ハリーポッターと灰色の貴族   作:ヨシフ書記長

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お久しぶりです
久しぶりにハリーポッターを見て描きたくなりました
よろしくお願いします


原作開始前
知られざる訪問者


 

ヌルメンガード城 ――その地下、封印の牢獄ー

 

氷のように冷えた石造りの廊下。空気には魔力が染み込み、誰もが言葉を飲む重さがあった。その中を、ただ一人――銀と黒の外套をまとった男が、無言で進む。

 

アントワーヌ・ド・ポッター。

その名が記録に現れるのは、実に数十年ぶりだった。

足元の靴音が、長く閉ざされた空間に響く。地下第七層の最奥。そこに封じられているのは――かつて世界を揺るがせた闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルド。

鉄格子の向こう、蝋のような白い肌の老人がゆっくりと顔を上げた。

 

「今日が…出所日か?」

 

静かな、しかし底に何かを秘めた声。

アントワーヌは足を止め、鉄格子越しにゆっくりと目を合わせた。

 

「久しいな、ゲラート。やはり私が来ることを未来視していたかな?」

 

その声に、グリンデルバルドの目が微かに細まった。喜びでも、皮肉でもない、まさしく「旧友」に向ける色だった。

 

「その名を、今の時代に口にする者は、もうほとんどいない……お前ほどの男が、どうしてまた、外に出ようと思った?」

「…借りがある。血縁のそれも残された最後の一人だ」

 

グリンデルバルドは、笑った。喉の奥から掠れるような笑い声が、牢獄の冷気に溶けた。

 

「血か……君がそれを口にするとはな。ポッターの名も、ずいぶんとおとなしくなったものだ。その子は、“英雄”にでも仕立て上げられる運命か?」

アントワーヌは答えない。ただ、深く一歩、鉄格子に近づいた。

「君の時代はもう終わった。私は、君の過去を継ぐために出るのではない。ただ、“未来”を守るために出るのだよ」

 

グリンデルバルドの顔に、影のような笑みが浮かんだ。

 

「君は昔からそうだ、アントワーヌ。理想の仮面をかぶった、“誇り高き現実主義者”だった。その矛盾が、今の君を面白い男にしている」

 

鉄格子の内と外、交差する視線…。そして、アントワーヌはコートの襟を立て、踵を返した。

 

「生きているうちに、また会うことはないだろうな」

「それはどうかな?」

 

牢の中から、再びグリンデルバルドの声が追った。 「歴史は回る。――君の“未来”が、君の“過去”を許してくれるとは限らないぞ」

 

だが、それに返事はなかった。

重厚な扉が音を立てて閉まり、静寂が再びヌルメンガードに満ちる。

そして――その男は外へ出た。“塵に還った英雄たち”の時代を越えて、再び世界の表舞台へ。

 

プリベット通り四番地ーダーズリー家ー

 

蛇が喋ったんだ。声が聞こえたんだ。それに、あのガラス……勝手に消えて、ダドリーが水槽に落ちて……。僕はやっぱり普通じゃないのかもしれない…。

 

「階段の下に入ってなさい!今すぐよ!」

 

ペチュニア叔母の声は怒鳴るというより、恐怖に震えていた。ハリーは何も言えず、ただ小さくうなずいて扉を閉める。鼻を擦り、埃とペンキの匂いが混ざった“自分の部屋”へ。冷たくて、狭くて、暗くて。

 

――どうして、いつもこんなことになるんだろう。

 

ハリーは、ただ…「変なことをする奴」として押し込められたままだ。どこにも“自分”を知ってくれる人はいない。そう思っていた…その夜のことだった。

 

玄関のチャイムが不意に鳴る。

 

「こんな時間に……?」

 

ダドリーが一番に顔をしかめ、ペチュニアが怯えた目でバーノンを見た。

 

「セールスマンかしら?……いや、こんな夜更けに? ねぇ、あなた……」

 

玄関を開けると、夜風がひやりと吹き込んだ。

 

そこに立っていたのは――銀髪をきっちりとオールバックに撫でつけ、身にまとうのは三つ揃いの漆黒のスーツの男。白いシャツの胸元には控えめなタイピン、金の懐中時計がチラリと見える。鋭い眼差しには知性と深い疲労が共存しており、その所作には、まるで何世紀を生きた者にしか得られない威厳があった。

 

「Monsieur Dursley。お初にお目にかかる。私はアントワーヌ・ド・ポッター――おそらく、貴殿の常識では分類できない部類の者でございましょう」

「は? 誰だ貴様!」

 

ペチュニアが奥から現れた瞬間、彼女の顔色は蒼白に変わった。

 

「……あなたは……」ペチュニアの声が震えた。 「――久しいな、ペチュニア・エヴァンズ。いや、今はダーズリー婦人だったか」

 

一瞬で時間が巻き戻る。リリーの結婚式。白い礼服に身を包み、どこか浮世離れした存在感を持っていたあの男。しかし――その頃から何十年も経っているはずなのに…目の前の彼は、全く老けていなかった。

