コードギアス:静観者のアリア   作:F.M

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第35話:朱禁城の攻防、龍の涙と新たなる契約、そして見えざる敵の胎動

 

中華連邦の首都、洛陽の心臓部である朱禁城は、ゼロ率いる黒の騎士団の電撃的な奇襲と、それに呼応した黎星刻麾下の改革派部隊の決起により、一瞬にして華やかな祝宴の場から血と硝煙が渦巻く激戦地へと変貌した。幼き天子の政略結婚を発表しようとしていた大宦官たちの目論見は、まさにその寸前で打ち砕かれ、彼らは己の権力と命運を賭けた絶望的な抵抗を開始していた。この未曾有の政変の渦中に、神聖ブリタニア帝国のナイトオブラウンズであるレオンハルト・ジークフリート・アイゼンとモニカ・クルシェフスキーは、それぞれの目的と信念に基づき、深く、そして危険な形で関与していくことになった。

 

「全軍、朱禁城中心部へと突入! 大宦官どもを捕らえ、天子様を解放するのだ! 中華連邦の未来は、我々の手で切り開く!」

ゼロの、仮面越しにも分かるほどの気迫に満ちた号令が、黒の騎士団のKMF部隊に響き渡る。カレン・シュタットフェルトの紅蓮可翔式がその先陣を切り、藤堂鏡志朗の月下(指揮官機)と四聖剣の月下部隊がそれに続く。彼らの連携は、先のブラックリベリオンの頃とは比較にならないほど洗練され、そして強力になっていた。大宦官たちが私兵として雇っていた旧式のKMF部隊は、彼らの敵ではなかった。

 

一方、黎星刻もまた、彼に忠誠を誓う中華連邦軍の精鋭部隊を率い、朱禁城内部で大宦官派の抵抗勢力と激しい戦闘を繰り広げていた。彼の駆る専用KMF「神虎(シェンフー)」は、その白銀の機体に龍の紋様を刻み、天愕覇王荷電粒子重砲(てんがくはおうかでんりゅうしじゅうほう)という恐るべき火力を秘めていた。星刻の目的はただ一つ、大宦官たちを打倒し、囚われの身となっている天子を救い出し、そして中華連邦に真の正義と改革をもたらすこと。その瞳には、揺るぎない決意と、国を憂う深い悲しみが宿っていた。

 

「モニカ、我々は予定通り、天子の身柄確保を最優先とする! 星刻殿の部隊と連携し、大宦官たちの私兵を排除しつつ、天子がおられるであろう後宮へと向かう! ゼロと黒の騎士団の動きにも注意を怠るな。彼らの目的は、天子を利用し、中華連邦を自らの勢力下に置くことかもしれん!」

レオンハルトは、『ジークフリート・レジーナ・イグニス』のコックピットで、冷静に戦況を分析しながらモニカに指示を送る。彼の「オーディン・アイ・ネクスト」は、朱禁城内部の複雑な構造と、刻一刻と変化する敵味方の配置を正確に把握し、最適な進攻ルートを提示していた。

「了解しました、レオンハルト! 天子様は、必ず私たちがお守りしましょう! そして、この国の未来を、一部の腐敗した者たちの手に渡してはなりません!」

モニカの『ディアナ・フェンサー・ルミナ』もまた、その黄金の輝きを放ちながら、レオンハルトの白銀の騎士と完璧な連携を見せ、大宦官派のKMFを次々と戦闘不能に追い込んでいく。二人のラウンズの力は、この異国の戦場においても、圧倒的な存在感を放っていた。

 

朱禁城内部は、まさに三つ巴、いや、それ以上の勢力が入り乱れる混沌とした戦場と化していた。黒の騎士団、星刻派、大宦官派、そしてレオンハルトとモニカ。それぞれの目的と信念が激しくぶつかり合い、爆炎と閃光が至る所で咲き乱れる。

レオンハルトは、戦いながらも、常にゼロの動きに細心の注意を払っていた。原作知識を持つ彼にとって、ゼロ…ルルーシュ・ランペルージが、この中華連邦の政変をどのように利用し、そして天子とどのような関係を築こうとしているのかは、今後の世界のパワーバランスを左右する極めて重要な要素だったからだ。

(ゼロの狙いは、天子を自らの傀儡とし、中華連邦を黒の騎士団の、いや、彼自身の超合衆国の構想の最初の礎とすることか…? だとすれば、天子の身柄確保は、我々にとっても最優先事項となる。彼女を、ゼロの手に渡すわけにはいかない。そして、あわよくば、この混乱に乗じて暗躍しようとするであろう、ギアス嚮団の残党…V.V.の影を捉えたい)

 

激しい戦闘の末、レオンハルトとモニカ、そして星刻の部隊は、ついに天子が幽閉されているとされる後宮の最深部へと到達した。しかし、そこで彼らを待っていたのは、大宦官たちの最後の抵抗と、そして予想だにしなかったゼロの姿だった。ゼロは、既に大宦官たちの裏をかき、天子と接触を果たしていたのだ。

