コードギアス:静観者のアリア   作:F.M

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第11話:黄金の騎士、白銀の祝福

エリア11の情勢が日増しに緊迫の度を深めていた頃、神聖ブリタニア帝国の心臓たる帝都ペンドラゴンでは、一つの栄誉ある叙任式が厳かに行われようとしていた。帝国の守護者たる最強の騎士団、ナイトオブラウンズ。その円卓に、新たな若き才能が加えられるのだ。その名は、モニカ・クルシェフスキー。かつてペンドラゴン中央士官学校で、レオンハルト・ジークフリート・アイゼンと共にその名を馳せた、燃えるような金の髪を持つ気高き女性騎士であった。

 

士官学校卒業後、モニカはその卓越した操縦技術と揺るぎない騎士道精神を認められ、ラウンズ候補生としての道を歩み始めた。与えられた過酷な訓練と困難な任務を次々とこなし、その実力を疑う者はいなかった。そして今、二十歳という若さで、皇帝陛下の勅命により、ナイトオブトゥエルブの称号を授与されるに至ったのだ。その叙任は、彼女個人の栄誉であると同時に、ブリタニア軍における世代交代の波と、実力主義の浸透を象徴する出来事でもあった。

 

その報せは、公式発表と共に、遠くエリア11で激務に追われるレオンハルトの元にも届けられた。総督府内の自室で、ペンドラゴンから送られてきた暗号化された公式通達に目を通したレオンハルトは、しばし感慨にふけった。モニターに映し出されたのは、真新しい純白の騎士服に身を包み、緊張と誇りが入り混じった表情で皇帝の前に立つ、モニカの凛々しい姿だった。

 

(クルシェフスキー……いや、モニカ。ついに、君はここまで来たんだな)

 

彼の脳裏に、士官学校時代の思い出が鮮やかに蘇る。初めて言葉を交わした戦術論の講義。模擬戦闘で互いの背中を預け合い、息の合った連携を見せた時の高揚感。時には意見をぶつけ合い、時には互いを励まし合った、かけがえのない日々。そして、卒業の日、それぞれの道へと進む際に交わした、再会を誓う言葉。

 

「アイゼンさんなら、きっとどんな困難な戦場でも、素晴らしい戦果を挙げるでしょうから」

「君もな、クルシェフスキー。いや……いずれは、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー卿、と呼ぶことになるのかな」

 

あの時の、半ば冗談めかした言葉が、今、現実のものとなった。レオンハルトは、胸の奥から込み上げてくる温かい感情と、同時に、わずかな寂しさと焦燥感のようなものを感じていた。彼女は、着実に自分の道を切り開き、栄光の階段を駆け上がっている。それに比べて、自分は……。

いや、と彼は首を振った。感傷に浸っている場合ではない。彼女の栄誉を、心から祝福しなければ。そして、自分もまた、彼女に恥じない道を歩まなければならない。

 

レオンハルトは、ペンを取り、モニカへの祝福のメッセージを綴り始めた。それは、エリア11総督府特務少佐レオンハルト・アイゼンから、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー卿への、公式な祝電という形を取っていたが、その行間には、彼でなければ読み取れないであろう、個人的な想いが込められていた。

 

『ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー卿。この度のナイトオブラウンズへのご叙任、心よりお祝い申し上げる。貴卿の卓越した能力と揺るぎない騎士道精神は、士官学校時代より常に私の目標であり、そして最大の刺激であった。遠くエリア11の地より、貴卿のさらなるご活躍と、神聖ブリタニア帝国の守護者としてのご武運を祈念している。私もまた、この地で自らの使命を全うし、いつか必ず、貴卿と共に帝国の剣として並び立てる日が来ることを信じている。その日まで、互いに研鑽を積もうではないか。――レオンハルト・ジークフリート・アイゼン』

 

そのメッセージを送信した後、レオンハルトは、執務室の窓から見えるエリア11の夜景を見つめた。トウキョウ租界の煌びやかな灯りと、その影のように広がるゲットーの暗闇。この歪んだ世界で、自分は一体何を成し遂げられるのだろうか。ユーフェミアを守るという決意。しかし、その先にあるものは?

 

数日後、ペンドラゴンから、モニカからの返信が届いた。それは、ナイトオブトゥエルブとしての公式な礼状という体裁を取りながらも、彼女らしい実直さと、そしてレオンハルトへの深い信頼が感じられるものだった。

 

『レオンハルト・アイゼン少佐。この度は、丁重なる祝電、誠に痛み入ります。貴官からの言葉は、私にとって何よりの励みとなりました。ナイトオブラウンズとしての重責は、私の想像を遥かに超えるものですが、貴官が士官学校で見せてくれた不屈の精神と、常に前を見据える姿勢を思い出し、日々精進しております。エリア11での貴官の活躍は、遠くペンドラゴンにいる私の耳にも届いております。「白銀の悪魔」…その異名は、貴官の圧倒的な力を示すものであると同時に、多くの困難を乗り越えてきた証でもあるのでしょう。どうか、ご無理だけはなさらないでください。貴官の無事と、そしていつか再び、戦友として、あるいはそれ以上の存在として、貴官の隣に立つことができる日を、心から願っております。――ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキー』

 

レオンハルトは、その手紙を何度も読み返した。彼女の文字の一つ一つから、ラウンズとしての誇りと責任感、そして変わらぬ自分への想いが伝わってくるようだった。

(モニカ……君も、君の場所で戦っているんだな。俺も、負けてはいられない)

彼女の存在は、レオンハルトにとって、エリア11という孤独な戦場における、唯一無二の心の支えだった。彼女の頑張りが、彼の困難な目標へ向かう上での、新たな、そして力強いモチベーションとなったのだ。

 

その頃、帝都ペンドラゴンでは、ナイトオブトゥエルブとしての初任務に臨むモニカの姿があった。彼女に与えられたのは、皇帝直轄の重要施設を防衛するという、極めて名誉な、しかし同時に失敗の許されない任務だった。彼女は、真新しいラウンズ専用のナイトメアフレーム(それは、彼女の髪の色を思わせる金のカラーリングが施された、最新鋭のカスタム機だった)のコックピットに乗り込み、その大きなアクアマリンの瞳に、ラウンズとしての誇りと決意を宿らせていた。

(アイゼンさん……レオンハルト。あなたがエリア11で戦っているように、私もここで、ブリタニアの騎士として、私の正義を貫きます。そして、いつか必ず……)

彼女の胸にもまた、レオンハルトへの熱い想いが灯っていた。

 

遠く離れた二つの場所で、白銀の騎士と紅蓮の騎士は、それぞれの運命と向き合い、それぞれの戦いを続けていた。互いの存在を心の支えとしながら、いつか再び道が交差する日を信じて。

その日は、まだ遠いかもしれない。しかし、彼らの絆は、距離や時間を超えて、確かに繋がっているのだった。

エリア11の空は、今日も不穏な色を湛えている。しかし、レオンハルトの心には、モニカからの祝福という一筋の光が差し込み、彼の背中をそっと押してくれているような気がした。白銀の騎士は、その光を胸に、再び過酷な現実へと立ち向かっていくのだった。

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