 

「あ、あなたは…アントニオ?いや…?」

「アントワーヌだよ。ジェームズの大叔父にあたる」

「ジェームズ?あのジェームズ・ポッターの大叔父なのか!あのイカれた!」

 

バーノンが怒鳴りつける。

Oui, chère cousine(そうだ、いとこよ)。あなたから見れば、私は親戚だ。長らく不在にしていたがね…」

 

その声は、まるで長い時の底から響いてきたようだった。家の中の空気が急に冷たくなり、窓ガラスがピキッと音を立てた。

 

「我が一族の子が、この様な犬小屋のような場所で育てられているとはな。C’est une honte.(実に不愉快だな)

 

その背後の扉からはダーズリー家の前にピカピカに磨かれた漆黒のロールスロイス・ファントムが停まっているのが見えた。まるで映画の中からそのまま飛び出してきたような代物。

アントワーヌは片手を背中に回し、もう片手に小ぶりな箱を持っていた。

 

「ダドリー君に甘い物はあまり良くないそうだが…今日は例外にしよう」

 

ダドリーの太った身体を見ながらそう言うと、小さな手提げ箱を手渡す。中には一流のパティシエが仕立てたようなチョコレートケーキ。ダドリーは既に玄関先の車とケーキに釘付けになっていた。

 

「おい、ミスターだれか知らんがな…!一体何の用だ」

 

バーノン・ダーズリーが唸るように割り込んできた。

 

「簡単なことだ。甥を引き取りに来た。いや…ハリー・ポッターを迎えに来た」

「なんだって?」

「彼の保護者としての資格と権利を、正式に回復された。今日付けでね」

「馬鹿馬鹿しい!こっちは十年も――」

「それについては感謝しているとも、ミスター・ダーズリー。フランなら持ち合わせているが、ポンドはまだ使い慣れていなくてね……」

 

アントワーヌは、懐から黒いベルベットの袋を取り出した。中でカラン、と鈍い金属音がする。

 

「仕方ないから、これを“養育費”として渡そう。――20Kの金貨が13枚。十分かね?」

袋が机の上に置かれた瞬間、空気が変わった。重い金貨がじゃらりと滑り出て、バーノンの目が据わった。

「こ……これは、本物の……金か?」

「イギリス製じゃない。スイスで造らせた記念鋳造金貨だ。換金には少々手間がかかるが、君のような聡明な男なら問題ないだろう?」

 

ペチュニアが青ざめ、ダドリーが口をポカンと開けたまま呆然とする中、アントワーヌは一歩、階段の下の扉の前に立った。

 

「ハリー? 開けてもらえるかね?」

 

小さなノックの後――扉がゆっくりと開いた。そこには痩せた体に古びた服をまとった、小さな少年。まだ眼鏡もゆがみ、髪もボサボサな少年――だが、その緑色の目の奥に宿るものを見て、アントワーヌは微かに笑った。

ハリー・ポッターは、まるで夢の中にいるような気分だった。

男――アントワーヌと名乗ったその人物は、階段下の扉の前にひざをつき、少年と同じ目線で言った。

 

「遅れてすまなかった、ハリー。私の名は――アントワーヌ・ポッター。君から見れば、大叔父にあたる。私は君を迎えに来た」

 

ハリーは言葉が出なかった。誰にもそんなことを言われたことがなかった。ただ、「変な目だ」とか、「不気味だ」とか。

アントワーヌの指が、柔らかく少年の髪に触れた。

 

「私はジェームズの叔父、つまり君の“大叔父”にあたる。私は魔法使いだ。魔法界では、君の名はすでに伝説だ。だがそれ以上に、君が今日まで“無事でいた”ということに、私はただ……感謝したい」

 

「魔法界……?」ハリーは思わず問い返した。

 

「そうだ。君がガラスを“消した”ことや、蛇と話したこと。あれは“変なこと”じゃない、ハリー。君が持って生まれた力のほんの一部だ」

 

その言葉を聞いた瞬間、ハリーの心に、何かが灯った。

どこかでいつも感じていた違和感――自分が「ここ」にいるべきじゃないのではという想い。それが、ほんの少しだけ肯定された気がした。

 

「……僕、やっぱり……普通じゃないんですね」

「それは誇っていいことだ。普通とは“無難”の代名詞でしかない。君は選ばれた存在だ。だからこそ、今ここにいる」

 

アントワーヌはゆっくりと立ち上がり、ペチュニアとバーノンを一瞥した。

 

「法的手続きは、すでに行政で済ませてある。これ以上あなた方に、ハリーの責任を押し付ける必要はない。あとは、彼の意思次第だ」

「い、意思……!? こんなガキに何が――!」

「僕は出て行くよ」

 

それまで黙っていたハリーが、ぽつりと呟いた。

ダーズリー一家が揃って振り返る。

 

「僕、行きます。ここにいるのは…もういやだ」

 

アントワーヌはにっこりと笑い、ローブの内側から杖を取り出した。漆黒の樫の木に銀の細工が施された杖だった。

 

