元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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星の神と彗星

夜。

 

 

 

シグレのアパート。

 

 

 

時刻は二十三時過ぎ。

 

 

 

シグレ「……」

 

 

 

机に向かいながら資料整理をしていた。

 

 

 

最近は雑用だけでなく、簡単な事務仕事も任されるようになっている。

 

 

 

神だった頃には考えられない変化だった。

 

 

 

シグレ「領収書とは、何故こうも複雑なのだ……」

 

 

 

神界には経費精算など無かった。

 

 

 

祈りは無料だった。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

コンコン。

 

 

 

窓が鳴る。

 

 

 

シグレ「む?」

 

 

 

二階の部屋である。

 

 

 

普通ならあり得ない。

 

 

 

嫌な予感しかしない。

 

 

 

シグレはゆっくりとカーテンを開いた。

 

 

 

そこには。

 

 

 

アマノ=セイ「やっほー☆」

 

 

 

星空みたいな銀髪。

 

 

 

派手な装飾。

 

 

 

相変わらずギャルみたいな笑顔。

 

 

 

星の神。

 

 

 

アマノ=セイだった。

 

 

 

シグレ「何故窓」

 

セイ「正面から来たら監視にバレるし?」

 

 

 

ひらひらと手を振る。

 

 

 

窓の外。

 

 

 

普通に宙に浮いていた。

 

 

 

シグレ「怖い」

 

セイ「酷くない?」

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

部屋の中。

 

 

 

セイは勝手に座布団へ座っていた。

 

 

 

セイ「うわマジで生活感ないじゃん」

 

シグレ「放っておけ」

 

 

 

セイは部屋を見回す。

 

 

 

冷蔵庫。

 

 

 

電子レンジ。

 

 

 

スーパーの袋。

 

 

 

神界には無いものばかり。

 

 

 

セイ「なんか普通に人間やってんね」

 

 

 

シグレは少し苦笑する。

 

 

 

シグレ「気付けばな」

 

 

 

しばらく沈黙。

 

 

 

やがてセイが真面目な顔になる。

 

 

 

セイ「監視増えてるよ」

 

 

 

空気が変わった。

 

 

 

シグレも表情を引き締める。

 

 

 

セイ「大神派が本格的に動いてる」

 

シグレ「……そうか」

 

 

 

予想していた。

 

 

 

最近の神使の数。

 

 

 

圧力。

 

 

 

牽制。

 

 

 

全てが増えている。

 

 

 

セイは机に肘をつく。

 

 

 

セイ「ぶっちゃけ神界かなりピリついてる」

 

 

 

軽い口調。

 

 

 

だが内容は重い。

 

 

 

セイ「アンタの力が予想以上に戻ってるから」

 

 

 

シグレは眉をひそめた。

 

 

 

シグレ「未だ全盛期には程遠い」

 

セイ「問題はそこじゃないんだって」

 

 

 

セイが指を立てる。

 

 

 

セイ「信仰じゃなくて信頼」

 

 

 

トン。

 

 

 

シグレの胸を指差す。

 

 

 

セイ「そこ」

 

 

 

神界が恐れているもの。

 

 

 

それは力そのものではない。

 

 

 

その在り方。

 

 

 

神が人間と共に生きることで力を得る。

 

 

 

それが証明されてしまえば。

 

 

 

神界の常識が崩れる。

 

 

 

セイ「だから大神はビビってる」

 

シグレ「……」

 

 

 

セイは苦笑した。

 

 

 

セイ「正直ダサいよね」

 

 

 

神々の中にも不満はある。

 

 

 

セイ自身もその一人だった。

 

 

 

だからこうして危険を冒して会いに来ている。

 

 

 

セイ「でも時間ないんだよなー」

 

シグレ「監視か」

 

セイ「そ」

 

 

 

大神の目。

 

 

 

神使達。

 

 

 

いつまでも隠れていられない。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

二人「?」

 

 

 

インターホン。

 

 

 

深夜である。

 

 

 

シグレ「誰だ」

 

 

 

モニターを見る。

 

 

 

そして固まった。

 

 

 

セイ「誰?」

 

 

 

シグレ「……すいせい」

 

 

 

セイ「は?」

 

 

 

一瞬で空気が凍る。

 

