休日。
午前十一時。
シグレは自室である重大な問題に直面していた。
冷蔵庫。
中身。
水。
以上。
シグレ「……」
神妙な顔で冷蔵庫を閉じる。
再び開ける。
水。
閉じる。
開ける。
やはり水。
シグレ「増えておらぬ……」
当たり前である。
その時。
ピンポーン。
シグレ「む?」
玄関を開ける。
そこには――
白銀ノエル「こんにちはー!」
不知火フレア「遊びに来たよー」
ホロライブ三期生コンビだった。
シグレ「何故」
フレア「なんかすいせいから“神様の生活力が終わってる”って聞いて」
ノエル「心配になりまして!」
情報漏洩が止まらない。
シグレ「我のプライバシーはどこへ行った」
フレア「ホロライブにそんなものはない」
シグレ「酷い組織だ」
二人は部屋に上がり込む。
そして。
冷蔵庫を見る。
開ける。
沈黙。
再び閉める。
ノエル「……」
フレア「……」
シグレ「なんだ」
フレアが真顔で言った。
フレア「想像以上だった」
ノエルが目を覆う。
ノエル「これは流石に駄目です」
シグレ「何故だ」
ノエル「何故じゃありません」
◇
数十分後。
近所のスーパー。
シグレ「なるほど……ここが食料神殿」
フレア「スーパーね」
シグレは初めて見るように店内を見回していた。
野菜コーナー。
シグレ「これ全部供物か」
ノエル「違います」
魚コーナー。
シグレ「海神の加護だな」
フレア「違います」
肉コーナー。
シグレ「これは」
ノエル「これは肉です」
先回りされた。
◇
買い物終了後。
シグレ宅。
ノエル「今日は料理を教えます!」
テーブルには材料が並んでいた。
じゃがいも。 玉ねぎ。 にんじん。 肉。
フレア「カレーなら失敗しにくいでしょ」
シグレは腕を組む。
シグレ「ふっ」
何故か自信満々だった。
シグレ「料理など容易い」
十分後。
ノエル「待ってください」
シグレが玉ねぎを切っていた。
だが。
何故か神気をまとっている。
ノエル「包丁にオーラを込めないでください」
シグレ「切れ味が上がる」
危険だった。
さらに。
フレア「待って」
鍋の前。
シグレが両手を掲げている。
シグレ「火よ――」
フレア「コンロ使って」
神パワーで調理しようとしていた。
◇
しかし。
最大の事件はここからだった。
カレーを煮込んでいる最中。
シグレ「ふむ」
鍋を覗く。
シグレ「味見をしてみるか」
一口。
シグレ「……薄いな」
塩を入れる。
ドバッ。
フレア「待て」
さらに。
シグレ「まだ足りぬ」
ドバドバ。
ノエル「待ってください!!」
時すでに遅し。
カレーは海になった。
◇
数十分後。
試食会。
ノエル「いただきます……」
フレア「いただきます……」
二人が恐る恐る食べる。
沈黙。
さらに沈黙。
シグレ「どうだ?」
ノエルが静かに水を飲む。
フレアも水を飲む。
シグレ「何故黙る」
フレア「神様」
シグレ「うむ」
フレア「これ食べると喉が渇く」
ノエル「凄く渇きます」
シグレ「……?」
自分でも食べる。
数秒後。
シグレ「しょっぱ!!!!!!」
遅かった。
◇
結局。
フレアが作り直した。
美味しかった。
非常に美味しかった。
シグレ「……なるほど」
真剣な顔。
フレア「何か学んだ?」
シグレは頷く。
シグレ「料理とは奥深い」
ノエル「うんうん」
シグレ「神の力ではどうにもならぬ」
ノエル「うんうん」
シグレ「そして塩は大量に入れてはならぬ」
フレア「そこからかぁ……」
その時。
ピンポーン。
玄関が鳴る。
開けると。
すいせいだった。
すいせい「あれ?なんかいい匂い――」
テーブルを見る。
鍋を見る。
シグレを見る。
すいせい「……まさか料理した?」
ノエルとフレアが同時に頷く。
すいせいの顔が引きつった。
すいせい「生きてる?」
シグレ「失礼だな」
フレア「危なかったよ」
ノエル「本当に」
何が起きたのか察したすいせいは。
何も聞かなかった。
そして。
夕方まで続いた食事会の結果。
冷蔵庫には食材が入り。
シグレは初めてまともな自炊を覚えた。
なお。
翌日。
事務所で。
おかゆ「神様カレー作ったらしいね〜」
ころね「塩いっぱい入れたって聞いたー!」
ラプラス「ふははは!」
何故か全員に知られていた。
シグレ「何故広まっているのだァ!!」
ホロライブに秘密は存在しない。
元神様は、その事実をまた一つ学ぶことになった。
――To Be Continued.