ミモザ   作:月島柊

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みなさん、こんにちは。柊です。
最新作「ミモザ」、プロローグは見ていただけだでしょうか。前回のプロローグを読んでからから今回の前編を読んでいただくと、よりストーリーが分かると思います。
題名の由来ですが、「ミモザ」というのは実在する花の名前なんです。私自身も知りませんでしたが、今回執筆する上でミモザについて調べ、それに合ったストーリーになるようにしました。
ちなみに水野七華の髪型、ロングヘアですが、完全に私の好みです。性格も案外好きだったりします(笑)
長々と話しても仕方ないので、早速本編へ参りましょう。
それでは!





〈七華編〉前編

 

 男子と肩を組んで歩いていた七華。その光景をみた瞬間に俺はどこか撃ち抜かれたようだった。

 

「あの2人、付き合ったらしいよね〜」

「らしいね。聞いた聞いた〜」

 

周りにいたガヤが俺の耳に痛いほど入ってくる。あの2人が付き合った。出会ってからそう時間もたっていないはずだが、昔に会ったことがあるのだろうか。

それでも、俺の感情は治まらなかった。七華はただの幼馴染だったはず。別に恋愛感情など七華に対しては無かったはずだ。それなのに、今は盗まれたような感情。何も盗まれていないはずなのに。

俺は先に教室へ向かっていく2人をただ眺めることしかできなかった。

 

 

 

 学級委員になった。それも周りに立候補する人たちがいなかったからだ。ただ、それでも俺は心ここにあらずだった。

 

「愁夜、帰らないの」

 

今日初めて七華が話しかけてきた。七華は何もなかったかのようだ。

 

「……まだ、いいかな」

「じゃあ待ってる。帰りたくなったら言って」

 

七華は俺の隣の席に座る。俺の心の中では今までになかった感情が芽生えていた。

 

(あの男子と帰ればいいじゃないか)

 

七華を突き放したい、という気持ちがどこかにあった。しばらく七華と距離をおきたい。あの男子に夢中になってくれれば、七華がこっちに来ることも無くなる。そうすれば俺が七華に対してこんな複雑な思いもしなくてよくなる。それを望んでいた。

 

(早くあの男子のところ行けよ)

 

七華は一向に離れようとしてくれない。俺はグチャグチャな感情になって、もうどうでもよくなってきていた。

 

(七華を忘れたい。早く来てくれ)

 

俺は七華と目を合わせない。七華も何も話さずに俺が帰ると言い出すのを待っている。

 

「おーい!七華ちゃん!一緒に帰ろ!」

 

ようやく教室にあの男子が入ってきた。

 

「あ、えっと……」

「ほら、早く!」

 

男子が七華の手を引っ張っていく。そうだ、それでいいんだ。これで俺の感情が楽になる。

七華が教室からいなくなる。これで俺の感情は楽に──

 

「くっそ……」

 

俺は机を拳で叩いた。痛みを感じても、俺が満足できるまでずっと、ずっと。頭の中では楽になった、思惑どおりになったと思っているのに、口には「くそ……」「なんで……」とばかり出てくる。

 

「俺……」

 

俺は机を叩き続けた。自分に少しずつ嫌気が差してきた。

 

 

 

 気付けば俺は保健室にいた。手に包帯を巻かれ、保健室のベッドに寝かせられている。

 

「あれ……」

 

周囲を見渡しても人はいない。時間ももう下校時間を過ぎ、もうすぐ8時になろうとしている。

俺はあのあと、教室で1人でいたはず。そのあと……そうか、家に帰ってないんだった。

 

「あ、起きた?」

 

ふわふわとした髪を少し揺らして、1人保健室に入ってきた。綺麗なボブヘアだな。と意識が髪に吸い寄せられたが、それは保健室の養護の先生。ではなく、クラスの人だった。俺が属している学級委員の相方だ。

 

「ごめん、こんな時間まで」

 

俺はその人に起き上がって謝罪する。おそらく拳で叩きすぎたのだろう。

 

「全然。気にしないで。もう大丈夫そうかな」

 

俺は自分の右手を見る。包帯の上からだと何も分からないが、痛みもないしおそらく問題はない。

 

「大丈夫。ありがとう」

「ううん。私、先生に言って鍵閉めないと」

 

俺はベッドから下りて保健室から出ようとする。すると、相方の女子が俺の制服の裾を引っ張った。

 

「どうかした?」

 

俺が振り向くと、女子は真剣な表情で言った。

 

「月島くんに、悪いところはないよ」

 

そう言うと、その女子は俺を追い越して出ていってしまった。結局何だったのだろう。俺は暗くなった帰り道を1人で歩いて帰ることにした。

 

 

 

 翌朝から俺は1人で登校するようになった。これも春の新生活、といえば聞こえはいいだろうか。あくまで聞こえだけだが。

学校でも七華は俺の所まで来ない。代わりと言っては失礼だが、朝に来るようになったのは七華ではなくクラスの学級委員の相方で、昨日保健室に来ていた人だ。星崎(ほしさき)美沙(みさ)というらしい。同じ学級委員なのに知らなかったのもおかしな話だが。

 

「おはよ、月島くん」

 

星崎が俺の机の前に来た。

 

「おはよう、星崎さん」

 

星崎は手に持っていた2枚の紙のうち、1枚を俺の机に置いた。星崎は紙を置くなり一箇所をひ弱そうに指さした。

 

