元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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また懲りずに料理します

休日。

 

午前十一時。

 

 

 

シグレは自室である重大な問題に直面していた。

 

 

 

冷蔵庫。

 

 

 

中身。

 

 

 

水。

 

 

 

以上。

 

 

 

シグレ「……」

 

 

 

神妙な顔で冷蔵庫を閉じる。

 

 

 

再び開ける。

 

 

 

水。

 

 

 

閉じる。

 

 

 

開ける。

 

 

 

やはり水。

 

 

 

シグレ「増えておらぬ……」

 

 

 

当たり前である。

 

 

 

その時。

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

シグレ「む?」

 

 

 

玄関を開ける。

 

 

 

そこには――

 

 

 

白銀ノエル「こんにちはー!」

 

不知火フレア「遊びに来たよー」

 

 

 

ホロライブ三期生コンビだった。

 

 

 

シグレ「何故」

 

フレア「なんかすいせいから“神様の生活力が終わってる”って聞いて」

 

ノエル「心配になりまして!」

 

 

 

情報漏洩が止まらない。

 

 

 

シグレ「我のプライバシーはどこへ行った」

 

フレア「ホロライブにそんなものはない」

 

シグレ「酷い組織だ」

 

 

 

二人は部屋に上がり込む。

 

 

 

そして。

 

 

 

冷蔵庫を見る。

 

 

 

開ける。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

再び閉める。

 

 

 

ノエル「……」

 

フレア「……」

 

 

 

シグレ「なんだ」

 

 

 

フレアが真顔で言った。

 

 

 

フレア「想像以上だった」

 

 

 

ノエルが目を覆う。

 

 

 

ノエル「これは流石に駄目です」

 

 

 

シグレ「何故だ」

 

 

 

ノエル「何故じゃありません」

 

 

 

 

 

 

数十分後。

 

 

 

近所のスーパー。

 

 

 

シグレ「なるほど……ここが食料神殿」

 

フレア「スーパーね」

 

 

 

シグレは初めて見るように店内を見回していた。

 

 

 

野菜コーナー。

 

 

 

シグレ「これ全部供物か」

 

ノエル「違います」

 

 

 

魚コーナー。

 

 

 

シグレ「海神の加護だな」

 

フレア「違います」

 

 

 

肉コーナー。

 

 

 

シグレ「これは」

 

ノエル「これは肉です」

 

 

 

先回りされた。

 

 

 

 

 

 

買い物終了後。

 

 

 

シグレ宅。

 

 

 

ノエル「今日は料理を教えます!」

 

 

 

テーブルには材料が並んでいた。

 

 

 

じゃがいも。 玉ねぎ。 にんじん。 肉。

 

 

 

フレア「カレーなら失敗しにくいでしょ」

 

 

 

シグレは腕を組む。

 

 

 

シグレ「ふっ」

 

 

 

何故か自信満々だった。

 

 

 

シグレ「料理など容易い」

 

 

 

十分後。

 

 

 

ノエル「待ってください」

 

 

 

シグレが玉ねぎを切っていた。

 

 

 

だが。

 

 

 

何故か神気をまとっている。

 

 

 

ノエル「包丁にオーラを込めないでください」

 

シグレ「切れ味が上がる」

 

 

 

危険だった。

 

 

 

さらに。

 

 

 

フレア「待って」

 

 

 

鍋の前。

 

 

 

シグレが両手を掲げている。

 

 

 

シグレ「火よ――」

 

フレア「コンロ使って」

 

 

 

神パワーで調理しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

しかし。

 

 

 

最大の事件はここからだった。

 

 

 

カレーを煮込んでいる最中。

 

 

 

シグレ「ふむ」

 

 

 

鍋を覗く。

 

 

 

シグレ「味見をしてみるか」

 

 

 

一口。

 

 

 

シグレ「……薄いな」

 

 

 

塩を入れる。

 

 

 

ドバッ。

 

 

 

フレア「待て」

 

 

 

さらに。

 

 

 

シグレ「まだ足りぬ」

 

 

 

ドバドバ。

 

 

 

ノエル「待ってください!!」

 

 

 

時すでに遅し。

 

 

 

カレーは海になった。

 

 

 

 

 

 

数十分後。

 

 

 

試食会。

 

 

 

ノエル「いただきます……」

 

フレア「いただきます……」

 

 

 

二人が恐る恐る食べる。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

さらに沈黙。

 

 

 

シグレ「どうだ?」

 

 

 

ノエルが静かに水を飲む。

 

 

 

フレアも水を飲む。

 

 

 

シグレ「何故黙る」

 

 

 

フレア「神様」

 

シグレ「うむ」

 

フレア「これ食べると喉が渇く」

 

 

 

ノエル「凄く渇きます」

 

 

 

シグレ「……?」

 

 

 

自分でも食べる。

 

 

 

数秒後。

 

 

 

シグレ「しょっぱ!!!!!!」

 

 

 

遅かった。

 

 

 

 

 

 

結局。

 

 

 

フレアが作り直した。

 

 

 

美味しかった。

 

 

 

非常に美味しかった。

 

 

 

シグレ「……なるほど」

 

 

 

真剣な顔。

 

 

 

フレア「何か学んだ?」

 

 

 

シグレは頷く。

 

 

 

シグレ「料理とは奥深い」

 

 

 

ノエル「うんうん」

 

 

 

シグレ「神の力ではどうにもならぬ」

 

 

 

ノエル「うんうん」

 

 

 

シグレ「そして塩は大量に入れてはならぬ」

 

 

 

フレア「そこからかぁ……」

 

 

 

その時。

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

玄関が鳴る。

 

 

 

開けると。

 

 

 

すいせいだった。

 

 

 

すいせい「あれ?なんかいい匂い――」

 

 

 

テーブルを見る。

 

 

 

鍋を見る。

 

 

 

シグレを見る。

 

 

 

すいせい「……まさか料理した?」

 

 

 

ノエルとフレアが同時に頷く。

 

 

 

すいせいの顔が引きつった。

 

 

 

すいせい「生きてる?」

 

 

 

シグレ「失礼だな」

 

 

 

フレア「危なかったよ」

 

ノエル「本当に」

 

 

 

何が起きたのか察したすいせいは。

 

 

 

何も聞かなかった。

 

 

 

そして。

 

 

 

夕方まで続いた食事会の結果。

 

 

 

冷蔵庫には食材が入り。

 

 

 

シグレは初めてまともな自炊を覚えた。

 

 

 

なお。

 

 

 

翌日。

 

 

 

事務所で。

 

 

 

おかゆ「神様カレー作ったらしいね〜」

 

ころね「塩いっぱい入れたって聞いたー!」

 

ラプラス「ふははは!」

 

 

 

何故か全員に知られていた。

 

 

 

シグレ「何故広まっているのだァ!!」

 

 

 

ホロライブに秘密は存在しない。

 

 

 

元神様は、その事実をまた一つ学ぶことになった。

 

 

 

――To Be Continued.

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