「未知の異種族が活発に活動しているだと?」
「うむ、由々しき事態だ」
地球を中心とした超巨大国家である人類の帝国。そこに所属する皇帝陛下直属の組織異端審問局の一つである純血の団では、とある異種族の存在が話題に上がっていた。
「件の異種族は最近活動が確認されるようになった。積極的に星系の開拓を進めていて急速に勢力を拡大しているようだ」
「なるほど、この鼠人間共か。だが規模的には大した事ないように思えるが」
「……私が懸念しているのは奴等の拡大速度だ」
異端審問官の一人は件の異種族……スケイヴンの拡大速度に危機感を抱いていた。
「奴等はおよそ数百年で宇宙進出を果たし恒星間移動も確立させたようだ」
「たった数百年でだと?確かにそれは異常だな」
本来宇宙進出というものは技術的に難易度が高く、ましてや恒星間移動ともなれば並大抵の技術力では不可能であるのだが、スケイヴンはそれを数百年で達成しており人類から見ても異常であった。
「奴等が短期間でそこまで発展した理由はわかっている。漂流していた奴等の宇宙船を幸運にも回収する事ができたのだが、解析させたところ面白くない事実がわかった」
「何がわかったのだ?」
「……実物を見た方が早い。付いて来てくれ」
「これが異種族の宇宙船か。いや、しかしこれは」
「我々が使っている宇宙船によく似ているだろう?これは人類の技術が使われている」
人類の帝国が回収したスケイヴンの宇宙船を見て異端審問官達は困惑した表情を浮かべていた。異種族の宇宙船が人類の宇宙船に酷似していたからだ。
「異種族が我々人類の技術を!?ううむ、解析は進んでいるのか?」
「帝国技術局のメンバーによる調査は順調に進んでいるそうだ。奴等の言語はローゴシックのようで他の異種族共より解析は非常に簡単だと言う事だ」
「異種族共がローゴシックを話すとは。なるほど、奴等は我々人類の技術を模倣したのか」
スケイヴン達が数百年で宇宙進出と恒星間移動を達成した理由を知った異端審問官達は少しだけ納得する。一から造り出すのではなく既存の技術を利用したのならスケイヴン達の急成長も理解できたのだ。
「厄介だな、異種族が人類の技術を模倣するなど」
「宇宙船にあった文書を解読したところ異種族は自分達の事をスケイヴンと呼称しているようだ。我々はこれから件の異種族をスケイヴンと呼ぶ事にする。スケイヴンの科学技術は我々人類のレベルに迫りつつある」
「いいえ異端審問官ナグム殿、それは誤りです。ここからは私が説明しましょう」
異端審問官達の会話に割って入ったのは帝国技術局の上級司祭であるテックプリーストである。帝国技術局探索官でもある彼は未知の異種族の宇宙船を解析する為に派遣された帝国技術局メンバー達の現場責任者であった。
テックプリーストは周囲を見回し自分と異端審問官達以外にいない事を確認して口を開く。
「解析した結果件の異種族の科学技術は人類と遜色ないレベル、いえ正確には現在の人類よりも上だと言えるでしょう」
「ッ!?」
テックプリーストの発言に異端審問官達は衝撃を受けた。異種族が見様見真似で再現した科学技術が人類よりも上だというのは余りにも衝撃的だったのだ。
「それは事実なのか?」
「万機神に誓って事実です。異種族達の技術は人類の物に酷似していますので比較は容易でした……実物を見ながら説明しましょう」
異端審問官達はテックプリーストに案内されスケイヴンの科学技術を確認する事になったのであった。
「こちらは異種族達の携帯火器であるプラズマ兵器です」
「どことなく我らのプラズマ兵器に似ているな」
「ええ、解析した結果ですが残念な事に火力と信頼性は異種族達のプラズマ兵器の方が優秀でした。情けない話ですが我々人類のプラズマ兵器が勝てる要素はありません」
「なんだと!?」
「宇宙船のエンジンですが、これもエネルギー効率などが我々人類製のエンジンよりも改良されていました」
「改良、か」
「ええ、我々人類では行えない機械の改造等を異種族達は進んで行っているようです……最後に貴方達にお見せしたい物があります」
―こんにちは。テックプリースト殿。そして初対面の方達は初めまして。私はこの宇宙船を統括・管理するAIです。どうかお見知りおきを―
「異種族達が使っていた邪狡知能です。アレの戯言については無視してください」
―テックプリースト殿、何度も申し上げておりますが私は邪狡知能などではありません。偏見の目で見るのはやめていただきたいのですが。それとマスター達はご無事なのでしょうか?―