「荷物はあるかい?」

「……ありません」

 

一瞬だけ、アントワーヌの目に影が落ちた。しかしそれをすぐに隠すようにして、彼は手首を軽く回した。

杖先が宙を切ると、ふわりとハリーの体が軽く浮き、次の瞬間には埃まみれだった服がパリッとしたシャツとトラウザーズに変わっていた。まるで“魔法”のように――いや、正真正銘の魔法だった。

 

「さぁ、時間を無駄にするわけにはいかない」

 

ハリーの胸が高鳴る。

誰かが、彼のことをちゃんと見てくれている。 誰かが、彼をどこかへ“導いて”くれる。それだけで、長い長いトンネルの中に射す光のようだった。

 

アントワーヌが玄関のドアを開けると、夜風が再び…二人の間を吹き抜けた。アントワーヌの背後、ロールスロイスの扉がまるで招かれるように勝手に開き、彼がハリーを促す。

 

「行こうか、ハリー。世界はまだ、君の名前を覚えている」

 

ハリーは一瞬きょとんとした後、照れくさそうに笑った。

そしてその日――

ハリー・ポッターは、生まれて初めて“家”と呼べる場所を離れ、“魔法の世界”への第一歩を踏み出した。

 

扉が閉まった後、家の中は重苦しい沈黙に包まれた。

だが、その静けさはすぐにバーノンの苛立ちの声によって破られた。

 

「ふん!やっと出ていったか!せいせいするな!」

 

バーノン・ダーズリーはリビングへと乱暴に戻り、ソファにどかりと腰を下ろした。

 

「まったく、魔法使いなんて……馬鹿馬鹿しいにもほどがある!気味が悪いったらありゃしない!」

リモコンを叩きつけるようにしてテレビのスイッチを入れると、ちょうどニュースが始まった。

 

『本日のニュースです。ナチス収容所の元看守として戦後に収監されていた、アントワーヌ・ド・ポッター氏が本日、正式に出所しました――』

 

画面に映し出されたのは、白黒の古い映像。かつてのヨーロッパ戦線で撮影されたもので、軍服を着た若き日のアントワーヌが無表情で列を見つめている。

 

バーノンは、あんぐりと口を開けたまま…その映像に見入った。

 

「ま、まさか…あの男か……」

 

呆然としたまま、流れる映像じっと見つめる。

まさか、あの夜に現れた完璧な英国紳士が、ニュースに出てくる“戦犯”だとは夢にも思っていなかったのだ。

 

背後では、ペチュニアが小さくため息をついた。

そっとテレビから目を逸らしながら、か細い声で呟く。

 

「……見なかったことにしましょう。あの人とは関わらない方がいいわ」

 

ダドリーは、まだ口を半開きにしたまま、テレビ画面の中のアントワーヌを見つめ続けていた。

自分にケーキをくれた男が、ニュースに出るような“とんでもない過去”を持っていたことを、理解しきれずにいるようだった。

 

その夜、ダーズリー家は…何か取り返しのつかない“別世界”に触れてしまったかのように、ひどく冷え切っていた。

 

 





一応キャラ設定資料

アントワーヌ・ド・ポッター

基本情報
ジェームズ・ポッター(ハリーの父)の大叔父
•フランスの魔法貴族家系出身(ポッター 一族のフランス分家)
•マグルから見ると、元貴族の大地主の資産家として知られる
•イギリスにも大きな邸宅を所有、株・貴金属・宝石・外貨など莫大な資産家、多数の特許や発明品の権利を所有

職業・能力
•魔導具の天才発明家
•タイムターナー研究の第一人者
•シリウスの空飛ぶバイクの製作者
•死の秘宝のうち、特に蘇りの石の研究に深く関与

経歴・背景
•若き日にゲラート・グリンデルバルドの右腕の様な存在だったが、重大犯罪には非加担(異名として、黒の副官、魔導公爵、メフィストフェレスがある)
・ホグワーツ・レガシーの主人公(レガ主)と対決し、敗北。捕縛される。その際…逆転時計の暴走事故が発生し、レガ主は行方不明になる
•ダンブルドアとグリンデルバルドの対決後、副官扱いで魔法牢獄に収監(有期刑、仮釈放も多数されている)
•マグルから見れば、ナチス協力者とされていたが、証拠不十分で仮釈放多数されたという事になってる(シリウス・ブラックが殺人鬼として逮捕状が出ていたのと同じような感じ)
•ニコラス・フラメルに師事し、不老不死の研究中に事故で吸血鬼の血を注入される。
•吸血鬼の血の影響で老化が非常に遅くなってしまった
「怪物にもなり損ねた」と本人談

人物像
•紳士的で上流階級の洗練された言葉遣い(フランス語混じり)
•銀髪オールバック、スリーピーススーツのクラシックな英国紳士風
•愛煙家(シガレットパイプ使用)、酒はシャンパン・コニャック・特にグルジア産ワイン好み
•イギリス王室からナイトの称号を授与されている
•世界各地に別荘や土地を所有している

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