コードギアス:静観者のアリア   作:F.M

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ここから原作準拠しつつifルートへ進んでいきます。


第22話:潜伏の日々、芽生える決意とIFの萌芽

富士の樹海の奥深く、ブリタニアの喧騒から隔絶された古い山荘は、まるで時が止まったかのような静寂に包まれていた。だが、その静けさとは裏腹に、そこに身を潜める三つの魂は、先の式典会場での地獄絵図と、血染めの逃避行の記憶によって、激しく揺さぶられ続けていた。ユーフェミア・リ・ブリタニアは、精神的なショックから未だ覚醒せず、悪夢にうなされるように苦しげな寝息を立てている。彼女の傍らには、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーが献身的に付き添っていた。そして、レオンハルト・ジークフリート・アイゼンは、窓から遠く燃えるトウキョウ租界の空を眺めながら、深い思索と、重い決断の刻が迫っていることを感じていた。

 

ブラックリベリオン――ゼロ率いる黒の騎士団による全面蜂起は、あの虐殺事件を起爆剤として、エリア11全土を焼き尽くす勢いで拡大していた。その情報を得るたびに、三人の胸には焦燥感と無力感が募ったが、今は耐え忍び、力を蓄える時だと、彼らは互いに言い聞かせていた。

 

レオンハルトからの衝撃的な告白――彼が転生者であること、この世界の未来がある程度「物語」として存在すること、そしてユーフェミアの悲劇がルルーシュのギアス暴走によるものであったという真実――は、ユーフェミアとモニカに計り知れない衝撃を与えた。しかし、その衝撃は、絶望ではなく、むしろ新たな決意と、三人の間にこれまで以上に強固な絆を生み出す結果となった。

 

ユーフェミアは、自分がギアスに操られていたという事実を受け止め、その上で、自らの名の下に行われた虐殺の責任から目を背けることなく、いつか必ず真実を明らかにし、犠牲となった人々と、深く傷つけてしまった日本の人々に謝罪したいと、強く願うようになっていた。そして、兄であるルルーシュが、ギアスという恐ろしい力に翻弄され、孤独な戦いを続けていることを知り、彼をその苦しみから救いたいという、妹としての切実な想いもまた、彼女の中で芽生え始めていた。彼女の瞳には、以前の純粋無垢な輝きに加え、困難な運命に立ち向かおうとする、凛とした強さが宿っていた。

 

モニカは、レオンハルトが一人で抱え続けてきた秘密の重さと、彼の苦悩の深さを理解し、彼への信頼と尊敬の念をより一層深めていた。そして、ギアスという未知の脅威の存在を知り、それに対抗しうる力を持つレオンハルトと共に戦う決意を、改めて固めていた。彼女は、ナイトオブラウンズとしての誇りを胸に、この潜伏生活においても、体力と剣技の鍛錬を怠らず、常にレオンハルトの傍らで彼を支え、時には彼の精神的な負担を和らげるための気遣いを見せた。二人の間には、戦友としての絆を超えた、より深く、そして温かい感情が静かに育まれつつあった。

 

レオンハルト自身もまた、最も信頼する二人に全てを打ち明けたことで、長年彼を縛り付けていた孤独感と重圧から、わずかながら解放されたような感覚を覚えていた。しかし、これからは一人ではない。ユーフェミアとモニカという、かけがえのない仲間と共に、未来を切り開いていくことができる。その確信が、彼に新たな勇気と、より大胆な行動を選択する覚悟を与え始めていた。

 

彼らは、山荘の作戦室で、連日、今後の行動計画について議論を重ねた。

「まず、最優先事項は、ユーフェミア殿下の安全確保と、彼女の名誉回復です。そのためには、ギアスという力の存在と、あの式典での悲劇の真相を、信頼できる人物に伝え、理解を得る必要があります」

レオンハルトが、エリア11の地図を広げながら切り出した。

「しかし、誰に…? 姉上…コーネリア総督は、今の状況では、おそらく私たちの言葉を信じてはくれないでしょう。彼女は、私が日本人を虐殺したと、固く信じ込んでいるはずです」

ユーフェミアが、悲痛な表情で呟く。

「確かに、今のコーネリア総督に直接訴えかけるのは危険です。ですが、ブリタニア内部にも、良識ある人々は存在するはずです。例えば…シュナイゼル宰相。彼は、兄上であり、そして冷静な判断力を持つ人物です。彼ならば、あるいは…」

