コードギアス:静観者のアリア   作:F.M

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第34話:龍の国の激震、偽りの婚礼と共闘の狼煙

 

神聖ブリタニア帝国外交使節団の一員として中華連邦の首都、洛陽に滞在するレオンハルト・ジークフリート・アイゼンとモニカ・クルシェフスキーは、表向きの華やかな外交行事の裏で、この巨大な龍の国に渦巻く深刻な腐敗と、不気味な陰謀の気配を敏感に感じ取っていた。幼き天子を傀儡とし、私腹を肥やす大宦官たちの専横。貧困と圧政に喘ぐ民衆の怒り。そして、その混乱に乗じて勢力を拡大しようとする黒の騎士団の影。さらに、その全てを背後から操ろうとするかのような、ギアス嚮団の不気味な胎動。この国は、まさに一触即発の火薬庫と化していた。

 

レオンハルトは、ナイトオブセブンとしての立場を利用し、ブリタニア大使館を通じて、あるいは彼自身の情報網を駆使して、中華連邦の内部情報を精力的に収集していた。その中で、彼は一つの重大な情報を掴む。それは、大宦官たちが、ブリタニア帝国とのさらなる関係強化と、自らの権力基盤を盤石なものとするために、幼き天子をブリタニアの皇族、あるいはそれに準ずる有力貴族と政略結婚させようと画策しているというものだった。そして、その相手として、シュナイゼル宰相が巧妙に名前を挙げているのが、あろうことか、エリア11副総督であり、先の「虐殺皇女」の汚名を(一部では)着せられたままのユーフェミア・リ・ブリタニアであるという、信じ難い噂だった。

(シュナイゼルの狙いは何だ…? ユーフェミア様を、中華連邦との政略の道具として利用するつもりか? それとも、これはもっと大きな陰謀の一部…例えば、ユーフェミア様をエリア11から遠ざけ、あるいはブリタニア本国での影響力を削ぐための策略か? いずれにせよ、断じて許すわけにはいかない!)

レオンハルトの胸に、激しい怒りと焦りが込み上げてきた。彼は、この政略結婚が、ユーフェミアの純粋な理想を踏みにじり、彼女を再び深い絶望へと突き落とすであろうことを、痛いほど理解していたからだ。

 

モニカもまた、ナイトオブトゥエルブとしての情報網を駆使し、大宦官たちの腐敗の実態や、彼らが秘密裏に進めているブリタニアとの軍事協定(それは、事実上、中華連邦の主権を売り渡すに等しい内容だった)の証拠を掴みつつあった。

「レオンハルト、この国は、本当に内部から腐りきっています。大宦官たちは、自らの保身と欲望のために、天子様を、そして民衆を犠牲にしようとしています。そして、ブリタニアもまた、それを黙認し、利用しようとしている。これが、帝国の正義なのでしょうか…?」

彼女の言葉には、騎士としての矜持と、目の前の不正に対する強い憤りが込められていた。レオンハルトは、そんな彼女の正義感と純粋さを頼もしく思うと同時に、この巨大な陰謀の中で、彼女をも危険に晒してしまうのではないかという不安も感じていた。

 

そんな中、一人の青年が、彼らにとって重要な協力者となる可能性を秘めて、再びその姿を現した。中華連邦の若き武官、黎星刻。彼は、病に伏せる天子への絶対的な忠誠心と、腐敗した大宦官たちから国を救い、民衆のための真の改革を成し遂げたいという熱い理想を胸に秘めていた。しかし、その理想は、強大な権力を持つ大宦官たちの前では、あまりにも無力だった。

レオンハルトは、星刻のその苦悩と焦燥を見抜き、あえて彼に接触を試みた。

「黎星刻殿。我々は、ブリタニアの騎士ではあるが、この中華連邦の現状を憂い、そして天子様の御身を案じている。もし、貴殿が本当にこの国を変えたいと願うのならば、我々と一時的に手を組むという選択肢も、あるいはあるのではないか?」

それは、あまりにも大胆な提案だった。敵国であるブリタニアの騎士からの、共同戦線の申し出。星刻は、当然のことながら強い警戒心を示したが、レオンハルトの真摯な眼差しと、彼が提示した大宦官たちの不正の確たる証拠、そして何よりも、天子の政略結婚という許し難い計画の存在を知り、彼の心は大きく揺れ動いた。

(このブリタニアの騎士…一体何者なのだ? 彼の目的は? だが、もし本当に天子様をお救いできるのなら…この国を、民を救えるのなら…)

星刻は、苦渋の決断の末、レオンハルトとの限定的な協力を受け入れることを示唆した。それは、互いの利害が一致する範囲での、危険な綱渡りのような同盟だった。

 

