元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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隠し事が下手な神様

夕方。

 

ホロライブ事務所。

 

 

 

シグレ「…………」

 

 

 

カタカタカタ。

 

 

 

無言でパソコン作業をしている。

 

 

 

だが。

 

 

 

明らかに様子がおかしい。

 

 

 

五分おきに後ろを振り返り、 廊下を見るたび警戒し、 たまに窓の外を睨んでいる。

 

 

 

しかも今日だけで三回、マウスを逆向きに握った。

 

 

 

完全に集中できていない。

 

 

 

そして。

 

 

 

それに気づかないほど、すいせいとおかゆは鈍くなかった。

 

 

 

 

 

 

休憩室。

 

 

 

おかゆ「……ねぇ」

 

すいせい「うん」

 

おかゆ「神様、最近めちゃくちゃ怪しくない?」

 

すいせい「やっぱそう思う?」

 

 

 

二人はコーヒー片手に、小声で話していた。

 

 

 

おかゆ「この前なんて、廊下の監視カメラに向かって“姿を現せ”って言ってたよ?」

 

すいせい「なにそれ怖」

 

 

 

しかも。

 

 

 

・急に黙り込む ・ぼーっと空を見る ・物音にビビる ・何もない場所を警戒する

 

 

 

完全に不審者である。

 

 

 

おかゆ「問い詰める?」

 

すいせい「うん。あれ絶対なんか隠してる」

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

シグレ「……む」

 

 

 

資料整理中だったシグレの前に。

 

 

 

すいせいとおかゆが、無言で座った。

 

 

 

シグレ「なんだ」

 

すいせい「それ、こっちのセリフ」

 

おかゆ「神様さぁ、最近なんか変だよねぇ?」

 

 

 

シグレの肩がピクリと揺れる。

 

 

 

シグレ「……何のことだ」

 

すいせい「はい出た。“何のことだ”」

 

 

 

逃げる時のテンプレだった。

 

 

 

おかゆ「最近ずっとソワソワしてるし、視線気にしてるし、寝不足っぽいし」

 

すいせい「あと今日シュレッダーに書類じゃなくてタオル入れてた」

 

シグレ「…………」

 

 

 

やっていた。

 

 

 

シグレ「少し疲れているだけだ」

 

 

 

すいせい「嘘」

 

おかゆ「嘘だねぇ」

 

 

 

即答だった。

 

 

 

シグレは目を逸らす。

 

 

 

だが。

 

 

 

この二人、妙に勘が鋭い。

 

 

 

すいせい「ねぇ」

 

 

 

少し真面目な声。

 

 

 

すいせい「なんかあるなら言ってよ」

 

 

 

シグレは黙る。

 

 

 

おかゆも、珍しく静かだった。

 

 

 

おかゆ「神様ってさ、困ると一人で抱え込むタイプでしょ」

 

 

 

図星だった。

 

 

 

シグレ「……」

 

すいせい「私たち、そんな頼りない?」

 

 

 

その言葉に。

 

 

 

シグレは少しだけ困った顔をした。

 

 

 

頼りないわけではない。

 

 

 

むしろ逆だ。

 

 

 

だからこそ巻き込みたくなかった。

 

 

 

神界。 大神。 監視。

 

 

 

そんなもの、人間側には関係ないはずだった。

 

 

 

だが。

 

 

 

すいせいとおかゆは、逃がしてくれそうになかった。

 

 

 

おかゆ「話すまでここ動かないよ~?」

 

すいせい「今日は長期戦でもいい」

 

 

 

完全に包囲網。

 

 

 

シグレ「……貴様らな」

 

 

 

数秒沈黙。

 

 

 

やがて。

 

 

 

シグレは小さく息を吐いた。

 

 

 

シグレ「……条件がある」

 

すいせい「ん?」

 

シグレ「他の者には話すな」

 

おかゆ「おっ」

 

シグレ「絶対だ」

 

 

 

二人は顔を見合わせ、頷いた。

 

 

 

シグレは少しだけ目を伏せる。

 

 

