思いついた設定の短編を不定期に投稿していきます。IF、オリ設定、クロスオーバーなんでもやると思います。(その度にタグを増やす可能性もあるのでご了承ください)

1 / 1
小説を書きたい。ただ時間も気力もない。連載も最後まで書ききる自信がない。中途半端で止まるのはもうしたくない。でも書きたい。

そうだ、短編にしよう。

と、言うことで……思いついた時。やる気が出た時。時間が空いた時。そんな時に気軽に書いていこうと思います。

第一話の主役はもちろん主人公の彼です。


こうして歴史は繰り返される

──事実は小説よりも奇なり。

 

 目の前の光景を前にして、男の脳裏に忘れ去られた記憶の一節が蘇った。

 いくつもの世界を見てきた。そこに住まう様々な人々を見てきた。

 

 数多くの不可解な光景も、いつしか男にとってのありふれない光景はありふれたものへと移り変わり、不可解な光景こそが男にとっての日常となった。

 

 だからこそ解らなかった。

 全てを理解し、全てを手に入れた男が理解できないことが起こっていた。

 正確には、とっくの昔から起こっていたことに気付きもしなかった。

 

 その事実に溢れんばかりの怒りと僅かな悲壮感を抱きながら男は手を伸ばす。

 

『──返せ』

 

 既に勝敗は決した。

 

『──返せ!』

 

 既に魂は消滅しつつある。

 

『──返せ!!』

 

 それでも男は手を伸ばす。

 かつての最愛をこの手に取り戻す為に。

 

『【   】は我の(モノ)だ!!』

 

 胸に宿る想いに突き動かされるままに手を伸ばす。

 

 されどその手は──……

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 「「──【撒き散らした苦痛をあなたの元へ(よくもやってくれたなこのクソ野郎っ)】」」

 

 ハジメとユエが放った概念魔法は暴走しつつあるエヒトの体を貫き、その根幹を打ち砕いた。

 

 世界が崩壊する程の絶叫が上がり、エヒトの魂が塵となっていく。絶叫を内包した閃光によって砕かれた空間の向こう側。その赤黒い空へと吸い込まれるように消えていく。

 

 虚空へと立ち昇るエヒトだった光を黙って見つめていると、不意にハジメの耳が声を捉えた。

 

『──返せ』

 

 忘れもしないその声。

 

『──返せ!』

 

 しかし、その声にもう力はなく。

 

『──返せ!!』

 

 まるで縋るような弱々しさを感じた。

 

『【   】は我の(モノ)だ!!』

 

 掠れた声はどこか聞き取りづらく、されど何を示しているのかはすぐに分かった。

 ハジメは改めて思う。自身とエヒトにはどこか通じる部分があった。あれは恐らくユエ達に出会えなかった俺自身だ、と。

 

 死にたくないという願いも、一人となり何もかも壊したくなる気持ちも。言葉にはしたくないし認めたくないが、それでも理解できてしまう。

 だからといってエヒトのこれまでの行動を思い返せば同情するなどあり得ないし、自らの最愛を渡すつもりも毛頭ない。

 

「渡すかよ。ユエは俺の最愛(もの)だ」

 

 その言葉にユエが笑みを浮かべてハジメに体を寄せる。華奢な体を強く抱きしめ、ハジメは強く誓う。

 たった一人だったエヒトとは違う。

 自分には生涯を誓いあった最愛が隣にいる。

 

 ユエがヒロインで居続ける限り、ハジメは主人公(ヒーロー)であり続けられるのだ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 トータスでの戦いから早数年。

 ハジメはユエ達を連れて地球へと帰還することが出来ていた。それからのことは言葉にすることも面倒になるような出来事の連続だった。

 

 集団神隠しとして世間を騒がすニュースとなっていたハジメ達が帰還したことで騒ぐ世間への対応。魔法というこの世界では存在しない力に対する隠蔽。ユエ達トータス出身者の戸籍関連の不正取得。さらにはトータスとは違う異世界での出会いや戦い。

 

 トータスから帰還し、ようやく落ち着いて腰を下ろせると思っていたハジメ達を嘲笑うようなイベントの数々。面倒だと苛立ったことも少なくないが、異世界の技術を手に入れられたことはハジメの技術向上に多いに役立った。

 

