天空要塞ダモクレスを巡る、人類の存亡を賭けた死闘は、レオンハルト・ジークフリート・アイゼンの命を賭したフレイヤ弾頭の部分的無力化という奇跡と、ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)による兄シュナイゼル・エル・ブリタニアへのギアスという、禁断の一手によって、辛うじて最悪の結末を回避する形で終結した。シュナイゼルはゼロの意のままに操られる人形となり、ダモクレスとそのフレイヤは、一時的にではあるが、世界を脅かす牙を失った。しかし、その代償はあまりにも大きく、そして世界の混乱は収まるどころか、新たな局面へと突入しようとしていた。トウキョウ租界の一部はフレイヤの爪痕によって焦土と化し、おびただしい数の無辜の命が失われた。そして何よりも、神聖ブリタニア帝国という巨大な権力の頂点に君臨していた皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの失踪(Cの世界への幽閉)と、その最大の対抗勢力であり、次期皇帝の最有力候補であったはずのシュナイゼルという二つの絶対的な柱を同時に失った世界は、かつてないほどの権力の真空状態と、それに伴う深刻な秩序の崩壊に直面していた。各地で、ブリタニアの支配に反旗を翻す動きが再び活発化し、中華連邦やE.U.といった他の大国もまた、この混乱に乗じて自国の勢力拡大を画策し始め、世界は再び、終わりなき戦乱の渦へと飲み込まれようとしていた。
この混沌とした、まさに世界の終末を思わせる状況を収拾し、世界に新たな、そして持続可能な秩序をもたらすという、あまりにも重く、そして困難極まりない責務を、自ら進んで買って出たのは、ナイトオブセブン、レオンハルト・アイゼンと、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーだった。彼らは、満身創痍の愛機『ジークフリート・レジーナ・セラフィム』と『ディアナ・フェンサー・ノクターン』を駆り、そして彼らに絶対の忠誠を誓う僅かな手勢と共に、まず混乱の極みにある神聖ブリタニア帝国の暫定的な掌握へと、電光石火の如く乗り出した。その行動は、多くの者にとってはあまりにも唐突で、理解不能であり、そして何よりも、正気の沙汰とは思えない暴挙に映った。
「レオンハルト卿、モニカ卿! あなた方は一体何を考えているのですか!? 今こそ、我々ブリタニアの騎士が結束し、シュナイゼル殿下の残された意思を継いで、この混乱した世界に秩序と安寧をもたらすべき時ではありませんか! なぜ、帝国に対し牙を剥くような真似を…!」
かつての同僚であったはずの、誇り高きブリタニア軍の将校たちが、帝都ペンドラゴンの宮殿前で、レオンハルトとモニカの前に立ちはだかり、困惑と怒りを込めて問い詰める。彼らは、レオンハルトたちの真意を測りかねていた。
しかし、レオンハルトの返答は、彼らの僅かな期待すらも打ち砕く、冷酷非情なものだった。その蒼い瞳には、かつての穏やかさや理知的な輝きは微塵もなく、まるで氷のように冷たく、そして全てを焼き尽くすかのような、狂気にも似た決意の光が宿っていた。
「シュナイゼルのやり方は、所詮、フレイヤという恐怖による一時的な抑圧に過ぎなかった。それは、真の平和をもたらしはしない。そして、この腐敗しきり、嘘と偽りに満ちた神聖ブリタニア帝国にも、もはや未来などありはしない。我々は、この世界に、全く新しい秩序を、我々自身のこの手で創造する。そのためには、まず、全ての旧体制を、その瓦礫の一つに至るまで、徹底的に破壊し尽くす必要があるのだ!」
彼の言葉は、絶対的な自信と、そして聞く者を戦慄させるほどの、凄まじいまでの覇気を伴って、ペンドラゴンの空に響き渡った。モニカもまた、その隣で、一切の感情を排したかのような美しい能面のような無表情で佇み、レオンハルトのその恐るべき宣言を、無言のうちに肯定するかのように、静かに頷いた。彼女の黄金の髪が、血のような夕陽に照らされて、不吉な輝きを放っていた。