そして、その水面下での動きと呼応するかのように、ゼロ率いる黒の騎士団もまた、中華連邦での活動を本格化させていた。ゼロは、ナナリーをV.V.から取り戻すための情報を求め、そして黒の騎士団を国際的な反ブリタニア勢力へと飛躍させるための足掛かりとして、この中華連邦に潜入し、大宦官たちと敵対する勢力――黎星刻のような改革派の軍人や、各地で散発的な抵抗を続ける反体制ゲリラ――との接触を試みていた。そして、彼は、天子の政略結婚という情報を掴み、それを阻止することで、中華連邦の民衆の支持を得て、大宦官たちを失脚させるという、壮大な計画を練り上げていた。

 

運命の日は、天子の誕生日を祝う盛大な式典と、その席で発表されるであろう政略結婚の調印式という形で、刻一刻と近づいていた。大宦官たちは、この式典を国内外に自らの権勢を誇示する絶好の機会と捉え、ブリタニアからの使節団(レオンハルトとモニカを含む)や、各国の要人を招き、洛陽の朱禁城(しゅきんじょう)で、かつてないほどの規模の祝宴を準備していた。しかし、その華やかな宴の裏では、血生臭い陰謀と、三つの勢力――レオンハルト&モニカ&星刻、ゼロ率いる黒の騎士団、そして大宦官たち――による、息詰まるような駆け引きが繰り広げられようとしていた。

 

レオンハルトは、モニカ、そして星刻と密かに連携を取り、政略結婚阻止と大宦官たちの失脚、そして可能であれば天子の保護を目的とした、精密かつ大胆な作戦計画を練り上げていた。『ジークフリート・レジーナ・イグニス』と『ディアナ・フェンサー・ルミナ』は、ブリタニアの外交使節団警護用という名目で、既に朱禁城近くに待機させてある。星刻もまた、彼に忠誠を誓う一部の部隊を動かし、決起の準備を整えていた。

(原作では、ゼロがこの政略結婚を阻止し、大宦官たちを打倒する。その結果、中華連邦は黒の騎士団の大きな支援基盤となる。だが、今回は俺たちがいる。そして、星刻というイレギュラーな存在も。果たして、歴史はどう動く…? 俺たちの目的は、あくまでユーフェミア様を守り、そしてギアスという脅威を排除すること。そのためには、この中華連邦の混乱を、我々にとって有利な形へと導く必要がある)

 

式典当日。朱禁城は、かつてないほどの華やかさと、そしてそれを裏切るかのような物々しい警備体制に包まれていた。レオンハルトとモニカは、ブリタニアの使節団の一員として、その祝宴の席に列席していた。彼らの表情は平静を装っていたが、その瞳の奥には、嵐の前の静けさにも似た、鋭い緊張感が宿っていた。

そして、宴が最高潮に達し、大宦官の一人が、得意満面な表情で天子の政略結婚を発表しようとした、まさにその瞬間――

 

「待ったあっ!!」

 

会場の巨大な扉が轟音と共に開き、そこに現れたのは、黒いマントを翻し、仮面で素顔を隠した男、ゼロだった。彼の背後には、カレンの紅蓮可翔式、藤堂の月下、そして四聖剣の月下部隊が、その姿を現した。

「大宦官どもよ! 汝らの悪政、もはやこれまで! この中華連邦の民衆は、そして天子様は、汝らの私利私欲の道具ではない! 黒の騎士団が、今、この場で、汝らに正義の鉄槌を下す!」

ゼロの力強い宣言と共に、黒の騎士団による電撃的な奇襲作戦が開始された。朱禁城は、一瞬にして華やかな祝宴の場から、硝煙と怒号が飛び交う戦場へと変貌した。

 

「予定通りだ! 星刻殿、動け!」

レオンハルトは、混乱する会場の中で、冷静に星刻に合図を送る。星刻もまた、彼に忠誠を誓う部隊と共に、大宦官たちの身柄確保と、天子の保護へと動き出した。

そして、レオンハルトとモニカは、それぞれの愛機へと急行する。

「モニカ、行くぞ! 我々の目的は、天子の安全確保と、大宦官たちの排除、そして何よりも、この混乱に乗じて暗躍しようとするであろう、ギアス嚮団の残党の炙り出しだ!」

「了解! レオンハルト、あなたの指示に従います!」

 

白銀の騎士と黄金の騎士が、再び戦場へと舞い戻る。彼らの前には、ゼロ率いる黒の騎士団、腐敗した大宦官たちの私兵、そして、その背後に潜むかもしれない、さらなる強大な敵が待ち受けている。

龍の国の激震は、まだ始まったばかりだった。この戦いが、エリア11の、そして世界の未来に、どのような影響を与えるのか。それは、まだ誰にも分からない。

ただ一つ確かなことは、レオンハルト・アイゼンの選択と行動が、原作の歴史とは異なる、新たなIFの物語を、力強く紡ぎ出そうとしているということだけだった。

 

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