コードギアス:静観者のアリア   作:F.M

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第15話:純白の騎士、白銀の祝福と深謀

エリア11の情勢は、日本解放戦線の重鎮、藤堂鏡志朗の黒の騎士団による奪還という衝撃的な事件を経て、さらに混沌の度を増していた。ゼロのカリスマ性と、彼の指揮する黒の騎士団の勢いは日増しに拡大し、ブリタニア支配を揺るがす最大の脅威として、帝国内外にその名を轟かせつつあった。

そのような緊迫した状況の中、エリア11総督府では、一つの希望の光が灯されようとしていた。副総督ユーフェミア・リ・ブリタニアは、ブリタニア人とナンバーズの融和という自らの理想を具現化するため、一人の騎士を自らの傍に置くことを決意した。その人物こそ、名誉ブリタニア人であり、ブリタニア軍において目覚ましい功績を挙げた若きナイトメアフレームパイロット、枢木スザクだった。

 

総督府の広間で執り行われたユーフェミアの騎士叙任式は、厳かながらも、これからのエリア11の未来を暗示するような、どこか清々しい空気に包まれていた。列席する高官や将兵の視線が集中する中、純白の騎士服に身を包んだスザクが、ユーフェミアの前に膝をつく。その顔には、決意と、そして微かな緊張が浮かんでいた。

 

「枢木スザク、汝に命じる。我が騎士として、このユーフェミア・リ・ブリタニアと、このエリア11に住まう全ての民のために、その身を捧げ、忠誠を誓うことを」

 

ユーフェミアの声は、か細いながらも、確固たる意志に満ちていた。その言葉を受け、スザクは迷いなく答える。

 

「イエス・ユア・ハイネス。この命に代えても、ユーフェミア殿下と、このエリア11の人々をお守りすることをお誓いいたします!」

会場が拍手と歓声に包まれる中、レオンハルト・ジークフリート・アイゼンは、誰よりも熱心に、そして心からの拍手をスザクに送っていた。彼の表情は、一見すると平静そのものだったが、その瞳の奥には、複雑な感情が入り混じっていた。

(枢木スザク……ユーフェミア様の騎士か。原作通りとはいえ、やはりこうなったか。だが、それはユーフェミア様の安全を考える上では、むしろ好都合かもしれない。彼の純粋さと、ランスロットの圧倒的な戦闘能力があれば、殿下の身に危険が及ぶ確率は、多少なりとも下がるだろう)

叙任式後、レオンハ-ルトはスザクのもとへ歩み寄った。

 

「枢木卿、ユーフェミア殿下の騎士へのご叙任、心よりお祝い申し上げる。貴卿の忠誠心と実力は、殿下の騎士に相応しいものだ」

レオンハルトの言葉には、建前だけでなく、彼なりの期待と、そしてスザクへの敬意が込められていた。スザクは、少し驚いたようにレオンハルトを見上げた。

 

「アイゼン少佐…ありがとうございます。あなたも、最近のエリア11でのご活躍、各方面から伺っております。特に、藤堂救出作戦の際の『ジークフリード・レジーナ』の圧倒的な戦果は、我がブリタニア軍の将兵に大きな勇気を与えました」

スザクの瞳には、レオンハルトへの純粋な賞賛が宿っていた。

「私の役割を果たしたまでだ。だが、貴卿のランスロットの戦闘能力は、まさに驚嘆に値する。これからの殿下の騎士としての活躍、期待している」

レオンハルトは、あえて藤堂救出作戦におけるゼロ(ルルーシュ)の存在や、スザク自身がゼロに顔を見られたかもしれないという事実には触れなかった。今は、ユーフェミアの理想と、スザクの騎士としての新たな出発に水を差すべきではないと判断したのだ。

「…御意。この身に代えても、殿下をお守りすることをお誓いいたします」

スザクの言葉には、彼の純粋な決意が込められていた。しかし、その瞳の奥には、レオンハ-ルトだけが読み取れる、ブリタニアの現実に直面するが故の、拭いきれない苦悩の影も見て取れた。

 

白銀の決意と式根島への非介入

 

叙任式が終わり、レオンハルトは自室へと戻った。彼の脳裏には、ユーフェミアとスザクの姿が交互に浮かぶ。これで、ユーフェミアの騎士として、スザクが彼女の傍に立つことになった。原作の流れに、彼の介入による大きな歪みは生じていない。

彼の思考は、自然と次の大きなターニングポイントへと向かう。

(次は、式根島か……。ルルーシュとスザクの、二度目の、そして決定的な邂逅の場所。そして、ルルーシュが、スザクに『生きろ』のギアスをかけてしまうあの瞬間……)

レオンハルトは、エリア11の詳細な地図を取り出し、その中のとある離島に指を置いた。式根島。その場所で起こるであろう出来事は、ルルーシュとスザク、二人の幼馴染の運命を決定づけるだけでなく、今後の黒の騎士団とブリタニアの戦い、そして何よりもユーフェミアの未来に、計り知れない影響を与えることを彼は知っていた。

しかし、レオンハルトは、式根島へは行かないという決断を下していた。

彼には、そう判断する明確な理由があった。

 

* ユーフェミアの安全確保が最優先: ユーフェミアは、自分の理想を実現するため、エリア11内部で積極的に動き始めている。彼女の傍を離れることは、彼の最優先使命である「ユーフェミア救済」に穴を開けることになる。特に、黒の騎士団の活動が活発化している現在、総督府の警備体制から離れることはできない。

 

* 歴史の修正力への畏怖と最小限の介入: 原作知識を持つ彼は、不必要な介入が予測不能な「歴史の修正力」を生み出し、より大きな悲劇を招く可能性を危惧していた。特に、ギアスという特殊な力が絡むルルーシュとスザクの直接的な衝突の場に立ち会うことは、彼自身の存在が、意図せずして未来を大きく歪めてしまうリスクを孕んでいた。彼の目的はあくまでユーフェミアの悲劇を回避することであり、それ以外の部分で無理に流れを変えることは避けたかったのだ。

 

* 情報収集と次の手への準備期間: 式根島での出来事を、エリア11から冷静に分析し、その情報が今後の情勢にどう影響するかを見極める時間が必要だった。彼の目的は、ユーフェミアの悲劇を回避するための「行政特区日本」構想の悲劇的な結末を未然に防ぐことであり、そのためには、ギアスキャンセラーの最終調整や、「影の騎士団」の練度向上など、水面下での準備を完璧に整えることが不可欠だった。

 

レオンハルトは、窓の外に広がるエリア11の夜景を見つめた。煌びやかなトウキョウ租界の灯りの下、黒い影が蠢き、そして純粋な理想を抱く紫の姫君がいる。

 

(嵐はもうすぐそこだ。そして、その嵐の中心で、ルルーシュとスザク、二つの運命が交錯する。俺は、その流れをただ見守るしかない。だが、ユーフェミア様、あなただけは、必ずこの手で守り抜いてみせる)

白銀の騎士の瞳の奥には、静かな、しかし鋼のように硬い決意が宿っていた。彼は、来るべき激動の時代に向けて、その爪を研ぎ澄まし、静かに、しかし確実に、闘志を燃やしていた。

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