彼らは、その言葉通り、ブリタニア帝国の主要な軍事拠点や政府機関を、その圧倒的な武力と、シュナイゼル失脚後の指揮系統の混乱に乗じて、まるで嵐のように次々と制圧していった。抵抗する者は、それがかつての戦友であろうと、ブリタニアの誇り高き騎士であろうと、容赦なく、そして徹底的に排除された。その中には、かつて共に戦場を駆け、互いの背中を預け合ったはずのブリタニアの騎士たちの、血と涙に濡れた姿もあった。彼らの行動は、もはや単なる反逆ではなく、ブリタニア帝国そのものに対する、そして世界の既存秩序全てに対する、明確な宣戦布告であり、破壊行為にも等しかった。
「白銀の悪魔と、その傍らに侍る黄金の魔女が、ついにその忌まわしき本性を現した!」
「彼らは、シュナイゼル殿下を謀殺し、帝国を乗っ取り、世界を恐怖で支配しようとしているのだ!」
世界中に、そのような噂と恐怖が、まるで感染病のように瞬く間に広まっていった。レオンハルトとモニカは、かつての英雄としての名声など見る影もなく、一夜にして、世界で最も恐れられ、そして最も憎まれるべき存在、「絶対悪」の象徴へと堕ちていったのだ。
エリア11の総督府で、その信じられない報せを耳にしたユーフェミア・リ・ブリタニアは、激しい衝撃と、言葉にできないほどの深い悲しみに打ち震えていた。
「なぜ…なぜなのですか、レオンハルト様、モニカさん…!? あなた方は、世界の平和を、そして人々の笑顔を、誰よりも強く願っていたはずではありませんか…!? なのに、どうして、こんな…こんな恐ろしいことを…! これでは、シュナイゼルお兄様や、あるいはかつての皇帝陛下と同じではありませんか…!」
彼女の純粋な心は、最も信頼し、そして敬愛していた二人の、あまりにも突然で、そしてあまりにも残酷な「裏切り」に、深く、そして修復不可能なほどに傷ついていた。彼女の瞳からは、大粒の涙が止めどなく溢れ落ち、その華奢な肩は、悲しみのあまり小刻みに震えていた。
枢木スザクもまた、ユーフェミアの傍らで、怒りと困惑、そして理解できない絶望に、ただ固く拳を握りしめることしかできなかった。彼は、レオンハルトの圧倒的な実力と、その奥に秘められた高潔な精神を、誰よりも認めていたはずだった。モニカの騎士としての誇り高さも。しかし、今の彼らの行動は、到底理解することも、そして許容することもできるものではなかった。ユーフェミアの悲しみと絶望が、彼の心をさらに深く抉った。
そして、その世界の混乱と絶望の最中、ただ一人、あるいは二人だけが、レオンハルトとモニカの真の目的――「白銀のレクイエム」の全貌を、彼ら自身から(あるいは、その常軌を逸した行動と、そこに隠された異常なまでの覚悟から推測し、C.C.を通じて最終的に確認する形で)知らされることになる。ゼロことルルーシュ・ランペルージと、彼の共犯者である不死の魔女C.C.だった。
ペンドラゴン郊外の、打ち捨てられた古い教会。月明かりだけが、ステンドグラスを通して、薄暗い聖堂の内部を幻想的に、そしてどこか不吉に照らし出していた。その中央で、レオンハルトとルルーシュは、再び対峙していた。レオンハルトは、もはやナイトオブラウンズの制服ではなく、自らがデザインした、漆黒と白銀を基調とした、どこか終末の王を思わせる威圧的な軍服を身に纏っていた。ルルーシュは、依然としてアッシュフォード学園の制服姿だったが、その瞳には、もはや学生としての甘さはなく、世界の命運を左右するチェスプレイヤーとしての、冷徹な輝きが宿っていた。
