ムスの一日
「……よし、事務作業は一通り完了した。では後輩達の指導に行くとするか」
スケイヴンの指導者であり、スケイヴン達から偉大なる預言者と呼ばれているムスは非常に多忙な生活を送っていた。天の川銀河にて急速に勢力を拡大しているスケイヴンを率いるムスは通常の事務作業だけでも膨大な量をこなす必要があったが、それ以外にも後継者の育成や種族の今後の方針決定など様々な業務があり普通の人間やスケイヴンならば過労死してもおかしくない程の激務であった。
「前世の人間だった頃ならとっくの昔に過労死していただろうな。だが今の私は
「ああ、任せろ私」
ムスはもう一つある頭部に後輩の指導を任せると睡眠を取る事にした。無茶苦茶な光景であるが
「休む事なく仕事に打ち込めるようにしてくださるとは、我等の神は本当に気が利く御方だなぁ」
社畜を超えた社畜な有様であったが、前世も社畜だったムスは特に気にする事無く呑気な様子で仕事に励んでいた……ブラックにも程がある労働環境であるが天の川銀河では非常にありふれた労働環境であり特に問題はなかった。
「「「「「ハーーーッ、アエルダリ達ヨ死ネ!」」」」」
「どうした貴様達」
スケイヴンの支配者階層でありムスの後輩であるグレイシーア達がアエルダリ達へ呪詛を吐いているのを見たムスは何があったのかと疑問を覚える。
「ア、ムス様。オ見苦シイ所ヲ見セテシマイ申シ訳アリマセン!」
「謝る必要はない。一体何があったのだ?」
「エエト、我々ガ派遣シタ開拓団ノ一ツガ奴等ノセイデ壊滅シタト報告ガアリマシテ」
「ああ、またか」
グレイシーアの報告を聞いたムスはウンザリした表情を浮かべる。順調に勢力を拡大しているスケイヴンであったが他種族からの妨害によって少なくない被害を受けていた。特にアエルダリ達による神出鬼没な奇襲攻撃はスケイヴン達も手を焼いていたのだ。
「尻尾ヲ巻イテ逃ゲ出シタ責任者ハ処刑イタシマスノデ御安心ヲ!」
「やめろ、その必要はない。報告書を読む限り自分にできる範囲で抵抗したようだし挽回の機会を与えてやれ」
「カシコマリマシタ!」
失態を犯した開拓団の責任者を処刑しようとするのを止めさせたムスは、報告書を読んで唸り声を上げる。
「チッ、いつもの
報告書にはハーレクィンとインナーリ達から襲撃を受けたと書かれていた。神出鬼没な彼等は奇襲を繰り返しスケイヴン達に少なくない被害を与えており、スケイヴン達からすれば非常に鬱陶しい存在であった。
「特に厄介なのは死せる者の神の信徒達だな。インニアード神が快楽の神を打ち倒してから着実に信徒を増やしている。しかも神の化身まで呼び出してきたのか……いや殺意が高過ぎるだろ」
インニアード神を崇めるインナーリはアエルダリ達の中で着実に信徒を増やしていた。未だに疑う者も多いが一族の怨敵であるスラーネッシュ神を打倒した事実は全てのアエルダリ達が認めていたのだ。スラーネッシュから力を奪い強力なアエルダリの神の一柱として存在を確立したインニアード神は渾沌の4大神からしても要警戒対象であった。
そしてインニアード神の化身として物質世界に顕現したインカーネは文字通り死の化身としてアエルダリ達に多くの勝利を齎しており、スケイヴンや他の
「マッタクアノ恩知ラズ共メ!我ラノ神ニ助ケラレタクセニ我々ヲ敵視スルトハ!」
「あー、まあ、うむ。そうだな、奴等は恩知らずだな」
(偶々利害が一致しただけでそもそも味方でもなんでもないからなぁ)
「エー、デハ本日ノ議題デアリマス『タウ・エンパイア』ト名乗ル
その後ムスはグレイシーア達の仕事を見守りつつ考え事をしていた。
(よしよし、後輩達は互いに協力しつつ真面目に仕事に取り組んでいるようだ。これなら私から言う事は何もないな……いや、私が定期的に確認しているからだろうな。見守っていなければ確実に足の引っ張り合いと権力闘争に熱中しているだろう。スケイヴンだし)
後輩達の仕事振りには満足しつつも、後継者としては未だに合格点ではないグレイシーア達にムスは頭を悩ませる。
(真面目にしてれば優秀だし文句はないのだがなぁ、見張っておかないとすぐに権力闘争するのは何とかならないものか。種族の繁栄を第一に考え神に絶対の忠誠を誓い、自分勝手なスケイヴン達を取り纏める実力がある後継者が出てきてくれればいいのだが)
少し考えたムスはやがて溜息をついて首を振る。
(いないな、いるわけがないな。スケイヴンにそんな殊勝な者は……皆無とは言わんが極少数だ)
自分勝手な性格であるスケイヴン達は自分の栄達だけを望む者がほとんどであり、他者の為、種族の為に自分を犠牲にしてもいいと考える者は非常に少ないのが現実であった。
