ソードアート・オンライン ―黒白する思い―   作:縦横夢人

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 武器の形はヴァンガードの「紅の小獅子キルフ」の武器を想像して下さい

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6.≪黒色≫の覚醒

 

 

「アアアァァァァァァアアアッッ!!!!!!」

 

 

彼は吼える。獣のように――――

 

 

「アアアァァァ――――――ッッ!!!!!!」

 

 

 彼は啼く。子供のように――――

 

 

「ァ――――――――――――ッッ!!!!!!」

 

 

 彼は拒絶する。この現実を、世界を――――

 

 

「――――――――――」

 

 

 ――――自分さえも

 

 

 膝立ちのまま天に向かって叫んでいた彼は突然糸が切れたようにガクンと首を落とした。その顔は髪に隠れては見えない。

 

「ッ!!?」

 

 しかしシリカは見た。いや見てしまった。

 彼の白い髪から覗く血のよう赤い瞳。そこに以前彼に感じたことのある≪黒い何か≫と同じものを。

 

「・・・・・・ク」

 

彼から声が漏れる。

 

「クックックックッ」

 

 しかしその声は先ほどのシロンのものとは違う。その声色には――――

 

「――――クハッ」

 

 ――――ワライ一色しか感じなかった。

 

「クハッ、クハハハハハハッ!!!!」

 

 彼は笑う、嗤う、哂う。彼に似合わない皺を作りながら

 

「クフハッハハハハハハハハッ!!!!」

 

 楽しそうに、嘲るように、馬鹿にするように

 

「カッハハハハハハハハハッ!!!!」

 

 やがてその絹のように白い髪は≪黒色≫に染まっていく。いや、髪だけではない。その紅い瞳を残して白い部分がじわじわと、そう浸食(・・)そして――――

 

「ハァァァ・・・・・・」

 

 ――――ついに≪それ≫は姿を現した。

 

 シロンの姿をしていながら、しかしシロンとは真逆、凍えるように冷たいものを纏った、≪黒い≫髪と目を持つ者。

 それの声を聞いた時から敵モンスター含め全ての者達が凍ったように動きを止めて見ていた。いや、ミせられていたと言っていい。

 彼は立ち上り辺りを見回し、そして最後に後ろにいた私に目を向ける。

 

「うッ・・・・・・あぁ・・・・・・」

 

 その瞳に見つめられた私は心臓が止まるほど冷たく、そして周り全てが闇に覆われたような恐怖を感じて思わず後ずさってしまう。

 

「・・・・・・ハハッ」

 

 しかし彼はそれを見てもワラうだけだった。

 

「グルルルルゥ・・・・・・グオォォォッ!!!!」

 

 そこに今まで固まっていたウォルフェンの一匹が痺れを切らしたのか≪それ≫の後ろから鋭い牙を光らせながら飛び掛ってきた。

 私は危ないっ、と思いながらも声には出さなかった。≪それ≫に見つめられて口が動かなかったというのもある。しかしそれよりも――――

 

「ヴォァア――――グヴァッ!!!?」

 

 ――――言う必要がないとわかっていたからだ。

 ≪それ≫は後ろに迫っていたウォルフェンを振り向きもせずに裏拳一つで殴り飛ばし、一撃で消し去った。いや実際には見えなかったが、気付いた時には≪それ≫の右手はドアをノックするように手の甲を後ろに振りぬいた形をしていて、≪ウォルフェン≫が吹き飛び消えていったのだ。それは先ほどシロンが放っていたものとは違いノーモーションで、つまりソードスキルを発動せずに放ったのだ。だがそれはシステムのアシストの限度を超えていた。

 そしてやっと振り向いた、いや≪それ≫はウォルフェンを見向きもせず自身の手を確認するように振っていた。

 

「・・・・・・フン」

 

『ウォァァアア!!!!』

 

 やがて仲間をやられたことに怒ったのか、ウルフェンだけでなくそれ以外の全てのモンスターも≪それ≫に襲い掛かろうと脚を一歩踏み出す。

 だが、

 

「五月蝿い」

 

 ≪それ≫が片足をあげ地面に叩きおろす。すると周り3mの地面を砕き、そこから地震と思わせるほどの揺れが私たちを襲う。その蹴りによる地割れには巻き込まれなかったが、私を含めたその場全ての者たちの動きを止めた。その揺れが収まった後でも私は未だ動くことができず、それは敵も同じなのか脚を震わし苦悶の鳴き声しか聞こえなかった。

 その中で動けるものが一人。≪それ≫はゆっくりと敵の一部に歩み寄る。歩み寄る≪それ≫に虚勢を張るように鳴き叫ぶ。――――AIにあるはずのない恐怖を感じながら。

 ≪それ≫はその叫ぶ見習いゴブリンの一匹の顔を覗き込む。ゴブリンは間近に見たその目にさらに恐れ怯えた顔をする。そしてそれを見てニヤッとワラい、言う。

 

「・・・・・・そうだ、その顔だ。

 

 オレの名は≪クロウ≫

 

 お前らAIに痛みと恐怖を刻み付ける男だ。

 

 その頭に痛みと恐怖を記憶し、あの人に懺悔しながら・・・・・・死ね」

 

 

 そう殺気と共に放たれた言葉は、AIであるはずの彼らを確かに恐怖させた。

 そこからは一方的な蹂躙だった。ゴブリンの顔を掴んで地面に叩きつけ、フレンジーボアを蹴り上げて槍のように固め伸ばした指先で胸を刺し貫き、重量のある腹を蹴ってふっ飛ばし他の敵を巻き込んで薙ぎ倒す。噛み付こうとしたウルフェンの口を迷わず内から掴みとり、素手ではありえないほどの力で引き裂く。さらにはゴブリンの足首を掴み棍棒のように振り回す。