 そうして数々の戦いを乗り越えた先。高校を卒業すると同時に、ハジメはユエと正式に婚約をした。

 

 地球では手続きだけを行い、式はトータスで上げた。身内や信頼の出来る者だけで行うつもりが、あれよあれよと噂が流れ、いつしか国を上げての一大イベントになったことは、今では彼らにとって良い思い出だろう。その一年後にはシアや香織達との式も改めて上げた。

 

 ハジメは思う。

 まさか自分がこんなハーレムを築くことになるなんて昔からは考えられなかったが、もう手放すつもりは一切ない。たとえこれから何が起ころうとも必ず守り抜くと誓った大切な妻達だ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「おじいちゃん!!」

 

 満面の笑みで駆け寄ってくる少女をハジメは優しく抱き上げた。

 ハジメがユエ達と式を上げたのももう二十年以上も昔の話。彼女達との間に生まれた子供も独り立ちし、今では多くの孫に囲まれるおじいちゃんとなっていた。

 

「おいおい、そんなに走ったらあぶねぇぞ?」

 

 笑いながらそう注意するハジメ。その顔にはシワ一つなく、まるで二十代中頃としか見えない容姿を保っていた。

 トータスで得た魔法の知識に加え、異世界で得た技術の数々。それらを駆使し、ハジメは不老となって永遠の時を生きられる体を得ていた。

 

 それはひとえに妻である吸血姫の為。

 彼女はハジメと生涯を全うするために年を取らない自身の体をどうにかしようと研究を続けていた。しかし、それがどうしようもない壁に当たってしまった時、憔悴する彼女に寄り添ったハジメがこう告げた。

 

『ユエ。お前を一人で残しはしない』

 

 ユエが共に死ねないのなら、自分が共に生き続ければいい。そう決断し、涙を流す最愛の妻を抱き寄せた。想定外だったのは、その話を聞いた他の妻達もハジメとユエに付き合うことを決めたことだった。

 

 当初、ハジメはそのことに難色を示したが、彼女達も決して譲らなかった。平行線を辿る話し合いだったが、最終的にはハジメが折れることで決着がついた。様々な地で恐れられているハジメだったが、愛した妻に甘いのはいつまで経っても変わらなかった。

 

 この日、生涯を誓い合った妻達と永遠を共にすることをハジメは心に決めた

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 更に数世紀の時が流れた。

 

 ハジメ達は自らの子孫に当たる老人の死を見届けた後、表舞台から姿を消した。彼らの家系の人間が構わなくとも、全く容姿の変わらない自分たちがいつまでも同じ場所に留まることで余計な騒ぎが起きることを避けるためだった。

 

 背後を振り返り、長過ぎる時を過ごした故郷を見渡す。

 かつてのような田舎風景は一切見当たらず、地上からは天を衝くような超高層タワーがいくつも鎮座していた。成層圏を抜けた先、宇宙空間にはいくつもの衛生が浮かび、そこには多くの人々の存在がハジメには感じ取れた。

 数世紀かけての技術の発展。及び、ハジメ達の手による魔法技術の導入の大成であった。

 

 するとハジメ達の前に数台の車が止まり、何人もの黒服を纏った男達が姿を見せた。

 

「お迎えにあがりました。ハジメ様」

「おう」

 

 黒服の男に促されるまま、ハジメはユエ達を伴って車に乗り込む。

 ハジメ達の名は世間にはあまり知られてはいないが、各国の政治家や有力な権力者は別だ。過去にはハジメ達の力で私腹を肥やそうとする者もいたが、ただの人間にハジメを出し抜けるわけもなく、今では全世界の情勢を一人で握っているに等しかった。

 

 今日この日より、ハジメは南雲の性を捨てることを決めた。

 

 表の世界とは完全に縁を切り、これからは国の中枢部にて更に技術の革新を進めていくと決めていた。

 もちろんユエ達にも了承を得ている。自分達の子供や孫は既にこの世を去り、地球やトータスにはかつてほど守る者も少なくなった。今では永遠を誓いあった妻達を残すのみだ。その彼女らもいまさら自分が盾となって守らなくてはいけないような弱者では当然ない。

 

 既にハジメ達の存在を脅かす敵はどこにもいない。

 

