中華連邦からの外交使節団襲撃という衝撃的な事件の裏で、仮面の男ゼロは、神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしての記憶を完全に取り戻し、再びその黒き翼を広げようとしていた。C.C.との再契約、そして偽りの弟ロロ・ランペルージとの歪んだ関係の始まり。彼の周囲は、以前にも増して複雑な人間模様と、ギアスという呪われた力が渦巻いていた。しかし、彼の目的はただ一つ、ブリタニア帝国への復讐と、妹ナナリーのための優しい世界の創造。そのために、彼は再びゼロとして立ち上がり、かつての仲間たちを再集結させ、新生黒の騎士団を率いてブリタニアへの反撃の狼煙を上げようとしていた。
その報は、エリア11総督府のレオンハルト・ジークフリート・アイゼンとモニカ・クルシェフスキーの元にも、瞬く間にもたらされた。ナイトオブセブンとナイトオブトゥエルブとして、彼らはエリア11の最高レベルの軍事情報にアクセスする権限を持っていた。
「やはり、目覚めたか、ルルーシュ…いや、ゼロ。そして、C.C.の仕業か。奴ら、このタイミングでルルーシュを覚醒させ、中華連邦の混乱を利用して、一気に黒の騎士団を再興するつもりだな」
レオンハルトは、送られてきた極秘報告書を読み解きながら、冷静に、しかしその瞳の奥には鋭い警戒の色を浮かべて分析した。彼の原作知識は、ゼロの復活がR2の物語の本格的な始まりであり、これからエリア11が再び激しい戦火に見舞われることを告げていた。
「黒の騎士団の残党…カレン・シュタットフェルトや藤堂鏡志朗、四聖剣といった実力者たちが、再びゼロの元に集結するでしょう。そして、彼らは以前よりもさらに強力な組織となって、我々ブリタニアに牙を剥いてくるはずです。我々も、迎撃態勢を早急に整えなければなりません」
モニカもまた、ナイトオブラウンズとしての的確な状況判断能力を発揮し、レオンハルトに進言する。彼女の黄金の髪が、決意の光を反射してきらめいた。
ユーフェミア・リ・ブリタニアは、ゼロ復活の報を、複雑な思いで受け止めていた。兄であるルルーシュが、再びあの仮面を被り、破壊と混乱の道を選ぼうとしていることへの深い悲しみ。そして、彼がギアスという力に囚われ、苦しんでいるであろうことへの同情。しかし、彼女はもはや、ただ嘆き悲しむだけの無力な皇女ではなかった。レオンハルトから明かされた真実と、自らが背負った「虐殺皇女」の汚名を乗り越え、彼女は、エリア11の真の平和のために、自らの手で何かを成し遂げなければならないという、強い使命感を抱いていた。
「スザク…そして、レオンハルト様、モニカさん。私は、ゼロ…いいえ、ルルーシュと、もう一度話し合いたいと思っています。彼がなぜ戦うのか、何を求めているのかを、今度こそ、自分の耳で確かめたいのです。そして、もし可能なら…彼を、あの苦しみから救い出す道を、共に見つけたいのです」
彼女の言葉には、以前の純粋さに加え、困難に立ち向かう覚悟と、他者を理解しようとする深い包容力が備わっていた。
スザクは、そんなユーフェミアの言葉を、複雑な表情で聞いていた。ゼロへの憎しみは消えない。しかし、ユーフェミアの騎士として、彼女の願いを叶えたいという想いもまた、彼の心の中に強く存在していた。「生きろ」のギアスの影響は、依然として彼の行動を不安定にさせていたが、ユーフェミアという存在が、彼の心の唯一の錨となっていた。
一方、帝都ペンドラゴンでは、皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが、ゼロ復活の報を、まるで全てを予期していたかのように、あるいはそれを楽しむかのように、不気味な笑みを浮かべて受け止めていた。彼の壮大な計画「ラグナロクの接続」にとって、ゼロの存在は、必要な「触媒」あるいは「障害」でしかなかったのかもしれない。V.V.もまた、その傍らで、子供のような無邪気さで、世界の混乱を喜んでいるかのようだった。
シュナイゼル宰相は、この新たな動乱を、自らの野望を実現するための新たな駒として利用すべく、冷徹な計算を始めていた。彼の頭脳は、常に数手先を読み、あらゆる可能性を考慮し、そして最も効率的な結果を導き出そうとしていた。フレイヤという禁断の力もまた、彼の計画の一部として、着々とその完成へと近づいていた。
そして、エリア11。復活したゼロは、驚くべき速さで黒の騎士団を再編し、その勢力を拡大していった。彼は、中華連邦との裏取引を通じて新たなKMFや資金を入手し、さらに、ブリタニアの圧政に苦しむナンバーズだけでなく、ブリタニア人の中からも、彼の理想に共感する者や、現体制に不満を持つ者たちを巧みに取り込んでいった。その手始めとして、彼は、ブリタニアが新たに建設し、その権威の象徴としようとしていた超高層タワー「バベルタワー」の落成式典をターゲットとした、大胆不敵なテロ作戦を計画した。それは、世界に向けて、ゼロの復活と黒の騎士団の健在ぶりを強烈にアピールするための、壮大なパフォーマンスでもあった。