 

そして。

 

 

 

静かに口を開いた。

 

 

 

シグレ「……我は今、“神界”から狙われている」

 

 

 

沈黙。

 

 

 

すいせい「…………はい?」

 

おかゆ「神界って、あの?」

 

シグレ「文字通りの意味だ」

 

 

 

おかゆがゆっくり瞬きする。

 

 

 

すいせいは腕を組んだ。

 

 

 

すいせい「……いや待って」

 

シグレ「む」

 

すいせい「元神様なのは知ってたけど、“現在進行形で命狙われてる”は聞いてない」

 

シグレ「言ってないからな」

 

 

 

正論だった。

 

 

 

おかゆ「え、なにそれ怖……」

 

 

 

シグレは静かに説明する。

 

 

 

神界に監視されていること。

 

神使が来ていること。

 

自分の力が戻り始めていること。

 

 

 

そして。

 

 

 

それを神界が危険視していること。

 

 

 

話すほどに。

 

 

 

二人の表情が真剣になっていく。

 

 

 

すいせい「……なんでそんなことになるの」

 

 

 

シグレは少し迷ったあと、答えた。

 

 

 

シグレ「我は今、“信仰”ではなく“信頼”で力を取り戻しているらしい」

 

おかゆ「信頼?」

 

シグレ「貴様らに必要とされ、感謝され、人の近くで生きることで力が戻っている」

 

 

 

おかゆがぽかんとする。

 

 

 

すいせいも静かに聞いていた。

 

 

 

シグレ「それは、今の神界にとって異常らしい」

 

 

 

神は崇められる存在。

 

 

 

だがシグレは違う。

 

 

 

一緒に働き、 笑われ、 支え合うことで力を得ている。

 

 

 

それは神界の在り方を壊しかねない。

 

 

 

おかゆ「……なんか」

 

すいせい「うん」

 

おかゆ「めちゃくちゃブラック企業みたいな神界だね?」

 

シグレ「否定できぬ」

 

 

 

思わずシグレも苦笑した。

 

 

 

だが。

 

 

 

すいせいは真面目な顔のままだった。

 

 

 

すいせい「で」

 

シグレ「?」

 

すいせい「もしその神界? の人たちが来たら、あんたどうなるの」

 

 

 

シグレは少し黙る。

 

 

 

そして。

 

 

 

シグレ「……最悪、“消される”」

 

 

 

空気が止まった。

 

 

 

おかゆの笑みが消える。

 

 

 

すいせいも、ゆっくり目を細めた。

 

 

 

数秒の沈黙。

 

 

 

やがて。

 

 

 

すいせい「……はぁ」

 

 

 

深いため息。

 

 

 

シグレ「む」

 

すいせい「バカ」

 

シグレ「何故!?」

 

 

 

突然怒られた。

 

 

 

すいせい「なんで一人で抱えてんのそういうの!」

 

おかゆ「そうそう。仲間外れよくないよ~」

 

 

 

シグレは少し呆然とする。

 

 

 

怒られると思っていなかった。

 

 

 

すいせい「……怖かったんでしょ」

 

 

 

その言葉に。

 

 

 

シグレの目が少し揺れた。

 

 

 

図星だった。

 

 

 

神界に見つかった時。

 

 

 

確かに怖かった。

 

 

 

だが。

 

 

 

おかゆがふっと笑う。

 

 

 

おかゆ「ま、でも」

 

すいせい「うん」

 

おかゆ「今さら神様一人くらい増えても、ホロライブだしねぇ」

 

 

 

シグレ「どういう理屈だ」

 

すいせい「気にしない気にしない」

 

 

 

二人は笑う。

 

 

 

その笑顔を見て。

 

 

 

シグレはようやく少しだけ、肩の力を抜いた。

 

 

 

シグレ「……変な人間達だ」

 

 

 

だが。

 

 

 

悪くなかった。

 

 

 

誰かに秘密を共有するというのは。

 

 

 

思っていたより、 ずっと心が軽くなるものだった。

 

 

 

――To Be Continued.

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