 だからこそ、ほんの少しだけ世界に目を向けてみることにした。この脆弱で矮小な世界をどれだけ高みへと連れていけるのか試したくなった。

 そうユエ達に告げ、彼女達もハジメの意見に反対しなかった。

 

 このときのハジメの言葉に一切の嘘はなかった。

 本当に心の底からそう望んでいた。ただ、自分の力がどこまでいけるのかを試したくなっただけだった。

 

 だが、心の奥底に淀んでいた一抹の感情の変化。

 本人すら気付いていなかった変容を、ユエ達もまた気付くことが出来なかった。

 

 それに気付けていたのなら、未来もまた変わっていたのかもしれない。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 地平線の彼方に薄っすらと見える四方を囲う巨大な城壁。さらに中央にそびえ立つ塔から発する半透明なフィルターが城壁の内部を全て覆い隠している。城壁には多くの警備ロボットが配置され、城門では入る者も出る者も厳重なチェックが課されている。

 

 ここはかつて東京と呼ばれていた日本の首都。

 ある人物によって地形ごと捻じ曲げられ、かつてのアメリカ合衆国と同程度の面積を誇るこの星最大の人類都市である。

 

 その都市の中枢部にそびえ立つひときわ巨大な塔。その最上階への道を一人の少女が歩いていた。

 彼女の名はユエ。この国が誇る最強の魔法使いの一人にして、この国を支配する男の第一夫人に当たる女性だ。

 

 その力は天候さえ思いのままに操り、その美貌は老若男女問わず魅了する。

 支配者の男の側にいる女性は誰しもが人外じみた美貌を持つが、彼女のそれはその中でも頭一つ飛び抜けていた。

 そんな彼女が表情を暗くしたまま歩を進めていた。彼女の向かう先はこの塔の最上階。そこには彼女の最愛の男が居住兼研究室としている区画がある。

 最奥に佇む豪勢な扉の前に立つ。すると何を言うまでもなく「誰だ?」と男の声が聞こえた。

 

「……私」

「そうか、入っていいぞ」

 

 音を立てて開く扉に足を踏み入れ、ユエはこちらに背を向ける男を視界に収め、その名を口にした。

 

「……ハジメ」

 

 その名を知らない者はこの世界には居ない。

 この都市を作り上げた張本人であり、この国を支配する超越者の一人にして、そのトップ。

 魔の真髄へと至り、理の深淵へと到達した者達を人々は畏敬の念を込めてこう呼んだ。

 

 

──到達者、と。

 

 

「どうした?」

「……準備できたよ」

「そうか、ようやくか」

 

 ユエの言葉にハジメはこちらを振り向き笑みを浮かべる。最愛の人から向けられた笑みを前にして、しかしユエの表情は優れない。

 

「どうしたユエ?」

「……本当にやるつもり?」

「ああ、分かってるだろ? この世界はもう耐えられない」

 

 ハジメの言葉にユエは表情を歪めた。

 ハジメとユエ達の住む世界は、人類の進化へと繋がる度重なる実験の影響で存在を保てなくなりつつあった。それの解決策としてハジメが出した案が、自分達だけでの異世界への脱出である。

 

「この転移はトータスや近辺の異世界へと跳ぶのとは理由(ワケ)が違う。俺達以外は肉体が耐えられないんだ」

「それは、分かってるけど……」

 

 ユエとてもう子供ではないのだ。情に流されて判断を誤るなんてことはするわけもなく、時には冷酷とも言える手段を取れるだけの経験は重ねてきたつもりだ。それでもユエの表情は晴れない。

 

(どうして、そんな平気な顔をしてるの……?)

 

 心を押し殺した故の判断なら解る。表情を取り繕っているだけなら解る。

 しかしユエには、ハジメの心が一切波立ってすらいないことに気付いてしまっていた。

 

「辛いだろうが、分かってくれユエ。お前達を守る為なんだ」

「……」

「シアも香織もティオもレミアも……皆俺が守るから」

 

 いつからだろう。貴方の言葉に熱を感じなくなってしまったのは。

 いつからだろう。貴方の心に恐怖を感じるようになってしまったのは。

 

 ハジメが自分達を守ろうとしていることに嘘はないのだろう。だが、長い時を共に過ごしてきたからこそ分かってしまう。彼の心はもう引き返せないところまで変容してしまっていた。

