元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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お疲れ様会は、神様にも優しく

 

 

「かんぱーい!!」

 

乾杯の声が居酒屋に響く。音楽のようなグラスの音が重なり、笑い声と共に宵の街へこぼれていく。

 

 

 

そこは秋葉原駅近くの、ちょっとレトロな雰囲気の居酒屋「ひかり亭」。

 

長テーブルには、配信に関わった面々――すいせい、おかゆ、たまたま居たAZKi、そして神様・シグレの姿があった。

 

 

 

すいせい「いやー、今日マジで最高だったね。唐揚げ!唐揚げ追加いっとこ!」

 

おかゆ「シグレも食べる? これは衣がカリカリのジューシータイプだよ~」

 

シグレ「……“からあげ”とは、なんぞ?」

 

 

 

すいせいとおかゆが同時に「え?」と固まる。

 

 

 

AZKi「まさか……食べたことない?」

 

シグレ「ない。そもそも、神に“食事”の概念は必要なかったゆえ」

 

すいせい「……うわ。なんか急に神様っぽいこと言い出したな」

 

おかゆ「でも今のシグレ、人間として生活してるんだから、ちょっとは興味持った方がいいと思うよ~」

 

 

 

そう言っておかゆが一つ、唐揚げを皿に取って、シグレの前に置いた。

 

 

 

おかゆ「ほら。これは、信仰心じゃなく“愛”がこもった食べ物だから」

 

シグレ「……ならば、いただこう」

 

 

 

シグレは箸を手に取り、唐揚げを口に運ぶ。

噛んだ瞬間――

 

 

 

シグレ「……ッ」

 

すいせい「どう? 美味しいでしょ?」

 

シグレ「これは……天啓か……?」

 

AZKi「いやそれ、あなたが言うとシャレにならないから!」

 

 

 

頬を紅潮させながら次々と料理を口に運ぶシグレに、周囲も笑みを浮かべる。

 

こうして見ると、どこか人間臭くて、ちょっと抜けてて――それでも一生懸命な“新人スタッフ”にしか見えなかった。

 

 

 

すいせい「シグレ、さっき厨房の方見て驚いてたけど、なんかあったの?」

 

シグレ「……鉄でできた鍋が、業火のような熱で赤くなっていた。しかもそれを人が素手で掴むなど……」

 

AZKi「あれは鍋じゃなくて“鉄板”で、素手じゃなくて“ミトン”ってやつをしてるの!」

 

おかゆ「ていうか、どんだけ文明に触れてないんだよ神様!」

 

 

 

そんな笑いが弾ける中、店の奥のテレビでは、今日の配信がニュースに取り上げられていた。

 

《“ホロライブ3Dライブ大成功 裏方の支えも話題に”》というテロップが、短く流れている。

 

 

 

シグレ「……我が働きも、こうして映るのだな」

 

AZKi「たぶん、誰も神様の仕業だとは思ってないけどね」

 

すいせい「でも、みんな気づいてると思う。“誰かが支えてくれた”ってことには」

 

 

 

その言葉に、シグレはふっと目を伏せた。

これが、現代に生きる“祈り”のかたちかもしれないと、思いながら。

 

 

 

そしてふいに、すいせいが言う。

 

 

 

すいせい「……また頼りにしてもいい?」

 

 

 

静かな問いかけに、シグレは力強くうなずいた。

 

 

 

シグレ「もちろんだ。“信頼”というものが、また一つ、我の力となるのならば」

 

おかゆ「神様、かっこいいねぇ~。酔ってる?」

 

シグレ「飲んでなど……ない。が、これは……“酔い”なのか?」

 

AZKi「それは酔ってるよ、完全に」

 

 

 

居酒屋の賑わいの中、シグレはゆっくりとグラスを傾けながら周囲の会話に耳を傾けていた。

「人の笑顔というのは、神々しいものだな……」と、静かに呟く。

 

すいせいがからかうように笑いながら言った。

 

すいせい「シグレ、そんなこと言うとまた“元神様っぽい”って言われちゃうよ?」

 

おかゆもニコニコと続ける。

 

おかゆ「でも、そういうとこがシグレの魅力なんだよね〜」

 

シグレは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに顔を背けた。

 

シグレ「まあ……悪くないかもしれぬな、人間の宴も」

 

その時、居酒屋の奥から店主が声をかけてきた。

店主「お兄さん、もっと飲み物お持ちしましょうか?」

 

シグレは少し考えた後、ゆっくりと答えた。

 

シグレ「そうだな……この“人間の酒”というものを、もっと味わってみたい」

 

周囲のメンバーが笑顔でうなずき、宴はさらに賑やかさを増していく。

居酒屋の灯りが、彼の中に新しい暖かさを灯していた。

 

これからも、ここで過ごす時間が彼の新たな“祈り”となるのだろうと、誰もが感じていた。

 

 

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