モニカが、慎重に言葉を選ぶ。

レオンハルトは頷いた。「シュナイゼル宰相は、確かに鍵となる人物の一人だ。だが、彼の真意は読めない。我々の情報を、彼がどう利用するかは未知数だ。より確実なのは、まず我々自身の力を蓄え、そして、我々の言葉に耳を傾けざるを得ない状況を作り出すことだ」

 

彼の視線は、地図上の一点、トウキョウ租界を示していた。ブラックリベリオンによって、そこは今、ブリタニア軍と黒の騎士団の最大の激戦地となっている。

「ブラックリベリオンは、おそらく原作通り、一度は黒の騎士団の敗北という形で終結するでしょう。しかし、その過程で、ブリタニア軍もまた大きな損害を被り、エリア11の統治体制はさらに不安定になる。その混乱の中でこそ、我々が動くべき好機が訪れるはずです」

「では、私たちは、それまでここで待機すると?」モニカが問いかける。

「いや、ただ待つだけではない。この潜伏期間を利用して、我々はいくつかの準備を進める。一つは、ギアスキャンセラーのさらなる改良と、その小型化、量産化の検討。二つ目は、我々自身の戦闘能力の向上と、信頼できる協力者の確保。そして三つ目は…」

レオンハルトは、そこで一旦言葉を切り、ユーフェミアとモニカの顔を交互に見つめた。

「…これは、IFの未来への布石となるかもしれないが…ユーフェミア殿下、あなたが真にエリア11の平和を願うのであれば、いずれあなたは、再びブリタニアの政治の表舞台に立つ必要があるかもしれません。その時、あなたの傍らには、あなたを心から支え、守り抜く騎士が必要となるでしょう」

 

彼の言葉の意図を察し、ユーフェミアは息を呑んだ。

「レオンハルト様…それは…」

「枢木スザク。彼は、あなたの騎士となるべき人間です。原作では、彼はナイトオブセブンに叙任され、ブリタニアの剣として戦い続けることになります。しかし、もし、彼がラウンズの地位ではなく、純粋にあなたの騎士として、あなたの理想のために戦う道を選ぶとしたら…それは、この世界の未来を大きく変える可能性を秘めている」

レオンハルトは、静かに、しかし確信を込めて言った。

「だが、そのためには、彼がラウンズになるという未来を変える必要がある。そして、その空席となるであろうナイトオブセブンの地位に、俺が就くことができれば…それは、ブリタニア帝国の中枢に楔を打ち込み、内側から変革をもたらすための、大きな足掛かりとなるかもしれない」

それは、あまりにも大胆な、そして危険な構想だった。

 

モニカは、その言葉に驚きながらも、すぐにその意図を理解した。

「…つまり、あなたは、ナイトオブラウンズとなり、帝国の中枢からユーフェミア様をお支えし、そしてスザク卿には、純粋にユーフェミア様の騎士としての道を歩ませる、と? それは、確かに…大きなIFですね」

「ああ。だが、それこそが、俺がこの世界で、ユーフェミア様を守り、そして原作の悲劇を回避するために、最も有効な手段の一つだと考えている」

 

ユーフェミアは、二人の言葉を黙って聞いていたが、やがて、その顔に柔らかな、しかし決意に満ちた笑みを浮かべた。

「レオンハルト様、モニカさん…お二人の覚悟、そしてわたくしへの想い、確かに受け取りました。わたくしは、もう決して諦めません。たとえ、どんな困難が待ち受けていようとも、必ず真実を明らかにし、そして、このエリア11に、いえ、世界に、本当の平和をもたらすために、力の限りを尽くします。そして、スザクのことも…彼が、彼自身の道を見つけられるよう、私も支えたいと思います」

彼女の声は、もはや以前のような弱々しさはなく、一人の指導者としての気高さと、優しさを湛えていた。

 

三つの魂は、再び一つになった。彼らは、この静寂の山荘で、来るべき戦いに向けて、それぞれの決意を新たにし、そして、原作とは異なる未来、IFの物語を紡ぎ出すための、最初の設計図を描き始めたのだった。

ブラックリベリオンの嵐は、依然としてエリア11を覆い尽くしている。しかし、その嵐の向こうに、彼らは確かに、新たな時代の萌芽を感じ始めていた。白銀の騎士と黄金の騎士、そして紫の姫君の、真の戦いは、これから始まるのだ。

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