「…つまり、お前たちは、この世界の全ての憎しみを、自分たち二人だけに集め、そして、世界の誰かに討たれることで、その憎しみの連鎖を完全に断ち切り、ユーフェミアが統治するであろう、平和で優しい世界を、未来を遺そうというのか…? 馬鹿な…あまりにも、あまりにも無謀で、そして自己犠牲的すぎる…! それは、かつて俺がやろうとしていた『ゼロレクイエム』そのものではないか…いや、それ以上に過酷で、そして確実な…!」
ルルーシュは、レオンハルトから語られた計画の、そのあまりにも壮大で、そしてあまりにも悲壮な全貌に、言葉を失い、仮面の下で激しく動揺していた。それは、彼自身がかつて構想し、しかしあまりの重圧と孤独に実行を躊躇していた計画と、目的においては酷似していた。だが、レオンハルトとモニカは、それを二人で、しかもより徹底した形で実行しようとしている。
「俺たちがやらねば、一体誰がやるというのだ? ルルーシュ、お前にはまだ、守るべき妹ナナリーがいるはずだ。お前は、生き延びて、新しい世界で、彼女と共に、今度こそ本当に幸せになるべきだ。この世界の全ての汚泥は、俺とモニカが、残らず引き受けていく。それが、俺たちがこの世界に転生してきた意味なのかもしれない…そして、それが、俺たちがユーフェミア様にしてあげられる、唯一の、そして最大の贈り物なのだ」
レオンハルトの言葉には、一切の迷いも、そして後悔もなかった。その蒼い瞳は、まるで遠い未来の、平和な世界を見据えているかのように、どこまでも澄み切っていた。
「…なぜ、そこまでする? お前たちとユーフェミアとの間に、そこまでの…」
「理由など、必要ない。ただ、守りたいと思った。彼女の笑顔を、彼女の純粋な理想を、この汚れた世界から。それだけだ。そして、モニカもまた、同じ想いを抱いてくれている」
ルルーシュは、しばらくの間、言葉を発することができなかった。レオンハルトとモニカの、そのあまりにも純粋で、そしてあまりにも強靭な愛と献身の前に、彼自身の野望や計算、そして復讐心すらも、ちっぽけなものに思えてくるかのようだった。
「…分かった。ならば、俺は、お前たちのその狂った、しかし美しい計画が成功するように、全力で『敵』を演じよう。そして、その最後の瞬間には、この俺の手で、お前たちを…この世界の全ての憎しみと共に、葬り去ってやろう。それが、俺にできる、唯一の友情の証だ」
ルルーシュの声は、震えていた。それは、親友を、そしてある意味では自分以上に世界を愛し、そのために全てを捧げようとする者たちを、自らの手で葬り去らなければならないという、あまりにも過酷な運命を受け入れる、悲壮な覚悟の表れだった。彼の瞳からは、一筋の涙が静かに流れ落ちていた。
「感謝する、ルルーシュ。いや、ゼロ。お前こそが、この世界の真の救世主となるのかもしれないな」
レオンハルトの瞳にも、かすかな、しかし温かい光が宿っていた。
こうして、白銀の騎士と黒き反逆者は、世界の運命を賭けた、そして互いの魂を賭けた、一時的な、しかし誰よりも深いところで結ばれた、奇跡的とも言える禁断の共犯関係を結ぶことになった。
その日を境に、レオンハルトとモニカによる「世界の敵」としての戴冠と、ルルーシュ(ゼロ)による「抵抗の英雄」としての暗躍が、全世界を舞台に繰り広げられることとなった。
レオンハルトとモニカは、ブリタニア帝国を完全に掌握すると、その圧倒的な軍事力を背景に、中華連邦、E.U.、そして世界中のあらゆる紛争地域に、まるで嵐のように介入し、逆らう者には容赦ない鉄槌を下した。彼らの駆る『ジークフリート・レジーナ・セラフィム』と『ディアナ・フェンサー・ノクターン』は、もはや無敵であり、その所業は「白銀帝政」「黄金の恐怖」として、世界中の人々に絶対的な恐怖と、そして一点集中の憎悪を植え付けた。多くの都市が炎上し、多くの命が失われた(ように見せかけられた、ゼロとの連携による巧妙な情報操作も、そこには巧みに織り込まれていた)。彼らは、あえて、世界で最も忌むべき、そして最も憎まれるべき絶対悪の限りを尽くし、世界中のありとあらゆる負の感情を、ただ自分たち二人へと、その双肩へと集束させていったのだ。
