一般シャーレ事務員憑依   作:戯け

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書き終わった後にノノミってアビドス外の生徒をアイドルに加えるのかと疑問に思った。とりあえず、アビドス愛が溢れている人だから加えようとしていると自分を無理やり納得させた。


9話 女子高生(推定)と黒ずくめの不審者

 彼女が目を覚ましてから、すでに数分が経っていた。

 

 彼女はこちらを知っている様子だったが、私たちは彼女のことを何ひとつ知らなかった。それを察した先生は、「さっきの戦いの事後処理をしてくるね」と言い残し、静かに部屋を後にした。

 

 残された私たちは簡単な自己紹介を終え、そのまま自然と質問タイムへと移っていった。

 

「キミヨの好きな食べ物はなに?」

 

 最初に声をかけたのはシロコちゃんだった。相変わらず無表情なまま、まっすぐ彼女を見つめている。

 

「強いて言うなら...カステラです。飲み物はいちごミルクですね」

 

 彼女の声はやわらかく、それでいてどこか慎重だった。その返答に、ノノミちゃんがぱっと目を丸くする。

 

「まぁ〜! 見た目に寄らず、可愛いですね」

 

 思わぬ言葉に、キミヨちゃんは戸惑いながらも、照れたように目を伏せた。

 

 ノノミちゃんとシロコちゃんを中心に、質問が次々と投げかけられていく。セリカちゃんやアヤネちゃんも時折会話に加わり、輪は少しずつ広がっていく。私はといえば、少し離れた場所からその様子を静かに観察していた。

 

 言葉の選び方、表情の変化、声のトーン。そうした細部の中に、彼女という人間の輪郭が、少しずつ浮かび上がってくる。

 

「先生から聞いたのですが、キミヨさんは趣味を探しているそうですね。アイドルに興味はあったりしませんか!」

 

 ノノミちゃんが勢いよく身を乗り出す。

 

「え....いや、アイドルはちょっと....そもそも趣味なのか......?」

 

 不意を突かれたような戸惑いが、その表情にあらわれる。しかし、その隙を突くようにシロコちゃんが口を挟んだ。

 

「いや、アイドルよりもロードバイクの方が良い。キミヨもそう思ってる」

 

 唐突な振りに、キミヨはさらに戸惑う。けれど、すぐに表情を引き締め、ことばを訂正した。

 

「いや、ロードバイクもあまり興味が....いえ、やっぱり興味あります。むしろ、やらせてください」

 

 その不自然なまでに必死な軌道修正に、場の空気が一瞬で和らぎ、私以外の全員が笑い出す。

 

 観察していて、わかったことがひとつある。

 

 彼女はクールな見た目で、初対面では近寄りがたい印象を与える。だが、話してみると驚くほど親しみやすく、言葉の端々ににじむ柔らかさが、自然と人との距離を縮めていく。

 

――彼女は、きっと馴染む。ゆっくりと、けれど確実に、この輪の中に。

 

 そう思った瞬間だった。

 

「.....だったらさっきのは、なんだったんだよ....」

 

 思わず、いつもの調子を忘れていた。声にならない声が、唇の端から零れ落ちる。まるで自分自身に問いかけるように。あるいは、誰にも届かないとわかっていて吐いた、ただの独り言。

 

 あの目。あの、冷えた視線が、まだ焼きついて離れない。

 

 ……情けないな。碌に話したこともない相手に、こうも引きずられるなんて。それに、ユメ先輩について聞く雰囲気でもないため、誰にも気づかれぬように、私はそっと目を伏せたが、みんなの声のボリュームはさっきよりも上がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、アビドスはいいなぁ.....。住むなら、やっぱここだよ」

 

 ぽつりと呟きながら、対策委員会から貸与された空き教室の隅に、布を広げて即席の寝床を整える。今日一日の出来事を思い返しながら、心の奥にじんわりと温かさが広がるのを感じた。

 

 人通りが少ないせいか、街のどこからも銃声一つ聞こえてこない静けさが心地よい。それに、あの柴関ラーメンはやはり最高だった——まあ、残念ながら爆破されてしまったけれど。先生の話では、大将は軽傷で済んだらしく、数日程度の入院で退院できる見込みだという。

 

 その後は風紀委員と一戦交えたり、対策委員会に歓迎パーティーを開いてもらったりと、忙しくも充実した時間を過ごした。その甲斐あってか、私は対策委員会から仲間として認められることができた。

 

 正直、黒見セリカや小鳥遊ホシノとは、時間をかけて少しずつ距離を縮めていくしかないと思っていた。だが予想に反して、小鳥遊ホシノ以外のメンバーとは、連絡先を交換するほどの関係にまでなれたのだから、上出来だ。

 

 その後、他のメンバーは先に帰宅し、私は先生と二人でいつも通りの仕事に戻った。そして今、それぞれの部屋へと戻り、私はこうして静かに眠りの準備をしている。

 

 .....やっぱり、アビドスはいい。

 

 久しぶりの教室の床。硬くて冷たいはずなのに、不思議と心地よさを感じるのは、懐かしさのせいだろうか。かつての日々がふと胸によぎる。

 私は静かに横になり、瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 ──それで、相談って?

 

 ホシノは少し伏し目がちに言った。

 

「新入生が二人増えるじゃないですか」

 

 私は頷いた。

 ──そうだね。

 

「でも私、ユメ先輩みたいに愛嬌があるわけでもなくて……むしろ無愛想で。正直、良い先輩として上手くやっていける自信がないんです」

 

 どこか自嘲するような声音だった。けれど、私は思ったままを口にした。

 

 ──でも、ノノミやシロコとは仲良さそうに見えるけど。

 

「それは....」

 ホシノは小さく笑ってから視線を落とした。

 

「二人が入学する前から私と関わってくれてたからですよ。でも今回の二人は違います。もし、私のせいで転校なんてことになったら....もう、みんなに顔向けできません」

 

 ──考えすぎだと思うけどなぁ。

 

「じゃあ、私の性格を変えてみるとか?ユメ先輩みたいにポワポワしてフレンドリーになってみたり.....うへー、って感じで」

 

 ──あのー? ホシノさん?