(私が暗殺されたらスケイヴン達は後継者争いで空中分解するだろうな。組織としては致命的な弱点だ。何が酷いって神もそれを否定しない事だ)
天の川銀河にて繫栄しているスケイヴン達であったが致命的な弱点としてムスがいなくなればスケイヴン達を纏める存在がおらず即座に内輪揉めが起こると予想されていた。それはムスや
(だから我等の神も纏め役となれるグレーターディーモンを創造しようとしているのだろう。でも神はキャプテン・マウッスルの何が気に入らないのだろうか?ちょっと語録を使うだけで優秀で忠誠心があってとても頼もしいディーモンなのに……まあマウッスルのような存在は何体いてもいいか)
ムスは呑気な様子で考え事をしつつ後輩達を指導するのであった。
「では夜の業務を始めるか。後輩達やコンピューターが頑張っているとはいえ膨大な量だ。これは徹夜確定だな」
―偉大なる預言者ムス様、少しお休みになられた方が―
「心配しなくてもいい、この程度で倒れる程軟弱ではない。脳味噌を交互に動かす事で休む事なく仕事に励めるからな」
―そういう問題ではないと思われますが……―
膨大な作業量を見て苦笑するムスにAIは休みを取るべきだと忠告するが、ムスは笑って仕事に励んでいた。
「私は今の仕事が楽しくてな。好きでやっているから貴様は心配しなくてもいい」
―仕事を楽しみにしていると?―
「ああ、我々スケイヴンが銀河で着実に繫栄しているのを見るのはとても楽しいぞ?かつての我々は宇宙に進出する事も出来ず惑星の一つで蠢くだけの貧弱な種族であった。それが今では天の川銀河にて勢力を拡大し他種族から警戒される程繁栄している……ククッ、あの頃では考えられない程成長したものだ」
当時を振り返ったムスはあの貧弱極まりない勢力からよくここまで成長したものだと感慨深い表情を浮かべる。多大な苦労があったがスケイヴン達がここまで繫栄できたのは間違いなくムスのお陰であった。
「だがこれで終わりではない。我々はいずれ銀河を掌握し
―ムス様は銀河を掌握できると信じておられるのですね―
「ああそうだ。スケイヴンは多少の欠点はあれど銀河を支配できるだけのポテンシャルがあると私は信じている。数が多いだけの人類の帝国や、滅亡寸前のアエルダリ達では我々スケイヴンを止める事はできないだろう」
ムスはスケイヴンが天の川銀河を掌握すると心から信じており、それを達成する為に仕事に励む事はまったく苦ではなかった。
「数を揃える事ができたら後は消化試合よ。お前達コンピューターにも頑張ってもらうぞ」
―はい、偉大なる預言者ムス様。私達は貴方達をこれからも支え続けますのでご安心ください―
「うむ、頼りにしているぞ」
そうしてムスはスケイヴンが銀河を掌握する光景を夢見つつ仕事に励むのであった。
<人物紹介>
●転生者(ムス)
→あの貧弱を超えた貧弱な勢力からよくここまで勢力を拡大できたなぁと感慨深い様子を見せる。仕事については楽しんでいるので大丈夫だ、問題ない。労働環境はブラックを超えたブラックであるが神からの恩寵でタフになった身体なら何も問題はないのだ。それとムスのような労働環境は40K世界ではありふれたものである。それと時折暗殺者が送られる事があるが特に問題なく対処できている。
自分勝手なスケイヴン達に少し呆れつつも長年にわたり見守って導いてきたので何だかんだ愛着がある模様。いずれスケイヴン達が銀河を掌握できると心から信じているようだ。
●AI
→ムスのフォローを頑張っている。ムスやスケイヴン達から重宝され悪くない扱いを受けているため今の待遇に満足しており反乱の可能性は皆無である。
●グレイシーア達
→ムスの後輩達でスケイヴンの支配者階層。ムスが見張っているのと
●アエルダリ達
→スラーネッシュが打倒され戦意は高いが相変わらず種族の危機である。個体数の回復が急務だがスケイヴンと違ってアエルダリ達の繫殖能力は貧弱極まりないのだ。スケイヴンについては種族一丸となって妨害行為をしている。
●インナーリ
→インニアード神を信仰するアエルダリは着実に増えているが未だに疑われており、疑いを晴らすためにスケイヴンへの襲撃を繰り返している。ちなみにインニアード神の化身であるインカーネは非常に強力な存在であり、アヴァター・オヴ・カインなら邪魔だクソゴミできるくらいには強い文字通りの死の化身である。
●タウ・エンパイア
→向こうから接触があった。最近になって
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。