「待っていたぞ、ブリタニアの騎士、そして黎星刻。お前たちの動きは、全て私の計算通りだ」

ゼロは、幼き天子を傍らに立たせ、不敵な笑みを浮かべて(いるかのように仮面越しに)レオンハルトたちを見据えた。天子は、怯えたような表情を浮かべていたが、その瞳の奥には、ゼロに対するわずかな信頼と、そして自らの運命を切り開こうとする意志の光が宿り始めていた。

「ゼロ…! 天子様をどうするつもりだ!?」星刻が、怒りと焦りを込めて叫ぶ。

「どうする、とは心外だな。私は、天子様を、そしてこの中華連邦を、大宦官という寄生虫から解放し、真の独立と繁栄へと導こうとしているのだ。そのためには、天子様のご協力が不可欠だ。そうであろう? 天子様」

ゼロは、優しく天子に語りかける。天子は、一瞬ためらった後、小さな声で、しかしはっきりと答えた。

「…はい。わたくしは、ゼロ様と共に、この国を…民を救いたいと願っております」

その言葉は、星刻にとって、そしてレオンハルトとモニカにとっても、衝撃的なものだった。

 

(ゼロ…いや、ルルーシュめ…! 短時間のうちに、天子様の心をここまで掴んでしまうとは…! やはり、ギアスを使ったのか? いや、それだけではない。彼の言葉には、確かに人を惹きつける力がある。そして、天子様ご自身もまた、この国の未来を本気で憂い、変革を望んでおられる…)

レオンハルトは、状況の複雑さを改めて認識した。もはや、天子を「保護」するという単純な図式では事は収まらない。彼女は、自らの意志で、ゼロと共に歩むことを選択しようとしているのだ。

 

「ならば、我々もその選択を尊重しよう。だが、ゼロ、一つだけ言っておく。もし、天子様を、そしてこの中華連邦を、お前の私利私欲のために利用しようというのなら、その時は、このレオンハルト・アイゼンが、全力でお前を排除する」

レオンハルトは、静かに、しかし絶対的な圧力を込めてゼロに告げた。

「ふ…面白い。ならば、せいぜい私の行動を見守っているがいい、白銀の騎士よ。世界は、これから大きく変わるのだからな」

ゼロは、そう言い残すと、天子と共に、黒の騎士団のKMFに護衛されながら、朱禁城からの脱出を開始した。

 

大宦官たちは、星刻と、そしてゼロの離反によって完全にその権力を失い、捕らえられた。中華連邦は、天子と、彼女を補佐する黎星刻、そして実質的な影響力を持つことになるであろうゼロ(黒の騎士団)によって、新たな統治体制へと移行していくことになる。それは、ブリタニア帝国にとって、極めて大きな脅威の出現を意味していた。

 

レオンハルトとモニカは、この中華連邦の政変において、直接的な武力介入は限定的なものに留めながらも、情報収集と、星刻やゼロといったキーパーソンとの接触を通じて、今後の世界のパワーバランスに少なからぬ影響を与えることになった。そして何よりも、彼らは、この異国の地で、ギアスという力のさらなる側面と、それが人々の運命をいかに翻弄するかを目の当たりにした。

特にレオンハルトは、この中華連邦での出来事を通じて、ギアス嚮団、そしてV.V.という存在が、世界の裏で暗躍し、各国の政治や紛争に深く関与しているという疑いを、確信へと変えつつあった。彼らの真の目的は何なのか? そして、皇帝シャルルの「ラグナロクの接続」計画とは一体何なのか?

(見えざる敵は、確実にその動きを活発化させている。そして、その触手は、エリア11のユーフェミア様にも伸びようとしているのかもしれない…)

 

中華連邦での任務を終え、エリア11へと帰還する途中のブリタニアの輸送艦の中で、レオンハルトは、窓の外に広がる広大な星空を見上げながら、深い思索に沈んでいた。彼の隣では、モニカが、心配そうにその横顔を見つめている。

「レオンハルト…何か、お悩みですか?」

「…いや。ただ、これから我々が戦うべき相手は、もはや黒の騎士団やゼロだけではないのかもしれない、とね。もっと大きく、そして根深い…世界の理そのものを歪めようとするような、巨大な悪意が存在するような気がするんだ」

彼の言葉は、モニカの胸にも、不吉な予感として重く響いた。

 

エリア11に帰還した彼らを待っていたのは、束の間の平穏と、そしてすぐに訪れるであろう、さらなる激動の予感だった。ゼロは、中華連邦との連携を背景に、黒の騎士団を「超合集国」という新たな国際組織の中核として再編し、ブリタニアに対する世界規模での解放戦争を宣言しようとしていた。そして、その動きに呼応するかのように、帝都ペンドラゴンでは、シュナイゼル宰相が、フレイヤという恐るべき大量破壊兵器の実戦投入を画策し、皇帝シャルルとV.V.は、アーカーシャの剣の起動と「ラグナロクの接続」計画を最終段階へと進めようとしていた。

R2の物語は、いよいよそのクライマックスへと向けて、加速度的に動き出そうとしていた。

白銀の騎士と黄金の騎士は、この世界の運命を左右する巨大な歯車の中で、愛する人々を守り、そして自らの信じる未来を切り開くために、その剣を振るい続ける。彼らの戦いは、まだ終わらない。それは、希望と絶望が交錯する、壮大な叙事詩の、まだ中盤に過ぎなかったのかもしれない。

 

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