元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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初めての3D配信と、神様の奇跡

ホロライブ本社ビル、3Dスタジオ。

 

いつもより張り詰めた空気が漂う中、スタッフたちが慌ただしく走り回っていた。

 

おかゆ「うーん、緊張感すご……ま、今日はすいちゃんの3Dライブだしねぇ」

 

すいせい「ふふん、今日は最高のステージにするからよろしくね!」

 

おかゆ「こっちは裏方ガチ戦場だよ……で、そっちの神様は何やってんの?」

 

シグレ「見てわからぬか。天上より降臨した我が、今まさにこの“コード巻き”なる儀式を行っている最中だ」

 

すいせい「それ、コードをくるくるまとめてるだけだよ。巻きが逆だし」

 

シグレ「……なっ!?」

 

すいせい「でもありがと、手伝ってくれて。正直助かってるよ」

 

おかゆ「うんうん、“神様”がここまで馴染むとはねぇ……って、まだ一週間か」

 

シグレ「日数は関係ない。人の世界における“信頼”は、奇跡によっても積み重ねられるのだ」

 

すいせい「じゃあ今日は、ひとつ奇跡でも起こしてくれる?」

 

シグレ「望むところだ。祈りの波長、受信してみせよう」

 

スタッフ「テスト配信OKです! 本番15分前、スタンバイ入りまーす!」

 

 

 

 

 

 

舞台袖。

 

照明が落ち、カウントダウンが表示される。

あと3分でライブが始まる――そのはずだった。

 

スタッフ「あれ!? メインカメラ、動いてません!!」

 

すいせい「……は?」

 

おかゆ「マジで? ステージの真ん中のカメラってこと? すいちゃんの立ち位置そこだよね?」

 

スタッフ「電源は入ってるはずですけど、角度制御も被写体認識も無反応で……!」

 

すいせい「ちょっと待って、それ直らなかったら今日の配信全部台無しだよ……!」

 

おかゆ「代替カメラは?切り替えプラン!」

 

スタッフ「設定ミスと被る構図で、サブカメラの切り替えもできません!」

 

シグレ「…………」

 

数秒の沈黙ののち、シグレがゆっくりと前に出た。

 

シグレ「下がれ。これは我が“奇跡”の領域だ」

 

おかゆ「え? いや、マジで?」

 

スタッフ「何を……?」

 

シグレ「ただ一つ。祈れ。“映れ”と。“届け”と。“想いを繋げ”と――」

 

彼はゆっくりと手を合わせる。

 

シグレ「――記録を司る神よ、見守る瞳に祝福を与えたまえ……」

 

静寂。

その直後、止まっていたカメラが、カチリと音を立てて起動した。

 

レンズが動き、ステージ上に立つすいせいのシルエットをしっかり捉える。

 

スタッフ「うそ……正常起動!? ジャイロも映像も全部復帰してる!!」

 

おかゆ「マジで奇跡じゃんこれ……てか、電源触ったの誰もいないのに?」

 

すいせい『(インカム)ありがとう。本番、行ってくる』

 

シグレ「……うむ。“願われた”力、今、我が元に届いた」

 

 

 

 

 

 

配信が始まった。

 

モニターには、音楽と共に踊るすいせい。

完璧に同期する照明と音響、綺麗に抜かれるカメラワーク。

 

その舞台を陰で支えるのは、一人の“祈られぬ神”だった。

 

おかゆ「ねぇ、神様。ほんとはまだ、ちょっとだけ神様なんじゃないの?」

 

シグレ「ふ……そうかもしれぬな。“偶然”のような顔をした奇跡。それが我の力だ」

 

おかゆ「なんかかっこいいこと言ってる風だけど、やってることコード整理なんだよなぁ」

 

シグレ「尊いだろう、祈りの根元を支えるのは、こういう地味な働きだ」

 

おかゆ「……うん、まあ、それは……認めるよ」

 

 

 

そして、配信が終わる頃。

 

スタジオの片隅にいたその神様の胸には、確かな“やり遂げた”という感触があった。

 

誰かに感謝されるということ。

誰かの役に立つということ。

それは祈りではなく、もっと近く、もっと温かい。

 

そしてそれは、かつて神であった彼の心を、確かに動かし始めていた。

 

――To Be Continued

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