 

 だって、そうだろう。そうとしか考えられない。だってハジメは……

 

 

──シア達がもう何年も姿を見せていない(愛する者に見限られている)ことに、未だに気付いていないのだから。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 概念魔法【希望ある世界へと】

 

 それがハジメ達が世界の脱出に使用した概念魔法の名称だ。

 ハジメによって引き起こされた世界の崩壊はハジメ達の世界だけでなく、数多の異世界すら巻き込むような事態へと陥っていた。なればこそ、尋常の方法では脱出は叶わず、それ故に開発されたのがこの魔法だった。

 

 ハジメの願いを反映し、世界の何処かに存在する人類の生存が可能な世界に術者を強制的に転移させる。

 転移先の詳細を知ることは術者本人でも出来ず、一種の博打とも呼べる方法ではあった。だが、転移先の世界は元居た世界と比べると文明レベルが致命的なまで低かったものの、十分成功と呼べる結果であった。

 

 この世界に転移してもう十年。

 一人籠もって研究に明け暮れるハジメと違い、ユエ達は原住民との交流、及び世界の調査に力を入れていた。時々外の空気を吸う為に散歩した先で、そんな妻達の姿をハジメは遠くから満足そうに眺めていた。その心は妻達の自分への献身ぶりへの満足感だった。

 

「やはりユエ達は気が利く。研究が進めばいずれ人間で試す必要がある。その為には検体も優秀な個体でなくては」

 

──()()()便()()()()()()()()()。流石は俺の妻だ。

 

 そう呟くハジメの表情は間違いなく彼女らに向けた慈愛の心を宿していた。たとえ、それがどうしようもないくらい歪んでいたとしても。

 

 その時、ハジメは目の前の光景に強い既視感を覚えた。理由は定かではないが、この世界に転移してから度々この現象が起きるようになったのだ。最初こそどうでもいいことだと頭の隅に追いやっていたが、こう何度も繰り返されれば僅かな苛立ちも募る。

 

 心底不快だと言わんばかりに表情を歪めていたハジメがそういえばと思い出す。

 この世界の調査を続けていたユエが、大陸の果てにて見つけた遺跡跡で古代文字が刻まれた石板を発見したらしい。そこにはこの世界の文献や伝承が刻まれており、それは過去に確かな文明が存在したことの証明でもあった。

 そして、様々な箇所に使われていたとある文字が、この世界の名称ではないのかとユエは推察した。その名とは……

 

 

──()()()()、か。見窄らしいこの地にはお似合いの名だな。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

──()()()()

 

 そう告げて、ユエはハジメの前から姿を消した。それは存在の消失。つまるところ、ユエとの永遠の別れを意味している。彼女が世界の名を発見してから僅か三十日足らずの出来事であった。

 

 たった一人、玉座に座ったハジメは辺りを見回す。かつてはハジメの側を離れず、それこそ奪い合うように取り合っていた彼女らはもういない。唯一残っていたユエも今しがた存在が跡形もなく消えた。

 

「どういうことだ……?」

 

 永遠を誓いあった筈ではなかったのか。不老となり、死を超越したのは共にあり続ける為ではなかったのか。お前達の為にどれだけ力を尽くしたと思っている。故郷を捨ててでも、お前達を守ろうとした俺を……

 

 

──裏切ったのか。

 

 

 俺を騙した裏切り者が。俺を見捨てた裏切り者が。俺を弄んだ裏切り者が。

 何が愛してるだ。何が共に在りたいだ。全部嘘だったんじゃねぇか。

 

 怒りに震えるハジメの体から、魔力が暴風のように吹き荒れる。

 それはハジメ達が統治する国に住まう人々を傷つけ、たちまち悲鳴と絶叫が飛び交う。それらがハジメの鼓膜を刺激するたびに彼の怒りは増大していく。

 その時、ハジメを神と崇める神官の一人がハジメの下に駆け込んできた。

 

「神よ!! どうかお助けを──ッッ!!」

 

 しかし、男は最後まで言葉を紡ぐことが出来なかった。転移によって男の前に姿を現したハジメがその首を掴み上げてしまったからだ。

 

「そうだ。あいつらが俺を騙してたんなら、あいつらが育てたてめえらも俺の敵か」

「ヒュッ……!! な、なに……を……!!」

 

