吾輩は死人である。名前はもう忘れた。前世は何の変哲もないどこにでもいる日本人の一人であった。平凡な家庭に生まれて成績は平均レベル、高校を卒業した後は特にやりたい事もなかったので惰性で大学に進み卒業後は中小企業のサラリーマンとなった。その会社がクソみたいなブラック企業であったのは不幸であったがよくある話である。
仕事を終えて帰宅しようと準備したところで突如意識が遠のいたが、あれは恐らく過労死だったのだろう。まあ労働基準法?何それ美味しいの?な職場だったし過労死するのも別におかしくはない。我ながら他人事のようであった。
何はともあれ、私は平凡な人間である。天国に行けると確信できる程善業は積んでいないが、地獄に落ちると思う程悪行は重ねていないつもりだ。そのはずなのだが……
―喜べ、お前は選ばれたのだ。人間を我の伝道者として選ぶのは初めてだが、まあ物は試しだ―
どう見ても邪神にしか見えない鼠の神様の前で私は必死に現実逃避していた。神よ、私が一体何をしたというのですか?
―神は私だ―
輪廻転生は嘘だったらしい。キリストや仏陀は大噓つきだったようだ……拒否権はあるのでしょうか?
―断るならお前の魂を齧りつくすだけだ―
死ぬより悲惨な事になると察した私は鼠神様に従う事にした。何なりとお申し付けください偉大なる鼠の神よ!
―うむ、そうか。ならば行け、あの宇宙に我が名を、
そして私は巷で言われる異世界転生をする事になったのであった。
「あーっ、どうしてこうなった!どうしてこうなった!」
転生したら鼠人間になっていた転生者は転生から暫く経ち一段落した後で愚痴を吐いていた。
「鼠人間って何だよ!?〇ッキーと違って全然可愛くないしよォ!」
「預言者様!イカガサレマシタカ!」
「あ、うむ、なんでもない。気にしなくてよいぞ。お前は出撃の準備をしろ」
「カシコマリマシタ!」
キイキイと鳴く部下を追い払いつつ転生者は鏡で己の姿を見る。鏡にはずる賢い目をした白い鼠人間が映っていた。
「うっわ、全然可愛くない。でも他の奴等と違ってこれでもまだマシなんだよなぁ」
鼠人間として生まれた転生者ことムスは自分の仲間であり部下達の姿を思い返して溜息をつく。
「臭いし汚いし卑しいし、隙を見せたら即寝首を掻こうとするし……クソみたいな連中だな!まああんなのでも仲間だしな」
友情とか親愛の情が一切存在せず隙あらば裏切ろうとする仲間達に嫌気がさしつつもムスは人間達がいる砦を攻め落とそうと気合を入れるのであった。
「敵襲、敵襲!」
「ネズミ共が攻めてきたぞッ!」
「シャアッ、攻略・開始!行ケ!行ケ!オ前達前ニ出テ戦エ!」
「数ハ此方ガ圧倒的ニ上ダ!一気ニ攻メロ!」
「多勢ニ無勢ダイッケェ!」
夜になり鼠人間達による襲撃が始まった。砦に篭る人間達は必死に抵抗するも鼠人間達は数の暴力によって圧倒しており、砦の陥落は時間の問題であった。
「イヤァ、預言者様ノ指揮ハ卓越シテオラレマスナ!」
「エエ、エエ!預言者様ノ手ニカカレバアンナ砦クソゴミデゴザイマス!」
「世辞はいい、部下達は引き続き砦を攻めさせろ。ラットオゴウルはどうだ?」
「預言者様ガ御造リニナラレタ強者達ハ最前線デ暴レテオリマス!」
「うむ、あれか。確かに大暴れだな。人間どもを薙ぎ払っている……偶に味方の兵士が巻き込まれているが、今後調整すればいいだろう」
ムスの手で製造された鼠の大男……ラットオゴウルは人間達の抵抗をものともせず暴れていた。腕を一振りする毎に人間が叩き潰される光景は大変ショッキングなものであったが、鼠人間として生まれたムスは前世の価値観を既に捨てており悲惨な光景を見ても特に心が動く事はなかった。
「これなら勝利は確実だな。砦の門も突破したし後は掃討戦だ。余計な消耗はせず損害を抑えるようにしろ、雑兵とはいえ我々の仲間だ、無駄死にさせるな」
「ナ、ナントオ優シイ……!預言者様ハ慈悲深イ御方デス!」
「いいから行け。ああそれと、人間達については指揮官は生かしておけ、他は皆殺しだ。食っていいぞ」
「ワカッテオリマス!」
露骨にゴマをする部下達に辟易しつつも、ムスは人間達が立て籠もる砦を眺めていた。
「これでこの大陸の最後の人間の拠点を落とせた。次は海の向こうにある大陸の人間共だ……とりあえずこの星を俺達鼠人間の物にすれば
ムスは自分を転生させた
「まあ
「……なんだこれは」
「ヘェ、ナニヤラ人間共ガ必死二守ッテイタ遺跡デシテ」