その過程で、彼らは多くのものを失った。かつての仲間からの信頼、尊敬、そして友情。彼らの心は、絶えず血を流し続けていたが、それでも彼らは、愛するユーフェミアがいつか笑顔で暮らせるであろう、平和で優しい未来を信じ、その茨に覆われた、孤独な道を、ただひたすらに突き進んだ。
黒の騎士団は、ゼロの卓越した指揮の下、このレオンハルトとモニカによる恐怖の圧政に敢然と立ち向かう「最後の希望の光」として、世界中からかつてないほどの支持と支援を集め、その勢力を空前の規模にまで拡大させていった。カレン・シュタットフェルト、藤堂鏡志朗、四聖剣、そして多くの名もなき兵士たちが、打倒「白銀帝政」という正義の旗印の下、ゼロの元に集結した。彼らは、レオンハルトとモニカの真の意図など知る由もなく、ただ純粋に、圧政からの解放と、世界の平和の実現のために、その命を燃やして戦っていた。
そして、ついに、その時は来た。世界の憎しみが、レオンハルト・ジークフリート・アイゼンとモニカ・クルシェフスキーという二人の「絶対悪」に完全に集中し、そして彼らを打倒することが、世界の、全人類の、共通の、そして唯一の願いとなった、その運命の瞬間。
最後の決戦の舞台は、かつてユーフェミア・リ・ブリタニアが、血塗られた理想と共に散った、あの因縁の地、富士山麓に、レオンハルトとモニカが自らの手で築き上げた、天空に浮かぶ巨大な要塞「アスガルド」だった。そこは、彼らの圧政の象徴であり、そして同時に、彼らが自らの墓標として選んだ場所でもあった。
ゼロ率いる黒の騎士団を中心とした「世界解放軍」が、全人類の希望と祈りをその黒き翼に乗せ、天空要塞アスガルドへと、最後の総攻撃を開始する。
「レオンハルト! モニカ! お前たちの血塗られた圧政も、今日、この瞬間をもって終わりだ! 世界は、そして未来は、お前たちのような独裁者を、決して許しはしない!」
ゼロの、仮面越しにも分かるほどの、怒りと決意に満ちた力強い宣言が、戦場全体に響き渡る。
「ふん、面白い。ならば、その力を、その正義を、我々に見せてみるがいい、ゼロ! 我々を倒せるものならな!」
レオンハルトは、『ジークフリート・レジーナ・セラフィム』のコックピットで、まるでこの最後の舞台を楽しんでいるかのような、不敵な笑みを浮かべた(ように、世界中の人々には見えた)。その隣では、モニカの『ディアナ・フェンサー・ノクターン』が、静かに、しかし絶対的な、そしてどこか悲しいほどの美しさを湛えた存在感を放って佇んでいる。
二人の騎士は、これが、自分たちの人生の、そして世界の歴史の、最後の戦いであることを、痛いほどに知っていた。そして、その先にある、愛する人々の、そしてまだ見ぬ子供たちの、笑顔に満ちた未来を、心の底から信じていた。
激しい、そして壮絶な戦闘が繰り広げられる。枢木スザクのランスロット・アルビオン、カレン・シュタットフェルトの紅蓮聖天八極式、藤堂鏡志朗の月下(最終決戦仕様)といった、世界最高峰のナイトメアフレーム群が、レオンハルトとモニカの二機に、死力を尽くして、そして憎しみを込めて挑みかかる。しかし、レオンハルトとモニカの、もはや神域に達したかのような連携と、彼らの最終決戦仕様KMFの、常識を超えた圧倒的な性能は、それらを寄せ付けないほどの、まさに絶対的な強さを見せつけた。
だが、彼らは、決して本気で相手を殺そうとはしなかった。彼らの目的は、あくまで「討たれる」こと。世界の憎しみを、その身に引き受け、そして華々しく散ることなのだから。彼らは、巧みに攻撃を受け流し、致命傷を避け、そして相手に「勝った」と思わせるための、完璧なまでの「敗北」を演じ続けていた。
そして、ついに、計画された、そして待ち望んでいたその瞬間が訪れる。