 困惑と恐怖に顔を歪める男を無視し、ハジメは男の首を握りつぶした。残された体が床に崩れ落ち、千切れた首からは鮮血が吹き上がってハジメの顔を赤く染める。

 血に濡れる自らの腕を目を見開きながらハジメは見つめる。その表情には僅かな困惑と動揺が見られた。だがそれも瞬く間に消え失せ、次の瞬間には先程までの怒りなど最初から無かったかのように笑みを浮かべた。まるで玩具を与えられた子供のような無邪気な表情だった。

 

「何だ、これは……!!」

 

 敬愛する主に裏切られたことへの絶望。死の瞬間に見せた恐怖の表情。血の海に沈む哀れな肉塊。

 その全てがハジメに今まで感じたことが無いほどの高揚感を与えていた。

 

「はは、ははははははははははははッッ!! これほどか!! 人間の絶望とはこれほど愉快で甘美なものなのか!!」

 

 転がった体を踏みつける。何度も何度も何度も。肉塊の一片すら擦り切れて無くなるまで。この意味のない行動ですら今のハジメにとっては愉快以外の何物でもなかった。

 

偽物(ユエ)よ!! 貴様らの侮辱も虚実も俺は許そう!!」

 

 かつての愛した女性達のことなど、ハジメはもうどうでもよかった。あるのは目の前の玩具でどう遊ぼうかという子供のような幼稚な考え。

 

「貴様らと作ったこの世界は全てが偽物だ!! 唯一、この俺だけが本物の存在!! 他は俺を喜ばすだけの玩具にすぎない!!」

 

 ハジメは内に秘めた魔力を解放する。天から降り注いだ雷が全てを貫き、裂けた大地から覗く奈落の闇に人々が吸い込まれていく。

 

「もはや錬成など必要ない!! 俺が必要とするのは全てを壊す神の如き力!! 俺の……いや……!!」

 

 世界に本物は唯一人。それ以外は全てが玩具。

 

 そう、この世界は最強の力を得た青年(ハジメ)が愛する(ユエ)達と共に世界を創生していく物語などではない。

 世界に取り残された本物(エヒト)が、自らの欲望を満たす為だけに玩具(ルジュエ)を使い潰していくだけの最低の物語。

 

 その主人公の名は……

 

 

 

「我が名はエヒトルジュエッ!!」

 

 

 

 こうしてハジメ……否、エヒトルジュエは生まれ、最悪の物語が幕を開けた。

 

 

 

 

 しかし彼は最後まで気づくことが出来なかった。

 

 概念魔法【希望ある世界へと】

 

 ハジメであったころに込めた想い。彼がユエ達を愛していたことは間違いなかった。彼女らと共に生きたいと願ったことも間違いなかった。そのあまりにも強すぎる概念が込められていた。

 その想いは世界を超え。次元を超え。ありとあらゆる可能性を模索し、ついに彼の望みを叶えるにうってつけの場所を見つけた。

 人類が生存可能であり、世界の崩壊に巻き込まれる危険性が皆無の居場所。

 

 

 すなわち、()()()()()()()へと。

 

 

 エヒトルジュエは気付かない。

 何故、この世界に既視感を覚えていたのか。

 

 エヒトルジュエは覚えていない。

 その名が誰を示すものだったのか。

 

 エヒトルジュエは忘れてしまう。

 かつて自らが愛した存在が居たことを。

 

 故に、彼はまた()()()()()()()()()()()()()

 

 遠い未来。怠惰な現状に変化を与える為に異世界から呼び出した異邦人。

 それはどこにでもいるような小さな子ども達。戦う力も、他者を殺す覚悟もない赤子のような純情な子供達。

 

 その中にポツンと紛れるひとりの異質。

 

 

 

──ほら、南雲ハジメ(次のおまえ)がやってきたぞ。

 

 

 




ネットで見た「アフターのハジメはやってることがもうエヒトと変わらない」という意見から思いついた設定です。

エヒトルジュエの名前を調べてみたら、エヒトはドイツ語で「本物」。ルジュエはフランス語で「おもちゃ」らしいです。あれだけ他者を見下していたエヒトルジュエの名前の意味が「本物のおもちゃ」とは皮肉ですね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。