元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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警告と選択

 

 

 

 

最近、妙だった。

 

 

 

ホロライブ事務所。

 

 

 

倉庫エリア。

 

 

 

シグレは段ボールを運びながら眉をひそめていた。

 

 

 

シグレ「……またか」

 

 

 

積み上がっていた箱が傾く。

 

 

 

普通なら崩れる。

 

 

 

だが。

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

見えない何かが支えた。

 

 

 

箱は何事もなかったように元へ戻る。

 

 

 

近くにいたスタッフは気付いていない。

 

 

 

しかしシグレは理解していた。

 

 

 

シグレ「我の力が……増えている」

 

 

 

最近は露骨だった。

 

 

 

掃除をすれば風が起こる。

 

 

 

壊れた機材に触れれば調子が戻る。

 

 

 

疲れた人間を見れば少しだけ元気になる。

 

 

 

そして。

 

 

 

それらは自分が本来持っていなかった力だった。

 

 

 

治癒も風も光も専門外。

 

 

 

なのに使える。

 

 

 

まるで。

 

 

 

他の神々の力の断片が流れ込んできているように。

 

 

 

シグレ「信頼とは、ここまで奇妙なものだったか……」

 

 

 

その時だった。

 

 

 

空気が変わった。

 

 

 

背筋に寒気が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

 

 

人気のない公園。

 

 

 

シグレは呼び出されるようにそこへ来ていた。

 

 

 

誰もいない。

 

 

 

街灯だけが静かに光る。

 

 

 

そして。

 

 

 

そこに立っていた。

 

 

 

神使。

 

 

 

黒い装束。

 

 

 

感情の見えない瞳。

 

 

 

大神直属の使者。

 

 

 

シグレ「……来たか」

 

 

 

神使「アマツカミ=シグレ」

 

 

 

淡々とした声。

 

 

 

まるで事務連絡のようだった。

 

 

 

シグレ「今度は何だ」

 

 

 

神使は一歩前へ出る。

 

 

 

神威が空間を圧迫する。

 

 

 

以前より明らかに本気だった。

 

 

 

神使「大神様より伝言だ」

 

 

 

シグレは黙って聞く。

 

 

 

神使「これ以上力を取り戻すな」

 

 

 

シグレ「断ると言ったら?」

 

 

 

神使「それは自由だ」

 

 

 

即答だった。

 

 

 

だが次の言葉は重かった。

 

 

 

神使「だが、その先は保証できない」

 

 

 

シグレの目が細くなる。

 

 

 

神使は続ける。

 

 

 

神使「今のお前は監視対象に留まっている」

 

 

 

神使「しかし神威の回復が一定値を超えれば話は別だ」

 

 

 

静かな声。

 

 

 

だが内容は明確だった。

 

 

 

神使「その時は神界も手を出さざるを得ない」

 

 

 

シグレ「……」

 

 

 

神使「これは脅しではない」

 

 

 

神使「最後の警告だ」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

神使の背後に巨大な神威が見えた気がした。

 

 

 

大神。

 

 

 

姿はない。

 

 

 

だが確かに意志だけは感じる。

 

 

 

シグレは小さく息を吐いた。

 

 

 

シグレ「随分と買われたものだな」

 

 

 

神使「違う」

 

 

 

初めて感情が混じる。

 

 

 

神使は静かに言った。

 

 

 

神使「恐れられているのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

公園の入口から声がした。

 

 

 

「シグレー?」

 

 

 

聞き覚えのある声。

 

 

 

シグレが振り返る。

 

 

 

そこにいたのは。

 

 

 

すいせい。

 

 

 

おかゆ。

 

 

 

そしてラプラスだった。

 

 

 

シグレ「何故いる」

 

 

 

すいせい「いや最近また一人で抱え込んでるじゃん」

 

 

 

おかゆ「尾行した〜」

 

 

 

シグレ「最低だな!?」

 

 

 

ラプラス「吾輩は面白そうだから来た!」

 

 

 

お前もか。

 

 

 

神使は三人を見る。

 

 

 

そして。

 

 

 

ため息を吐いた。

 

 

 

神使「……時間切れか」

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

姿が消える。

 

 

 

風もなく。

 

 

 

音もなく。

 

 

 

完全に。

 

 

 

ラプラス「うわ消えた!」

 

 

 

おかゆ「やっぱり神界関係?」

 

 

 

すいせいは何も言わない。

 

 

 

ただシグレを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

近くのベンチ。

 

 

 

シグレは事情を話していた。

 

 

 

元神であることは全員知っている。

 

 

 

神界から監視されていることも。

 

 

 

だが。

 

 

 

今回の内容は違った。

 

 

 

神界が本格的に動き始めている。

 

 

 

その事実。

 

 

 

すいせい「……つまり」

 

 

 

おかゆ「力が戻りすぎると」

 

 

 

ラプラス「神界が直接来る?」

 

 

 

シグレは頷く。

 

 

 

重い沈黙。

 

 

 

ラプラスですら珍しく真面目だった。

 

 

 

すいせいが口を開く。

 

 

 

すいせい「それで?」

 

 

 

シグレ「何がだ」

 

 

 

すいせい「神様はどうしたいの」

 

 

 

シグレは言葉に詰まる。

 

 

 

考えたことがなかった。

 

 

 

いや。

 

 

 

考えないようにしていた。

 

 

 

神界へ戻るのか。

 

 

 

戦うのか。

 

 

 

逃げるのか。

 

 

 

どれも違う気がした。

 

 

 

おかゆ「正直さ」

 

 

 

おかゆが笑う。

 

 

 

おかゆ「神様最近楽しそうなんだよね」

 

 

 

シグレ「……」

 

 

 

ラプラスも腕を組む。

 

 

 

ラプラス「吾輩から見てもそうだな」

 

 

 

すいせいは少しだけ笑った。

 

 

 

すいせい「だったら答え簡単じゃん」

 

 

 

シグレは空を見上げた。

 

 

 

昔なら。

 

 

 

神界を見ていただろう。

 

 

 

だが今見ているのは。

 

 

 

人の世界の夜空だった。

 

 

 

シグレ「……我は」

 

 

 

言葉を探す。

 

 

 

そして。

 

 

 

ようやく見つけた。

 

 

 

シグレ「今の居場所を失いたくない」

 

 

 

それが本音だった。

 

 

 

神界ではない。

 

 

 

神の座でもない。

 

 

 

信仰でもない。

 

 

 

ホロライブでの日常。

 

 

 

笑い合う仲間。

 

 

 

働いて。

 

 

 

怒られて。

 

 

 

褒められて。

 

 

 

そんな毎日。

 

 

 

シグレ「だから守る」

 

 

 

静かに言う。

 

 

 

シグレ「神界が来ようが何だろうが」

 

 

 

シグレ「我はここにいる」

 

 

 

その言葉に。

 

 

 

三人は顔を見合わせた。

 

 

 

そして。

 

 

 

すいせいが笑った。

 

 

 

おかゆも笑った。

 

 

 

ラプラスも少しだけ笑った。

 

 

 

誰も大げさなことは言わない。

 

 

 

だが。

 

 

 

その笑顔だけで十分だった。

 

 

 

知らず知らずのうちに。

 

 

 

また少しだけ。

 

 

 

シグレの中の神威が強くなっていたことに。

 

 

 

彼自身はまだ気付いていなかった。

 

 

 

――To Be Continued.

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