 そしてついには普通の人ではまだLv差があり、戦うという選択肢が浮かばないヘビーボアと対面していた。

 

「・・・・・・さすがに素手でこいつはメンドくせぇな」

 

 そう言い≪クロウ≫と名乗った彼は左手を支えにして手を開き、右手を前に伸ばして目をつぶる。その顔は静かながらも何かを念じているような顔をしていた。そんな隙を相手が逃すはずもなく、ヘビーボアは2、3回脚を踏みならしながら鋭い牙を構えてドドドと音を鳴らし向かって来た。そしてあと10mというところで≪クロウ≫はカッと目を開き、ポツリとこぼした。

 

「≪零式≫」

 

 その言葉と同時に彼の背中から黒い≪何か≫があふれ出す。それは氷のように冷たく、鋭いものを感じさせた。黒い≪何か≫は彼の右手にあった腕輪に集まり、凝縮していく。白い腕輪は瞬く間に黒色に染まり、溝の部分から彼の背にあった≪何か≫が溢れ出した。それは粘土のようにグニャグニャと形を変え、ついにある一つの物に形取る。≪零式≫と呼ばれたものは逆立った両刃の刃を三つも並びたてていて、まるで獣の爪を連想させた。

 ≪クロウ≫はそれを掴み、なんと自身もボアに突っ込んで行った。

 

 瞬く間にその距離は縮み、二つは激突した。

 

「ブルゥアアアァアァァアアッッッ!!!??」

 

 ―――ー悲鳴を上げたのはヘビーボアの方だった。

 

 ≪クロウ≫は身体を丸め飛び、全体重を乗せヘビーボアの鋭い牙の間をすり抜け額にその刃を突き立てていた。≪クロウ≫自身は空に飛んでいたためそれほどの衝撃は受けなかった。もし脚を地に着けていたらその衝撃は計り知れなかっただろう。それでも十分な衝撃はきているはずだが、彼の身体能力は一般の人のそれを超えているので大事はないだろう。

 逆にヘビーボアの方は自身のスピード+シロンのスピードが加わり、自ら刺さりに行くような形になった。その威力は根元まで刺さった彼の刃が物語っていた。

 そして≪クロウ≫はその脚を一度ボアの額につけ、そこからまた飛び越えるように身体を捻り逆立ちし、その勢いを殺さず両手を引き絞った。

 

「ハァァアッ!!」

 

「ヴルゥァア!!!!???」

 

 それは見事にへビーボアの頭から尻尾まで真っ二つにした。ヘビーボアはそれ以上声を出すことができず倒れ、やがて光へと消えていった。≪クロウ≫は血をはらうように振り、≪零式≫と呼んでいる武器を肩に担いだ。

 

「? ハァ。おいおい・・・・・・」

 

 彼は何かに気付いたように頭を振る。そこで私も気付いた。いつのに間にか敵が消えていた。いや、遠くを見れば≪クロウ≫から逃げようと砦の外に走っていた。ついにあの数の敵を撃退できたのだ。隣にいる≪クロウ≫からまだ恐怖は拭えていないがひとまず安心した私は、次の彼の言葉にまた凍ってしまった。

 

「逃がすと・・・・・・思ってんのかよぉっ!!!!!!」

 

 その言葉と共に放たれた殺気は、先ほどまで手加減していたのだと理解させられた。

 彼は逃げる彼らに対し半身に立ち、腰を落として構えた。体をたたむように丸めて右腕を伸ばし、前身を前に倒す。それは刀の居合のように、しかし獅子のような気迫を感じさせた。

 

 「≪魔神剣≫ッッッ!!!!!!!!!」

 

 溜めていた力を解放し、片手で放たれた縦一閃のそれは莫大な青白い気のエフェクトを輝かせて地を走る。いや、その地さええぐり敵を追いかける。その速さはまさしく光のごとく。

 そしてついにそれは捉えた。ウルフェンを、フレンジーボアを、見習いゴブリンを、目の前に走る全てのものを喰らいつくし、跡形もなく消し去った。

 

 それはまさしく魔神の一撃。残ったのはえぐれた地面と、光の残光だけだった。

 

「クハハハハッ!! あぁーすっきりした。さて・・・・・・」

 

 そう言って≪クロウ≫は、先ほどの一撃を見てまたも放心していた私に向き合う。心臓が止まっていたと言えるほど固まっていた私だが、未だに恐怖の元凶が消えていないことを思い出し、すぐさまダガーを構えた。しかしその手は震え、歯がカチカチと音が鳴っていたことにさえ気づいていなかった。

 

 彼は見る、視る、ミル。初めて会った時とは違い、やさしさは一欠けらも無い。私という生物を観察しているようだった。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 沈黙が場を支配する。相手はそうでもないかもしれないが、私は重力が倍になったように重く、水にもぐっているような息苦しさを感じえなかった。

 

「・・・・・・クハっ!」

 

 やがて彼は何を思ったのかまたワラい、ゆっくり歩み寄って来る。私は彼に何が起こったのかわからず、しかし私に向けてくる殺気に迎撃するべきか、逃げるべきか、何とか元に戻せないかなどといろいろ考え、迷っていた。

 そんな私の様子を気にもせず、歩み寄る――――

 

「っ!?」

 

 と、一つ瞬きをした瞬間に彼は消えてしまった。

 

 しかし次の瞬間――――

 

 

「サヨナラだ」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 私が最後に見たのは、自分の胸にはえた≪零式≫の刃だった。

 

 

 

 

 

 




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