元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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神様、料理します

昼下がり。

 

ホロライブ事務所の休憩室。

 

 

 

シグレ「…………」

 

 

 

彼は真剣な顔でスマホを見つめていた。

 

 

 

そこに映っているのは――

 

 

 

《初心者でも簡単! 5分で作れる絶品チャーハン!》

 

 

 

シグレ「……なるほど」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

大神ミオ「シグレくん、なに見てるの?」

 

 

 

後ろから覗き込んできたのは大神ミオ。

 

買い出し帰りらしく、袋いっぱいに食材を抱えている。

 

 

 

シグレ「料理だ」

 

ミオ「えっ」

 

シグレ「人間界で生きる以上、“自炊”なる技能は避けて通れぬと判断した」

 

ミオ「急に偉いね!?」

 

 

 

そこへさらに――

 

 

 

不知火フレア「お、なんか面白そうなことしてる?」

 

角巻わため「料理!? わためぇお腹空いた!」

 

 

 

フレアとわためまで集まってきた。

 

 

 

シグレ「む、ちょうど良い。貴様ら、人間界の調理術を我に教えよ」

 

フレア「なんかRPGのイベント始まった?」

 

わため「神様ってご飯作らないの?」

 

シグレ「神は供物を受け取る側だからな」

 

ミオ「うわ、急に神様っぽい」

 

 

 

 

 

 

数十分後。

 

事務所キッチン。

 

 

 

シグレはエプロン姿になっていた。

 

 

 

フレア「……なんか妙に似合うな」

 

わため「新婚さん感ある!」

 

シグレ「何故だ」

 

 

 

ミオが冷蔵庫を開けながら言う。

 

 

 

ミオ「で、何作るの?」

 

シグレ「“ちゃーはん”だ」

 

わため「チャーハン!」

 

フレア「初心者が選ぶには微妙に難しいライン来たな……」

 

 

 

シグレはスマホを見ながら頷く。

 

 

 

シグレ「安心せよ。“簡単”と書いてあった」

 

フレア「あっ、その言葉を信じちゃダメなやつ」

 

 

 

 

 

 

まずは卵。

 

 

 

ミオ「はい、卵割ってみよっか」

 

シグレ「任せよ」

 

 

 

パカン。

 

 

 

ベチャ。

 

 

 

わため「あっ」

 

 

 

中身が全部シンクへ落ちた。

 

 

 

シグレ「…………」

 

ミオ「だ、大丈夫大丈夫! 最初はみんな失敗するから!」

 

フレア「殻だけ綺麗に残ってるの逆に才能だよ」

 

 

 

二個目。

 

 

 

グシャッ。

 

 

 

シグレ「何故だ!?」

 

わため「力が強すぎる!」

 

 

 

三個目でようやく成功。

 

 

 

シグレ「……ふぅ」

 

ミオ「なんで卵割るだけでラスボス戦みたいな空気になるの」

 

 

 

 

 

 

次は炒め工程。

 

 

 

ジュワァァァァッ!!

 

 

 

シグレ「うおっ!?」

 

 

 

油が跳ねた瞬間、神様が飛び退く。

 

 

 

フレア「いや避けすぎ避けすぎ!」

 

ミオ「火から3メートル離れないで!?」

 

 

 

シグレはフライパンを睨む。

 

 

 

シグレ「この器具……敵意がある」

 

わため「フライパンに意思を感じてる」

 

 

 

ミオ「ほら、ちゃんと振って!」

 

シグレ「こうか!?」

 

 

 

ブワッ!!

 

 

 

チャーハンが宙を舞う。

 

 

 

フレア「うわあああ!?」

 

わため「米が飛んだぁぁ!!」

 

 

 

数粒、天井に張り付いた。

 

 

 

シグレ「…………」

 

ミオ「すごいなぁ……ここまで豪快な初心者初めて見た」

 

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

ガチャッ。

 

 

 

獅白ぼたん「お疲れ様でー……すごい匂いするね?」

 

 

 

ぼたんがキッチンへ入ってきた。

 

だが次の瞬間。

 

 

 

ぼたん「……なんで天井に米ついてるの?」

 

 

 

全員沈黙。

 

 

 

フレア「神の力です」

 

ぼたん「雑な説明だなぁ」

 

 

 

ぼたんは笑いながら、シグレのフライパンを覗き込む。

 

 

 

ぼたん「お、でも意外と形になってるじゃん」

 

シグレ「当然だ。我を誰だと思っている」

 

わため「さっきまで卵に負けてた人」

 

シグレ「それは言うな」

 

 

 

 

 

 

そして完成。

 

 

 

皿に盛られたチャーハンは――

 

見た目はちょっと焦げ気味だった。

 

 

 

ミオ「……うん」

 

フレア「ギリ食べ物」

 

ぼたん「まぁ初心者なら上出来じゃない?」

 

 

 

シグレは腕を組む。

 

 

 

シグレ「では食すがよい。我が初めて創造した“人の料理”を」

 

わため「なんか壮大!」

 

 

 

全員で一口。

 

 

 

もぐ。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

シグレ「……どうだ」

 

 

 

ミオがゆっくり頷く。

 

 

 

ミオ「……味は普通に美味しい」

 

フレア「えっ、ほんとだ」

 

ぼたん「ちゃんとチャーハンしてる」

 

わため「おいしい!」

 

 

 

シグレは少し目を見開いた。

 

 

 

シグレ「……成功、したのか?」

 

ミオ「うん、大成功だよ」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

パァァァァァ……

 

 

 

何故かシグレの後ろに神々しい光が差した。

 

 

 

ぼたん「なんで料理成功しただけで覚醒演出入るの?」

 

フレア「達成感が重すぎる」

 

 

 

シグレは静かに呟く。

 

 

 

シグレ「これが……“手料理”」

 

わため「なんか感動してる!」

 

 

 

ミオは少し笑いながら言った。

 

 

 

ミオ「誰かに作るご飯ってさ、結構嬉しいもんなんだよ」

 

 

 

シグレは皿を見る。

 

 

 

神だった頃、 供物を受け取ることはあった。

 

だが、“誰かに食べてもらうため”に何かを作ったことは、一度もなかった。

 

 

 

フレア「次はカレーとか挑戦する?」

 

シグレ「……まだ早い」

 

ぼたん「チャーハンで瀕死だったもんね」

 

シグレ「否定できぬ」

 

 

 

その時。

 

 

 

ボンッ!!!

 

 

 

突然、電子レンジから煙が上がった。

 

 

 

全員「!?」

 

 

 

ミオ「ああああ!? 誰か冷凍唐揚げ入れっぱなし!!」

 

わため「わためぇじゃないよ!?」

 

フレア「えっ私でもない!」

 

 

 

全員の視線が、シグレへ向く。

 

 

 

シグレ「…………」

 

ぼたん「神様?」

 

シグレ「“500秒”という表示、“強さ”だと思っていた」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

ミオ「500秒温めたの!?」

 

フレア「レンジ壊れる!!」

 

わため「神様ぁぁぁ!!」

 

 

 

今日もまた、ホロライブ事務所には騒がしい悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 

――To Be Continued.

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