも意外と形になってるじゃん」

 

シグレ「当然だ。我を誰だと思っている」

 

わため「さっきまで卵に負けてた人」

 

シグレ「それは言うな」

 

 

 

◇

 

 

 

そして完成。

 

 

 

皿に盛られたチャーハンは――

 

見た目はちょっと焦げ気味だった。

 

 

 

ミオ「……うん」

 

フレア「ギリ食べ物」

 

ぼたん「まぁ初心者なら上出来じゃない?」

 

 

 

シグレは腕を組む。

 

 

 

シグレ「では食すがよい。我が初めて創造した“人の料理”を」

 

わため「なんか壮大!」

 

 

 

全員で一口。

 

 

 

もぐ。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

シグレ「……どうだ」

 

 

 

ミオがゆっくり頷く。

 

 

 

ミオ「……味は普通に美味しい」

 

フレア「えっ、ほんとだ」

 

ぼたん「ちゃんとチャーハンしてる」

 

わため「おいしい!」

 

 

 

シグレは少し目を見開いた。

 

 

 

シグレ「……成功、したのか?」

 

ミオ「うん、大成功だよ」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

パァァァァァ……

 

 

 

何故かシグレの後ろに神々しい光が差した。

 

 

 

ぼたん「なんで料理成功しただけで覚醒演出入るの?」

 

フレア「達成感が重すぎる」

 

 

 

シグレは静かに呟く。

 

 

 

シグレ「これが……“手料理”」

 

わため「なんか感動してる!」

 

 

 

ミオは少し笑いながら言った。

 

 

 

ミオ「誰かに作るご飯ってさ、結構嬉しいもんなんだよ」

 

 

 

シグレは皿を見る。

 

 

 

神だった頃、 供物を受け取ることはあった。

 

だが、“誰かに食べてもらうため”に何かを作ったことは、一度もなかった。

 

 

 

フレア「次はカレーとか挑戦する?」

 

シグレ「……まだ早い」

 

ぼたん「チャーハンで瀕死だったもんね」

 

シグレ「否定できぬ」

 

 

 

その時。

 

 

 

ボンッ!!!

 

 

 

突然、電子レンジから煙が上がった。

 

 

 

全員「!?」

 

 

 

ミオ「ああああ!? 誰か冷凍唐揚げ入れっぱなし!!」

 

わため「わためぇじゃないよ!?」

 

フレア「えっ私でもない!」

 

 

 

全員の視線が、シグレへ向く。

 

 

 

シグレ「…………」

 

ぼたん「神様?」

 

シグレ「“500秒”という表示、“強さ”だと思っていた」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

ミオ「500秒温めたの!?」

 

フレア「レンジ壊れる!!」

 

わため「神様ぁぁぁ!!」

 

 

 

今日もまた、ホロライブ事務所には騒がしい悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 

――To Be Continued.

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。