 

 「我ながら良い案かもしれませんね。なら、帰ったら早速練習だ」

 

 ──ホシノ、ちょっと落ち着いて。一旦冷静になろう。……そういえば、その手に持ってる花束、綺麗だね。もしかして...。

 

「ああ、これですか」

 彼女は手元の花束を見つめながら、ふっと柔らかく微笑んだ。

 

 

「シロコちゃんとノノミちゃんに入学祝いで渡したら、すごく喜んでくれて。それで、今年の新入生にも渡そうかなって思ったんです。……まあ、私みたいなのに渡されても、嬉しいかはわかりませんけどね」

 

 ──ホシノ!!

 

「ひゃっ.....はい!?って、急に大きな声出さないでください、びっくりしました」

 

 ──ホシノは、良い先輩としてやっていけると思うよ。だから、そんなふうに自分を卑下しないでほしい。

 

「.....やっていけますかね、私」

 

 ──俺がホシノの後輩だったら、嬉しすぎて抱きついちゃうよ。

 

「それはやめてほしいです。あと、口調、崩れてますよ」

 

 ──それにさ、あんまり嘘で自分を固めて欲しくないんだ。嘘で塗り固めたら、自分がどこにいるのか、分からなくなっちゃう。ホシノは、そんなことしなくても、もう立派な先輩になってると思うよ。……まあ、これは私の勝手な意見だけど。決めるのはホシノの自由だけどね。

 

「....そこまで言われたら、しょうがないですね。やっぱり、さっきの話は嘘です。....相談に乗ってくれて、ありがとうございました」

 

 ──ホシノがよかったらさ、今度また、みんなで水族館に行こう。

 

「それは....良いですね。楽しみにしてます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──静けさの中、ふと、目が覚めた。

 

 天井にはうっすらと月明かりが滲み、カーテンの隙間から漏れた光が床に淡く影を落としている。辺りは息を潜めたように静まり返っていて、時計の針の音だけが、やけに大きく響いていた。

 

 ゆっくりと身を起こす。古びた教室の床が、わずかにきしむ。寝返りを打っただけで誰かを起こしてしまったような、そんな罪悪感が胸の奥に滲んだ。

 

 ……なぜ、目が覚めたのだろう。

 

 夢を見ていた気がする。だがその記憶は、手のひらから零れ落ちる水のように掴みどころがなく、今やすっかり霧の向こうへと消えていた。ただ、胸の奥に微かな重たさだけが残っている。

 

 私は静かに息を吸う。冷えた夜気が肺に触れ、意識が冴えはじめる。

 

 もう一度まぶたを閉じてみるが、眠気は戻ってこなかった。

 

 ……そのときだった。

 

 「キッショ、なんで居んの?」

 

 思わぬ来客に口を衝いて出た。目を開けた瞬間、そこにいたのは──さっきまで確かにいなかったはずの、黒服だった。

 

「おや、起きていたのですか。寝ていると思っていたのですが」

 

「さも当然のように寝込みを襲ってくるなよ」

 

「襲うだなんて人聞きが悪いですね。ただ、あなたに少し興味があるだけです。なので、少し血を頂こうかと思っていただけですよ」

 

 私は深くため息をついた。

 

「やっぱお前キモいな。そういうのは、あんたが熱中してる先生にでもやってくれ。で、要件が“血抜く”だけだったらマジでグーパンするぞ」

 

「おぉ、それは怖い。ですが、要件はこちらです」

 

 黒服が懐から取り出したのは、一丁の銃だった。

 

「ようやく出来たか。おせーよ仕事」

 

「そう言わないでください。これでも急いで作ったのですよ。それよりも、今まで銃を持っていなかったことのほうが驚きです。知っていますか?キヴォトスで銃を持たない人間は、裸で歩いている人と同じくらい恥ずかしい行為ですよ」

 

「...お前、俺が露出狂って言いたいのか?よし、分かった。そんなに殴られたいなら、殴ってやるよ。とりあえず百発な」

 

「困った人ですね。生徒の前みたいに、もっとクールにいきましょう」

 

「やだよ、面倒くさい。お前の前でやりたくねーし。....で、要件は済んだろ?とっとと自分のアジトに帰れ」

 

「いえ、まだ要件は残っています。良かったですね、追加で。あと、これも」

 

 黒服はスマートフォンと充電ケーブルを差し出してきた。

 

「何これ。スマホなら自分の持ってるけど」

 

「このスマートフォンを充電する時と同じように繋ぐとあなたの体から神秘を抽出できます。その結果、あなたの体験、または記憶が端末に映されます。今、あなたが最も欲しているもの....そういう代物です」

 

「...マジか、黒服。見直したわ」

 

「今後の情報交換やデータの提供は、こちらを使ってください」

 

「それはいいけど....こっちからもバンバン頼むからな」

 

「ええ、構いませんとも。ククッ....では、私はこれで」

 

 そう言い残して、黒服は気配すら残さず闇へと消えた。

 

 教室の静寂が、再び戻ってくる。夜明けはまだ先だ。

 

「....二度寝と洒落込みますか」

 

 私はそう呟き、布の下へと潜り込んだ。

 

 

 




本当は歓迎会などの描写を入れて仲良くなる描写を入れたかった...でも、それだと話が全く進まない...。
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