「遠足、今日班決めだってさ」

「あぁ、書いてあるね」

 

星崎は少し不安そうに言う。

 

「私初めてで……学級委員やるの……」

 

まとめられるか不安ということだろう。俺は星崎に安心させるために言った。

 

「意外とみんな聞いてくれるよ。大丈夫」

 

星崎は小さく頷いた。

それと同時にチャイムが鳴り、星崎は自分の席へ戻っていった。

 

 

 

 遠足は1ヶ月後、中間テストが終わった次の日だ。今年、俺たちが遠足で行く場所は千葉の海沿いにあるにある某テーマパーク。みんな今から楽しみにしていた。

 

「今から班を決めていきます。えっと、人数は……」

 

クラスは騒がしく、星崎の話を聞く気も持っていないようだった。星崎もあわあわとクラス全体をキョロキョロしていた。俺は星崎を後ろに退け、俺が前になった。そして、少し声を張ってクラス全体に言った。

 

「静かにしろ。班決めくらいちゃんとやろう」

 

俺がそう言うと、一瞬にしてクラス全体が静かになった。星崎はいきなり静かになったことに驚いていて、とても話せる様子ではない。

 

「遠足の班は2人から6人。じゃあそれぞれで決めてくれ」

 

そう言うと、席を移動して班を組もうとみんなは話していく。そんな中で、大きな声が聞こえた。

 

「七華ちゃん!一緒に周ろう!」

 

七華と付き合っている男子だった。その声が聞こえると、クラスは一瞬静まり、そのあとどよめきが広がった。

 

「荒田くん、やっぱり付き合ってるんじゃん」

「クラス公認にしようとしてる感じだろ、多分」

 

七華もそんな中で断りづらかったのか、荒田のところに静かに歩いていった。

七華が荒田のところに行くと、また話し合いが始まった。まるでさっきの騒動がなかったかのように。

 

「ねぇ、月島くんって、水野さんと仲良かったよね?」

 

クラスの女子が聞いてきた。なんと答えればよいか、俺は分からなかった。「YES」と言えば荒田の件で事態をさらに紛らわしくさせてしまうだろうし、「NO」と言えば──

 

「それより、班って決まった?まず決めよう?」

 

星崎が女子に言った。女子は「そうだね。ごめーん」と言って班決めの話し合いに戻った。

星崎もまだ不安なようだったが、俺のことをわざわざ守ってくれていた。

 

「ありがとう、星崎さん」

「ううん。なんか詰まってたから……」

 

星崎はそれより先のことを聞いてこなかった。空気を読んで、だろうか。

 

「そうだ。ねぇ、一緒に周らない?遠足」

 

星崎が俺の隣で言ってきた。

 

「俺と?ほかの人は」

「いないよ。学級委員2人で回っちゃお?」

 

星崎は俺のことを横から覗き込んでくる。少し顔が熱くなり、身体が固まる。女子のこんなあざとい身振りを見たのが久しぶりだったからだろうか。

 

「……い、いいよ」

「やった!じゃあもう書いちゃうね」

 

星崎は遠足の班名簿に「月島修也」と「星崎美沙」と書いた。おそらくシャーペンだろう。

 

「っと、俺の感じ違う。正しいのは──」

 

俺が美沙のシャーペンを手に取って、消しゴムで俺の下の名前を消して書き直した。

 

「あ、そう書くんだ〜。ごめんね」

「いや、いいよ。間違えやすいし」

 

美沙にシャーペンを返し、俺は俺はみんなの様子を伺う。その途中に荒田と七華も見えたが、俺はすぐに視線を逸らした。

 

 

 

 4月も終わりに近づき、ゴールデンウィークが近くなってきた。クラスはゴールデンウィークの予定や遠足の話で持ちきりで、あと2週間を切った中間テストのことなど誰もが忘れていた。

それは俺も同じで、今も星崎と一緒に話している。星崎とは保健室の件や、遠足の班決めなどで親睦を深め、今では一緒に下校するようにもなっている。

 

「月島くん、帰ろ」

「あぁ。もうそんな時間か」

 

俺は席から立ち上がって星崎と一緒に教室を出た。すると、俺が教室を出た瞬間に、廊下から教室に入っていく人と俺はぶつかった。

 

「あ、ごめん」

「おう。って、月島じゃないか」

 

ぶつかった人は、最近話題になってきた荒田だった。荒田の腕には俯き気味の七華がいて、荒田は俺に自慢してきた。

 

「悪いな月島。お前の七華ちゃん貰っちゃったわ」

 

まだ七華のことを忘れきれていなかった俺は荒田に対して言い返した。

 

「七華、嫌がってるみたいだけど」

「バカ言え。ただ恥ずかしがってるだけだよ。だよな、七華ちゃん」

 

七華は小さく頷いた。

 

「ほら見ろ。ま、お前の見る目が無かったんだな」

 

荒田は教室の中に入っていった。俺は星崎と廊下を歩き始め、帰路についた。

 

「ちょっと言い方キツかったね、荒田くん」

「ああ……まぁ、事実だし」

 

星崎は俺に優しくしてくれる。それが嬉しかった。七華だって優しくしてくれていたが、もう七華は俺の手の届かない場所にいる。荒田は性格からもわかる通り、一度荒田の思う通りになるとそれっきり。俺は何もできないのだ。

俺と星崎は少しモヤモヤとしつつも学校から出た。

 

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