「黙りなさい」
―はい―
「……異種族達は邪狡知能を重用しており、効率的な機械の運用を可能としています」
「かなり危険な連中なのでは?」
「我々人類の技術を模倣するだけでなく改良までするとは。今の段階でも危険だし放置する事はできないな」
「鼠人間を生かしておく価値はない。人類の脅威となる前に駆除するぞ」
「デスウォッチを派遣する準備をしなければ」
テックプリーストの説明を聞き終えた異端審問官達は深刻な表情を浮かべて議論していた。スケイヴン達が油断できない異種族だと理解した彼等は人類の為にも一刻も早くスケイヴン達を駆除するべきだと結論を出す。
「しかし数百年でここまで科学技術を発展させるとは。邪狡知能の手助けがあったとしても異常ではないか?」
「我々帝国技術局は異種族達が急激に発展した理由として、古代人類の遺跡から標準テンプレート生産パターンを発掘し利用しているのだと結論を出しました……異端審問官殿、失われた古代技術の確保の為に我々帝国技術局も鼠人間達の駆除作業に協力したいのですが」
「うむ、わかった」
テックプリーストの提案を異端審問官達は受け入れる事にした。油断ならない異種族の駆除に協力すると言うのならば拒否する理由がなかったのだ。
「ありがとうございます、鼠人間は人類の古代技術を保持している可能性が非常に高いです。奴等を駆除し古代技術を奪還できれば人類の発展に大きく貢献できるでしょう……まあ仮に古代技術を使わず鼠人間達が独力で科学技術を発展させていたのならば、そんな危険な害獣達は早い段階で駆除すべきなのは確かです」
「そうだな、人類の為にも一刻も早く駆除しなければ」
異端審問官達とテックプリーストは帝国の為、皇帝陛下の為にもスケイヴンを駆除しなければと改めて決意するのであった。
「先見司、言われた通りに鼠共の船を人間達が回収するように手回ししたぞ」
「ああ、よくやってくれた。これで時間が稼げる」
「歯痒いな、あの醜悪な鼠人は我々の手で駆逐するべきなのでは?あの穢れた汚物を齎す神を崇める鼠人を駆除する為ならば他の方舟も協力してくれるはずだ。いや、先見司を疑うわけではないのだが」
「その必要はない、我々が直接戦わなくても人間達や混沌の勢力が鼠人達を根絶やしにするだろう」
<人物紹介>
●人類の帝国
→40K世界において最大勢力である超巨大ブラック国家。現在衰退しつつ縛りプレイをしているがそれでも大抵の敵は邪魔だクソゴミできるチート国家である。
スケイヴンの存在を把握し危険だと判断する。そしてスケイヴン殲滅の為艦隊を派遣する事を決意するのであった。
●異端審問局
→人類の為に頑張っている秘密警察みたいな組織。異端者、異種族、渾沌勢力に対抗するべく様々な部門が存在する。
●純血の団
→対異種族を担当する組織。異種族といっても広大な銀河では無数の種族がいるので対処するのも大変である。かわいそ……
●異端審問官
→人類の為なら惑星一つ滅ぼす事も躊躇しない人達。無茶苦茶だが40K世界ではそれくらいの覚悟が必要なのは確かである。今回スケイヴン専門の異端審問官が誕生する事になった。
●帝国技術局のテックプリースト
→スケイヴンの宇宙船を解析する為派遣された上級司祭。解析した結果スケイヴンの高い技術力を確認し人類の為に駆除すべきだと結論した。スケイヴン達の駆除作業に同行する事になった。
テックプリースト個人は機械崇拝団としては異端であり機械の改造等は進んで行うべきだし、広大な銀河の片隅に眠った古代技術を発掘するより今の機械崇拝団を改革して自分達で研究・発展させるべきだと考えている。彼の内心を知っているのは技術局長だけである。
●スケイヴンの宇宙船
→何者かに襲撃され漂流し人類の帝国に回収された。一体誰ルダリの仕業なんだ……
スケイヴンの宇宙船を解析した帝国技術局は深刻な危機感を抱いた模様。
●AI
→スケイヴンの宇宙船を搭載されていた人工知能で、マスターであるスケイヴン達を心配する人工知能の鑑。現在帝国技術局に監視されており何もできない。
人類に遭遇するも初見で邪狡知能呼びされ、人類の技術者が非効率的で訳の分からない事をしているのを見て困惑している。
●先見司《ファーシーア》達宇宙エルフ
→スケイヴンの宇宙船人類に回収させ人類の帝国にスケイヴンの存在を教えた。スケイヴンの急成長に危機感を覚え人間達に対処させる事にした。
偉大なる角ありし鼠が齎した歪み石の存在を知り、スケイヴンを殲滅しなければと固く決意する。彼等については次回の話で書きます。