その後砦を征服し戦利品を確認していたムスは、部下からの報告で砦の最奥にある奇妙な物体を確認していた。
「人間共ハコレハ先祖ガ乗ッテイタ船ダト宣ッテオリマシタ。コノ船ヲ使ッテコノ星ニ来タト」
「いや、これ宇宙船じゃないか……!?」
「オオッ!オワカリニナルノデスネ!流石ハ預言者様デスナ!」
部下のおべっかを聞き流しつつムスは目の前にある宇宙船の残骸を見て呆然とする。
「え?マジで?もう宇宙船があるって事は宇宙での航海技術が確立されているって事じゃん?なんでこの星の人間共は剣と弓矢を使ってるんだよ!?」
「ワ、ワカリマセン」
「あ、ゴメンお前に怒っているわけじゃない。捕虜はまだ生きているか?私の方から尋問したい」
「カシコマリマシタ!ドウゾコチラヘ!」
部下に案内されムスは捕虜を尋問し情報を聞き出し、そして宇宙船の残骸を調査して詳細を把握した……絶望が待ち受けているとも知らずに。
「……………」
その後ムスは調査によって判明した情報を纏めた結果、思わず頭を抱えていた。
「……………」
捕虜から聞き出した情報では人間達は太古の昔に宇宙船によってこの星に飛来したという。彼等は1000の入植団の一つとしてこの星に定住し、長い時間が経過した結果技術が中世レベルにまで退化していたのであった。
「……………」
そして宇宙船や大陸にある遺跡を調査した結果判明したのは、人間達を派遣した連中は帝国という銀河を支配する超巨大国家で、人間以外の
「……………」
もし人類の帝国が自分達を発見すれば容赦なく駆除されるだろうとムスは考えていた。利己的かつ猜疑心の塊である不潔な鼠人間達を帝国が生かす理由が思いつかなかったのだ。抵抗?ハハッ、宇宙に進出する技術もない鼠人間達では碌に抵抗できないだろう。
「……………やってやる」
そんなどう足掻いても絶望な状況を知ったムスは絶望しつつもまだ心は折れていなかった。
「やってやるよこん畜生!まだ帝国に見つかっていないならチャンスはある!宇宙進出?この船の技術をパクればいい!そしてこの星だけじゃなくこの星系、いや銀河を鼠人間の楽園にしてやるよ!」
―うむ、その意気だ―
足掻けるだけ足掻いて見せると誓ったムスの脳内に突如として声が響く。ムスは瞬時に跪いて自分の主である
「こ、これは偉大なる我らの神よ。この卑しき鼠に何用でありましょうか?」
―貴様の働きをずっと見ていた。慢心して怠ける事なく、強大な敵の存在を知っても絶望しないとは人間にしては見所があるな。これで心が折れていたら処分していたところだ―
「は、はい」
ムスが伝道者として使命を果たそうと全力を尽くしている姿を見て鼠神はほんの少しだけ満足そうにしていた。まあムスが必死に使命に取り組んでいたのは失敗すれば
―今の貴様らならばこの星を制圧するのは容易い事だ。だがお前の使命はそれで終わりではない。わかっているな?―
「はい!私は偉大なる神の伝道者としてこの宇宙に神の名を広げてみせましょうぞ!」
―励めよ―
神の気配が遠ざかっていくのを感じたムスは一息つくと、早急にこの星を制圧しなければならないと気合を入れるのであった。
「まずは別大陸への進軍の手配、そしてそれと並行して宇宙船の解析だな……技術レベルが違い過ぎてすぐには再現できないだろうが、やるしかない。技術者達を集めるとしよう」
「預言者様!遂ニ、遂ニ成シ遂ゲマシタ!コノ星ハ我々ノ物ニナリマシタ!」
「うむ、よくやった」
ムスが決意してから2年が経過した。人間達が最後に残っていた大陸に進出した鼠人間達は内心はともあれ一致団結して挑み、ついにはこの星の人間達の最後の国家を滅ぼしていた。もはや人間達には組織的な抵抗は出来ず、鼠人間達の餌として死ぬ運命であった。
「人間狩りを徹底しろ、もう奴等は逃げる事しかできない敗北者達だ。一人残らず殺せ、皆殺しだ」
「エエ、エエ!徹底的ニ狩リ尽クシマストモ!」
残存勢力の掃討を厳命したムスは空を見上げる。そこには幾多の星々が輝いていた。
「技術者達を集めて造らせた宇宙ロケットはようやく形になった。銃器についても人間の遺跡に残っていた遺物を再現した物を既に部下達に配備している。信頼性に難があるが強力無比だ、この星の人間共なら一蹴できる位にはなったが、恒星間航行が当たり前な連中相手じゃ話にならないだろうな。だがこれからだ、これから更に技術を発展させればいい。そして準備が整えた上で目に見える星全てを偉大なる神に捧げてみせる!」
