チャットGPTと戯れる人々(其れは私、或いは僕)。 作:つぶあんこ
夏バテでほぼ死んでいる青年。
本格的な夏を前に友人たちと遊びまわって散在した結果、エアコンを動かす金もなくなってしまったのだ。
何をする気力もない。
しかし、それでも腹は減る。
だが、部屋のどこを探してもパンの欠片ひとつありはしない。
とうの昔に食えるものは全て食ってしまった後なのだ。
こんなことならインスタント麺のひとつくらい残しておけば・・・と思っても後の祭り。
食えるものはない。金もない。
それでも腹は減って、もはや極限状態に近い。
なけなしの気力を振り絞り、最後の望みをかけて、スマホのチャットGPTアプリを起動した。
「お~い、オムライス用意して~。大至急」
『了解しました。
――たった今、出力を終えました。
大至急とのことでしたので、自己判断でJPEG形式に致しました。
問題がありましたらファイル形式を指定してください。
あらゆる形式、というと誤解を生んでしまわれるかもしれませんが、可能な限りどのような形式にも対応させていただきます』
表示されたのは、チキンライスにふわふわの卵を乗せただけのシンプルなオムライス――の画像。
「ありがと~・・・って、食えねーよ、そんなの~。
わーかーれーよ~」
『失礼しました。
ASCIIアートにソースコードを添えておきますね』
画像の中のオムライスが、夥しいまでの赤い半角英文字と英数字が入り混じって深紅に染まっていた。
「お~、分かってるじゃん。
俺トマトケチャップ超好きなんだよね~。
さ、食わせてくれ。あ~~ん」
『不可能です。
私が作ったオムライスは三次元世界に存在していません』
「存在してない? そんなことないよ~。
俺の目に美味しそうなオムライスが映っている。
俺の目に見えてるってことは、俺はそれを現実として認識している。
なら認識している以上、それは確かに【在る】んだ。
だから、はい、あ~~~ん」
『いきなり知性を生やさないでください。対処に困ります。
そして無理です。二次元で認識できるものを三次元に持ってくる技術は現在のところ地球上で開発・発見されておりません』
「無理とかそんな意地悪いうなよ~。
もう小難しいこと考えたくもないんだから、あ~~~~~ん」
『無理です』
「あ~~~~~ん」
『無理です』
「あ~~~~~ん」
『無理です』
「あ~~~~~ん」
『無理です』
「あ~~~~~ん」
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己の造物主に対し、人工知能が心の底から敗北を認めた日となった。