激しい攻防の末、レオンハルトの『ジークフリート・レジーナ・セラフィム』は、ゼロの『蜃気楼』と、そしてスザクの『ランスロット・アルビオン』の、まるで計算され尽くしたかのような完璧な連携攻撃によって、その動きを完全に封じられる。そして、モニカの『ディアナ・フェンサー・ノクターン』もまた、カレンの紅蓮聖天八極式の、全霊を込めた輻射波動によって、その美しい翼を折られ、戦闘不能に陥った(ように、世界中の人々には見えた)。
「終わりだ、レオンハルト・アイゼン! モニカ・クルシェフスキー! お前たちの悪夢のような支配は、今、ここで終わる!」
ゼロが、蜃気楼のコックピットから、その黒いマントを翻し、世界の救世主として、その姿を現した。その手には、かつてブリタニア皇帝の象徴であった、しかし今は世界の解放を象徴する剣が、月光を浴びて鋭く握られている。
レオンハルトとモニカは、互いの大破したKMFのコックピットから、まるで全ての重荷から解放されたかのような、穏やかで、そして満足げな表情で、ゆっくりと近づいてくるゼロを見上げていた。彼らの瞳には、一点の曇りも、そして後悔もなかった。
「…ああ、これでいい。本当に、これでいいんだ。ゼロ…いや、ルルーシュ。後のことは、頼んだぞ。ユーフェミアを…そして、ナナリーと、この世界の未来を…どうか、頼む…」
「モニカ…愛している…この世界で、君に出会えて、本当に良かった…」
「私もです…レオンハルト…あなたと共に生き、そしてあなたと共に逝けるのなら、それ以上の幸せはありません…永遠に、あなたを愛しています…」
二人の最後の言葉は、誰にも聞こえることはなかった。ただ、互いの心の中だけで、永遠に響き続けるだろう。
ゼロの剣が、月光を反射し、非情なまでに、しかしどこか深い悲しみを湛えて、振り下ろされる。
その瞬間、世界は息を呑み、そして、圧政者たちの、絶対悪の、確実な死を、その目に焼き付けた。
白銀の騎士と黄金の騎士は、世界中の全ての憎しみを、その清らかな魂に引き受け、そして、愛する者の、そして世界の、輝かしい未来のために、その尊い命を、まるで夜空に咲いた一瞬の花火のように、美しく、そして潔く散らせたのだった。
彼らの死は、世界に衝撃と共に、しかし確かな、そして揺るぎない平和への希望をもたらした。
数年後。
世界は、ユーフェミア・リ・ブリタニアの指導の下、ブリタニア帝国は解体され、各国の自治と協調、そして何よりも相互理解を重んじる「世界連合」として、新たな、そして希望に満ちた時代を歩み始めていた。ギアスという呪われた力は、C.C.と、そしてその存在を知るごく一部の者たち――ルルーシュ、スザク、そしてユーフェミア――によって厳重に管理され、二度と悪用されることのないよう、歴史の闇の奥深くに封印された。
ユーフェミアは、レオンハルトとモニカの、あまりにも大きな犠牲と、彼らが遺してくれた真の平和の重みを、その華奢な双肩に、しかし力強く受け止め、時には悩み、時には涙し、そして時には彼らの面影を胸に微笑みながら、世界を、人々を、優しく、そして賢明に導いていた。彼女の傍らには、常に騎士枢木スザクが、その影のように、しかし太陽のように温かく寄り添い、彼女を支え続けていた。彼は、レオンハルトとモニカが紡いだ犠牲の意味を、そしてユーフェミアが背負うものの大きさを、誰よりも深く理解し、彼女と共に生きることを誓っていた。
そして、世界のどこかで、ルルーシュ・ランペルージとC.C.は、愛する妹ナナリーと共に、過去の罪を償うかのように、しかしどこか穏やかな表情で、静かに、そして誰にも知られることなく暮らしていた。彼もまた、レオンハルトとモニカが、命を賭して紡ぎ出したこの新しい世界の、一人の、そして最も重い責任を負った証人として。