「レオンハルト、モニカ、そしてスザク。バベルタワーの警護は、貴官らに一任する。ゼロは必ず現れる。今度こそ、あの忌々しい仮面を剥ぎ取り、その首を刎ねてくれるわ!」
コーネリア総督は、レオンハルトたちに厳命を下した。彼女にとって、ゼロは妹ユーフェミアをあのような悲劇に巻き込んだ(と彼女は信じている)元凶であり、決して許すことのできない不倶戴天の敵だった。
バベルタワー落成式典当日。タワー周辺は、ブリタニア軍による鉄壁の警備体制が敷かれていた。『ジークフリート・レジーナ・イグニス』を駆るレオンハルト、『ディアナ・フェンサー・ルミナ』を駆るモニカ、そして『ランスロット・コンクエスター』(式根島での損傷から改修され、フロートユニットとハドロンブラスターを装備した強化型)を駆るスザクの三機は、タワー上空の最も重要な防衛ポイントに配置され、眼下の状況を鋭く監視していた。ユーフェミアは、安全を考慮し、総督府の作戦司令室から状況を見守っていたが、その心は常に戦場のスザクたちと共にあった。
そして、ゼロは現れた。
黒の騎士団の主力部隊が、式典会場周辺のブリタニア軍駐屯地やインフラ施設に対して同時多発的な陽動作戦を開始。その混乱に乗じて、ゼロ自身が搭乗する新型KMF「蜃気楼(しんきろう)」(絶対守護領域という特殊な防御システムと、高度な指揮管制能力を持つ、ゼロ専用のKMF)が、カレンの紅蓮可翔式(成田で損傷した紅蓮弐式を改修し、飛行能力を付加した機体)や藤堂の月下(指揮官機)と共に、バベルタワー頂上部へと強襲を仕掛けてきたのだ。
「ブリタニアよ、聞くがいい! 我こそはゼロ! 我が名は、世界の変革を求める全ての者たちの声となる!」
ゼロの宣言が、バベルタワーのスピーカーを通じて、エリア11全土に響き渡る。
「待ちかねたぞ、ゼロ!」
レオンハルトは、『ジークフリート・レジーナ・イグニス』を急加速させ、蜃気楼へと迫る。その両肩からは「ヴァルハザード・ウイング」が展開し、白銀の炎のようなオーラを纏う。
「レオンハルト・アイゼン…また貴様か! 今度こそ、その白銀の翼、へし折ってくれる!」
ゼロもまた、蜃気楼の絶対守護領域を展開し、レオンハルトを迎え撃つ。
二人の宿敵が、再びトウキョウの空で激突する。それは、知略と武勇、そして互いの信念を賭けた、壮絶な空中戦の始まりだった。
モニカの『ディアナ・フェンサー・ルミナ』は、紅蓮可翔式を駆るカレンと激しいドッグファイトを繰り広げる。黄金の光と真紅の炎が、空中で幾度となく交錯し、火花を散らす。二人の女性騎士は、互いの誇りと、守るべきもののために、一歩も引かない熾烈な戦いを展開する。
「あんたみたいなブリタニアの犬に、私たちの邪魔はさせない!」
「あなたの力は認めるわ、カレン・シュタットフェルト! でも、これ以上の無益な破壊は、私が止めてみせる!」
そして、スザクの『ランスロット・コンクエスター』は、藤堂の月下(指揮官機)と四聖剣の月下部隊の前に立ちはだかった。かつての師との再戦。スザクの心には、様々な想いが去来していたが、今はただ、ユーフェミアの騎士として、ブリタニアの平和を守るという使命感だけが、彼を突き動かしていた。ハドロンブラスターが咆哮を上げ、月下の太刀がそれを迎え撃つ。
バベルタワーの頂上部、そしてトウキョウの空は、ブリタニアの白銀と純白、そして黒の騎士団の漆黒と真紅が入り乱れる、壮絶な戦場と化していた。
レオンハルトは、ゼロの蜃気楼の絶対守護領域の特性を瞬時に見抜き、「オーディン・アイ・ネクスト」による精密な予測と、『ジークフリート・レジーナ・イグニス』の圧倒的な機動力を駆使して、その防御の隙間を縫うように攻撃を叩き込んでいく。ツヴァイヘンダー・ランツェ・ノヴァが、蜃気楼の装甲を的確に捉え、火花を散らす。
(ゼロ…いや、ルルーシュ! お前の目的は、このバベルタワーを占拠し、世界に向けて黒の騎士団の復活を宣言することか! だが、それだけではないはずだ。お前は、この混乱に乗じて、さらに何かを狙っている…!)
レオンハルトの脳裏には、原作におけるバベルタワーの戦いの結末と、そこで起こるはずだった「ある出来事」が浮かんでいた。
戦いは、ますます激しさを増していく。
白銀の騎士は、黒き翼の再誕を阻止し、エリア11に偽りではない真の平和をもたらすことができるのか。それとも、ゼロの深謀遠慮の前に、再び苦杯を嘗めることになるのか。
バベルタワーの頂で燃え盛る烽火は、エリア11の、そして世界の未来を、赤黒く染め上げていた。
物語は、R2の本格的な動乱の渦へと、否応なく巻き込まれていくのだった。