元神様、アイドルに仕えます   作:ただの片栗粉

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神様、女子会に放り込まれる

午後のホロライブ事務所。

 

珍しく仕事が早く終わったシグレは、休憩スペースで静かにお茶を飲んでいた。

 

 

 

シグレ「……ふむ。最近ようやく、“急須”という神器の扱いにも慣れてきたな」

 

 

 

湯呑みを傾けながら、満足げに頷く。

 

その時――

 

 

 

ガチャッ!!

 

 

 

宝鐘マリン「見つけた神様ぁぁぁぁ!!」

 

シグレ「ぬおっ!?」

 

 

 

勢いよく入ってきたのは宝鐘マリン。

 

その後ろには、

 

 

 

白銀ノエル「こんにちは〜」

 

桃鈴ねね「やっほー!!」

 

ラプラス・ダークネス「ふははは! 愚民ども!」

 

 

 

という、妙に騒がしいメンバーが揃っていた。

 

 

 

シグレ「……なんだこの混沌は」

 

ラプラス「貴様に言われたくないわ!!」

 

 

 

マリンがずいっと顔を近づける。

 

 

 

マリン「今日はオフ組で買い物行くのよ! で、神様も来なさい!」

 

シグレ「断る」

 

マリン「即答!?」

 

シグレ「我は休日にまで人混みへ赴く趣味はない」

 

ねね「え〜! 絶対面白いのに!」

 

ノエル「みんなで出かけるの、楽しいよ?」

 

 

 

シグレは真顔でお茶を飲む。

 

 

 

シグレ「断固拒否する」

 

 

 

 

 

 

十分後。

 

秋葉原のショッピングモール。

 

 

 

シグレ「何故こうなった……」

 

マリン「諦めなさい。ホロライブに入った時点で運命は決まっていたのよ」

 

ラプラス「ふはは! 連行成功だな!」

 

シグレ「悪魔め……」

 

 

 

人混みを歩きながら、シグレはげんなりしていた。

 

一方、女性陣は完全にテンションが高い。

 

 

 

ねね「ねぇ見て見て! この服かわいくない!?」

 

ノエル「似合いそ〜!」

 

マリン「おっ、いいねぇ。ちょっとアイドル感ある」

 

 

 

シグレは少し後ろを歩きながら呟く。

 

 

 

シグレ「人間の雌たちの群れ行動、情報量が多すぎる……」

 

ラプラス「聞こえるし言い方やばいぞ」

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

 

マリン「よし、次ここ行きますよ!」

 

 

 

連れてこられたのは、女性向け雑貨店。

 

 

 

シグレ「…………」

 

 

 

店内を見回し、彼は固まった。

 

 

 

シグレ「なぜこんなにも“良い香り”が充満しているのだ」

 

ねね「アロマショップだからだよ!」

 

ノエル「リラックス効果があるんだよ〜」

 

シグレ「ほう……つまり結界術の一種か」

 

ラプラス「違うと思うぞ」

 

 

 

マリンはニヤニヤしながらシグレを見る。

 

 

 

マリン「神様って、香水とか使わないの?」

 

シグレ「不要だ。我がいた神界では、常に清浄なる風が――」

 

ねね「つまり体臭ゼロ!?」

 

シグレ「その言い方はやめよ」

 

 

 

すると、店員が試供品を差し出した。

 

 

 

店員「よかったらこちら、お試しどうぞ〜」

 

 

 

シュッ。

 

 

 

シグレ「うおっ!?」

 

 

 

突然香水を吹きかけられ、神様が飛び退く。

 

 

 

ノエル「あははっ、大丈夫だよ!」

 

ラプラス「完全に猫の反応ではないか」

 

マリン「神様、“シュッ”に弱すぎ問題」

 

 

 

シグレは手首の匂いを嗅ぎ、少し驚いた顔をした。

 

 

 

シグレ「……花、か?」

 

ねね「お〜、なんか乙女っぽい反応!」

 

シグレ「む……悪くない香りだ」

 

マリン「えっ、気に入った?」

 

シグレ「春の神域を思い出す。昔、花を司る女神が――」

 

ラプラス「また壮大な話始まったぞ」

 

 

 

 

 

 

さらに数十分後。

 

 

 

フードコート。

 

 

 

シグレ「……疲れた」

 

 

 

テーブルに突っ伏す元神様。

 

その前にはクレープ。

 

 

 

ねね「神様甘いの好きそう!」

 

シグレ「この“生クリーム”なるもの、甘味の暴力ではないか……」

 

 

 

とか言いながら普通に完食している。

 

 

 

ノエル「気に入ってるじゃ〜ん」

 

マリン「胃袋は完全に人間化してるわね」

 

 

 

その時。

 

ラプラスがジュースを取ろうとして、盛大にバランスを崩した。

 

 

 

ラプラス「あっ!?」

 

 

 

ガタン!!

 

 

 

ジュースが宙を舞う。

 

 

 

ねね「うわぁぁ!?」

 

ノエル「危ない!」

 

 

 

だが次の瞬間。

 

シグレが反射的に手を伸ばした。

 

 

 

シグレ「――詠唱破棄...留まれ」

 

 

 

ピタッ。

 

 

 

空中でジュースが静止する。

 

 

 

店内沈黙。

 

 

 

ラプラス「…………」

 

マリン「…………」

 

ねね「…………」

 

 

 

ゆっくりとジュースが元の位置へ戻る。

 

 

 

店員「えっ?」

 

 

 

シグレ「……ふぅ」

 

マリン「いや待って!? 今めちゃくちゃ自然に神秘起こさなかった!?」

 

ノエル「普通に時間止まってたよね!?」

 

ラプラス「な、ななな……!」

 

 

 

シグレは真顔でクレープを食べる。

 

 

 

シグレ「食物を粗末にするのは良くないからな」

 

ねね「基準そこなんだ!?」

 

 

 

ラプラスはしばらく固まっていたが、やがて小さく呟いた。

 

 

 

ラプラス「……貴様、本当に神なのだな」

 

シグレ「今さらか?」

 

ラプラス「いや、普段がポンコツすぎて忘れる」

 

 

 

マリンが吹き出す。

 

 

 

マリン「わかる!! いつも掃除機と戦ってるから!!」

 

ノエル「この前ルンバに負けてたしね〜」

 

シグレ「その話は禁句だ!!」

 

 

 

周囲が笑いに包まれる。

 

 

 

その騒がしさの中で、シグレは少しだけ目を細めた。

 

神だった頃、人とこうして笑い合うことはなかった。

 

崇められ、恐れられ、遠くから祈られるだけだった。

 

だが今は違う。

 

騒がしくて、落ち着かなくて、妙に疲れる。

 

それでも――。

 

 

 

シグレ「……悪くないな」

 

ねね「ん?」

 

シグレ「人間の休日というものも」

 

 

 

その言葉に、マリンがニヤリと笑う。

 

 

 

マリン「でしょ〜? 今度はもっとカオスなメンツで行きますからね!」

 

シグレ「待て。それは不穏な予告ではないか?」

 

ラプラス「ふははは! 逃げられると思うなよ元神!」

 

 

 

騒がしい笑い声が、フードコートに響き渡る。

 

今日もまた、元神様は少しずつ“人間の楽しさ”を覚えていくのだった。

 

 

 

――To Be Continued.

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