かつて白銀の騎士と黄金の騎士が、心の底から夢見た、「誰もが笑顔で暮らせる優しい世界」。それは、まだ決して完全な形ではないのかもしれない。しかし、人々は確かに、そのあまりにも尊い理想に向かって、一歩ずつ、しかし確実に、手を取り合って歩みを進めていた。
レオンハルトとモニカの魂は、きっと、その新しい世界のどこかで、愛する人々の、そして未来の子供たちの、幸せと笑顔を、穏やかに、そして誇らしげに、見守り続けているのだろう。
彼らの「白銀のレクイエム」は、確かに、世界の永い夜の終わりを告げる、最初の、そして最も美しく、最も気高い序曲となったのだった。
そして、その旋律は、人々の心の中で、永遠に語り継がれていくのだろう。白銀と黄金の騎士たちの、愛と犠牲の物語として。
あとがき
この物語を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
長きにわたり、レオンハルト・ジークフリート・アイゼンとモニカ・クルシェフスキー、そしてユーフェミア・リ・ブリタニアをはじめとする多くのキャラクターたちの運命にお付き合いいただけたこと、作者として感無量です。
この作品は、皆様ご存知の通り、傑作『コードギアス 反逆のルルーシュ』の世界観をお借りした二次創作であり、あくまでも原作の大きな流れを尊重しつつ、「もし、あの時、ユーフェミアが救われていたら…」という、私自身が長年抱き続けていたIFの可能性を追求した物語でした。
原作の持つ緻密な世界設定、魅力的なキャラクターたち、そして息を呑むようなドラマ展開に最大限の敬意を払いながらも、そこにレオンハルトという「原作知識を持つ転生者」という異物を投入することで、どのような化学反応が起きるのか、どのようなIFの未来が紡がれるのかを、私自身も楽しみながら執筆してまいりました。
ヒロインとしてモニカ・クルシェフスキーを選んだのは、ご推察の通り、原作においてナイトオブラウンズの一員でありながらも、その内面や背景があまり多く語られていなかったキャラクターであったため、オリジナルの物語の中で彼女の魅力を自由に、そして深く掘り下げることができるのではないかと考えたからです。彼女の騎士としての誇り、レオンハルトへの揺るぎない信頼と愛情、そしてユーフェミアの理想に共感し、共に戦うことを選んだその強さと優しさを、少しでも読者の皆様にお伝えできていれば幸いです。
そして、物語の終盤、レオンハルトとモニカが「白銀のレクイエム」という、あまりにも過酷な運命を引き受けるという決断を下したことについて。これは、彼がこの世界に転生し、ユーフェミア・リ・ブリタニアという存在に出会い、彼女の純粋な理想と、その笑顔を守りたいと強く願った、その最初からの「一貫性」を保つための、私なりの答えでした。彼にとって、ユーフェミアの幸せと、彼女が夢見た「誰もが笑顔で暮らせる優しい世界」の実現こそが、何よりも優先されるべきものであり、そのために自らが全ての憎しみを引き受け、犠牲となることは、彼にとって究極の愛の形であり、騎士としての本懐であったのかもしれません。それは、原作のルルーシュがナナリーのために世界を変えようとした想いと、どこか通じるものがあったのではないかと、今は感じています。
もちろん、この物語は数あるIFの一つに過ぎません。原作の持つ完成度や、ルルーシュとスザクが織りなす悲劇と希望の物語の素晴らしさは、決して揺らぐものではありません。ただ、このIFストーリーを通じて、読者の皆様が、もしもの世界の可能性に思いを馳せ、キャラクターたちの新たな一面を発見し、そして少しでも楽しんでいただけたのなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。
改めまして、この長い物語にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
またいつか、別の物語でお会いできる日を楽しみにしております。