ムスは神の為にこの銀河を支配してみせると誓うのであった……まあ本当の理由は自分が仕えている神の機嫌を損ねるのが恐ろしいからであるが仕方ないだろう。渾沌の神に慈悲を乞うなど無意味であり、ムスに出来る事は結果を出し続ける事しかないのであった。
<人物紹介>
●転生者(ムス)
→前世は平凡な日本人であった。WARHAMMERについてはまったく知らない。死んだら鼠の神様に捕まった超級の不幸な人間である。転生後に名乗ったムスという名前はラテン語のMusから取られている。
鼠人間に転生後は預言者として活動し鼠人間達を導いている。そして人間達の遺跡から帝国の存在を知り絶望しつつもただでやられてたまるか!と奮起し惑星を支配した。
偶に変な言葉遣いになるが前世でネットミームに慣れ親しんでいた名残である。
●
→AOSで大出世した渾沌神。多分破壊と疫病、絶望をつかさどる神である。40Kの世界でも出世したいなぁと思い軽い気持ちでムスを異世界転生させた。ムスが選ばれたのは偶々目に留まったからであり特に理由はない。
40Kの世界では鼠人間達は超弱小種族であり、鼠人間達の神である鼠神も大した力は(40K世界では)今のところ持っていない。まあ鼠人間達はあっという間に増えるので大丈夫だろう。ムスが必死に頑張っているのを愉快に思いつつ眺めている。別に失敗しても他の人間を使えばいいのだ。
鼠人間達の数が増える事で
●鼠人間達(スケイヴン)
→利己的かつ猜疑心に満ちた鼠人間達であり、クソみたいな種族である。自分の事が何より大事で隙を見せたらすぐ裏切る厄介な奴等だが、今のところはムスの下で一丸となって頑張っている。ムスのチートによってAOSレベルの技術力があるが40K世界では邪魔だクソゴミと一蹴される程度の力しかない。
鼠人間達はムスの事を神から使命を与えられた預言者であり、自分達を導く指導者として恐れつつもなんだかんだお優しい御方だと(鼠人間なりに)慕っている模様。偶に出てくる変な言葉遣いはムスの口癖を真似たからである。
●惑星に住んでいた人間達
→全盛期の帝国が派遣した入植団の末裔達。星に入植したのはいいが帝国と通信が断絶し長い年月が経過した結果、技術は大幅に衰退して中世レベルになっていた。ムスが率いる鼠人間達に必死に抵抗するもチートで蹂躙され皆殺しにされる。可愛そうだけど人間の方も鼠人間達を駆除しようとしてたのでお互い様である。
●人間達の遺産
→人類の帝国が全盛期だった頃の宇宙船や遺物達。解析した結果ムス達が宇宙へ進出する為の足掛かりとなった。銃火器についてはパクリもとい劣化コピーして運用している。
●ラットオゴウル
→AOSの知識を使ってムスが造り上げた改造鼠人間。貧弱な一般鼠人間とは違ってスペースマリーン並の巨体で怪力だが理性は殆どなく暴れる事しかできない。スペースマリーンと戦えば邪魔だクソゴミされるだろう。
今後は理性を保ちつつ銃火器を扱いチームプレイが出来るようにする事を目的としている。目指せ鼠版スペースマリーン!
●惑星
→銀河の端にあるショボい惑星であり、人類が駆除され鼠人間達の物になった。ゲームで言うならチュートリアルが終わったところである。鼠人間達はまだ宇宙に進出できておらず、他の種族に見つかれば蹂躙されるのは確実である。どこまで技術開発が進められるかが勝負となるだろう。
●人類の帝国
→40K世界での超巨大国家であり、クソみたいなブラック国家である。皇帝がしっかりしていた頃は真面だったが、過去の大反乱によって「あーもう滅茶苦茶だよ」となった結果技術は衰退し狂信的な宗教国家になってしまった。
この物語では当分帝国の出番はない。見つかればゲームオーバーだからだ。まあ宇宙エルフや骸骨ロボットや緑のイカス連中や渾沌の連中に見つかってもゲームオーバーである。
●40K世界の宇宙
→人類や
スケイヴンタイドを購入しスケイヴンにハマった結果勢いで書きました。WARHAMMERの二次は二回目でが、今度は最後までプロットが出来てますので何とか完結させたいと思います。参考資料はコアブック(AOS&40K)とコデックスとバトルトームです。ネタバレですが「俺達の戦いはこれからだ!」エンドになります。
更新はゆっくりとしたものになります。今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。