 

 

セイ「なんで!?」

 

シグレ「我に聞くな!」

 

 

 

再び。

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

すいせい『いるんでしょー?』

 

 

 

いる。

 

 

 

ものすごくいる。

 

 

 

セイ「ヤバくない?」

 

シグレ「ヤバい」

 

 

 

セイ「隠れる?」

 

シグレ「どこに」

 

 

 

部屋を見回す。

 

 

 

狭い。

 

 

 

絶望的に狭い。

 

 

 

クローゼット。

 

 

 

いっぱい。

 

 

 

ベッド下。

 

 

 

無理。

 

 

 

逃げ道。

 

 

 

二階。

 

 

 

終わった。

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

すいせい『開けないと合鍵使うよー』

 

 

 

シグレ「何故持っている!?」

 

 

 

もう遅い。

 

 

 

ガチャ。

 

 

 

ドアが開く。

 

 

 

そして。

 

 

 

すいせいが入ってきた。

 

 

 

すいせい「おーい神様、明日の――」

 

 

 

止まる。

 

 

 

視線の先。

 

 

 

知らない女性。

 

 

 

セイ。

 

 

 

セイも固まる。

 

 

 

数秒。

 

 

 

沈黙。

 

 

 

誰も動かない。

 

 

 

そして。

 

 

 

すいせい「……誰?」

 

 

 

セイ「……誰?」

 

 

 

完全同時だった。

 

 

 

シグレ「終わった」

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

気まずい。

 

 

 

とにかく気まずい。

 

 

 

すいせいはソファ。

 

 

 

セイは座布団。

 

 

 

シグレはその間。

 

 

 

なぜか面接みたいになっている。

 

 

 

すいせい「へぇー」

 

 

 

ニコニコしている。

 

 

 

怖い。

 

 

 

すいせい「神様の知り合い?」

 

 

 

セイも営業スマイルだった。

 

 

 

セイ「そーそー☆」

 

 

 

怖い。

 

 

 

セイ「昔からの友達みたいな?」

 

 

 

神界基準なら数百年単位だ。

 

 

 

間違ってはいない。

 

 

 

すいせい「へぇー」

 

 

 

怖い。

 

 

 

セイ「あなたは?」

 

 

 

すいせい「星街すいせい」

 

 

 

セイの眉が少し動く。

 

 

 

もちろん知っている。

 

 

 

神界でも今のシグレの情報は共有されている。

 

 

 

その中心人物だ。

 

 

 

セイ「へぇ〜」

 

 

 

今度はセイが観察する。

 

 

 

すいせいも観察する。

 

 

 

なぜか火花が散っている気がした。

 

 

 

シグレ「やめぬか」

 

 

 

二人「黙ってて」

 

 

 

シグレ「はい」

 

 

 

 

 

 

その後。

 

 

 

なぜか三人で一時間ほど雑談した。

 

 

 

セイは上手く正体を隠し。

 

 

 

すいせいも特に深く追及しなかった。

 

 

 

だが。

 

 

 

帰り際。

 

 

 

玄関で。

 

 

 

セイは一瞬だけ振り返る。

 

 

 

セイ「じゃ、またね」

 

 

 

そして。

 

 

 

シグレだけに聞こえる声で囁いた。

 

 

 

セイ「……気を付けな」

 

 

 

その表情は珍しく真剣だった。

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

姿が消える。

 

 

 

すいせい「……」

 

 

 

静寂。

 

 

 

数秒後。

 

 

 

すいせいがぼそりと呟く。

 

 

 

すいせい「神様」

 

シグレ「なんだ」

 

 

 

すいせいはジト目だった。

 

 

 

すいせい「絶対普通の知り合いじゃないよね?」

 

 

 

シグレ「…………」

 

 

 

図星だった。

 

 

 

すいせい「あとあの人もなんか隠してるでしょ」

 

 

 

鋭い。

 

 

 

鋭すぎる。

 

 

 

シグレは思わず天を仰いだ。

 

 

 

神使にも大神にもバレなかったのに。

 

 

 

どうしてこのアイドルだけこんなに勘が良いのか。

 

 

 

その疑問だけは。

 

 

 

神である彼にも分からなかった。

 

 

 

――To Be Continued.

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